【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

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第七十八話 すれ違い

「イサムさん、お茶淹れてきますね」

 

樫野さんが机から立ち上がり、給湯室へ向かった。

 

「んっ……」

 

椅子に座りながら大きく伸びる。

背筋と肩からバキバキと音が鳴る。

 

……現在地は俺の執務室。

階級が上がり、赤城様付きの士官になって個室が与えられたのだ。

なお、部下は樫野さん一人。

 

作業内容は赤城様宛の文書の仕訳と……何故か補給物資管理。

これがまた曲者で毎日凄まじい量の書類が舞い込んでくる。

 

セイレーン艦隊が活発化している為、前線でかなりの規模の戦闘が勃発しているためだ。

 

「お待たせしました~」

「ありがとうございます」

 

樫野さんが盆に2つ湯呑を乗せて帰って来た。

もう熱いお茶が美味しい季節だ。

 

「ふぅ……」

 

一息入れる。

忙しくても遣り甲斐は感じる。

でも、こうして手が空いてしまうと思考は彼方へ行ってしまう。

 

(隼鷹……)

 

前線が激化している。

つまりそれは、隼鷹もそこで暴れている可能性があるという事。

 

「……イサムさん、また隼鷹さんの事を考えていますね」

「えっ……」

「顔に書いてありますよ。もう貴方の部下になってから結構経ちます……分かりますよ」

「すみません……」

 

うーん、考えない様にしてるんだけど。

赤城様から言い渡された任務がどうしても頭から離れない。

ようやく彼女に会うチャンスが巡って来たんだ。

 

「お仕事はしっかりこなせているのに、少しでも手が空くとずっと上の空。いつか大きなミスしちゃいますよ」

「あはは……気を付けます」

「その言葉ももう5回目です」

「え、あー……そうなんですか」

 

思っていたより重症かもしれない。

 

「……任務は3か月後。そんな調子じゃ大怪我しますよ」

 

大怪我、か。

大怪我で済めばいいけども。

 

「い、さ、む、さん!!」

「えっ、あ痛っ」

 

樫野さんに義手を叩かれた。

まだちょっと痛むんだよなぁここ。

 

「全く、こんな大怪我してるのに……」

「……すみません」

「謝るくらいなら直してください」

 

それもそうだ。

 

「……イサムさんは」

 

……ん?

 

「この任務……辞退する気は、ありませんか?」

 

………………何だって?

 

「何故、そんな事を?」

「だって、イサムさんは十分苦しみました。これ以上の困難に立ち向かう必要なんて……」

「樫野さん」

 

俺は、はっきりと断った。

 

「これは、俺がやらなきゃいけないと考えている事です。隼鷹に会って、伝えないといけない」

「隼鷹さんに、ですか……?」

「はい」

 

隼鷹に会って、俺は彼女に俺の想いを伝えなきゃいけない。

 

「……イサムさんは、隼鷹さんにどうしてほしいんですか……?」

「俺は……彼女の意志を、尊重してほしい」

「それは、隼鷹さんが戻ってこなくても構わない……と?」

「ええ」

 

隼鷹が戻ってこないというのが彼女の意志ならば、俺はそれを尊重したい。

例え、二度と会えないのだとしても。

 

「そう、ですか」

 

……樫野さんは、そう呟くと……今日1日、会話は無かった。

 

 

 

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