重桜に戻って、最初に受けたのは激励だった。
「イサム曹長に、敬礼!」
「う、わぁ……」
重桜海軍総出の出迎え。
見渡す限りの人とKAN-SENが俺に敬礼していた。
「お帰りイサム!」
「よくやった!」
「やっぱすげぇよ!」
「おつかれさん!」
かつての自分には投げられてこなかった言葉。
それらが今、自分に向けて発せられている。
「イサムさん、このあと重桜海軍のトップ……将軍と長門様との会談があります」
「え"っ」
「……どうかなさいました?」
「い、いえ……」
長門様と会う。
俺は、作戦前に長門様より下賜された短刀を失くしてしまっている。
非常に気不味い。
そんな心情を察される訳にも行かないので必死に言い訳を考えるのであった。
――――――――――
「うむ、長きに渡る任務ご苦労であった」
御簾に遮られ、シルエットだけの姿が見える。
長門様との面会は、大抵こんなやり取りだ。
喋り方に比べてとても幼い声。
姿を見たことがある人の証言では、そこらの駆逐艦と変わらぬ姿をしているとか。
ただ、それを言った奴の消息を俺は知らない。
「此度の功績を称え、アカツキイサム曹長にこれを」
長門様付の女官の方から何かを受け取る。
これは……。
「短刀、ですか」
ちょっと後ろめたく感じる。
「よく見てみると良い」
「え……あっ!」
この短刀、まさか任務前に受け取ったものじゃ。
「鉄血の者たちが気を利かせて回収してくれたものだ。今度は、落とすでないぞ?」
「はい……!ありがとうございます!」
ビスマルクさんに心の中で感謝を送る。
本当に、良い人たちばかりだ。
「他に何か欲しいものはあるか?」
ふと、そんな事を言われてしまった。
「な、長門様……お戯れを」
「何を言う赤城よ。アカツキ曹長はそれに見合う働きをした。ならば然るべき褒美を渡さねばな」
「長門様」
俺の願い。
そんなの決まっている。
「隼鷹に面会させてください」
……その瞬間、フロアから音が消えた。
「……長門様」
「アカツキ曹長、隼鷹は……」
赤城様が俺の肩を掴む。
かつてない程真剣な表情をしている。
「赤城よ」
「はい」
「話していないのだな?」
「はい……」
「……分かった」
「アカツキ曹長」
「は、はい」
「隼鷹は失踪した」
「は………………?」
「1週間前、修復が終わったのち……突然姿を消しました」
なん、だって……?
隼鷹が、失踪……?
「う、そ……」
「……申し訳ございません、イサムさん。真実を伝えなくて」
赤城様の謝罪も、長門様の言葉も、もう俺には届かなかった。
俺は、左腕と、家族の様に接していた幼馴染を失った。