どうして、どうして、どうして。
どうしてこの人がここに居るんだ。
「貴女、ロイヤルの……」
隼鷹が呟く。
一切油断なく、相対している。
今は、彼女ひとりか。
メイド隊が単騎で行動するなんてあり得ない。
何処かに彼女以外のKAN-SENが居る筈……。
「……隼鷹」
「大丈夫よ」
声に出した言葉は、俺の想像以上に震えていた。
「……それほど怖がられるとは、少し心外ですね」
メイドはあっけらかんと言い放つ。
俺の事をもしかして覚えていないのか?
「何をしているの」
「それはこちらのセリフです。こんなセイレーンも出没する海域に人間を連れているなんて」
「……………」
「それに、そちらの人間は妙な力をお持ちなようですね」
メイド……ベルファストの目が、俺を捉えた。
今すぐアクセルを全開にしこの場から逃げ出したい欲を抑える。
「貴方は、何故こんな重桜に近い場所に?」
大鳳さんと隼鷹が俺を一瞥する。
「さて、何故でしょう」
はぐらかす気か。
ただまぁ、この場に居るって事は。
「また重桜に入る気ですね?」
「
ベルファストの顔色は変わらない。
しかし、声に若干の変化が見られた。
「
「……?」
この人、もしかして俺の事を覚えていないのか?
「まぁ……そんな事はどうでも良いのですが……」
「「!」」
ベルファストの艤装、その砲身がこちらに向けられる。
「人間は保護すべき、我らが女王様はそう仰られています。貴方がた、何故KAN-SENが人間をこんな海域へ?」
「仕事よ。それ以外ある?」
「そうですか……宜しければ、お聞かせ願いませんか?『袖振り合うも多生の縁』、重桜の言葉でしたでしょうか」
「……嫌な女」
大鳳さんが呟いた。
その言葉に微動だにせずにこりとベルファストは微笑む。
「……俺達は、」
「教える必要は無いわ。消えなさい」
隼鷹が俺の言葉を遮り構える。
「あら、そうですか。お探しの物はこちらで?」
「「!?」」
ベルファストが持ち上げたケース。
なんの変哲もないただのジュラルミンケースだが……それは、俺が背中に括り付けているものと同じ物。
開発艦の、メンタルキューブだ。
「な、何故それを!」
「チッ……!」
大鳳さんが狼狽えた声を上げる。
それに隼鷹が舌打ち。
この反応、まさしくのそケースが重要な物だと証明している様なモノだ。
「……なるほど。ではそちらの方が背負うそれも、中身は同じですね?」
「えっ……」
「バカ大鳳、道は一つよ」
「隼鷹、待って!話合えば……」
「無駄よ。ロイヤルの腹黒に舌で勝てるものですか」
「心外ですね。もしかしたらお互いの妥協点が探れるかもしれませんよ?」
「お前達に渡せる物は何も無いのよ!!」
「……はっ!?」
ベルファストの足元から水柱。
何かが海中から飛び上がったのだ。
ベルファストの手にケースは無い。
が、何かが高速で俺に向かってきたので慌てて受け止める。
「イサム!走って!!」
それは、海中に艦載機を沈めていた隼鷹の機転。
むりやり動かして足元から強襲を掛け、ベルファストから荷物をひったくったのだ。
……流石に無茶をし過ぎである。
「隼鷹!」
「必ず追い付くわ!大鳳、行くわよ!!」
「えっ、大鳳も!?」
俺は、アクセルを踏みしめて全速力で離脱した。