「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
どこかで、少女の悲鳴が木霊する。
「沈みます、沈みますわぁ!!?冗談抜きで沈んでしまいますわ指揮官様!?」
少女は絶えず登る水柱を巧みに躱している。
……しかし、水柱……敵の砲撃は止まない。
「指揮官様ぁぁぁぁ!!大鳳このままだと沈んでしまいますわ!?援軍とか居ませんの!?えっ、現戦力で対処?信じてる?えぇ?なら指揮官様、この大鳳めに愛してるって囁いて……あっ、切った」
少女の顔から表情が消えた。
「あれ、あれあれあれぇ〜???もしかして大鳳ちゃん、指揮官サマに見捨てられちゃったのかなぁ〜〜〜???」
「!」
少女の目の前に、不気味なほど白い肌をした少女が現れる。
「黙りなさいセイレーンめ!」
「あれれ怒っちゃった?でも事実だよね〜?」
「っ……」
「残念だね〜可哀相だねぇ〜、あれだけ媚を売って献身的に尽くしてきたのに最期がこれだなんてねぇ〜〜」
「アナタに何が……!」
「何も知らないのはそっちだよ」
「あ"、ぐっ」
光線が掠める。
それだけの衝撃で、少女は吹き飛ぶ。
「あはは、まさに死に体って感じ?ねぇ、何か最後に言い残す事は?」
「……あーあ。大鳳のこと、ちゃんと大事にしてくれる人に会いたかったなぁ……」
――――――――――
「……セイレーンってさ、どんな奴等なんだろう」
重桜を出発してから一週間が経過した。
過去の戦乱で吹き飛ばされた土地が散らばり、そのまま島を形成している為……中継地点を築くのは容易だった。
中継地点を経由しながら、俺は鉄血へと向かっていた。
「そうね……神出鬼没で、意味の分からないことを言ってくるヘンナの」
「……話が出来るって事?」
隣を走る隼鷹がそう答えた。
「意思の疎通なんて出来ないわよ」
「俺達に通じる言葉を話すのに?」
「同じ言語だと思わない方が良いわ」
「そうかな……」
「そうなのよ」
セイレーン。
歌声は人を魅了し水底へ引きずり込むとか言う話があったとか無かったとか。
そんな大層な名前を付けるに値する相手なんだろうか。
「大丈夫。イサムは私が守るから」
「え、あ、うん……ありがとう……ん?」
今何か、波の合間に……。
「隼鷹!」
「何?」
口調はいつもと変わらないけど、俺の一言で臨戦態勢になる。
「人だ!誰か漂ってる!」
すぐさまトライクの向きを変える。
隼鷹も後に続く。
……浮かんでいたのは、とても長い黒髪の少女。
赤い、鮮やかな着物は血と焼け跡で汚れていた。
「隼鷹、ごめん!この子を後ろに!」
「イサム、助ける気?私達の任務を忘れたの?」
「……判ってるよ。でも、この子は重桜のKAN-SENだ……見捨てられない」
「……イサムってば。本当に頭が硬いんだから」
隼鷹が折れてくれた。
わがままなのは判ってる。
でも放っておけない。
「……私、こいつ嫌いなんだけどなー」
「なにか言った?」
「ううん、何でも。さ、中継地点まで向かいましょう。もうすぐよ」