そして、キャラ崩壊注意。
いつもの事ですけど。
今日も海を見て溜息を吐いていた。
別に今の環境に満足していなかったわけでは無い。
ただ、何というか『物足りない』と感じる。
毎日、来る日も来る日もロイヤルレディとしての責務を求められ、いつしか仮面を付けるようになってしまった。
……満たされない。
と言うか、
「疲れましたわ……」
違う自分を演じるのも、いい加減疲れた。
……この日、過去一番に失敗をぶちかましたので心配された姉二人にお茶会に誘われたのだった。
――上の姉、イラストリアスお姉様は完璧なロイヤルレディだった。
いついかなる時も優雅を崩さず、包容力に溢れた人。
――もう一人の姉、ヴィクトリアスお姉様は活発な人だった。
常にはしゃいでいるが、それでいて〆る時は〆る、そんな人。
「ここのところ、元気がありませんわね」
イラストリアスお姉様が困った様に微笑む。
その表情にちょっと申し訳なさを感じる。
「何かあったの?ほらほら、この機会に喋っちゃいなさい」
「い、いえ……そんな大したことじゃ」
「何か抱えているのは一目瞭然ですわ。さぁ」
うう、こうして諭されているうちに喋りたくなってしまう……。
でも、自分でも分かっていないのに何をしゃべれと言うのか……。
「あら、そう言えばベルが居ませんね」
ふと、イラストリアスお姉様が溢す。
ベルと言うのは、ロイヤルネイビーに所属するメイド隊メイド長のベルファストの事だ。
「最近、ある任務に従事しているとは聞いていますけども」
任務の内容は聞いてない。
以前、重桜に潜入した作戦の延長らしいですけど。
重桜、か……一度行ってみたいと思っていた。
……決して、最近言い寄ってくるロイヤルの男性に嫌気がしたとかではなく。
自分の容姿が優れているのは理解しているし、ただでさえイラストリアス級は……所謂男性受けするのも承知している。
けど、見る人見る人が全員同じ反応されるのもいい加減飽き飽きしている。
この前なんて臨時で指揮を執った指揮官がセクハラしてきたものですから問答無用で爆撃しました。
もっとこう、奥ゆかしい男性は居ないものか……あら?もしかして男性の好みの話だった……?
「……もしかして、好みのタイプが見つからないとか?」
そしてこの手の話になると急に鋭くなるのがヴィクトリアスお姉様。
「い、いえ!?そんな事ありませんわ!」
「ああ……確か、直前の作戦で指揮官様にお尻を触られていましたね」
「あ、あれは……」
「ふふふ、アレくらい笑顔で受け流せなくては」
「はい……」
ああ、息苦しくなってきた……早く部屋に帰りたいですわ。
そんな風に過ごしていると、庭園に新たな人影が現れる。
「あら、ベルじゃない。久しぶりね」
「お久しぶりでございます、ヴィクトリアス様」
ベルファストが帰ってきた様だ。
……若干疲れている様子。
「ベル、任務の方はどうでしたか?」
「残念ながら」
「まぁ」
珍しくベルが任務を失敗したらしい。
「相手はどんな方でしたの?」
「軽空母が1、装甲空母が1、それと軽巡洋艦が1隻でした」
「変な編成ね。そんな少人数で何をしていたのかしら」
「何か、輸送部隊の護衛のようでしたね」
「輸送、ね……」
最近重桜が何か運んでいる、とは聞いていますけども。
「それで?接触は?」
「出来ました。ですが、どうも怯えられてしまったようで」
ベルが苦笑する。
怯えた、って何をしたのかしらこのメイド。
「ええ、その中に一人だけ人間の方がいらっしゃいまして」
「人間が?海上に?それはなぜ……?」
「彼が、今回の運び屋と言うことでしょうか」
ベルが一枚、写真を机の上に置く。
私達3人とも、その写真を見る。
「………………!!!」
「どうしたの?」
「え、い、いえ……」
写真を見た瞬間、私の身体に電流が奔る。
映っていたのは、黒髪の……少女。
しかし分かる。
髪が長いが背格好は男性のそれだと。
若干庇護欲を駆り立てる儚さを孕んだ幼い顔立ち。
……ぶっちゃけドストライクですわ。
「……ベル。この方とはまたお会いに?」
「はい。ロイヤルの上層部も荷物を気にしているご様子。近々有志を募り追撃を行う予定です」
決めた。
行こう。
「ではお伝えください。この不肖、フォーミダブルがお役に立つと」
「「え……?」」
後から聞いた話、この時の私は何か炎を背負っていたように見えたとか。
さぁ、首を洗って待ってなさい……。
「アカツキイサムさん、か」
今日は久しぶりに気分よく寝れそうですわ。
イサム、会っても無い変な奴に目を付けられる。