穏やかな日差しの中、狐耳の女性が小さな女の子を抱き歩いていた。
「ごめんください」
ある一軒家に辿り着く。
玄関で一言。
家の中からドタドタと走る音がする。
「いらっしゃ……」
5,6歳くらいの活発な印象の男の子が、女性の姿を見て固まってしまった。
「あらあら……お家の方はいらっしゃいますか?」
「え、えと……お母さーん!」
「はいはい……あら、いらっしゃいませ赤城様」
母親と思しき女性が、狐耳の女性……KAN-SEN赤城にそう告げる。
「おじいちゃん、起こしてきて」
母親が少年にそう告げると、少年は頷いて走っていった。
「元気なお子さんですね」
「ええ、主人の若い頃にそっくり」
「失礼します」
――――――――――
赤城は、通された部屋に入る。
海と軍港がよく見える立地だった。
大きな窓に向かって、安楽椅子に腰掛ける老人が静かに海を見ていた。
「お久しぶりです、イサム1尉」
「……お久しぶりです、赤城様」
イサムと呼ばれた老人は、力なく微笑んだ。
……左腕のある場所は、今は何もなかった。
「おや……そちらの子は?」
「次代の『赤城』です」
「そうですか……」
赤城の隣に座る女の子も、また赤城だった。
セイレーンとの戦いが終結し……長い時が経った。
生き残ったKAN-SEN達は、生物として再調整を受け寿命を設定された。
「私も……長く生きました」
「それはお互い様です……と言うことは、そろそろですか」
「……そうなります」
「まさか、私の方が貴方より長生きするとは……」
「ええ……懐かしいですね、あの頃は……」
「つい昨日のように、鮮明に思い出せますとも……あの日、貴女の発案した作戦に参加したことを」
イサムは、ふとドアの隙間からこちらを伺う視線に気付く。
「入ってきなさい」
「え、あ……う……失礼します……」
「お孫さんで?」
「ええ……元気な子です。この通り美人の前で緊張して固まってますが」
「お、おじいちゃん……」
「相変わらず口が達者ですね。私、こう見えても80過ぎのおばあちゃんなんですよ」
赤城がそう言って微笑むと、少年は目を丸くした。
その隣で、『赤城』が退屈そうに欠伸をしていた。
「お嬢さんが退屈してらっしゃる。どれ、遊び相手になってやりなさい」
「え……?うん」
少年が『赤城』の前に来て、手を差し出した。
「来る?」
「……うん」
少女が手を取り、少年と共に部屋を出ていった。
「微笑ましいですわね」
「ええ」
赤城が出されたお茶に口をつける。
「……隼鷹は、まだ」
「そうでしょうね……」
「イサムさん。まだ……待っているんですね」
「約束、しましたから」
「まだ、諦めて居なかったのですね」
「私の諦めの悪さは、貴方ならよくご存知のはずです」
「ええ、全く。貴方は昔から諦めの悪い手のかかる部下でした。こちらが休めと言わないと休みを取らない仕事中毒者で……とても頭を悩ませました」
「あの時ご馳走になったおでん、美味しかったですよ」
「うふふ……旦那様のお墨付きでしてよ」
きらり、と赤城の左手の薬指のリングが、鈍く輝いていた。
「それは何より。大将殿は?」
「まだまだ元気ですよ。羨ましい限りですわ」
「そうですか……」
「イサムさん」
赤城の声音が変わる。
「そろそろ、貴方も限界でしょう」
「……相変わらず、赤城様は何でも見通す方だ」
「昔から無茶ばかりして……この歳まで生きていられたのが奇跡でしょうに……」
「ええ……医師の話では……今年は越えられないでしょう」
「……貴方のほうが、先に行くではありませんか」
「赤城様……先立つ不幸を、お許しください」
「本当に……最後まで」
「貴女は……私の、本当の母親の様でした」
「……そう言ってもらえて、私も幸せです」
2人で、窓の外を見る。
西日が、強くなってきた。
「……そろそろ、お暇しますわ」
「ええ……今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ」
――――――――――
夜。
私は不思議と目が覚めて……窓の外……海を見る。
誰もが寝静まった筈の家の中で、足音がする。
ゆっくりと、この部屋に向かってくる。
誰も起きているはずはない時間。
不思議と恐怖は無かった。
確信が、あるから。
静かに部屋の扉が開かれる。
私……俺は、一言だけ……何とか発する事が出来た。
「……やぁ、おかえり」
「……ただいま」
レッドアクシズ·ストランディング ―完―
いつの間にか、デススト2も発表されて、アズールレーンも設定が複雑になっていきました。
長く更新していませんでしたが、今回一念発起してなんとかエンドマークを付けることが出来ました。
創作活動することが苦しくなり、放置して居ましたがやっぱり頭の片隅に未完があると気になってしまい駆け足でしたが完結するに至りました。
お見苦しい点がいくつかあったとは思いますが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。