【完結】レッドアクシズ・ストランディング   作:塊ロック

88 / 88
最終回 約束

 

穏やかな日差しの中、狐耳の女性が小さな女の子を抱き歩いていた。

 

「ごめんください」

 

ある一軒家に辿り着く。

玄関で一言。

家の中からドタドタと走る音がする。

 

「いらっしゃ……」

 

5,6歳くらいの活発な印象の男の子が、女性の姿を見て固まってしまった。

 

「あらあら……お家の方はいらっしゃいますか?」

「え、えと……お母さーん!」

「はいはい……あら、いらっしゃいませ赤城様」

 

母親と思しき女性が、狐耳の女性……KAN-SEN赤城にそう告げる。

 

「おじいちゃん、起こしてきて」

 

母親が少年にそう告げると、少年は頷いて走っていった。

 

「元気なお子さんですね」

「ええ、主人の若い頃にそっくり」

「失礼します」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

赤城は、通された部屋に入る。

海と軍港がよく見える立地だった。

大きな窓に向かって、安楽椅子に腰掛ける老人が静かに海を見ていた。

 

「お久しぶりです、イサム1尉」

「……お久しぶりです、赤城様」

 

イサムと呼ばれた老人は、力なく微笑んだ。

……左腕のある場所は、今は何もなかった。

 

「おや……そちらの子は?」

「次代の『赤城』です」

「そうですか……」

 

赤城の隣に座る女の子も、また赤城だった。

セイレーンとの戦いが終結し……長い時が経った。

生き残ったKAN-SEN達は、生物として再調整を受け寿命を設定された。

 

「私も……長く生きました」

「それはお互い様です……と言うことは、そろそろですか」

「……そうなります」

「まさか、私の方が貴方より長生きするとは……」

「ええ……懐かしいですね、あの頃は……」

「つい昨日のように、鮮明に思い出せますとも……あの日、貴女の発案した作戦に参加したことを」

 

イサムは、ふとドアの隙間からこちらを伺う視線に気付く。

 

「入ってきなさい」

「え、あ……う……失礼します……」

「お孫さんで?」

「ええ……元気な子です。この通り美人の前で緊張して固まってますが」

「お、おじいちゃん……」

「相変わらず口が達者ですね。私、こう見えても80過ぎのおばあちゃんなんですよ」

 

赤城がそう言って微笑むと、少年は目を丸くした。

その隣で、『赤城』が退屈そうに欠伸をしていた。

 

「お嬢さんが退屈してらっしゃる。どれ、遊び相手になってやりなさい」

「え……?うん」

 

少年が『赤城』の前に来て、手を差し出した。

 

「来る?」

「……うん」

 

少女が手を取り、少年と共に部屋を出ていった。

 

「微笑ましいですわね」

「ええ」

 

赤城が出されたお茶に口をつける。

 

「……隼鷹は、まだ」

「そうでしょうね……」

「イサムさん。まだ……待っているんですね」

「約束、しましたから」

「まだ、諦めて居なかったのですね」

「私の諦めの悪さは、貴方ならよくご存知のはずです」

「ええ、全く。貴方は昔から諦めの悪い手のかかる部下でした。こちらが休めと言わないと休みを取らない仕事中毒者で……とても頭を悩ませました」

「あの時ご馳走になったおでん、美味しかったですよ」

「うふふ……旦那様のお墨付きでしてよ」

 

きらり、と赤城の左手の薬指のリングが、鈍く輝いていた。

 

「それは何より。大将殿は?」

「まだまだ元気ですよ。羨ましい限りですわ」

「そうですか……」

「イサムさん」

 

赤城の声音が変わる。

 

「そろそろ、貴方も限界でしょう」

「……相変わらず、赤城様は何でも見通す方だ」

「昔から無茶ばかりして……この歳まで生きていられたのが奇跡でしょうに……」

「ええ……医師の話では……今年は越えられないでしょう」

「……貴方のほうが、先に行くではありませんか」

「赤城様……先立つ不幸を、お許しください」

「本当に……最後まで」

「貴女は……私の、本当の母親の様でした」

「……そう言ってもらえて、私も幸せです」

 

2人で、窓の外を見る。

西日が、強くなってきた。

 

「……そろそろ、お暇しますわ」

「ええ……今日は、ありがとうございました」

「こちらこそ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

夜。

 

私は不思議と目が覚めて……窓の外……海を見る。

 

誰もが寝静まった筈の家の中で、足音がする。

ゆっくりと、この部屋に向かってくる。

 

誰も起きているはずはない時間。

不思議と恐怖は無かった。

 

確信が、あるから。

 

静かに部屋の扉が開かれる。

 

私……俺は、一言だけ……何とか発する事が出来た。

 

 

 

「……やぁ、おかえり」

 

 

 

 

「……ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッドアクシズ·ストランディング ―完―

 




いつの間にか、デススト2も発表されて、アズールレーンも設定が複雑になっていきました。

長く更新していませんでしたが、今回一念発起してなんとかエンドマークを付けることが出来ました。

創作活動することが苦しくなり、放置して居ましたがやっぱり頭の片隅に未完があると気になってしまい駆け足でしたが完結するに至りました。

お見苦しい点がいくつかあったとは思いますが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(必須:10文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

貞操観念逆転世界の空戦騎士(作者:らいらいてー)(オリジナル:ファンタジー/戦記)

元は戦闘機パイロットだった主人公が転生先で天馬を乗り回して色々な人の脳を焼いたり敵エースと戦ったりする物語です。▼ジェネリックエー〇コンバットです、はい。▼


総合評価:318/評価:8.1/連載:20話/更新日時:2026年11月05日(木) 18:30 小説情報

監察官のちょっと奇妙な冒険(作者:プロメイア推しの人)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

オリ主が転生して、赫灼熱拳するお話です。▼ストーリーは2.7から始めま~す。ん?まぁ、途中からにょきっと生えてくる感じで。(それでも過去キャラと絡みがあるのは許してちょ)


総合評価:1093/評価:8.24/連載:10話/更新日時:2026年06月23日(火) 16:25 小説情報

朝起きたら隣にヴェリナがいた(作者:ぼっちプレイヤー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ ヴェリナさんの新密度イベでこれ同人誌の導入では?となってから勢いで書いた。▼ オリ主×ヴェリナなのでアキカプ推しのプロキシは閲覧注意なのだ。


総合評価:1869/評価:8.48/連載:6話/更新日時:2026年09月03日(木) 20:00 小説情報

起きたら超絶美少女が嫁になっていた件(作者:理 想 な ん か ね ぇ よ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼タイトルのまんまです▼深夜テンションで書いたから続くかは未定▼記憶喪失のオリ主が死ぬほどゼンゼロキャラを曇らせていた話▼追記、リメイクします


総合評価:2009/評価:8.03/未完:6話/更新日時:2026年08月31日(月) 22:22 小説情報

FPSのUIが現実に見える俺が、いつの間にか殺し屋になるまで(作者:鳥獣跋扈)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

大学を出てから定職にも就けず、倉庫仕事とFPSゲームばかりの生活を続けていた青年・二階堂 恒一(にかいどう こういち)。▼彼の人生は、ある日を境におかしくなった。▼ゲームを終え、ふと顔を上げた瞬間――現実の世界に、FPSのHUDのような感覚情報が重なって見えるようになったのだ。▼他人の視線や足音の方向。▼危険が向かってくるアラート。▼――そして、銃を持った時…


総合評価:48134/評価:9.17/連載:77話/更新日時:2026年11月07日(土) 19:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>