夜。
なんとなく寝付けなかったのでふらふらと外に出た。
夜風が気持ちいい。
なんとなくいつもの散歩コース……いつもの神社の方まで歩いていった。
「……イサム?」
背後から声が掛かったので振り返った。
「ヒッパーじゃん」
昼に見かけたその姿。
アドミラル·ヒッパーがそこに居た。
「何してるのさ、こんな所で」
「そっくりそのまま返すっての」
「俺は……まぁ、散歩?」
「じゃあ私も散歩」
「そうなの?」
「そうなの」
「そっか」
暫し無言になる。
お互いに並んでそのまま歩く。
気が付けば、いつもの神社まで来ていた。
「ねぇ、イサム」
「うん?」
立ち止まり、振り返る。
ヒッパーは、ずっと下を向いていた。
「……今から私、らしくない事を言う」
「え?」
「私が良いって言うまで……黙って聞いてて」
「……?分かった」
ヒッパーが深呼吸をし始める。
俺は黙ってその様子を見ていた。
数分して、ヒッパーが意を決した顔になり、口を開く。
「イサム……私、アンタのことが好き」
風が吹いた。
「え……」
「あのとき、身を呈して私を助けてくれたあの日から……ずっと、ずっと好きだった」
「そ、そうなの……?」
驚ろくしかなかった。
ヒッパーが?
俺を?
今まで気の置けない友人位にしか思っていなかったのに。
……指揮官じゃない俺を気にかけるとは微塵も思わなかった。
「………………返事」
「えっ?」
「返事は!!!!!」
叫ばれてしまった。
返事、か……。
そんなもの、決まっている。
「……ヒッパー」
ヒッパーは、目をぎゅっと閉じて俺の言葉を待っている。
……ごめん。
俺は今から、君の一番望まない答えを投げる。
「ごめん。その気持ちには応えられない」
「――――――え」
ヒッパーが目を見開いた。
「俺は指揮官じゃない」
「そ、そんなの関係ない!」
「……うん、そんなの関係ない。ただの建前。でも……君の気持ちには応えられない」
「なんで……」
「次の任務で、俺は死ぬかも知れないから」
「あ――――――」
……隼鷹の奪還任務。
それに志願し、生還率は五割。
そんな所に行くのに、ヒッパーの気持ちに応えられる訳がない。
「……もしかしたら、君を置いていってしまうかも知れない」
「か、関係ない!私だってイサムを守るっての!」
「ありがとうね、ヒッパー。でも」
隼鷹と会うまでは。
「決着がつくまでは、応えられない」
「………………何よ」
ぱたたっ、と地面に零れ落ちる。
「イサムのバカ!!知らない!!」
……そのまま、走り去って行ってしまった。
「……ごめん」
俺には、それしか言えなかった。