この国の未来の為に、小さな勇気に報いるために。
重桜有志連合艦隊。
それは、最も可能性の低い保険だった。
メンタルキューブの総数が明らかに減り、負傷した艦隊が多く帰還していた為に急遽組み上げた。
用意されたメンタルキューブが最後の一つになり、かつ所持者の命に危機が迫った場合のみ発動する術式。
予め同意を得られたKAN-SEN、及び人材をその最後の一つを防衛する為に招集する。
正直、赤城はこれほど人が集まるとは思っていなかった。
この術式は仮に発動したとしても、要となる戦力を用意できなかった場合逆に返り討ちに合う可能性の高い代物だ。
ダメ元で長門に進言した際に、
「うむ、では我が旗艦を勤めよう」
……まさか、三笠が名乗りあげるとは予想外過ぎたのだ。
「何、このまま何もしないでいるのもいい加減飽いたのでな。それに……良き部下を育てているそうだな。これ程の愛国心、亡くすには惜しい」
面識は無い筈なのに、二つ返事で同意を得られてしまった。
三笠が名乗り上げた事はまたたく間に広がり、
「赤城様!補給班一同、アカツキ曹長の支援をさせて下さい!」
「赤城様!俺達輸送班も行きます!」
「センパイ、私も行きます!おねえちゃんですから!」
「ちょっと、翔鶴姉!怪我治ってないんだよ?!私も行くからね!」
「赤城、私も。イサムくんの為に、私もなにかしたいの」
「能代、艦隊に合流します」
「姉さま、私も行きます」
「重巡洋艦高雄、参加を希望する」
これ程までに、参加表明をされるとは。
彼の人望、思っていたよりも広がっていたのだろうか。
「あら、貴方は……」
「お久しぶりです」
物陰に、他の人物から見えない位置で壮年の男性が跪いていた。
確か、この男は狼と呼ばれていた……。
「狼殿。ご無沙汰ですね」
「ろいやるに探りを入れておりまして」
「ふふ、横文字に弱いのも相変わらずの様ですね」
「お恥ずかしい。して、何やら有志連合とやらを編成するご様子で」
「耳が早いのね」
「あの三笠殿が名乗りを上げるならば嫌でも耳に入りましょう」
「それもそうね。狼殿、イサムさんを助けてはくれませんか?」
「丘の上での戦いならばいいいざ知らず、海の上で忍に助力を仰ぐのは無理難題と言うもの」
「……そう言えば、そうね」
「しかしながら、こちらを」
狼から、赤城は包みを受け取る。
「これは……薬かしら」
「我が諜報班に伝わる秘薬、よろしく頼みます」
「ええ、確かに」
赤城はそれを袖口にしまう。
もう一度見やれば、気配は既に消えていた。
赤城は踵を返す。
(急がなくては……残り2つ、必ず奴らは動き出す……イサムさん、どうかご無事で……)
……誰かが、息を切らせて走ってきた。
「赤城!」
……肩を震わせ、全力で走ってきたと思しき出で立ち。
髪が乱れているのにも関わらず、赤城をじっと見つめていた。
「……大鳳」
「赤城、お願い、お願いします。大鳳を、私を、連れて行って!!」
「貴女……」
大鳳が、頭を下げている。
ぎゅっと唇を噛んで、自身のプライドなんて投げ捨てて。
「……一人でも多く戦力が欲しいの。足手まといになるなら海に捨てるわよ。支度して来なさい」
「……っ!ありがとうございます!!」
重桜有志連合艦隊、編成完結。
少年の繋いだ絆は、一つになった。