「ようイサム、休暇は楽しかったか」
……?
「おはよう、今日から復帰か?頑張れよ」
…………????
「いや、すげぇよお前は。誤解してたわ」
………………????????
なんだ、なんだなんだ?
職場に出てから皆の様子がおかしい。
俺に声を掛けてくるなんて。
普段なら無視するのに。
「ようイサム」
「おはようございます主任。どうしたんですかね、皆」
「?」
「いえ、なんか急に声を掛けてきて」
「イサム。新聞読んでないのか?」
「え?」
そう言えば新聞読んでなかったな。
……え、なんだこれ。
「俺が、軍需品輸送範囲の拡大……」
「そうだ。お前さんが国土を復興させたお陰で各地の工場や企業に物資が回せるようになったんだ」
何だこれは。
何だこれは……俺は、そんな事の為に。
「重桜も開戦ムードだし、戦力の増強は急務だったしな。
……俺は、走り出した。
―――――――――――
……俺は、思ってた以上に何も考えてなかったみたいだ。
空を見上げる。
今の俺の気分の様に、曇天の空模様。
その辺に落ちていた石ころを、思いっきり海に向かってブン投げた。
こんなんで気分が晴れる訳は無い。
これからどうしよう。
仕事を放り出して、出てきてしまった。
でも正直……戻って仕事する気になんてなれなかった。
どうしよう。
「イサム」
「……隼鷹」
「何してるの?仕事は?」
……彼女に表情は無い。
「………………」
「今日は仕事でしょう?何してるの」
「隼鷹は、知ってたの」
俺は、つい口からそんな事を溢してしまった。
「知ってたよ」
「!!!」
帰ってきたのは肯定。
「隼鷹、何で」
「……イサムが承諾したことよ」
「でも、」
「貴方が決めた事なのよ」
「隼鷹……」
「甘えた事言わないの!」
一喝。
そして衝撃。
ぶたれたのだ。
ただし力が強くて俺は転がった。
「隼、鷹」
「選んだのは貴方。いくらでも考える機会はあったの!でもそれをしなかった!」
「それ、は」
「逃げるな、自分のしたことから!」
「う、あ……」
「私は、イサムが周りとこれで上手く行くかもしれないって……ちょっと思ったんだ」
ぽつり、と隼鷹が溢す。
「貴方が周囲から浮いていたのは知ってたし、イサムがそれをあまり気にしてないのも分かってた。けれど……やっぱり、周りともつながってほしかった」
重要が、しゃがみこんだ俺に手を差し出した。
「……ごめんね」
「謝ることは、無いよ……全部、本当の事なんだ。目が覚めたよ」
手を取らずに、立ち上がった。
ちょっとした意地。
隼鷹は、ほほ笑んだ。
「これから、どうするの?」
「謝りに行かなきゃ」
「それで?」
「俺の荷物を待ってる人が居る。急いで配送する」
「うん」
「赤城様にも謝らなきゃ」
「うん……」
「隼鷹」
「何?」
「………………ありがとう」
「嫌わるかもって思ってた」
「そんなこと無いよ」
「そっか。ありがとう」
「お互いにお礼言うのって、変ね」
「かも」
はははっ、とお互いに笑った。
「……隼鷹のこと、ずっと否定してた」
戦う為に生まれたKAN-SENに、戦いについて嫌いだとずっと言っていた。
俺は、最低だ。
「ううん。イサムは、良い子に育ったね」
「やめてよ、それは」
「ふふ、さ、行きましょう?」
悩んでも、俺のそばにずっといてくれた彼女に。
恥じないよう生きていきたいな。
第一章、完。