暫くして。
「あのさ、ヒッパー」
ふらついて立てなかった俺は、ヒッパーに寝かされた。
……何故か膝枕で。
「何よ」
「……助けてくれて、ありがとう」
「別に……」
顔を赤くして、ヒッパーはそっぽを向いた。
「来てくれると思ってなかった」
「フン……来ないわけ無いっての。惚れた男一人守れなくてKAN-SENやってられるかっての」
「あ……その」
「許してあげる」
「え?」
「今は、保留って事にしといてあげる」
「……分かった。絶対に帰ってくる」
「当たり前だっての!ローンに約束したくせに、私としないって言ったら私がアンタの腕へし折ってやる!」
何かすごい事言ってる。
怖いよ。
「……ねぇ」
「何?」
「私のこと、嫌い?」
「そんな事は無いよ」
「そう……じゃあ、好き?」
「……分からない」
「そこは好きって言えってのバカ」
「本当に、分からないんだ……誰かを好きになるって」
元々孤児で、親の愛情なんて知らなかったし。
愛し合う夫婦なんてのも見たことが無い。
だから、好きと言う気持ちも、愛と言う気持ちも分からない。
ただ……隼鷹や愛宕さん……ヒッパーが一緒に居てくれた時間は、何物にも変え難いと思ってる。
「でも、君と一緒に居た時間は……とても、楽しかった」
「……なら、許してあげる」
「ありがとう」
「絶対」
ヒッパーが真っ直ぐ俺を見る。
「絶対、絶対に、帰ってきなさいっての」
「……約束する。絶対に帰ってくる」
「待ってるから。いつまでも」
「うん……」
「死んだら、私がもっかい殺すから。絶対許さないから」
「うん……うん?」
ちょっと怖いってば。
「私は前線に出て、アンタを送り届けられるよう穴を開ける……私に出来るのは、そこまで」
「充分だよ……君は、他国のKAN-SENなのに入れ込み過ぎだよ」
「惚れた弱みよ」
「……ストレートだね」
「アンタが鈍感過ぎるんだっての。フォーミダブルとかベルファストとかも直球出来てるんだから」
「えっ、何で知ってるの??」
「………………」
ヒッパーが黙ってしまった。
だから怖いってば。
「とにかく!分かった!?」
「分かったよ……」
「そ。じゃ、迎えが来たみたいだから」
「え……あっ」
境内に赤い炎が吹き上がったかと思えば、燃えるような闘志を瞳に宿した赤城様が現れた。
慌てて立ち上がり敬礼した。
「イサムさん!」
「あ、えっと……こんばぶへっ!?」
思いっ切りビンタされた。
「毎回毎回夜間に出歩いて面倒事に巻き込まれて何で懲りないんですの貴方は!!!!」
「も、申し訳ありません……」
それに関しては本当に返す言葉もない。
「……見せてください」
右腕と義手を掴まれて袖を捲られた。
生身の右手首に、ローンさんの掌の跡がくっきりと残ってしまっている。
左腕の義手はフレームが歪んだのか動きがぎこちない。
「はぁ……この損害、どう上げれば……」
「申し訳ありません……」
「とにかく……」
赤城様の表情が柔らかくなる。
そのまま手を背中に回され、抱き締められた。
「無事で、良かったです」
「……申し訳、ありませんでした」
「ったく。さっさと帰れっての」
「貴女も、ありがとうございました」
「別に。私も用が済んだから帰るわ」
「……貴女なら、いつでも重桜に歓迎しますよ」
「えっ……って!何言ってんだっての!鉄血に連れてくに決まってんじゃない!」
「………………まぁ、良いでしょう」
「ちょっと赤城様!?」
何言い出すのこの人。