イサムは、どうすることも出来ない。
「……重桜に、戻ったわ」
ヒッパーはそう答える。
「……それは、本当に?」
「ええ」
「………………」
重桜に帰った。
新たな任務か、それとも治療中なのか。
それでも。
「連絡は?」
「………………」
連絡は、無い。
それは本当に帰っただけなのか。
自慢じゃないけど隼鷹は連絡魔だ。
会えない日が多いとメールが隼鷹の物で埋まってしまう。
「……何か、あったんだね」
「気にしなくて良いわ」
「気にするよ。家族なんだから」
「人間とKAN-SENは家族にはなれないわ」
「知らないよそんなの。少なくとも家族と言っていいほど俺は隼鷹と過ごした」
「……ごめん、言い過ぎたわ」
「散々言われた事だよ。気にしてない」
会話が途切れる。
ヒッパーは真実を話す気は無さそうだ。
オイゲンさんは多分理由は知らないだろう。
なら、快復して自分の脚で確かめた方が良い。
「重桜と連絡って取れる?」
「……まだ無理。通信インフラが整ってないもの」
「重桜への行き来は?」
「赤城が敷いた術式があるけど……まだ上が一般使用を許可してない」
「俺が帰るのには使えない?」
「……まだ、無理」
「ヒッパー」
「お願い、イサム。休んで」
言葉に詰まった。
ヒッパーの顔は、今にも泣き出しそうなほど弱々しかった。
「お願い……」
「どうして……」
「こんな可愛い子にここまで言われて、貴方はまだ何か言うつもり?」
今まで黙っていたオイゲンさんが、ヒッパーの肩に手を起きながら続けた。
「私は完全に部外者だけど、貴方はどう見たって重症よ。少なくとも一ヶ月は居てもらわないと」
「………………」
明らかに、何かを隠している。
でも、今の俺には何もできない。
「……わかりました」
「ほら、ヒッパー。泣かないの」
「泣いてないっての!……その、ありがとう」
「あら。明日は槍の雨が降りそうね」
「なんですって!?」
ギャーギャーとヒッパーとオイゲンさんが騒ぎ始めた。
その様子に俺もすっかり毒気が抜かれ、苦笑するしかなかった。
「やっと笑ったわね」
「……おかげさまで」
「あーあ、からかいに来ただけだったのに。私も完全にグルじゃない」
「グルって何よ!」
「はいはい。アカツキ曹長」
改めて、オイゲンさんが真剣な顔つきになる。
「な、何ですか」
「明日、ビスマルクに会ってもらうわ」
「何よそれ、聞いてないわよ!」
「今言ったもの」
「オイゲン!!」
ビスマルク。
鉄血のKAN-SENの実質的なトップ。
そんな人が、俺に何の用だ……?
「返事は?」
「え?」
「返事よ、へ、ん、じ」
「は、はい」
「よろしい」
……オイゲンさん、姉に似て結構面倒見良いんだろうな。
次回、開発艦計画。
イサムの運んだ荷物が、どんな姿になるのだろうか。