機動戦士ガンダムRTA ジオン特殊部隊ルート 機体縛りチャート 作:ラスト・ダンサー
人類史上最大規模の戦争にして、MSやミノフスキー粒子という新技術により戦争の形態そのものに変化をもたらしたとされるジオン独立戦争、通称一年戦争。
一年戦争は謎の多い戦争です。終戦から10年以上経っても、未だその膨大な情報量から全貌が明らかにはなっていません。
それもそのはず、当時の地球圏の人口の約半数、50億人という未曾有の被害を出した人類史上最大規模の戦争であるからです。この数字ですら未だ暫定であり、地球連邦政府も正確な数字は未だ把握できていないとの噂もあります。これほどの凄惨な戦いが地球圏各地で繰り広げられ、多くの人命が失われたのです。
資料も長く続く戦乱により多くが散逸、あるいは連邦軍に機密指定されている状態が大半を占めているため真相究明は困難を極めました。そこで私たち調査班は、関係者を調べあげてはインタビューを繰り返し、歴史研究家たちと少ない資料との整合性を取るという地道で長い調査を続けています。
そんな中、今回は奇跡的なことに一年戦争にパイロットとして参加していたという元地球連邦軍士官との接触に成功しました。
──一年戦争初期の頃はどうされていましたか──
「最初はMSじゃなくて地上で戦闘機に乗ってたんだよ。北米の山間にひっそりとあった小さな航空基地に配置されてたんだ。普段は輸送機の護衛ぐらいしかやることのない、中途半端な位置にある辺鄙な基地だった。ちょっと離れた所にもっとでかい航空基地があったし、まともな戦力も戦闘機が3機だけ。しょぼすぎて笑えるレベルで暇な基地だったがね」
近頃じゃどこ行っても禁煙ばっかでロクに吸えねぇとぼやきながら、彼は煙草に火をつけた。やや白髪の混じり始めてはいるが未だに現役さながらのがっしりしたその体格は元パイロット特有のものです。一年戦争時のMSは耐G性能が不十分な点が多く、パイロット達は体を鍛えることで高G環境への耐性をつけていました。
「その基地は流刑地って呼ばれる場所でな。扱いに困った奴を放り込むための窓際部署だった。俺もあれよあれよという間に、階級を1つ下げられて飛ばされてきたクチだった。まあ端的に言えば左遷、干されてたのさ。似たようなやる気のない連中ばかりの基地で腐るのをよしとしなかった俺は、有り余った時間を遊覧飛行と称して訓練時間に当てたんだ。同僚は訓練なんぞサボって賭けポーカーしかしてなかったからな。ソイツらの燃料を俺が使わせてもらうって寸法さ。1人で演習プログラム組んで、ゲームみたいなあり得ない戦況でシミュレーションをしたりもした」
なにやら聞いてはいけない連邦軍の裏事情を垣間見た気がしましたが、あまり深く突っ込むのはやめておきましょう。我々もまだまだやりたいことがありますからね。
「宇宙でジオンがドンパチやり始めた時はチャンスだと思ったね。戦争になれば戦果を上げて汚名を返上出来ると思った。まあまずどうやって戦場に行くのかって問題があったが、それもすぐに解消された。宇宙でボロ負けした連邦はとうとう地球侵攻を許しちまった。欧州はあっという間に制圧され、今度は北米の番だった。そんな時だよ。灰色のあん畜生と遭遇したのは」
『灰色』という単語に我々はざわめき立ちました。ジオンのエースパイロットには士気向上のため、パーソナルカラーが与えられるのは有名な話です。かの赤い彗星もそういったパーソナルカラー持ちのエースの1人です。その中でも『灰色』というのはトップエースたちに名を連ねるこの界隈における有名人の1人でした。
しかし、キシリア・ザビ麾下の特殊部隊の中でも秘匿性が高い部隊であったことから、その任務の詳細な記録はあまり残されていません。また、戦争中の具体的な行動は不明な点が多く、少数の目撃情報がある程度。【深紅の稲妻】ほどではないにせよ謎の多い人物でもありました。彼の異名【
「急だったね。本当に急な襲撃だった。俺たちの基地が直接攻撃された訳じゃないがね。近くの航空基地が真っ先に制圧されたとかで、まともに滑走路の残ってる前線の基地が流刑地しか残ってなかったんだ。お陰でただでさえ狭い基地がキャリフォルニアベースから送られてきた部隊でてんやわんやだった。狭い滑走路脇じゃ航空機の渋滞が出来てたくらいだ。管制官も混乱してたね。そんなタイミングで近場の地上部隊から救援要請が来た。MSに攻撃されてるってね」
我々は彼の証言と実際に残された証拠品や現場の痕跡、資料を元に、当時の戦場で一体何が起こっていたのか?膨大な試行回数により精度を高めたシミュレーションからその真実を暴きます。
まず我々は戦闘が行われたという小高い丘へと足を運びました。幹線道路を一望できるこの丘には当時ジオンの部隊を迎え撃つべく、トーチカを築き、戦車部隊などが多数展開していたといいます。一見するとトーチカの残骸くらいしか当時を想像出来そうなものはないように見えますが、専門家達の目は我々とは別のものを見ていました。
「見てください。この61式戦車の残骸なんですが、背後から撃たれています。主砲も正面を向いたままです。他にも背後から攻撃された残骸が多数あるのを見るに、ここに展開していた部隊は背後から奇襲を受け、まともに抵抗すら出来ずに撃破されていったのではないかと考えられます」
資料によるとジオンの地上部隊はこの幹線道路を通り、キャリフォルニアベースの占領へと向かったようです。土地勘のある連邦軍はここで敵を待ち伏せ、基地の占領に必要な兵力を削ごうとしていたのでしょう。ですが、彼らは逆に奇襲を受けて壊滅してしまったようです。これはMSとミノフスキー粒子の存在の有無が大きいと軍事アドバイザー達は指摘します。
──なぜ連邦軍は一方的に被害を被ったのでしょうか?──
「この丘は背後を鬱蒼とした森林に囲まれているため、当時の連邦軍は背後からの奇襲の可能性は低いと見ていたのでしょう。あの辺りは戦車なら立ち往生しそうなくらい道が悪いですからね。しかしジオンにはモビルスーツ、ザクがありました。二足歩行ならではの走破性で、この程度の悪路なら軽々と踏破してしまったのでしょう。加えてミノフスキー粒子のレーダー撹乱効果によりギリギリまで敵を発見できなかったのも大きい要因です。まさか18m近い鉄の巨人を見つけられないとは思わなかったでしょうね。それほどまでに長距離レーダーが役に立たなくなったという事実は連邦軍を苦しめました」
そしてこの惨劇を件のパイロットは実際に目撃していました。
──一年戦争で初参戦した戦闘について聞かせてください──
「
当時の連邦軍の指揮系統は末端に行けば行くほど混乱しており、現場の兵士達はそれをひしひしと感じ取っていたことでしょう。ミノフスキー粒子による命令伝達の阻害も合わさり、現場が混沌としていたのは想像に難くありません。
「現場に着いてみれば辺り一面、黒煙と火の海さ。……遅すぎたんだ。最期まで抵抗を続けていたヘリがちょうど撃ち落とされるところだった。ヘリが爆発すると何かの燃えカスみたいなのが飛んでいった。そこで1つ目野郎、MSを始めて見た。あんな全高の高い兵器なんか目立ってしょうがないから放っといても勝手に蜂の巣になると思ったんだが、違った。18mの巨体で歩幅があるぶん結構な速さで走り回りやがるんだ。恐怖でしかなかったね」
──当時の戦闘機でもザクを十分に撃破できたとする文献もありますが、実際はどうだったのでしょうか?──
「誰だか知らんがそれを書いた奴はミノフスキー粒子って奴を知らないらしい。ミサイルがまともに当てられないって点を除けば勝てたかもしれんな?」
当時の汎用戦闘機セイバーフィッシュは確かに戦闘機としては優秀な性能をしていましたが、装備がミノフスキー粒子影響下での運用を想定していなかったため、様々な面で悪影響をもろに受けていたと考えられています。誘導兵器は通常の射程では対象を捉えられず、かなり近距離へ接近しなければロックオンが出来なかったことでしょう。事実、ジャブロー上空で行われていた防空戦闘では第二次世界大戦レベルにまで交戦距離が縮まり、ジェット機ではもはやお目にかかることが出来ないとまで言われていたドッグファイトが頻繁に起きていたという記録が残っています。
「加えて向こうは用意のいいことに対空砲弾を装備していやがった。しかも全機。先制攻撃で爆撃機よろしくまっすぐ飛びながら、ミサイルを目算で撃ち込んだのが偶然当たった以外は逃げ回っていたよ。あの時ほど空が狭いと感じたことはないね。しかも最悪なことに最後の最後で羽に攻撃が擦って、右翼が半ばからポッキリと折れて脱落したんだ。一緒に顎も落ちていたと思う。死に物狂いで機体を制御してほとんど墜落するような形で基地へと帰還したよ。独りでな」
──他の味方は1機も?──
「いなかった。お陰で俺はおめおめと味方を見捨てて逃げ帰ってきた臆病者扱いさ。弁明する暇もなく、次の日には夜逃げ同然でトラックに押し込まれて、東へ向かわされたよ」
『一年戦争を紐解く』シリーズ第7弾
【謎のジオン特殊部隊を追え!】より抜粋
出口を求めて腹の中をグルグルしているので、一年戦争に倣って8ヶ月ほど失踪します