なんか、どっと疲れた。
あの後隼鷹が索敵したが本当に帰ったらしい。
「何だったのよあの女」
尤もだ。
ヒッパーがため息をこぼす。
「主砲が撃てたら遠慮なくぶっ放してやったのに」
「……戦闘の意志は無かったんだし、機会も無かったと思うよ」
「アンタバカぁ?あのロイヤルよ?絶対何か仕掛けてたに違いないわ!」
「そうかな……」
……さっきから隼鷹が黙っている。
こういうとき、彼女は何を考えているのか。
大抵、解決策を模索しているか……何も出来なかった自分を責めている。
「隼鷹」
「………………」
「隼鷹ってば」
「………………」
「姉さん」
「………………何?」
普段は絶対に呼ばない呼び方。
小さい頃は、こう呼んでいたらしい。
「大丈夫だよ」
「……でも」
「今回も大丈夫だったんだ。だから、きっと大丈夫」
「……そうね。ごめんなさい。次はしっかりするから」
「うん」
これで、きっと大丈夫だ。
そんな様子を、ヒッパーが手で顔を扇ぎながら見ていた。
「何ここ。海の上なのに熱いわ。アンタ達兄妹にしては距離近過ぎよ」
「まぁ、血は繋がってないから」
「ヒトもKAN-SENもそんな物よ」
「アタシの妹達はそんなんじゃないけどね……むしろアタシの事完全にナメてるわ」
「ヒッパーの妹さん達か。きっと可愛いんだろうね」
「何でよ!」
「だって君可愛いし」
「なっ……!?!!何言ってんのよバカヘンタイスケベ!!」
「えぇ……?」
俺なんか変なこと言ったかな……。
「……」
「いてっ」
隼鷹が即頭部に手刀を入れてきた。
「何するのさ」
「お姉ちゃんちょっとそれはどうかと思う」
「何でさ」
そんなやり取りをしながら、次の中継地点に到着するのだった。
「あら、またお会いしましたわね」
………………聞いてない聞こえてない俺は何も見ていない。
なんか物凄い美人が部屋のテーブルで優雅に紅茶飲んでるなんて幻覚に違いない。
俺はそっとセーフハウスのドアを閉めた。
振り返ると、ヒッパーと隼鷹は目を閉じて手を組みなんか祈っていた。
え、これ開けなきゃ駄目?
外から鍵掛けて次の場所向かっちゃ駄目?
「夜の航海は死ぬほど危険よ」
開けなきゃ駄目かー……。
深呼吸。
息を吐き出し、一言。
「駄目だ、俺には出来ない……ッ!」
「さっさと開けなさいよ!!」
――――――――――
「こんばんは、イサムさん。お早い再会、嬉しく思いますわ」
どうも、イサムです。
何故か俺はフォーミダブルさんと相席してお茶を貰っています。
重桜のお茶とはまた風味も味も全然違う。
けどぶっちゃけ味なんて分からない。
背後にヒッパーが立っていて、隼鷹が警戒に出ている。
と言うか、何でこの場所がバレてるんだ?
「戦いは情報が命ですわ」
「俺は、戦ってるつもりは無いんだけどな……」
「あら、私にとってはこれも戦いですわ」
「どう言うことなの……」
「ふふ、お可愛いこと」
女性に言われても顔を顰めるセリフナンバーワンだと思う。
「それで、フォーミダブル、さん、でしたっけ。貴女は一体何の御用で?」
話す機会が訪れた、と言うのはある意味僥倖なのかもしれない。
こうしてお互いに意思疎通を測り相互理解を……。
「貴方にお会いしたかったから、なんて女性に言わせるおつもりですか?罪なお方」
相互理解、出来そうですか……?
「ちょっと何突っ伏してんのよ!」
「どうすればいいのこれ……」
「……分かんない」
助けて。
対面のフォーミダブルさんは意に介さずニコニコしている。
「えっと、何処かでお会いしたことが?」
「ありませんわ」
「えっ」
じゃあ何でこんなグイグイ来るんだ?
「こうして出会ってから親交を深めると言うのも、悪くないとは思いません事?」
「ま、まぁそうですけど」
袖振り合うも多生の縁、とは言うが。
「私、貴方に興味がありますので」
「……恐縮です」
拙い、段々向こうのペースに巻き込まれている。
その時、隼鷹が部屋に飛び込んできた。
「イサム、大変よ!ロイヤルの艦隊だわ!」
えっ、これヤバくない?
イサムくん、段々逃げ場が無くなっております。
果たして、彼は鉄血に辿り着けるのか。