鉄血での入院生活は、慣れない土地と言うのもあってちょっと苦労した。
けれど、ヒッパ―のサポートの甲斐あって何とか過ごせている。
今日は、体のバランスが偏ってしまっているのでリハビリをしている。
少しでも早く自分の足で歩けるようにならなくては……。
「だいぶ歩けるようになったわね……」
「ぜぇ……ぜぇ……まだ、まだだよ……」
「ここまでにしましょ」
「まだ、行ける……」
「駄目よ、まだ体力戻ってないでしょ」
「でも、俺はっ……」
「駄目ったらダメだっての!大人しくしなさい」
ふらついたところをヒッパ―に支えられる。
……この生活が始まった時から、妙にヒッパ―からの当たりが柔らかくなっている。
以前のように罵倒されていないというか。
「ねぇ」
「何よ」
「何か、あったの」
「……………………何か、って」
ヒッパ―が唇を噛む。
「あったに、決まってるじゃない……!」
「ヒッパ―?」
「あんたは何で笑ってられるの……!?こんなにボロボロになって、腕まで無くなっちゃって!」
「ヒッパ―、落ち着いて」
「あんたは人間なのよ!?もう、戻らないのよ……!」
「ヒッパ―」
「私は、あんたの為に何も出来なかった……あんたは、命を賭けて私を助けてくれたのに!!」
「そんなこと無いよ。ヒッパーが居なかったら俺は死んでた」
「でも……!!」
「あんまり、自分を責めないでよ。俺も、君も生きてる。それで良いじゃないか」
気が付けば、ヒッパーの瞳からボロボロと涙が溢れている。
気丈だった彼女がここまで自分を責めていたなんて。
俺は、ヒッパーの頭を撫でて続けた。
「腕は無いけど、生きてる。生きてるなら生きていける」
「何よ、それ。意味わかんない」
「……実は、俺も」
「何よソレ!」
「あははは……ヒッパー」
「何」
「外、出れるようになったらさ。この国、案内してくれない?」
「……勿論」
――――――――――
「邪魔するわよ」
「げっ」
ノックもそこそこに病室に誰かが入って来た。
銀の髪に一筋赤いメッシュを入れた、すらっとした姿の美女だ。
ヒッパーと似た服を着ているから鉄血のKAN-SENなんだろう。
KAN-SENって皆美人だよなぁ。
「帰ってきたなら顔くらい出しても良くない?これでも心配してたのよ」
「わ、悪かったわね……」
「それで……ふーん?へぇ……」
「な、何でしょうか……」
KAN-SENの女性が俺の顔をジロジロ見ている。
値踏みされているみたいで居心地が悪い。
「この子が、ヒッパーがうわ言でずっと名前を読んでいた『イサム』ね?」
「んなぁっ!?ち、違うわよ!?」
「ヒッパー……?」
「違う!違うっての!!オイゲン!何しに来たのよ!!」
「別に?ヒッパーにも春が来たのかと思っただけよ」
「はっ、はははは春!?」
「そんなあからさまな反応しなくても良いのに。初めまして、国を繋いだ英雄さん。私はプリンツ·オイゲンよ」
いたずらっぽいウィンクしながら自己紹介。
「え、ああ、どうも?え?英雄ってそんな」
「うふふ、冗談よ」
「ええ……」
ん?プリンツ・オイゲンって確かヒッパ―の……
「ヒッパ―の妹さん?」
「……そうよ」
「へ、へぇ……」
思わずオイゲンさんを見てしまう。
……なんというか、色々大きいですね。
「フン!」
「いづっ!?」
わき腹に鈍い痛み。
その様子を見てオイゲンさんはにこにこしている。
「オイゲン、アンタただ重桜人が珍しいだけでしょ」
「どうかしらね。あ、この国は特にビールが美味しいわよ」
「お、俺まだ未成年なんで……」
「あら残念」
……凄いナチュラルにベッドに腰掛けられた。
「……そう言えば、前に病室飛び出て行った重桜の軽空母は戻ってきたのかしら?」
「え……?」
その質問が放たれた瞬間、ヒッパ―は固まった。
そして、俺はどうしてその考えに至らなかったのか己を恥じた。
「ねぇ、ヒッパ―」
「何」
「隼鷹は……?」
……この2週間。
一度も俺は隼鷹を見ていないのだ。
隼鷹、失踪。