まだ日が昇るより早い時間。
俺は目覚ましがなる直前に時計を叩き起き上がった。
「……第一関門クリア」
要するに寝坊しなかっただけ。
顔を洗い冷凍庫からゼリー飲料を出して胃に流し込む。
前日の夜にまとめた荷物を身に着け、部屋を出た。
……ガレージの前に、誰かが居る。
あのシルエットは見間違えない。
「赤城様……」
「おはようございます、イサムさん」
重桜が誇る一航戦、赤城。
彼女が、俺のリバーストライクの前に立っていた。
その隣には、
「おはよう、イサムくん」
「愛宕さんまで」
「見送りよ」
愛宕さんがウィンクする。
相変わらず何させてもサマになる人だ。
「こちらを」
赤城様が、厳重にロックされたアタッシュケースを差し出す。
「これが……」
「はい。開発艦計画の要、彼女のコアです」
「………………」
この中に、これから生まれるKAN-SENの重要機関が入っている。
無意識に体が強張る。
「……イサムさん。実は、この任務……仮に失敗したとしても気負わないで下さいまし」
「えっ」
「このコアは全部で5つ。全て別働隊によって運ばせています。貴方は言わば保険のようなもの……ですので、気負わず、いつもの様に運んで……無事に帰って来てください。まだ重桜は貴方を必要としています」
……からだの緊張が溶ける。
思った以上に安心したのかもしれない。
「わかりました。必ず帰ります」
アタッシュケースを受け取り、背中のマウントに固定した。
「イサムくん」
「はい?」
愛宕さんに呼ばれる。
振り向くと、にっこりと微笑みながら両手を広げていた。
「愛宕さん……あの」
「あら、私は気にしませんよ」
赤城様がニヤニヤしながら袖で口元を隠していた。
……観念して腕の中に入る。
ぎゅっと、抱き締められた。
少しだけ、俺の方が背が高いから……愛宕さんは背伸びして俺の肩に顎を乗せた。
「……大きくなったわね、イサムくん」
「……そうですかね」
「ついこの前まで小さかったのに。オトコノコの成長って早いのね」
「貴方は、変わりませんね」
「KAN-SENだもの。きっと、沈むまで……この姿ね」
そのまま無言で抱き締められること数分。
愛宕さんは無言で手を離した。
「イサムくん」
「はい」
「いってらっしゃい」
「……行ってきます」
「外で、あの子が待ってます。合流してあげてくださいね」
「はい」
トライクに跨り、エンジンを掛ける。
相棒はいつもと変わらない唸り声を響かせる。
「ご武運を」
俺は、走り出した。
――――――――――
頭上を、一機の戦闘機が通り過ぎた。
水平線の向こうから、日が昇ってくる。
海上に、誰かが立っていた。
誰かって?
彼女に決まってる。
「お待たせ。待った?」
「いつまでも、待つわ」
「ごめんね」
「気にしてない。愛宕も、寂しいだろうから仕方ないわ」
「そう……じゃあ、行こうか。隼鷹」
「ええ」
俺たちの、長い旅が始まった。