たんこぶを押さえての二件目の配送を受注する。
こちらも離島への配送だ。
中身は医療器具……車椅子や杖などの傷病者補助の機器のパーツだ。
離島に残る選択をしたのは、主に海を超えられないけが人、病人や高齢者だ。
なので、国は医師を派遣し駐留させているのが現状だ。
トライクの荷台にコンテナが2つどかっと吊るされる。
後輪を挟むようにして2つ吊るすのでバランスに関しては問題無い。
「よし」
「おうアカツキ。真面目だねぇお前」
「やぁ。どうしたんだい」
ぞろぞろと、同僚達の一団が帰ってきていた。
配送が終わったのだろう。
「配送が終わったとこだよ、こっちは。最近重桜の軍部が活発化してきて兵器需要が高まってるからな。俺達輸送班の面目躍如って事だ」
「……戦争、か」
「聞いてるぜアカツキ。お前の能力ならすぐ終わるのに兵器輸送だけは蹴ってるって話。勿体ねぇなぁお前!」
俺はトライクのエンジンをかけた。
この話の流れは、良くない。
肩を掴まれた。
「……なんだよ」
「なぁ、考えろって。そんなジジィの延命に使い潰されるよりもっと良い使い方があるだろ?お前、いつも言ってたよな?重桜の為に働きたいってさ」
「そうだよ。俺の答えは変わらない」
戦争は、嫌いだ。
俺自身が戦争孤児だったからなのかもしれない。
捨てられた理由なんてハッキリしてないけど。
それでも、誰かが血を流すのを黙ってみていたくはない。
「いい加減に―――」
「いい加減にするのはそなた達だ。騒がしいぞ」
その場に居た全員が、息を呑んで騒ぐのを止めた。
整備士すらも来訪車に視線を向けている。
……現れたのは、帯刀したKAN-SENだ。
長い黒の髪を一房にまとめ、KAN-SEN用の重桜海軍の軍服を纏った女性。
愛宕さんに似ている。
それは当たり前だ。
彼女は愛宕さんのお姉さんなんだから。
「高雄さん……」
「ああ。久しいな諸君。配送の発注に来た」
「は、はい!出れる奴はすぐに準備しろ!」
バタバタ、とさっきまで寄って来ていた人間が走り去る。
……残ったのは、俺と高雄さんだけ。
俺も、トライクに手をかけた。
「……アカツキイサム、だったか」
名前を呼ばれて、少し驚いた。
基本的にKAN-SENは自身を指揮する指揮官以外には関心が無いからだ。
隼鷹は指揮官を持っていないし、愛宕さんは指揮官より俺と接していた時間が長かったと言う例外はある。
長門様や赤城様も自身が指揮を執る立場にいるから、厳密な指揮官という存在を上に置いていない。
「……何でしょうか」
「いや、軍部でもそれなりに耳にする話でな。『海を走る運び屋』の話を」
異能揃いの重桜人の中でも割と地味に近い自分が、KAN-SEN達の耳に入っているのが少し驚きだ。
「まぁ、愛宕が世話になっているからな」
「ああ……」
「それと、何故軍事輸送だけ蹴っている」
「―――――――」
押し黙った。
それもそうだ。
彼女たちは揃いも揃って美人だが、本質は戦う為に生み出された兵器だ。
「重桜の男児として、どう思っている」
「……戦う事だけが、この国の為になる事じゃない。そう思ってるだけです」
「そなたは、そう思うか?」
「……バラバラの国土で集まった所で、勝てるわけ無い」
「弱気だな」
「なんとでも言ってください。それが俺の選ぶ道なので」
「邪魔をしたな。自らの選んだ道、悔いを残さず全うして見せてくれ」
「……そのつもりです」
高雄さんは去っていった。
「……KAN-SENとは言え、美人に弱気だって言われるのは堪えるなぁ」