物騒な話だが今回に関しては互いに害意はない。
ヒッパーに鉄血の軍港を案内してもらっている最中。
ふと、視線を感じ振り返る。
「どうしたの?」
「いや……」
誰も居ない。
いや、人の往来はあるので語弊はある……が、誰も俺を気にする人がいないと言うのが正しいか。
「重桜人が珍しいだけじゃないの?」
「そうかな……」
「気にし過ぎではなくて?群青さん」
「えっ……」
ヒッパーの隣に、誰か立っていた。
黒のロングコートに、生地に負けないくらい黒い髪のKAN-SEN。
「アンタ、帰ってきてたの?」
「ええ、先程。逢瀬を邪魔するつもりは無かったけれど、有名人におめ通りをしようとね」
「お、逢瀬ってアンタねぇ!!」
「初めまして、群青。私は鉄血海軍のグラーフ・ツェッペリン級航空母艦B、ペーター·シュトラッサー」
「お初にお目にかかります。重桜海軍参謀直轄伝令のアカツキイサム准尉です」
お互いに握手する。
しかし、鉄血もまたきれいな人ばかりだ。
「ふん」
「いだっ!?」
ヒッパーにスネを蹴られた。
「それにしても……その義手、ちゃんと馴染んでいる様ね」
「ええ、お陰様で」
「私は何もしておらぬよ」
「義手……」
ヒッパーが、呟いた。
「ああ、うん。見てよヒッパー。左腕がまた動かせる様になったんだ。これでまた仕事に戻れる」
「アンタは……また海に出るのが怖くないの?」
「怖くないよ。俺の出来る唯一の事だから」
「でも、死ぬのは怖くないの!?あんなに痛い目に遭ったのに!」
「……怖い。けどね」
まっすぐに、ヒッパーの視線を受け止めて返した。
「合わなきゃいけない人が居るんだ」
伝えなきゃいけない言葉がある。
伝えられなかったら、死んでも死にきれない。
「彼の決意は硬いようだぞ、ヒッパー」
「うっさいっての!!」
ヒッパーはため息を一つ吐く。
「頑固なんだから」
「君ほどじゃない」
「なんですって!?」
「所で」
ペーターシュトラッサーさんが言葉を挟んだ。
「いつまでそこに居るつもりだ?」
誰も居ない脇道に、ペーターさんはそう投げかけた。
ゆらり、と人影が現れる。
「っ……!?」
彼女は、俺を見るなりとても穏やかに、にっこりと微笑んだ。
「アンタ、何でここに……!?」
ブロンドの髪に、鬼の角の様に取り付けられた頭の装置。
鉄血海軍のKAN-SENの装いそのままの少女がこちらに歩いてきた。
彼女は、何も言わない。
「君は……?」
「ずっと」
「?」
少女は呟く。
「ずっとずっと、会いたかった」
「え、え?」
「貴方に会える日を、ずっとずっと、ずっとずっとずっと待ち望んでいたの」
「そ、そうなの……?」
「ようやく、会えた」
気が付くと、少女はすぐ目の前に立っていた。
両手を広げて、俺を抱きしめる。
「な、え、ちょっと!?」
「大丈夫。今度は……私が守るから」
「ちょっと、離れなさいよ!!ローン!!」
「ローン……?」
思い出した。
この子は、俺が運んだキューブの中身。
「もう、貴方は誰にも傷付けさせないわ」
少女の目は、吸い込まれそうな程に透き通っていた。
開発艦、ローン登場。