【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

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赤城と別れ、重桜海軍の本部の廊下を歩く。


第二十話 天城さん

……何時来ても、ここの空気は合わない。

いつもピリピリしている気がする。

足早に去ろうとして、

 

「そこの貴方?何をしているの?」

 

呼び止められた。

女性の声だ。

 

「は、はい」

 

恐る恐る振り返る。

 

「赤城様?」

「あら」

 

確かに、赤城様そっくりだった。

けど、違う。

立ち居振る舞いと言うべきだろうか。

所作一つ取っても落ち着きと貫禄。

 

似てはいるが全然別物の存在感だった。

 

「違いますよ。私は天城。赤城の姉ですわ」

「こ、これは失礼しました……天城様」

 

慌てて頭を下げる。

名前だけは聞いた事がある。

重桜きっての策士、天城と。

 

「そう畏まらなくても良いですよ。赤城の部下の子でしょう。いつもありがとうございます」

「い、いえ、そんな」

「あの子、変な風に育たなくて良かったのだけれど……少し計画が行き当たりばったりなのよ」

「そうなんですか……ああ」

 

思わず納得してしまった。

だってあの時俺が本土復興計画に挙手しなかったらどうするつもりだったんだろうか。

 

「思い当たる節がおありのようですね」

「ええ、ちょっと前に」

「ふふふ。でも、貴方は赤城を手伝ってくれています」

「それは……まぁ、成り行きで」

「それでも、ですわ。赤城の事……よろしくお願いしますね」

「は、はい!」

 

それでは、と天城様が一礼して……ああ、と声を漏らした。

 

「最近、犬がこそこそと歩き回っている様です。用心されますように」

「犬……?」

「それではご機嫌よう」

 

天城様が歩き去って行った。

あまりにも綺麗な後ろ姿にしばし見惚れた後、慌ててこの場を後にした。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

夜。

俺は一人歩いていた。

 

重桜の土地は湿度が高い傾向にあり、夜は少しじめっとしている。

 

(犬、犬か……)

 

夕方、天城様が仰っていた事を思い出す。

野犬の類では決してない。

参謀役であるあの方が言うならば……密偵。

 

(密偵、密偵かぁ……俺なんて特に情報を持ってる訳じゃな……)

 

ふと、目に留まった。

留まってしまった。

 

……月に反射する綺麗な長い銀の髪。

重桜ではありふれた巫女の装束で覆いきれない豊かな胸。

そして、顔の半分から上を狐の面で隠している。

あまりにも人外すぎる見た目にしばし見惚れてしまった。

 

白髪、銀髪自体は重桜のKAN-SENにも存在しているが……少なくとも夕立さんではない。

一体誰だろうか……。

 

「あの」

「!」

 

あえ?

何で声かけちゃったの俺!?

 

「な、何でしょうか」

「あー……えっと、お困りの様でしたので」

「……ナンパでしたら、他を当たってくださいますでしょうか」

「えっ、そんなんじゃなくてですね……」

「はぁ……重桜の殿方は、もっと身持ちが固いイメージでしたが」

「は、はぁ」

「申し訳ありませんが、私も忙しいので」

 

失礼します、と()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あっ、ロイヤルのメイド隊……!」

「!!」

 

過去にロイヤルの行事の映像を観た時に見覚えが……。

 

「う、わ!?」

 

物凄い力で襟首を引っ張られて、そのまま路地裏に連れ込まれた。

 

「……不覚ですね。まさかこんな呆気なく看破されるとは」

「う、げ、げほっ」

 

首が締まる。

物凄い力だ。

 

「申し訳ありません。目撃者は少ない方が良いので」

「あ、が、」

 

マズい、意識が。

 

「……!!」

 

ふっと、手が離された。

 

「げほっ、げほっ……何が」

「……」

 

俺の前に、一人の男性が立っていた。

 

「貴方は……」

「明かせぬ」

「まさか、重桜のシノビ……!」

「……」

 

え、シノビ……?

KAN-SENに対抗し得る数少ない人間って……。

 

「狼さん……?」

 

男性は、無言で、音もなく刀を抜き放った。

 

「……参る」

 

 

 




重桜の忍、推参。
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