「……あ、れ」
冷たい海に漂う感触が無い。
何か、柔らかいもののの上に……寝かされている。
体が重い。
でも、動く。
「わ、た……たいほう、は……沈んだん、じゃ」
「起きたわね」
「……!隼鷹……?」
部屋の出入り口に立っていたのは、ぶっちょう面の軽空母。
何故……?
「イサムに感謝することね」
「イサム……?」
「その辺で野垂れてる貴女を拾ったのよ」
「え……」
わたしを、拾った?
「変な気を起こさないでよ。上官変わるたびに猫かぶって近付く貴女を私は信用してないから」
「は、はは……大鳳も随分、嫌われちゃいましたね……」
「当たり前でしょ。私たちは明後日出るわ。それまでに何とか重桜と連絡取って受け入れてもらいなさい」
「無理、ですよ……だって大鳳は見捨てられたんですから」
「……フン。お似合いの末路じゃない。じゃあここにいれば?」
「それは……」
「どっちみち、ここは遠征が終わるまで残ってるし、それまでは生きてはいられるわ」
「………………」
「それじゃ。全く……イサムのお願いじゃなかったら面倒なんて……」
そう言って、隼鷹は出て行った。
「……イサム、さん」
――――――――――
「ふぁ……」
目が覚める。
……ソファで寝てたからちょっと身体に違和感。
とりあえずストレッチから。
「おはよう、イサム……大丈夫?身体へん?」
腰を回していたら、隼鷹が談話室に顔を出した。
……ここは、重桜が一度目の遠征で建設した中継地点のうちのひとつ。
休憩スペースのソファーで何故か俺は寝ていた。
というのも、昨日拾った……もとい、救助したKAN-SENを寝かせていたからだ。
隼鷹が急に剥くから慌てて飛び出したのだった。
「あの子は大丈夫なの?」
「まぁ死にはしないでしょ」
「だと良いんだけど……」
とりあえず顔を洗って身なりを整えて、仮眠室のドアをノックする。
「……起きてますか?」
『どうぞ』
驚いた。
もう声が出せるほど回復してるみたい。
ドアを開ける……すると。
「おはようございます、イサム様♡」
「……へぁ?」
十二単の様な煌びやかな着物を凄まじく着崩した少女が、ベッドの上で三つ指揃えた座礼をしていた。
二房の長い黒髪が艶やかに光る。
「え、えぇ……?」
さっきから困惑の声しか出ない。
怪訝に思ったのか少女が顔を上げる。
……声から察した年相応な顔立ち。
しかし、その少し下に現れた暴力的なふくらみが一瞬で俺の思考を奪って釘付けにした。
「ふん」
「いだッ!?!!???!?!?」
隼鷹に足を踏まれて我に返る。
「チッ……」
「あいたたた……何するのさ」
「えっち」
「え、ちが、違うからね!?」
「はいはい。それで、どうするか決めたの?」
隼鷹が話を進める。
どうするか……?
重桜に帰るんじゃないのか?
「もう、隼鷹はせっかちですね。自己紹介くらいさせてくださいます?イサム様は命の恩人なんですから」
「そんな大層なものじゃないよ」
「それではイサム様、私は装甲空母大鳳と申します」
「それはご丁寧に……アカツキイサムです」
「アカツキイサム様ですね!大鳳、そのお名前をこの胸に刻みました。今後一切忘れることはありませんわ」
その西瓜並みに大きな胸部装甲を盛大に揺らす。
……愛宕さんも大きかったけどこの子、それ以上だ。
「……」
「殺気……!?」
「それで、今後どうするのよ」
凄まじく機嫌の悪い隼鷹が話を先に進める。
「はい、大鳳は……」
大鳳が一呼吸入れる。
「イサム様に着いていこうかと思います♪」
「「……ええ!?」」