【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

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第六十一話 宣戦布告再び

 

風が吹いた。

お互いに見つめ合い、無言。

 

永劫に思える瞬間が続く。

 

不意に、フォーミダブルさんが微笑んだ。

 

「……でしょう、ね」

「えっ……」

「貴方は心ここに在らずと言った所……こんな状況で言われても、こうなる事は分かっていましたわ」

「では、なぜ……」

「わたくし、負けず嫌いなの」

 

そう言って、呆然としていた俺の口の中にタコ焼きを突っ込んだ。

 

「熱っっ!?!?!?!?」

「隼鷹、でしょう?」

「っ!」

「彼女は行方を眩ませていると聞いています。そしてそれが……イサムさんの心に影を落としているのも」

「……未だに、信じられないんですよ」

「幼少の頃より過ごしているなら、猶更」

「……ありがとうございます」

 

いつの間にか、膝の上の食べ物はすべてなくなっていた。

フォーミダブルさんが口元を手拭紙で拭い、全て袋に詰めた。

 

「ふぅ。偶にはこういった食事と言うのも悪くありませんわ。また来るとしましょう」

「………………」

「イサムさん」

「え、は、はい」

「わたくしは負けず嫌いです」

「え、ええ。聞きました」

「貴方が隼鷹と過ごした時よりも濃密な歳月を送りたい、そう願っています。ですが」

 

立ち上がる。

フォーミダブルさんはとびっきりの笑顔でこう答えた。

 

「ライバルが居ないと張り合いがありませんの。次は、隼鷹が帰ってきたら改めてリベンジして差し上げますわ」

「……えっ!?」

「どうか、お覚悟を。ロイヤルレディは……手段を選びませんことよ?」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

日が落ちる。

無事に会合が終わり、重桜とロイヤルの同盟は結ばれた。

 

レッドアクシズとアズールレーンが手を取り合ったのだ。

 

夕陽が水面に落ちる様を眺めていた。

もう、俺に手伝えることはない。

 

……正直、重桜海軍を辞めることを考えなかったことはない。

 

今はまだ任務完了から日が経っておらず、俺の処遇がなぁなぁで済まされている。

本来は片腕を失くした人材を養っている暇など無いのに。

 

「さぼりですか」

 

背後から声を掛けられる。

何だか、以前にも似たような事を言われたのを思い出す。

 

「仕事が無いんだ」

「仕事中毒な貴方にはちょうどいいのかもしれませんね」

 

艶めく黒髪が風になびく。

能代だ。

 

「……何で木刀を持っているの?」

「知りませんでしたか?この神社、木刀が置いてあるんですよ」

「知ってるけど、何で」

「イサムさんが外国の女に不貞を働くかもしれませんので」

「酷いな!?」

「冗談です。はい」

「え、いやいや待って待って。俺は片腕しか無いって言ってるでしょ」

「そうやって言い訳ばかりしていると、腕が訛りますよ」

「無茶言わないでよ。俺は君たちじゃないんだ」

「……ごめんなさい」

「気にしてない」

「いや気にしてるじゃないですか」

「気にしてないってば」

「………………」

「………………」

 

お互いに黙ってしまった。

そして、

 

「「……ぷっ」」

 

二人同時に吹き出してしまった。

 

「何なんですか貴方は」

「君こそ何なんだよ」

「何なんでしょうね」

「……何なんだろうな……」

 

彼女も、俺を励まそうと不器用ながら声を掛けてくれたんだろう。

 

「ありがとう、能代」

「辞めてくださいよ……何だか気恥ずかしい」

「あはは、君らしい。じゃ、帰ろうか」

「そうですね。春先ですが、夜はまだまだ冷えますよ」

 

 

 

 

 

 

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