もうひとつのソラ   作:ライヒ

11 / 33
第十話 「体を鍛えようかなと思いました。」

 

 

 

 

 ○月〃日

 

 この間の風邪はだいぶ良くなりました。これで学校に行けそうです。

 そういえば、風邪をひいていた時に来ていたおじさんはしゃまるさんと言って、女性しか診察しない人なんだそうです。腕はいいんですけどね。

 さて、2学期が始まってすぐに休んでしまった分、ちゃんと取り戻さないといけませんね。

 

 

 

 

 

第十話 「体を鍛えようかなと思いました。」

 

 

 

 

 

「もー秋か~。夏休みもあっという間に終わって何かさみしーなー」

「補習ばっかだったしな」

「アホ牛が最近ブドウブドウってウザくねースか?」

「ちっちゃい子は元気が一番だよー」

 

 ツナたちの学校は給食制ではなく、みな思い思いの昼食を買ったりしている。中学校ではかなり珍しい方式をとっていると言えるだろう。もしかしたら、集団で一斉にいただきますをするのが嫌いなどっかの誰かの指令なのかもしれない。

 しかし、給食制ではないためこのように屋上に集まって昼食をとったりすることもできるわけで。

 そして開放感あふれる場所には必ず本来いない者がいるというわけで。

 

「栗もうまいぞ」

「いだだ!?」

 

 さくさく、とツナに当たったのは栗。何故こんな所に、といっても犯人などわかりきっているが。

 

「リボーンだな! い゛っ!」

 

 くる、と振り返ったツナの腕に鋭い痛みが走った。

 

「チャオっす」

 

 そこにいたのは巨大すぎる栗。いや、栗ではなく栗の着ぐるみを着たリボーンが。

 

「これは秋の隠密用カモフラージュスーツだ」

「100人が100人振り返るぞ!」

 

 新学期に入っても、ツナのツッコミの切れは相変わらず。

 

「ファミリーのアジトを作るぞ」

 

 そしてリボーンの強引さも相変わらず。

 

 

 

 

 

「応接室って入ったことねーなー」

「10代目にふさわしい部屋だと良いんだがな」

「普通は行かないもんね……って、桃凪何持ってんの」

「んー、書類」

 

 応接室に行くついでに雲雀に書類を渡そうと一度教室に戻っていた桃凪。ツナたちと合流する時にはすでに応接室の前に来ていた。

 応接室に入る前、ふと、桃凪の頭を過ぎ去った言葉があった。

 

(……そういえば)

 

 まず山本が応接室に入って、

 

(……きょーや、群れるの嫌いだったなぁ)

 

 そして硬直した。

 

「君、誰?」

 

 この学校にいれば雲雀の噂を聞かない者はいないだろう。雲雀の姿を見た途端、山本の顔に緊張が走る。

 

「なんだあいつ?」

「獄寺、待て……」

 

 転入生である獄寺は雲雀の事を知らない模様。それに山本が歯止めをかけるが、とうの雲雀は獄寺が咥えている煙草を見咎めて。

 

「風紀委員長の前ではタバコ消してくれる? ま、どちらにせよただでは帰さないけど」

 

 明らかにこちらを見下した言葉。それに気が短い獄寺が反応した。

 

「んだとテメ――」

 

「消せ」

 

 ひゅっ、と。

 視認が困難なほどの速度で振り抜かれたトンファーが獄寺の煙草を吹き飛ばす。

 

「! なんだこいつ!!」

 

 その顔を苛立ちから驚愕に塗り替えた獄寺が雲雀から距離をとった。

 しかし、あれが雲雀のトンファーか。桃凪はちょっと前に持ってみた事があったが、重くて引きずってしまった。よく片手で持てるものだ。

 あの後雲雀に怒られたのは良い……とはいえない思い出である。

 とはいえ、ここで止めないと取り返しがつかなくなる。

 

「きょーや」

「っ! 桃凪!!」

「桃凪さん!!」

 

 獄寺と山本をかばうように雲雀の前に出る。桃凪と雲雀の繋がりを知らない二人には、今の桃凪の行為は自殺行為に見えたのだろう。

 そして、雲雀は。

 

「……、」

「え、あれ……?」

 

 がし、と。雲雀に腕を掴まれる。

 

「……、」

「えーと……」

 

 そしてそのままぐいと引き寄せられ。

 

「……何やってんの?」

「ふぇ……、わっ!?」

 

 足が浮く。そして襟首に感じる感覚。どうやら、持ち上げられているらしい。

 

「いや、あの、いきなり何を」

「何やってんの?」

 

 なに、と聞かれても。ただ友人と一緒に応接室に来ただけなのだが。

 しかし、何故かその理由を話すのはまずい気がした。無理やり目線を合わせられた雲雀の瞳はいつものごとく何を考えているのか全く分からない、が、なんとなく、桃凪には雲雀がイラついているのと同時に楽しんでいるのが分かった気がした。

 

「えーと、書類を届けに……?」

「……そう」

 

 雲雀がため息をつく。

 

「じゃあ僕の邪魔しないでくれる」

「にゃぁ!?」

 

 ポイ、という効果音が適切な感じで放り投げられた。重力に逆らえず落下する体。そして着地した場所はソファーの上だった、ばね仕掛けのソファーが大きく跳ねる。

 

(……なるほど)

 

 どうやら、自分は大変な思い違いをしていたみたいで。

 

(……止められる訳なかったねー)

 

 応接室に複数人が入った時点で、雲雀の機嫌は急転直下だったのだ。

 

 

 

 

 

「さて、」

 

 雲雀が発した言葉に、周囲の空気が総毛立つ。

 

「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると――」

 

 表情は相変わらず変わらない。しかし誰でもわかるほどの殺気を滲ませながら。

 

「――――咬み殺したくなる」

 

 まるで背筋に氷でも突っ込まれたかのような感覚。明らかに自分達に向けられた殺気に二人は息を呑んで。

 

「へー、初めて入るよ応接室なんて」

 

 する、と二人の隙間を抜けてツナが応接室に入った。

 

「まてツナ!!」

「へ?」

 

 瞬間、雲雀が動いた。軽い動作でありながらも重い一撃でツナを殴り飛ばす。

 

「1匹」

 

 ふっ飛ばされ、床を転がるツナに目も向けず。

 

「のやろぉ! ぶっ殺す!!」

 

 ツナを傷つけられ頭に血が上った獄寺の一撃を軽くいなし、返す刀でトンファーを叩きつけた。

 

「2匹」

「てめぇ……!!」

 

 山本の言葉に答えず、もう片方の手にもトンファーを装着する雲雀。そしてそのまま一気に山本の所へ踏み込んだ。

 応接室は広い事は広いが、元々部屋の中だ。避ける山本だが、動きにくそうなのは明らか。

 その上、

 

「怪我でもしたのかい? 右手をかばってるな」

「!」

 

 前に骨折した右手、そして骨折してからは出来るだけ衝撃を与えないようにしていた右手の事を突かれ、山本の動きが止まる。

 そしてその一瞬を雲雀は見逃さなかった。

 

「当たり」

 

 トンファーでの一撃から一転、いきなり飛んできた蹴りが防御していた山本の手をすり抜け鳩尾に当たる。

 

「3匹」

 

 吹っ飛び、壁に叩きつけられる山本を見下ろす雲雀。

 

「あー、いつつつ……!」

 

 そしてツナが目覚めたのはそんな時だった。

 

「ごっ……獄寺君! 山本! なっ、なんで!!」

「起きないよ、2人にはそういう攻撃をしたからね」

「え゛っ」

 

 それはつまり、ツナの視点から見ても強い事がわかるこの二人を相手にして、一瞬で倒してしまったということだ。

 ……つまるところ、大ピンチ。

 

「ゆっくりしていきなよ、救急車は呼んであげるから」

 

 何故こんな事に、ただ皆で応接室に来ただけなのに。

 そんな事を考えていたツナの目に、信じられないものが飛び込んできた。

 銃の照準を自分に向ける、リボーンだ。

 

「死ね」

 

 ズガン! と死ぬ気弾が脳天に突き刺さる。

 

「?」

 

 雲雀はそれを不思議そうに眺めていたが、その直後、ツナが復活した。

 

「うぉおおっ! 死ぬ気でおまえを倒す!!」

「何それ? ギャグ?」

 

 気合の入ったツナの叫び声は、雲雀にとって滑稽にしか聞こえない。ツナのパンチを軽々とよけ、そのままトンファーで顎を突き上げる。

 

「アゴ割れちゃったかな」

 

 そう思うほどに強烈な一撃。

 

「さーて、あとの2人も救急車に乗せてもらえるぐらいグチャグチャにしなくちゃね」

 

 倒した相手にいつまでもかまう訳もない、視線を外した雲雀だが、それは間違いだった。ツナはいつものツナではなく、死ぬ気なのだから。

 ググ……と自分の背後で動く音がする。

 

「ん?」

「まだまだぁ!!」

 

 振り返った雲雀を襲ったのはツナの鉄拳。

 もちろん、それでやられるような雲雀ではない。が、すでに倒したと思っていた標的、しかも軟弱な草食動物に殴られた、という事実が雲雀の思考を一瞬停止させた。

 そしてツナの手にやってきたのはカメレオン。ただのカメレオンではない、形状記憶カメレオンのレオンだ。

 ツナの手の上でカタチを変えていくレオン、そしてレオンがなったのは(ふち)にW・Cと書いてあるスリッパ。

 

「タワケが!!」

 

 スパァン! とスリッパで雲雀の頭をひっぱたくツナ。雲雀は少しフラフラしていたが、

 

「ねえ……」

 

 静かに、雲雀が言葉を紡ぐ。

 

「殺していい?」

 

 先ほどとは比べ物にならない怒気と殺気が辺りに充満する。

 

「そこまでだ」

 

 その時、制止の声がかかった。

 

「やっぱつえーなおまえ」

 

 感心したように雲雀に称賛の言葉を贈るリボーン。対して雲雀は興味もなく、

 

「君が何者かは知らないけど、僕、今イラついているんだ。横になって待っててくれる」

 

 そしてそのままトンファーをリボーンの方に向けた。

 が。

 キィン! とリボーンが取り出した十手によって雲雀のトンファーが受け止められる。

 

「ワオ、すばらしいね君」

 

 自分の必殺を止められた雲雀はむしろ嬉しそうな表情でリボーンを見据えていた。

 

「おひらきだぞ」

 

 リボーンが取り出したのは丸いフォルムに導火線がついた、要するに爆弾。

 応接室に、爆発音が轟いた。

 

 

 

 

 

「……うー…」

 

 後半、ほとんど存在を忘れ去られていた桃凪が吹っ飛んだソファの下から這い出てくる。

 何度か止めようと考えていたが、とても自分が追いつける速さじゃなかった。

 一か八かの賭けで雲雀の前に躍り出ることも考えたが、もしそれで自分が怪我をしてしまったら彼らはもう止まらなかっただろう。

 

「……きょーや?」

 

 辺りを見回すと、壊れた応接室には興味もなく空を見上げる雲雀が。

 ぽつり、と言葉がもれる。

 

「あの赤ん坊、また会いたいな」

 

 どうやら、お気に入りになったらしい。

 

「きょーや、楽しそう……」

 

 なんか、方向性は間違っている気もするが。




スランプの時とそうでない時の筆のノリの違いをどうにかしたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。