もうひとつのソラ   作:ライヒ

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第九話 「風邪のときはネギがいいそうです。」

 

 

 

 

 

 ○月∴日

 

 この間、またきょーこちゃんのお兄さん。……めんどくさいのでりょーへいさんと呼びます。りょーへいさんに会いました。

 つなをボクシング部に誘っているときのりょーへいさんはとてつもなく輝いていました。

 私が思うに、あの人はボクシング神か熱血神の化身なのではないでしょうか。

 それより、今日つなが少し具合が悪そうだったけど、大丈夫でしょうか……?

 いえ、つなの心配している暇ありませんでした。

 なんかあたまが……くらくらします。

 

 

 

 

 

第九話 「風邪のときはネギがいいそうです。」

 

 

 

 

 

 ある日の放課後の事だった。

 

「あれ……?」

 

 クラ、とツナの体が揺れる。風邪か何かだろうか。桃凪は今日は風邪で休んでいるし、移ったのかもしれない。

 

「なんか身体ダルいや……」

 

 それならそれで学校休めるから良いかなーとごく一般の中学生の意見を言うツナ。

 しかし、思わず額に当てた手のひらを見た時、その顔は驚愕に染まった。

 

「な、何だこれー!?」

 

 手のひらにはおどろおどろしいドクロのマークが。

 

「それはドクロ病っていう不治の病だ。ツナ、死ぬぞ」

「いきなり――!?」

 

 何やら不吉さを表すかのような影を背負って現れたリボーン。話した内容も相まって不気味すぎる。

 

「今まで何発の死ぬ気弾を脳天にくらったか覚えてるか?」

「は? な、何発って……知らないよそんなの!」

「ちょうど10発だぞ」

 

 死ぬ気弾で10回殺されると被弾者にとんでもない事が起こる、そう言われているらしく、恐らく今回のこれもそれなのではないかとの事。

 

「まさか不治の病とは……残念だ」

「終えるなー!!」

 

 勝手に自分が助からない事にされたツナ。ドクロ病なんてそんなもの、嘘に決まっている。洗えば落ちるだろう。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 ぼんやりとした意識の中、桃凪は目が覚めた。

 確か、朝起きて身体がだるくて、それで学校を休んだっけ。それでそのまま寝たんだった。

 

「……のどかわいた」

 

 風邪をひいているときは水分を摂取しないと脱水症状で大変な事になる。そう思った桃凪は鈍い体に鞭打ってベットから起き上がった。

 

(……なんか、騒がしい……)

 

 そして桃凪が下で見たものは。

 

「シャマルさん! お願い助けてー! まだ死にたくない~!! しかもこんな不様に~!」

「おいコラ! 男が抱きつくな! 虫唾が走る!!」

 

 よくわからない白衣のおじさんと、泣きながらそのおじさんに縋りついているツナ。何故かツナの体にはドクロのマークがびっしりとついていた。

 

「……、」

 

 普段ならここで何か思ったりツッコミを入れたりするのだろうが、風邪で思考能力が落ちた桃凪にはそこまで思いつかない。鈍った頭で考えるのは。

 

(……戻ろう)

 

 大丈夫、ちょっとくらい何も飲まなくたって死にはしない。

 さっきとまったく違う事を考えながら階段を上る桃凪。しかし、

 

「あ……?」

 

 グラリ、と体のバランス感覚が薄れる。そしてそのまま後ろ向きに階段から落下しそうになって。

 

「大丈夫?」

 

 ビアンキに受け止められた。

 

「……ありがと」

「まだ寝てなきゃダメよ。ただでさえ体力ないのに」

「……ん」

 

 コクリ、と頷いてから台所の方を指さす。もう声を出すのも辛い。

 要約すると『のどが渇いたので連れてってくれませんか』なのだが、ビアンキはそう思わなかったようで。

 

「……なるほど、病気の貴女に体力の付く料理を作ってほしいというわけね」

 

 何という命の危機。

 

「……いや、のどかわいたから……」

「そうときまれば上で待ってなさい、すぐに特性おかゆを作るから」

 

 どうしよう、聞いてない。

 ビアンキに寝室まで運ばれる中、薄れゆく意識の中で桃凪は思う。

 

(……死にたくない)

 

 それはもう切実に。

 

 

 

 

 

 目が覚めた時にあったのは、不思議な色の煙を出すおかゆではなく、ツナの顔だった。

 

「あ、起きた?」

「……つな」

 

 とりあえず、現状を確認して。

 

「……生きてる」

 

 安堵した。

 そりゃそうだ、ツナに似た神様など仕事が上手く出来ないに決まってるから。

 

「何か失礼なこと考えただろ……」

「あー……うん」

 

 ジトー、と咎めるような視線のツナに対して桃凪は無表情。表情を作るだけの気力がないのが理由だが、もとよりこの双子に表情に張りつけた笑みなど無用。

 昔から、ツナが一番自分の事を自分よりわかってくれていた。

 恐らく、ツナもそう思っているだろう。

 

「……ツナ、さっきのおじさんは?」

「あー……今下でビアンキにちょっかい出してる」

 

 何やら疲れた表情でそのような事を言うツナ。結局あの人は何者だったのだろうか。

 

「何かいる物あるか?」

「……飲み物」

 

 わかった、と言って桃凪の部屋から出ていくツナ。飲み物を取りに行ってくれたのだろう。

 

『うわっ!? ビアンキなんでポイズンクッキングなんて持ってるんだよ!!』

『どきなさい。私は今桃凪におかゆを持っていくのよ』

『桃凪を殺す気かよ!!』

 

 ドアの向こうでそんな話し声が聞こえたが、桃凪にあの中に割り込む気力はない。小さな声で、桃凪は呟いた。

 

「……つな、ファイト」




シャマルは恐らくあれです、フェミニストであってもロリコンじゃないって信じてる。
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