多勢に無勢の予感がひしひしとする。
「な、なんだって……!?」
思わず立ち上がる。
艦隊規模って、こっちには戦力なんてまるで無いんだぞ?!
ここを放棄してすぐさま離脱しなくては……。
「ああ、ようやく追いついたのですね」
「貴女、やっぱり戦う気満々じゃないの……!これだからロイヤルの女は嫌いなのよ!」
隼鷹がフォーミダブルさんに掴みかかる。
フォーミダブルさんはその手をやんわりと退ける。
「だから、戦いに来たとは一言も言っておりませんの」
「何を世迷言を……!」
「彼女たちは、使用人ですわ」
「は……?」
「失礼します、フォーミダブル様。お待たせいたしました。ロイヤルメイド隊、到着いたしました」
「ひっ……」
もうやだ、声だけで身がすくむ。
もう顔を見なくても分かる。
速攻で立ち上がって走りだそうとした所を、手を掴まれた。
「ひぃ……!!!」
「お久しぶりです、アカツキイサム様」
にっこり、とメイド……ベルファストが微笑んでいる。
もう駄目だ、怖い。
「離しなさい!」
「あら」
隼鷹が間に割り込んでくる。
助かった……。
でもちょっと待って、メイドさん多くない?
「初めまして、タウン級第1グループ・サウサンプトン級軽巡洋艦2番艦のニューカッスルと申します」
「タウン級第1グループ・サウサンプトン級軽巡洋艦4番艦、グラスゴーよ」
二人の黒髪のメイドさんが優雅に礼をする。
ひええ、増えた……。
「この3人には少しここを綺麗にしてもらう予定なので」
「勝手に決めないでくれる?ここ、一応重桜の所有物よ」
「お気になさらず。帰る時には片付けますので」
「何なのよアンタ……こいつと荷物追ってたんじゃないの?」
「ええ、追いはしましたわ。でも、まだ私達は敵対しておりませんのよ?」
……そうだ。
この任務だってアズールレーン側がちょっと不穏だから重桜が結束のために始めた事。
「……信じて、良いんですね」
俺は、フォーミダブルさんに問う。
彼女はにこやかに微笑む。
「勿論ですわ」
――――――――――
セーフハウスの人口が3人から一気に7人になった為、若干手狭感が否めなくなった。
元々大人数で遠征していた時の施設なのでそれなりの広さはある。
……何もすることが無いので、トライクの整備を始めた。
海上を走っているから、錆が無いか念入りにチェックする。
もう少しの頑張りだ、頼むぞ相棒。
「イサム様、夕食の準備が整いました」
ガチャン。
思わず工具を取り落とした。
「大丈夫ですか?」
「あ、いや、その、えっと、あ、あはは」
スッと目の前で屈んで俺の手を取る。
凄まじい美人だし目の前で否応に強調される谷間に気を取られそうになるが、やっぱり怖い。
恐怖心が何より勝っている。
ベルファストさんは、眉を顰めた。
「……避けられて、当然。分かっておりますとも。ですが……謝罪を、させて頂けないでしょうか」
「……今日は、戦いに来た訳じゃない。分かってるんですけど」
「私めが貴方様に行った事を思えば当然かと」
「……」
「今宵は仮の主として……仕えさせては頂けないでしょうか」
じっ、とベルファストさんは俺を見る。
居心地が悪い。
けど、
「主は、ちょっと嫌だな」
「はぁ……?」
困った様に小首を傾げている。
俺は続けた。
「友人として、関係をやり直してくれませんか?」
「……申し訳ありませんでした。そして……ありがとうございます、イサム様……いえ、イサムさん」
何だかんだ、まだ敵対関係まで発展はしていないロイヤルと重桜。
国との関係は分からないけど、個々の間なら、分かり合うことは出来る。