【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

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第二十三話 出立

 

まだ日が昇るより早い時間。

俺は目覚ましがなる直前に時計を叩き起き上がった。

 

「……第一関門クリア」

 

要するに寝坊しなかっただけ。

顔を洗い冷凍庫からゼリー飲料を出して胃に流し込む。

 

前日の夜にまとめた荷物を身に着け、部屋を出た。

 

……ガレージの前に、誰かが居る。

あのシルエットは見間違えない。

 

「赤城様……」

「おはようございます、イサムさん」

 

重桜が誇る一航戦、赤城。

彼女が、俺のリバーストライクの前に立っていた。

その隣には、

 

「おはよう、イサムくん」

「愛宕さんまで」

「見送りよ」

 

愛宕さんがウィンクする。

相変わらず何させてもサマになる人だ。

 

「こちらを」

 

赤城様が、厳重にロックされたアタッシュケースを差し出す。

 

「これが……」

「はい。開発艦計画の要、彼女のコアです」

「………………」

 

この中に、これから生まれるKAN-SENの重要機関が入っている。

無意識に体が強張る。

 

「……イサムさん。実は、この任務……仮に失敗したとしても気負わないで下さいまし」

「えっ」

「このコアは全部で5つ。全て別働隊によって運ばせています。貴方は言わば保険のようなもの……ですので、気負わず、いつもの様に運んで……無事に帰って来てください。まだ重桜は貴方を必要としています」

 

……からだの緊張が溶ける。

思った以上に安心したのかもしれない。

 

「わかりました。必ず帰ります」

 

アタッシュケースを受け取り、背中のマウントに固定した。

 

「イサムくん」

「はい?」

 

愛宕さんに呼ばれる。

振り向くと、にっこりと微笑みながら両手を広げていた。

 

「愛宕さん……あの」

「あら、私は気にしませんよ」

 

赤城様がニヤニヤしながら袖で口元を隠していた。

 

……観念して腕の中に入る。

ぎゅっと、抱き締められた。

 

少しだけ、俺の方が背が高いから……愛宕さんは背伸びして俺の肩に顎を乗せた。

 

「……大きくなったわね、イサムくん」

「……そうですかね」

「ついこの前まで小さかったのに。オトコノコの成長って早いのね」

「貴方は、変わりませんね」

「KAN-SENだもの。きっと、沈むまで……この姿ね」

 

そのまま無言で抱き締められること数分。

愛宕さんは無言で手を離した。

 

「イサムくん」

「はい」

「いってらっしゃい」

「……行ってきます」

「外で、あの子が待ってます。合流してあげてくださいね」

「はい」

 

トライクに跨り、エンジンを掛ける。

相棒はいつもと変わらない唸り声を響かせる。

 

「ご武運を」

 

俺は、走り出した。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

頭上を、一機の戦闘機が通り過ぎた。

水平線の向こうから、日が昇ってくる。

 

海上に、誰かが立っていた。

誰かって?

彼女に決まってる。

 

 

「お待たせ。待った?」

「いつまでも、待つわ」

「ごめんね」

「気にしてない。愛宕も、寂しいだろうから仕方ないわ」

「そう……じゃあ、行こうか。隼鷹」

「ええ」

 

俺たちの、長い旅が始まった。

 

 

 

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