それは、人と言うには鬼気を纏いすぎていた。
隼鷹のシルエットに炎が絶えず吹き上がっている。
瞳は赤く、爛々と輝いていた。
傷は一切癒えておらず、今にも倒れそうな歩み。
しかし、眼光だけは怨敵を討果さんと燃えている。
「敵は、アイツは、何処――――――ッ!!!」
声にならない叫び。
獣の様な咆哮が響き、隼鷹の背後から辛うじて艦載機の形をしている炎が飛ぶ。
「何なのです、アレは……」
「まさか、覚醒個体にゃ……?」
「明石、知っているの?」
「全然……赤城はコードGって知ってるかにゃ」
「あの、戦場に現れてはセイレーン、KAN-SEN問わず無差別に攻撃を行っているという」
「隼鷹は今、アレと同じ存在になりつつあるのかも知れにゃいのかも……」
二人が話している間にも、隼鷹は鬼神の如き苛烈な攻撃で周りに居るセイレーンを次々と沈めている。
……しかし。
「危なっ!?ちょっと隼鷹さん!?敵味方の区別もつかないんですか!?」
「翔鶴姉!前!前!」
……味方の事を一切考慮せず全力攻撃を行っている。
「……私は前線に戻ります。イサムさんのこと、頼みましたよ」
「「了解!」」
赤城様が船から飛び降りる。
「イサム、治療するぞ」
「酷い傷だ……兎に角、応急処置だけでも済ませるぞ!」
「隼鷹、駄目だ……!」
「駄目なのはお前だ馬鹿野郎!これ以上動くと死ぬぞ!」
「でも、このままじゃ隼鷹が……」
「赤城様達を信じろ。お前が先にどうにかなっちまったら俺達が隼鷹に殺されちまう」
「……分かった」
秘薬のお陰でさっきから意識を保っている。
何なんだあの薬。
切断面の消毒処置を受けつつ、ふと海を見ると……。
「げっ……!」
「どうしたイサム……拙いぞ!!退避、退避ーっ!!」
「セイレーンがこっちに向かってる!!」
「………………」
さっきの、人型のセイレーンがつまらなさそうな顔をしてすぐ近くにまで来ていた。
「覚醒……いえ、暴走ねこれじゃ。イレギュラーと言えばイレギュラーだけど」
砲塔がこちらを向く。
こいつ、俺達を撃つ気か――――!?
しかし、
「やらせないって言ってるっての――――――!!!!」
「!」
小柄な影が凄まじい速度で突っ込み、セイレーンにぶつかる。
「ヒッパー……!」
体当たりをぶちかましたのは、満身創痍のアドミラル·ヒッパーだった。
「何やってんのよ隼鷹!さっさとこいつぶっ飛ばしなさい!!」
「――――――!!!!!」
俺たちの乗る船の艦橋に、何かが降ってきた。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
閃光。
そして、遅れて凄まじい衝撃と音が鳴り響いた。