アレから更に一週間が経ち……俺は重桜に帰ることになった。
鉄血での生活は大変だったが、ヒッパーやオイゲンさんのサポートでどうにか過ごす事は出来ていた。
まだまだ長い距離を歩くのは厳しいが、日常生活を過ごす分には支障がないほど回復した。
「……お世話になりました」
重桜に帰還する日。
鉄血と重桜間に開かれた転送用術式。
それは、鉄血側は無骨な金属の門として建てられていた。
まだ技術が発展途上で一度に大量の往来は厳しいと言う。
「寂しくなるわね」
オイゲンさんがいたずらっぽくウィンクする。
何やっても様になるなこの人は。
見送りに来ていたのは、ヒッパーとオイゲンと、ビスマルクさんだ。
「良かったわね、帰れて」
「うん。今までありがとうヒッパー」
「別に。大したことはしてないわ……でも、困ったら絶対呼んで。アンタの腕の代わりにしかなれないけど」
「充分だよ。ヒッパーには本当に世話になっちゃったね」
「ううん。本当はまだまだ足りないわ」
「勘弁してよ。お釣りが払いきれなくなっちゃう」
「……私が、一生掛けてでも償わないといけないの」
「ヒッパー。あんまり重いと嫌われちゃうわよ」
「少なくともアンタよりは軽いっての!!」
若干湿っぽくなったが、いつもの様にギャーギャーと騒ぐ二人。
それに苦笑を漏らす。
「全く」
「あ、あはは……」
「アカツキ曹長。もう少しこちらに滞在しても良いのだけれど」
「ご冗談を。まだ俺には仕事も残っています」
「勤勉を通り越して依存症ね、貴方は」
「ビスマルク、アンタが言えた口?で、ヒッパー?言わなくていいの?」
「えっ、な、ななな何を!?」
オイゲンさんに言われ、ヒッパーが更に真っ赤になって狼狽える。
「帰っちゃうわよ」
「………………言えないわよ」
「あっそ。一生後悔するわよ」
「後悔、か……帰ってきてからずっとよ、そんなの」
「ヒッパー?」
「……私の役目も終わったわ。帰っても元気でね」
「うん。ありがとう」
「時間だ」
パチン、とビスマルクさんが手にしていた懐中時計を閉じる。
……ゲートに波紋が浮かび上がり、誰かが出てきた。
「……ふぅ、やっぱり慣れないわねこれ」
……あれ?
「久しぶり、イサム君。迎えに来たわ」
……てっきり、
「イサム君?」
「あ、いえ。お久しぶりです、愛宕さん」
隼鷹が来ると、思っていたのに。
胸騒ぎがする。
あの時動かなかった事を後悔しそうな。
そんな胸騒ぎが。
「お世話になりました」
兎に角、帰ろう。
重桜へ。
「イサム君、髪切ったのね」
「……ええ。治療の時に」
「印象変わるわね」
「ヒッパーにも言われましたよ。隼鷹、怒るかな」
「……っ」
「愛宕さん?」
「……何でもない」
ゲートを抜ける。
そこは、懐かしい香りと、舞い散る桜。
そして、赤城様、能代、翔鶴さんが立っていた。
「おかえりなさい、イサムさん」
………………。
「アカツキイサム曹長、只今戻りました」
敬礼。
「赤城様」
「何でしょうか」
「隼鷹はどうしたんですか」
「……っ」
赤城様も、能代も翔鶴さんも、一瞬顔が引きつった。
「隼鷹、は……」
「……現在治療中ですよ」
この場に居なかった人の声。
「天城姉様……」
「お久しぶりです。天城様」
「先の戦闘の傷がまだ癒えていません。納得されまして?」
「……はい。面会は」
「ごめんなさい。面会謝絶なんです」
「そう、ですか……」
隼鷹には、会えない。
けど、
「私達だけでは、不満がお有りで?」
「そんな事ありません!嬉しいです、とても」
「……もう我慢できないっ!おかえりなさいイサム君!」
「うわっ!?」
翔鶴さんが飛び込んできた。
流石にバランスが取れないので一緒に倒れたのだった。