集められたのは輸送部門の隊員だけだが……。
ある日のこと。
輸送部隊の全隊員が重桜軍講堂に集められた。
「主任?一体何なんですこれ」
主任も居たので、声を掛けた。
誰も今回の件の事前情報を持っていないのかもしれない。
「おう、イサム。赤城様からのお達しだそうだ」
「赤城様の?」
とにかく、整列する。
誰かが息を呑んだ。
正面の壇上に誰かが登った。
ゾッとする様な人間離れした美貌と、目を引く耳と九つの尾。
彼岸花。
まさにそう形容するように相応しい美女。
彼女こそ重桜軍の幹部にしてKAN-SEN……一航戦、赤城。
「まずは急な呼び出しをしてしまった事をお詫びいたしますわ」
まるで心を鷲づかみにするような声音。
人を従えるカリスマを感じさせる、とはこういった事なのだろうか。
「今日、輸送部隊の皆様に集まって頂いたのは……この赤城から、依頼をする為です」
……講堂がざわめいた。
赤城様から直々の依頼?
一体ソレは何だろうか。
……やっぱり、兵器輸送なのだろうか。
如何に赤城様の依頼であろうと、俺のポリシーは変わらない。
自分自身疎まれているのは自覚している。
そろそろ、首を切られるかもしれ……。
「内容は、復興支援。これより、国土復興計画を発令します」
反応は、無い。
けど。
(国土復興……)
曰く、土地の記憶を持つ式神に素材を注ぎ込むことで形を成す……理屈はよく分からない。
けれど、
(重桜が、一つになる……)
国土復興。
つまり、この国がまた地続きになる。
繋がるのだ。
海の向こうで困っていた人達と。
……周りの人間達は難色を示していた。
どうしてKAN-SENがそんな事を。
開戦する手筈じゃ無かったのか。
俺達を良いように使うつもりなのか。
それら全てが、雑踏の様に俺の耳に入らなくなる。
(俺にできること……俺のしたいこと)
自然と、手を上げていた。
皆の視線が集中している事も気にならない。
「……貴方は?」
赤城様に、怪訝な声を掛けられた。
「やります」
「はい?」
「俺に、やらせてください!!」
―――――――――
それからの事は、よく覚えていない。
気が付いたら部屋に居た。
ベッドに腰掛けて、ずっと虚空を眺めていた。
「……イサム?」
「………………あ。隼鷹」
だから、隼鷹にも全く気が付かなかった。
「こんな時間まで灯りを点けないで、どうしたの?」
「えっ……わ、本当だ」
外は真っ暗。
今の季節でとっくに日没していた。
「聞いてよ隼鷹!俺、やりたい事が見付かったんだ!」
「……そう。おめでとう、イサム。私は応援するわ」
「ありがとう隼鷹!俺、頑張るよ!」
隼鷹は、優しく微笑んでいた。
国土復興計画。
セイレーンとの戦争で疲弊した重桜を一つにする……新たな戦争の前段階。
イサムは、それを知らない。