【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

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第二十九話「逃走」

どうして、どうして、どうして。

どうしてこの人がここに居るんだ。

 

「貴女、ロイヤルの……」

 

隼鷹が呟く。

一切油断なく、相対している。

 

今は、彼女ひとりか。

メイド隊が単騎で行動するなんてあり得ない。

何処かに彼女以外のKAN-SENが居る筈……。

 

「……隼鷹」

「大丈夫よ」

 

声に出した言葉は、俺の想像以上に震えていた。

 

「……それほど怖がられるとは、少し心外ですね」

 

メイドはあっけらかんと言い放つ。

俺の事をもしかして覚えていないのか?

 

「何をしているの」

「それはこちらのセリフです。こんなセイレーンも出没する海域に人間を連れているなんて」

「……………」

「それに、そちらの人間は妙な力をお持ちなようですね」

 

メイド……ベルファストの目が、俺を捉えた。

今すぐアクセルを全開にしこの場から逃げ出したい欲を抑える。

 

「貴方は、何故こんな重桜に近い場所に?」

 

大鳳さんと隼鷹が俺を一瞥する。

 

「さて、何故でしょう」

 

はぐらかす気か。

ただまぁ、この場に居るって事は。

 

「また重桜に入る気ですね?」

()()?」

 

ベルファストの顔色は変わらない。

しかし、声に若干の変化が見られた。

 

()()、とはどういった意味でしょうか?人間様」

「……?」

 

この人、もしかして俺の事を覚えていないのか?

 

「まぁ……そんな事はどうでも良いのですが……」

「「!」」

 

ベルファストの艤装、その砲身がこちらに向けられる。

 

「人間は保護すべき、我らが女王様はそう仰られています。貴方がた、何故KAN-SENが人間をこんな海域へ?」

「仕事よ。それ以外ある?」

「そうですか……宜しければ、お聞かせ願いませんか?『袖振り合うも多生の縁』、重桜の言葉でしたでしょうか」

「……嫌な女」

 

大鳳さんが呟いた。

その言葉に微動だにせずにこりとベルファストは微笑む。

 

「……俺達は、」

「教える必要は無いわ。消えなさい」

 

隼鷹が俺の言葉を遮り構える。

 

「あら、そうですか。お探しの物はこちらで?」

「「!?」」

 

ベルファストが持ち上げたケース。

なんの変哲もないただのジュラルミンケースだが……それは、俺が背中に括り付けているものと同じ物。

 

開発艦の、メンタルキューブだ。

 

「な、何故それを!」

「チッ……!」

 

大鳳さんが狼狽えた声を上げる。

それに隼鷹が舌打ち。

 

この反応、まさしくのそケースが重要な物だと証明している様なモノだ。

 

「……なるほど。ではそちらの方が背負うそれも、中身は同じですね?」

「えっ……」

「バカ大鳳、道は一つよ」

「隼鷹、待って!話合えば……」

「無駄よ。ロイヤルの腹黒に舌で勝てるものですか」

「心外ですね。もしかしたらお互いの妥協点が探れるかもしれませんよ?」

「お前達に渡せる物は何も無いのよ!!」

「……はっ!?」

 

ベルファストの足元から水柱。

何かが海中から飛び上がったのだ。

 

ベルファストの手にケースは無い。

 

が、何かが高速で俺に向かってきたので慌てて受け止める。

 

「イサム!走って!!」

 

それは、海中に艦載機を沈めていた隼鷹の機転。

むりやり動かして足元から強襲を掛け、ベルファストから荷物をひったくったのだ。

 

……流石に無茶をし過ぎである。

 

「隼鷹!」

「必ず追い付くわ!大鳳、行くわよ!!」

「えっ、大鳳も!?」

 

俺は、アクセルを踏みしめて全速力で離脱した。

 

 

 

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