第二章開幕です。
第十九話 繋がった大地の先に
あれから二か月が経った。
重桜本土の復興が順調に進んでいる。
俺は……心境の変化もあって、KAN-SENたちへの配送も行うようになった。
「おはよう、イサム。今日もいい天気ね」
カーテンが開かれる。
……まぶしい。
「おはよう、隼鷹」
「うん、おはよう。よく眠れた?」
「ばっちり」
「そっか。じゃあいこっか」
彼女は笑顔で手を引くのだった。
――――――――――
「イサムさん。今日は折り入って頼みが」
「はぁ。頼みですか」
「はい。ちょっと鉄血まで行ってきてくれませんか」
「はぁ、鉄血に」
………………鉄血!?
「え、ええ!?」
「?」
赤城様から唐突に告げられた一言。
鉄血ってあの鉄血!?
「あ、あの鉄血ですか!?」
「はい、あの鉄血です」
「えっ、えっ本当に言ってるんですか!?」
「ええ。その鉄血です」
「遠くありませんか……」
ここから鉄血の領海まで割と遠い。
1日で行ける距離ではない。
「今回の任務の概要を説明しましょう」
赤城様がぱちんと指を鳴らす。
天井からスクリーンが降りてきた。
いやでも畳の部屋にそれってすごいミスマッチですね。
「依頼主は重桜の研究開発部。貴方には重桜の戦術データを収めた特殊なメンタルキューブを運んでもらいます」
「特殊な……?」
メンタルキューブというのは、KAN-SENを構築する為のデータ、リュウコツが収められた事実上のブラックボックス。
「はい。貴方には話しておきましょう。これには開発艦計画というのが絡んでいます。名前だけでも聞いたことは?」
「ああ……少しだけ」
開発艦。
過去の大戦時に存在しなかった架空の存在を強力な力を持たせて顕現させる、対セイレーンにおいての切り札となる船達だ。
「概ね認識しているようですね」
「まぁ、自分の国の事ですので」
あれから、しっかり自分の国について学びなおした。
今、何と戦っているのかを。
「……少し、変わりましたね」
「そうですか?」
「ええ。以前の戦いを忌避していた頃より良い顔をしています」
「あ、あはは……」
そういわれると、ちょっと照れ臭い。
「過去に鉄血へ向けて遠征があったのをご存知ですか?」
「はい。愛宕さん達が向かったやつですね」
「ええ。実はアレ、鉄血までのルートの安全化、中継地点の設計なんて物をしていました」
「なるほど……」
「そして今回、経路をいくつかに分けて秘密裏に鉄血へ向かうチームを編成します」
「秘密裏に、とは?」
「最近、アズールレーンとの間に不確かな亀裂があります」
「……まさか、開戦するつもりですか。相手は、KAN-SENと……人間ですよ」
拳を握る。
落ち着け。
ここで声を荒げた所でどうにもならない。
「……まさか。ただ、アズールレーンが武力を持って服従を求めた場合……我が重桜の戦力では太刀打ちが出来ません。その為に……鉄血との連合、レッドアクシズの結成の必要があります」
「……わかりました」
「では、アカツキイサム曹長。鉄血へ向かい、あちらへKAN-SEN技術を送り届けてください」
……俺の、新しい仕事が始まった。
イサム、鉄血へ向かう。
新たな旅路に、どうかお付き合いくださいますようよろしくお願いします。