「来ましたね」
赤城様の執務室へ足を踏み入れる。
道中ずっと腕に絡みついているローンさん。
それを見て赤城様は眉を顰めた。
そして、
「……イサムさん?そちらの方は?」
びっくりするくらい冷たい声。
同じ部屋に居るフォーミダブルさんから発せられた声。
その背後に居るベルファストさんも冷ややかな目線を浴びせてきている。
自分に向けられた訳ではないけど身が竦む。
フォーミダブルさんは何処を吹く風だ。
「……ローン。勝手な行動をするなと言ったつもりなのだけれど」
「あら、何の事かしら。ちゃんと言ったわよ」
「許可、出してないわよ」
「そうだったかしら」
「……はぁー」
ビスマルクさんは凄まじい疲れた顔をしている。
「……それで?赤城。ユニオンは?」
「急遽欠席だそうよ。セイレーンとの戦闘が近いのかもね……イサムさん?手紙は」
「配送致しました」
「そう。なら良いでしょう」
恐らく前回ユニオンへ向かった際のエンタープライズさんの手紙だろう。
「さて、今回の訪問は各国への開発艦のデータの共有」
「ええ」
開発艦には未だ分かっていない部分がある。
今回の会合でそれを洗い出し開発艦の量産に漕ぎ着けるのが目的だ。
「……それで?何故この方はずっとイサムさんの腕にべったりと張り付いているのかしら」
フォーミダブルさんが遂に口を開いた。
「ふふ、別に良いわよねイサム」
「そろそろ離してください」
最近心に刻んだのは、嫌な事ははっきりと拒否することだ。
「別に良いわよね」
この人話聞いてくれない。
「大体イサムさんは休暇の筈では?」
「……ええ」
赤城様が不承不承と答える。
「赤城、部下の管理がなってないんじゃなくて?」
「休みだと知って押しかける方が常識が無いのではなくて?」
「「………………」」
にらみ合って押し黙ってしまった。
あの、同盟結んだんじゃないんですか。
「そこ、関係ない所で争わない」
「「ふん……」」
「あ、あはは……」
笑うしかなかった。
「イサムさん。今日はもうここまでで大丈夫です。残りの休暇を消化してきてくださいまし」
「は、はい」
「……イサムさんにも、そろそろ秘書を付けなきゃいけませんね」
「秘書ですか……?自分にはそんな」
「貴方、一応尉官なのですよ?」
「あー……」
肩書だけの様な物なのに。
「近々顔を出させますので、覚えておいてくださいね」
「はい、それでは失礼します」
「イサム、またあとでね」
「「「ローン!!!」」」
……休暇って消化ぜんぜん出来ないよね。
背中に感じる気温がどんどん下がっていくのをなんとか無視して部屋を出たのだった。
これが修羅場か……。