「私がここに飛んできた理由、ですか?」
やっとひと段落したので能代に気になっていた事を聞いた。
「うん」
「出発前に渡したお守り、覚えていますか?」
「ああうん、ここに……あれっ」
風呂に入る前にポケットに入れていたお守りを出す。
……しかし、そのお守りは焼かれたように半分無くなっていた。
「焼けてる……」
「ちゃんと機能したみたいですね」
良かった、と能代が胸をなでおろしていた。
「これは緊急用の簡易転移式神です」
「あー……」
よく重桜の上層部が使用している移動手段だ。
「この通り、一度使うと消失してしまうのが玉に瑕なのですが……移動距離に制限がありません」
「なるほど……」
俺の緊急事態に反応して飛んできたのだろう。
「けど、どうしてこれを?」
背後からため息が聞こえた。
隼鷹が風呂から上がってきた様だ。
「……言わせる気ですか」
「いや、言ってくれないと分からないけど……」
「……隼鷹が強いのは重々承知してますけど、やっぱり……心配、でしたので」
「そっか……でも、大丈夫なの?能代の艦隊の方は……」
「了解は得ていました」
「そうなんだ……」
いや、でも艦隊の護衛放り出して来るのは如何なものか。
「……仕方ないじゃないですか。心配だったんですから」
能代はそう言うと、顔を背けて手元に持っていた羊羹にかぶりついた。
「あはは……ありがとう、能代。お陰で助かったよ」
「ふん……」
言われてみれば、軽空母の隼鷹一人が護衛と言うのもそもそもどうなのだろう。
索敵は出来るが接敵してしまった場合の対処。
「私は帰らないわよ」
「まだ何も言ってないんだけど」
「イサムから離れるなんて絶対嫌」
「あの」
「嫌ったら嫌」
「……わかったよ」
言い出したら絶対に曲げないからなぁ、隼鷹。
「お風呂上がりましたぁ〜」
大鳳さんの声だ。
視線を向けようとして、能代に視界を塞がれた。
「え、何!?」
「イサムさんは見てはいけません」
「えっ!?」
「あっ!能代さん!?何をしていらっしゃいます!?」
「貴女が何してるの大鳳!!服を着なさい!!」
「破廉恥ですっ!!」
「イサム様ぁ〜大鳳の髪を乾かして下さいます〜?」
「やめなさい!!能代!絶対に手を離さないで!!」
……どうやら、大鳳さんがあられもない格好でお風呂から上がったらしい。
「あ、あはは……」
なんだか、隼鷹と愛宕さんのやり取りみたいでつい苦笑が漏れた。
「だいぶ打ち解けたみたいだね」
「イサム……?大丈夫?今すぐ任務を中断して診てもらう?」
「えっ、どこを!?」
「おいたわしやイサム様……不詳大鳳、全身全霊でお世話を……」
「貴方は自分の世話をまずしなさい!!」
脱力して後ろに倒れそうになる。
……うん?後頭部に柔らかい感触が。
「な、ち、ちょっ、イサムさん!?」
「ああ、能代後ろに居たんだ」
「当たり前よ……」
「あはは、ごめんごめん……ちょっと眠くなってきた」
「……そろそろ休みましょう。お疲れ様、イサム」
翌日、大鳳さんは風邪を引いた。