イサムの荷物であった最後の1パーツが、組み込まれようとしている。
「入って」
ドア越しにそんな声が掛けられる。
ヒッパ―が車椅子を押す。
歩けるって言ったんだけど彼女は聞かなかった。
「失礼します」
ビスマルクさんの執務室は……赤城様の部屋とは何もかも違った。
というか執務室に畳を張っていた赤城様の方が変だったのかもしれないけれど。
「久しぶり。こっちの生活はどう?」
「ヒッパ―が良くしてくれています」
「そう」
「私は、外で待ってるから」
ヒッパ―は部屋の外へ出て行った。
手にした書類から視線を放さず、ビスマルクさんは続ける。
「開発艦計画についてはどの程度知っている?」
「対セイレーン用の決戦兵器、とは」
「自分で運んでいた荷物についてはちゃんと認識していたのね」
「仕事ですので」
「勤勉ね。まずは遠路はるばるご苦労様。荷物は貴方の物しか届かなかったけれど」
そう、俺の分だけ。
残りは奪われたか、破壊された。
それを再び指摘され……思わず、手を強く握っていた。
「ああ、すまない。別に恨み言を言うつもりではなかった。今や鉄血と重桜は同盟国だからな」
「え、ああ……はい」
「貴方をここへ呼んだのは礼と……実際に見せる為だ」
「……もう、完成を?」
「まさか。でもガワだけは出来ている。帰る前に顔だけでも見られるだろう」
「お気遣い痛み入ります」
「機密事項だが……貴方にはその権利がある」
「………………」
「……裸ではないぞ?」
「なっ、何でですか!?」
「残念そうに見えたから」
「違いますよ!!」
え、何そんな風に見られたの……?
「冗談だ。なんだか君は元気が無いと聞いていてな」
「あ、あはは……そうですか」
「それと」
手にした書類を置き、向き直る。
「アカツキイサム曹長。長きに渡る輸送任務、ご苦労様。貴方のお陰で鉄血は未来に進むことができる。代表として礼を言う」
「いえ、やるべきことをしたまでです」
「それでも、だ。貴方の献身を我々は忘れないだろう」
ビスマルクさんは立ち上がる。
「行きましょう。貴方の努力の結末へ。ヒッパ―」
「はいはい。いつまで待たせるんだっての」
「彼を開発ドックまで頼む」
「分かったわ」
ヒッパ―が俺の乗る車いすの取っ手を握る。
「さ、行くわよ」
「よろしく、ヒッパ―」
「あ、でも悪いけど目隠しはするわよ」
「え?ここまでしてなかったのに?」
「機密を見せはするけどそこまでの道は流石に見せられないっての」
「そっか……」
――――――――――
鉄血海軍、機密エリア。
室内は薄暗く、ここで勤務している人は目を悪くしそうだ。
その中心に、一本の柱が立っていた。
「これは……」
「重巡洋艦、ローンだ」
姿はよく見えない。
かろうじて一か所だけ窓が開いていて、顔だけが見えるようになっていた。
「……この子が」
「ああ。貴方が繋いだ命だ」
少女とも女性とも言えぬ中間的な顔立ち。
未だ眠りの中にあるのか、目は閉じられている。
「ここから出る日はそう遠くはない。いつか、会えるだろう」
「……はい」
ようこそ、ローン。
こんなボロボロな世界だけど。
この世界の為に、一緒に頑張ろう。
最終ヒロインの顔見せ回でした。
フリードリヒの方は出すかどうかちょっと迷っています。