ロイヤルの女からは逃げられない。
本日も快晴。
俺とヒッパーさんは並走、その一歩後ろに隼鷹がいるいつものフォーメーション。
少し前方を偵察機が飛んでいる。
重桜を出て早2週間。
色んなことがあった。
もうすぐ、鉄血だ。
このまま、何も起こらないと良いんだけど。
「そう言えばあんた達、鉄血に着いたらどうするのよ」
ふと、ヒッパーが口を開く。
「どうするって、仕事終わったし帰るよ」
「はぁ!?アンタバカァ?何でわざわざ遠くまで来たのにすぐ帰らなきゃいけないのよ!」
「えっ、そんなのこれも仕事だからだよ。まだ重桜で待ってる人も居るんだ。休んでなんか居られないよ」
「な、何よあんた……真面目過ぎじゃない?」
「真面目に育っちゃったのよね……」
隼鷹がため息を吐いた。
「兎に角、やる事やったらちょっと案内してあげるわよ」
「ほんと?嬉しいな、外国なんて初めてだから」
「うっ……普通に素直に反応されるとそれはそれで困るじゃない……」
「?」
ヒッパーが何か呟いていたけど、よく聞こえなかった。
思えばこの時、俺は近付いてくる外国にちょっと浮ついていたのかも知れない。
「……イサム。まだ遠いけどロイヤルの偵察機」
「何だって?」
このタイミングで?
愛宕さんが言っていた事が的中か。
「……こっちに戦闘の意志は無いんだけどな」
「荷物について聞かれたら何も答えられないのよ。実力行使もあり得るわ」
「だよねー……」
さて、こちら側の手札は……ヒッパーは弾薬の補給もままならずぶっちゃけ戦力にならない。
なので完全に隼鷹頼りなのだ。
向こうは偵察機が居るって意味では確実に空母クラス。
何とか戦闘だけは回避したい。
「なるべく避けるルートを取ろう。隼鷹、艦載機はどの方面から来てる?」
「東よ」
「わかった。じゃあ西へ」
ルート変更。
ちょっとズレと遅れが生じるけど仕方ない。
俺達の輸送は保険の意味合いが強いから期限は無い。
多少遅れた所で問題は無い。
「……イサム。不明機が追従してくるわ」
「追ってきてる?」
「ええ。私の偵察機が戻る方向から位置を割り出すつもりね」
「偵察機の飛行可能時間、大丈夫?」
「ギリギリまで飛ばすけど、バレるのは時間の問題ね」
「……ヒッパー、全速で離脱する準備を。相手が空母なら俺達の足にはギリギリ追い付けないはず」
「随伴艦がいたらどうする気?流石に単騎はあり得ない。駆逐艦が居たらアウトだっての」
「その時は、その時だよ」
「呆れた。ひどい博打ね」
「君を助けた時よりは勝算があるから」
「……何よ。アタシを助ける為にそんな大博打したわけ?」
「?そうだけど……」
「!?あ、あっそ!!」
ヒッパーがそっぽを向いた。
博打はまずかったのかな。
「……イサムはそのままで良いのよ」
隼鷹が凄い生暖かい眼をしている。
なんか解せない。
その瞬間、唐突にトライクのエンジンが止まった。
「う、え、ぁぇ!?」
「イサム!?」
慣性も何もかもガン無視して急停止した。
前に俺だけ飛ばされなくて良かった。
トライクから手を話したら沈んでしまう。
「え、な、何?急に止まった?」
計器をチェックしても特に異常はない。
燃料も今朝追加したから満タンのはず。
「セイレーンか……?!」
「んなワケ……!ここは安全化された航路よ!」
「……拙い、ロイヤルのKAN-SEN、動き出したわ!ヒッパー、迎撃準備」
「迎撃ってったって!」
「じっとしてなさい」
その瞬間、二人の動きが止まった。
否、止められた。
「ごきげんよう、貴方が……アカツキイサムさんですね?」
あーあ、出会っちまった(震え声