青空の下で、小さな子供と……美しい女性が並んで座っていた。
『空の色が何色なのかって、そんなに大事なことなの?』
昔、隼鷹に言われたことをふと思い出した。
『うーん……そうね。イサムはこれから大事になるわ』
『そうなの?』
『ええ。例えば今、空を見てみて』
『星が綺麗だね』
『ええ。でもこの空はそれだけじゃないの』
隼鷹が指をさす。
『空にはね、色んな情報があるの。方角、天気、日付……海を往くのに大事な情報がたくさんある』
『そうなんだ』
『イサムも、いつか海に出る日がくるかも。その為に……色々教えてあげるね』
『うん』
――――――――――
「……夢か」
幼いころに隼鷹から聞かされた話。
まさか夢に見るなんてな……。
「隼鷹……」
君は、今どこに居るんだ?
「俺は、君の見ていた空が見たいよ……」
独りでに呟く。
そんな事を言った所で、状況は何も変わりはしない。
「……馬鹿野郎」
壁に頭を思いっきり打ちつけた。
額に生ぬるい感触。
「……顔を洗おう」
今は、俺に出来ることをするしか無いんだ。
決意はした。
けど、やっぱり……。
こん、こんこん。
「……?」
控えめなノックが2……いや、3回。
俺の部屋だろうか。
「はい……?」
ドアを開く。
「あ、やっぱり。ここだったのね。おはよう、イサム」
「……えっ」
「え、ちょっと、何で閉めるの!?」
俺はドアを閉めた。
いやいやいやいや。
「何でここに居るの!?」
「何でって、昨日からやってる各国の会議よ?鉄血も居るわ」
「けど!」
「でも!」
「あと俺今パンツとシャツだけなんだ!」
「気にしないわ!」
「俺がするんだって!!40秒待って!」
兎に角ドアから離れて壁に掛けてあった迷彩服……要するに作業服だ……を着る。
最近は海に出ないで陸で仕事する事が多い。
だから群青のレインスーツは着なくなった。
また配送の仕事受けないとなぁ……。
手早く居住まいを正す。
軍に入隊した時に、主に朝点呼前の2分3分で準備を整えて走るなんて日常茶飯事だったのでもうこの位朝飯前だ。
実際朝飯前だし。
え?間に合わなかった時?
……また部屋に戻されてベッドから起きる時からやり直しさせられたよ……。
「……お待たせ。そこに居られると凄い目立つから……取り合えず入って」
「お邪魔しまーす」
「……何でこんな所にまで来たんだ……ローンさん」
……ローン。
鉄血で生まれた開発艦。
未だ鉄血における最高機密と言うかそんな感じだった気がするんだけど。
「せっかく重桜まで来れたんですもの。イサム、会いたかったわ」
ローンが俺に向かって両手を広げる。
これ愛宕さんがよくやってるやつだ。
「……ごめん、俺朝飯はまだなんだ」
「そうなの?なら軽く何か作りましょうか」
「いや、食堂が閉まる」
実際閉まるまで結構余裕はある。
現在時刻は0630。
食堂の締め切りは0700だ。
「……ちなみに、ここに居ることは……その、ビスマルクさんは?」
「知らないわ」
「だよね!!」
気付きたくなかったけどさっきからめっちゃ携帯電話機が震えてる。
急いでてに取ると……受信履歴が30分の間に凄まじい数に。
全部赤城様からだ……。
嫌な予感しかしないけど、取るしかない。
「おはようございます、アカツキ准尉です」
『繋がった……!朝早く申し訳ありません、赤城です』
「はい。ご用件は……」
『ローンさんを知りませんか!?行方不明なのです!』
「ですよね……」
『……「ですよね」?イサムさん、まさか』
「そのまさかです……赤城様の執務室に案内すれば良いですか?」
『お願いします……』
「分かりました……」
何やってんだこの人ホント。
「ローンさん」
「さんは要らないわ」
「……ローンさん」
あ、ちょっと不機嫌になった。
でも俺も流石に機嫌が悪いんです。
「貴女を赤城様の場所へ案内します。理由はお分かりですね?」
「分からないわ」
「不法侵入と徘徊と命令違反です!!何言われるか分からないので覚悟の準備をしておいて下さいね!?」
朝からどっと疲れたのだった。
……もう寝たい。
しんみりする話にしようと思ったのにローンが暴走しました、申し訳ございません。