機動戦士ガンダムRTA ジオン特殊部隊ルート 機体縛りチャート 作:ラスト・ダンサー
気付けば投稿より1年……全く進んでねぇ!(自業自得)
これも稲作してたりナイトシティに観光に行ったせいに違いないです。
今回はうすあじだった本編の地の文付きパートになります。
日光が容赦なく照りつける広野。そこを砂埃をたてながら1つ目の巨人の群れが往く。
褪せたような色合いのグリーンに塗装されたそれらは、僅か数ヵ月で地上の大半を制圧したジオン公国が誇る人型機動兵器、ザクⅡである。
先頭のザクは暗いグレーの落ち着いた塗装が施されており、パーソナルカラーの使用を許されたエースであることは一目瞭然であった。隊長機の特徴でもあるブレードアンテナが取り付けられたそれは、特殊部隊ブリュンヒルデ隊の隊長、ホルス・モーガンの乗機だ。
地上に降りてから半年。当初の予定を大幅に超過しつつも継続されているジオン独立戦争であったが、初戦の快進撃はなんだったのかと思うような停滞感に包まれていた。伸びきった補給線と中弛みによる一部の兵達の士気低下。先行きの不透明感の拭えない不穏な情勢下に彼らはあった。
最近ではとうとう試作機と思われる連邦製MSが登場し、連邦軍の一大攻勢も間近ではないかと噂され始めた頃に、ブリュンヒルデ隊は異形のMSの目撃報告を受け、遭遇したという連邦軍との干渉地帯に程近い荒野へと調査に赴いていた。
「いよいよ連邦のMSとやらが出てきたってことかお。散々やった対MS訓練は本当に役に立つのかお?」
不安げな顔でぼやくのはやや小柄な色白小太りの男、ヤルオである。半年前にノーロックでのミサイル直撃を受け、PTSDになりかけたが、隊長とその他隊員の熱心なカウンセリングと地獄のような特訓により、余計なことを考える暇を無くすというある意味精神病の最適解のような方法でそれを回避することに成功した。
これ以上部隊に精神疾患持ちはいらん、と頬を痩けさせた隊長の呟きがやけに耳に残ったヤルオだったが、それ以上聞くと面倒そうだとミノフスキー粒子影響下でも問題なく作動する生来の厄介事センサーの反応に従いスルーした。
実を言うと対MSの実戦は初ではない。連邦軍に鹵獲されたザクを相手の戦闘を何度か経験しており、ヤルオも2機の撃墜記録を残している。まぁ自軍の機体を破壊したという点を見るとあまりよろしくない気もするが、ともかく戦闘における童貞は卒業していた。股間の息子は童貞のままだったが。
『各機、周辺警戒を厳にせよ。まもなく目撃報告のあった座標だ』
先頭を進んでいたグレーのザクより通信が響く。パッと見はただのザクに見えるが、よくよく見ると細部がかなり違う。統合なんちゃら計画というもののお陰でヤルオ達のザクは試験的に改良されており、お陰で間もなく正式にロールアウトされるという白兵戦特化機、グフにこそやや劣るがカタログスペック上の性能は通常のザクよりはかなり高いらしい。
そんなことより、いよいよ敵がいるかもしれないエリアである。大小の岩山が並ぶやや見通しの悪い場所だ。岩影から敵機が飛び出してこないかとヒヤヒヤしつつ、ザクのモノアイをしきりに動かしながら進んでいく。件の目撃報告の機体についてだが、生還者によると手が大量に生えた蜘蛛のような見た目の機体なんだとか。ふと脳内に整備班のマッドエンジニア共が思い浮かび、あんな感じのヤベーヤツが開発した機体なんだろうかと思いを馳せていると、甲高い警報音と共に通信機から怒鳴り声が響く。
『高熱源体接近!やっこさん正面から仕掛けてきた!』
『ウェポンズフリー。交戦に入る。目視したら迷わず撃て』
ユリウス軍曹の機体はミノフスキー粒子影響下でも比較的有効な特殊音響センサーや熱探知システムを搭載しており、それに敵機がかかったらしい。とは言え、その探知システムも戦艦に積んであるような物とは違い、MS用にダウンサイジングしていった結果、重量の問題から性能はある程度妥協したものとなっている。ということは探知範囲の関係からそれほど接敵までの猶予はないということだ。即座に意識を切り替え、カメラを注視する。姿は見えないが確実に近くにいるはず。
『上……!』
真っ先に動いたのはスルーズ機。MMP80マシンガンを掃射し、敵機を牽制する。しかしそれをものともせず、装甲でそれらを受け止めながらこちらに突っ込んできたのは異形としか言い様のない機体だった。背部から無数に突き出した腕。目撃報告通り蜘蛛のような複眼をした頭部。こいつは本当にMSなのかと疑いたくなるようなゲテモノっぷりだった。本体のMS部分が装備しているビームライフルとシールドが浮いて見えるようだ。
『白い奴……ガンダムとかいう奴の同型か?マジで蜘蛛みたいだな!?』
『スルーズ曹長はそのまま牽制射。撃ち切っていい。各機、フォーメーション
『あいよ。早めに頼むぜ新人コンビさんよぉ。おじさん歳だからあんまり長く抑える自信ないわ!』
『急げよ……!』
どんな状況だろうとほとんど声を荒げることのなかった隊長が珍しく語尾を強める。ほんの些細な変化ではあるが、それだけ目の前の蜘蛛野郎がヤバい奴であるという証拠だ。
蜘蛛野郎はスルーズ曹長のフルオート射撃に少し怯むような動きをしたが、装甲に煤がついた程度で全く有効射が認められない。隊長が敵の注意を引き付けるために突撃したのを傍目に、散々鍛えられたブーストジャンプ移動を駆使して側面へ抜ける。
隊長の機体に敵の多腕から繰り出される攻撃が殺到するが、隊長の機体は身動ぎ程度の僅かな動作で敵の攻撃をすり抜け、マシンガンをバラ撒きながら一歩、二歩、と摺り足で僅かに距離を開ける。格闘攻撃をするにはアームが僅かに届かず、射撃をするには近過ぎる。そんな相手の嫌がる絶妙な間合いに張り付く隊長のザクはさぞ鬱陶しいに違いない。ビームライフルが掠めるようなギリギリの避け方など出来ないし真似もしたくないが。
バズーカに迫るような大きさの試作型カノンライフルを背部のマウントから展開し、ザクに構えさせる。ずんぐりむっくりなこのライフルは、遠距離からの狙撃ではなく中距離からの支援射撃を目的としたバトルライフルに近い装備だ。フルオート機構の実装に難儀しているらしいが、試射の際の感想としてはセミオート射撃でも砲の跳ね上がりをザクでは制御出来ていない節があるため、いっそのことダブデに積んで固定砲台にしたらどうかと思うような代物だ。
『狙いは大雑把に、どこかに当たればいいという感じで撃ちまくれ』とはユリウス軍曹の言だが、そも一射ごとに砲身が明後日の方向にブレるような代物をどうやって連射しろというのか。『不安定さがないと逆に歩けなくなる』と言われるレベルで不安定な二足歩行という方式を採用しているザクにこのような代物を立射で制御するのは困難だ。ザクの足をもう2本増やすか、大人しくザクを這いつくばらせて伏射するしかない。
『閃光弾を撃て!』
無線機から隊長の珍しく切羽詰まったような大声が響く。閃光弾とはMMP80マシンガンの下部に付けるオプション装備である多目的ランチャーから撃ち出される、特殊弾頭の1つだ。予め対策を施してある我が隊のザクなら、多少眩しい程度で済むが、未対策で食らうとメインカメラの画像処理が一時追い付かなくなり、数秒ではあるがこちらを見失うことになる。
さすがの隊長もあの多腕による攻撃に完璧には対応しきれないようで、ユリウス軍曹に敵の隙を作るように指示したらしい。これも噂に聞く連邦製のMSの性能故か。その僅かな隙を利用し、隊長のザクがスラスターを吹かしながら後方に飛び退く。それと同時に鋭い爪の付いたアームが寸前まで隊長のザクの居た辺りを貫き、射撃武装を構えたアームがワンテンポ遅れながらも下がった隊長のザクへ正確無比に射撃を加える。2度のバックステップによる回避でなければ蜂の巣になっていたようなギリギリの攻防だ。
『やっこさん復帰が速すぎる!閃光による目潰しは想定済みってか!?冗談キツイぜ!!』
『効いていない訳ではない。フォーメーション
フォーメーション
単純だが囮役となるポジションは挟撃の準備が整うまでの時間をなるべく稼ぐために、敵の攻撃を引き付けながら可能な限りゆっくりと後退することが求められる。ぶっちゃけこのポジションに付かされるのは、蜂の巣になって来いと言われるのと大差ない。驚異的なまでの回避技能を持つモーガン機だからこそ可能な役割だ。
蜘蛛野郎は太い脚部を開いて多脚形態に変形し、展開された補助脚をバネのように伸縮させて飛蝗のように跳び跳ねたり、蜘蛛のようにカサカサと走ることでモーガンのザクを追いかける。それを見て『キモッ』と呟きながら、隊長が事前に指定した挟撃ポイントにて待ち受けていたヤルオは、伏射姿勢を取らせたザクに試作カノンライフルを連射させた。
腹の奥が浮き上がるような爆音と遅れて発生する耳鳴りのような金属音に顔をしかめながら、ヤルオはカノンライフルを撃ちまくる。蜘蛛野郎もさすがに艦砲クラスの砲撃が直撃するのは不味いのか、シールドを構えながら回避行動を取らざるを得ないようで追撃が止まる。
『隙を与えないように攻撃を絶やすな!アスキー伍長のリロードの隙をカバーしろ』
『例の白い奴よろしく連邦の新型はマシンガンが効かないって聞いたが、シュツルムファウストなら多少は効くでしょうよ!』
軍曹のザクが携行していた使い捨ての対MS用グレネードランチャーを蜘蛛野郎に向けて発射する。誘導装置などは皆無のシュツルムファウストを高速で動き回るMSに当てるのは至難の技だが、足の止まった状態なら流石に当たるだろう───と思っていたのだが、蜘蛛野郎のサブアームが気持ち悪いくらいの反応速度で撃ち出されたグレネードランチャーを捉えると、ビームガンであっさりと迎撃してしまう。
『クレー射撃の的を放ってやった記憶はないんですがねぇ!?』
『各機へ、敵は高い迎撃能力を有しており、弾速の遅い弾頭を撃ち落とすぞ』
『マシンガンもグレネードランチャーも効かないなら何を撃ちゃあいいんですかねぇ……その辺の岩でも投げます?』
『マシンガンの被弾に多少は怯んでいた。撃たないよりはマシだ。それに敵の迎撃能力にも限界はある筈。飽和攻撃で圧殺する』
軽口を叩きながらも冷静に攻撃を続け、ヤルオのカノンライフルに合わせてクラッカーに変わる投擲武装であるハンドグレネードやシュツルムファウストによる同時攻撃を叩き込む。蜘蛛野郎も驚異的な迎撃能力でそれらを撃ち落としつつ散発的な反撃を繰り返してはいたが、とうとう避けきれなくなったカノンライフルがサブアームに被弾し、サブアームが千切れ飛ぶ。蜘蛛野郎はまるで悶えるように機体を大袈裟に振り乱し、反射的にかMS本体の腕がサブアームの破損箇所を押さえるような仕草を見せ、出鱈目にサブアームを振り回した。
『よくわからんが動きが止まった!』
『スルーズ曹長、的が動きを止めた。突貫開始』
『了解』
言うやいなや、意外と近くの岩陰に隠れていたスルーズのザクが、自身の全長に迫るヒートランスとザクの胴体を隠せるほどの大型ラウンドシールドを構えて飛び出した。背部ランドセルに装着された瞬間加速用の追加ブースターに点火し、旧世紀の中世騎士の如く敵へと突っ込んでいく。
それを捉えた蜘蛛野郎は、やや遅れながらもその異形の頭部に隠されていた頭部バルカン砲でスルーズ曹長のザクを迎撃する。しかしそれはラウンドシールドに防がれ、接近を許してしまった。スルーズ曹長はヒートランスをコックピットがあると思われる胸部へと突き出したが、途中で腕を間に差し込まれたことでそれを斜めにいなされてしまう。
ヒルド曹長もただでは済まないとばかりにマニピュレーターを一部抉り取りながらヒートランスを突き進ませ、インパクト時に装甲を貫通させるための射出機構を作動。入斜角度も相まって装甲の隙間に潜り込むように突き立てられたヒートランスは肩部装甲を引き剥がすように突き抜けた。
致命傷は与えられなかったが、それに拘って足を止めるような真似をすることなく、スルーズ曹長は隊長より厳命されていた通りに、一撃離脱戦法を厳守。交通事故の当て逃げよろしくそのまま離脱した。その一撃により腕部フィールドモーターが一部損傷したのか蜘蛛野郎の腕の動きが明らかに悪くなっていた。
このまま磨り潰せるとブリュンヒルデ隊の面々が思ったその時、ユリウス軍曹の熱源センサーが新たな敵機の反応を捉えた。その数3機。
『新手が3機!どれもデータにないが内1機は形状より中距離支援型と推察!』
焦ったようなユリウス軍曹の報告を受けたモーガンは現状の弾薬消耗率を踏まえ、本来の目的である未確認MSの調査及びデータ収集は十分に果たしたと判断した。
『これ以上戦闘継続は無用と判断する。総員退却。聞こえたな?総員撤退だ。スモーク展開、現戦域より離脱する』
『あいよ!』
『了解』
「り、了解だお!」
各機はMMP80マシンガン下部のマルチランチャーにスモーク弾を装填し、新人組は比較的近距離にスモーク弾を発射。ベテラン組はスモーク弾に時限信管をセットし、放物線を描くようにして発射。空中で起動したスモーク弾はX字状に交差しながら煙のカーテンを引いていく。
煙が晴れる頃には、痙攣するように各部を動かし続けたまま膝をつく蜘蛛野郎だけが残されていた。
『ヘカトンケイル確保!中破していますが致命傷は見られず。生体モニターも乱れはありますが一時的なものと思われます』
『ペインアブソーバーを貫通してるな……マネージャーに打電、受け入れ体制、整えさせろ!ヘカトンケイルの中身がダウンしちまってるから回収機もだ!敵機はどうか!』
『既に離脱した模様。レーダー圏外。辛うじて望遠カメラに殿が写った程度です。ジオン野郎め、恐れをなして逃げ出したと見た』
『いや、恐らくデータ回収を優先しただけだな。戦功を焦りがちなジオンにしちゃ鮮やかなまでの引き際……こりゃかなりのやり手だ。にしても望遠で捉えた機体、嫌に見覚えのあるカラーリングだ』
ちなみに時期的にはホワイトベース隊が降下して来ており、ガルマ国葬まで秒読み段階です。
本編で掘り下げるほどでもない小ネタ
ヘカトンケイルガンダムの頭部バルカン
ヘカトンケイルの素体は陸ガンのため本来なら胸部バルカン砲だが、機体の性質上コックピット周辺の精密機器が多くなりがちなので、そもそも積むスペースがないのと、精密機器の真横に武装は論外と設計者に外され、他のガンダムタイプ同様に頭部にバルカン砲が装備された。カメラも精密機器だけど他より頑丈だから多少はね?その関係上、ヘカトンケイルの頭部はほぼ新造されている部位となる。
蜘蛛野郎
『スカート付き』とか『とんがり帽子』とか『木馬』みたいな富野節特有のセンスの光るあだ名シリーズに則ったヘカトンケイルのあだ名。中身が野郎かどうかは決めてない。