【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

28 / 88
第二十八話「空白海域」

「ここが、指定されていたポイントだね」

 

トライクを一旦止める。

波が少し荒いだけで、特に何か問題のある海域には思えない。

 

……問題、問題があるとするなら。

ここが、重桜の領海から少し外れた場所であるという事。

 

どの国にも統治されていない海。

……未だ、セイレーンの蔓延る場所。

 

「早く行きましょう」

 

隼鷹が先行する。

俺もその後に続く。

 

「……それで、大鳳さんの部隊が落とした物資というのは?」

 

後ろに続く大鳳さんに聴こえる様に声を張る。

KAN-SEN同士は艤装の通信設備でどうにかなるけど、俺はそうでもないのだ。

 

「呼び捨て貰っても構いませんイサム様♡」

「チッ……」

 

隼鷹が舌打ちしたのを聞かなかった事にした。

 

「大鳳達が運んでいたのはメンタルキューブですわ」

「メンタルキューブ?どうしてそんな物を」

 

メンタルキューブ。

KAN-SEN達が産まれるために必要不可欠なブラックボックス。

未だ、それがどうして必要なのかすら判明していない。

唯一判っているのは、KAN-SEN達にとってのリュウコツを司る『船の記憶』が秘められている事。

 

「それは少し特殊な物だったんです」

「特殊?」

「はい。詳しくは言えませんけど……開発艦計画はご存知ですか?」

 

それで大体察した。

俺の運んでいるこのアタッシュケースと同じ物が、この海の何処かにある。

 

「大体わかったよ。早く探してあげよう」

 

しかし、この波間に呑まれていないとも考えられない。

探すまでもなく海の藻屑と化しているなら……諦めるしかない。

 

最悪のケースは既にセイレーンの手に落ちていること。

対セイレーンの切り札を失う事は痛手だ。

 

隼鷹と大鳳さんが艦載機を飛ばし始めた。

 

こういう時、やはり空母は頼りになる。

 

……おや。

 

「大鳳さん、大丈夫ですか?」

「……え?」

「顔色が優れませんけど」

「き、気にしないでください。少し、思い出してしまっただけですわ」

 

最後の、独り言の様に呟いた言葉にはなんの感情もなかった。

 

 

 

――――――――――一時間後。

 

 

 

「無い……やっぱり沈んじゃったのかな」

 

荷物の性質上、このケースは軽い。

回収しやすい様に浮かせるためだ。

 

空母2隻の索敵能力を持ってしても見付けられなかった。

 

「赤城に連絡する?」

「そうし……」

「駄目ですわ!」

 

大鳳さんが声を荒げる。

驚いて振り向く。

 

「……大鳳さん?」

「あっ、いえ……何でも、ありません」

「体調が優れませんか?やはり無理はすべきでは無いと思います。戻りましょう」

「違っ……大鳳は……」

「イサム。大鳳を置いて行きましょう」

「何言ってるの隼鷹!?」

 

隼鷹の発言に思わず目を丸くした。

 

「イサム、大鳳のそれ。演技よ」

「え……」

「ッ!」

 

隼鷹に指摘されて、大鳳さんを見る。

顔色は悪いままだが、その表情は無。

 

「……いつから?」

「最初からよ。貴女いっつも保身に走ってるから分かりやすいわ」

「何ですって……!」

「喧嘩しないでよこんなとこで!今はそんな事はどうだって良い!」

 

俺は大鳳さんへ向き直った。

 

「それは本当に貴女のしたいことですか」

「え……」

「大鳳さんは、その任務を継続しなきゃいけない理由があるんですか?」

「大鳳、は……」

 

「重桜のKAN-SEN……それと、人間が、どうしてここに」

 

「え……」

 

第三者の声。

 

「貴方は……」

「ひっ……」

 

思わず、呻いた。

そこに居たのは、ロイヤルのメイド隊。

 

俺を殺しかけた、メイド長だった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。