もうひとつのソラ   作:ライヒ

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第十二話 「ダイナマイトよりすごいものを見ました。」

 

 

 

 

 

 ○月§日

 

 この間は日曜日でした。

 私は眠かったのでずっと寝ていたのですけど、どうやらつなは色々大変だったようで、かなりやつれてました。

 それときょーやがつなの部屋に窓から入ってきたような気がします。いや、でも……どうだったのでしょうか? かなり眠かったし、寝ぼけてたのかも…。

 いくらきょーやでも窓から入るなんて。しますね、はい。

 それとらんぼの保育係の適性テストとかしました。途中で10年バズーカを使ってらんぼが大きくなったのですが、その時のらんぼがあまりにもかわいそう過ぎたので慰めたら、何かさらに泣かれました。

 きっと、色々溜めこんでたものがあったのでしょうね……。

 それと、この間はせんせーの誕生日でした。どうも、満1歳になったようで。おめでとうございます。

 

 

 

 

 

第十二話 「ダイナマイトよりすごいものを見ました。」

 

 

 

 

 

 ある日、不思議な子に会った。

 

「●※×□△▼!」

「えーと……」

 

 正直言って、何を言っているのかよくわからない。なんとなく中国あたりの言葉っぽい事は分かるのだが、桃凪に中国語がわかるわけはない。

 しかし、その子はかなり必死で、何かを聞いている事は分かる。

 

(……中国語わかる人の所へ案内した方がいいのかな……)

 

 その時。

 

「た、助けてぇええええ!!」

「……つな!?」

 

 なんとツナがかなり凶暴そうな犬に追いかけられている。一体何をやったのか、それは解らないが。まぁ、いつものように間違えて怒らせてしまったのだろう。

 

「!」

「あ、君!」

 

 そして、その声を聞いた小さな子はツナと犬の間に挟まる様に立ち塞がった。しかし、暴れる犬は見境無し。小さな子にもその牙を向けて、

 突如、狂犬がふっ飛ばされた。

 

「え……?」

 

 小さな子は手を触れていない。なのにふっ飛ばされた。

 

「あの……ありがと……」

 

 状況を理解できない桃凪と、とりあえずお礼を言うツナ。しかし、その小さな子はキッとツナを睨むとお辞儀をしてそのまま走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

「「ただいまー」」

 

 二人声をそろえて帰宅。ツナと桃凪はそれぞれの部屋に戻って行った。

 

「さっきのちっさい子……本当に何だったんだろ?」

 

 不思議というかなんというか、自分では到底できないような身のこなし方だった。あの年でそこまでできるという事はよほど才能があるのか、それとも師がいいのか、はたまたその両方か。

 それに、犬を吹っ飛ばした時。手を触れていなかったはずだ。

 何か策や道具を使ったのか、はたまた

 

「超能力とか……」

 

 考えて、即座に否定。

 いくらなんでもあり得ないだろう、超能力など。

 

「……いや」

 

 それはあくまで今まで自分が持っていた常識という範囲内での出来事だ。これまでの…というより、リボーンと会ってからの自分の常識は宇宙より広くなってる気がする。

 最初から決め付けるのではなく、そういうこともあるかもしれないと思う事が重要なのだ。

 でも、トリックは案外簡単かもしれないが。

 

 

 

 

 

 次の日。

 

「掃除ってめんどくさいな~」

 

「でもやらなきゃ終わらないし」

 

 しかし、昨日は大変だった。何故かリボーンの顔中にトンボがくっついていて(本人いわく、秋の子分)びっくりしたし、超能力とか聞いたら何やら赤ん坊の癖に渋い笑みで笑われたし、何だったのだろうか。

 

「ん……?」

 

 ちらりと見えたのは、昨日のあの子。しかしリボーンといいこの子といい、昼間の学校に何でこんなにも部外者が乱入できるのだろうか。不思議でしょうがない。

 どうやら小さな子は京子と話している様子、お礼を言われている所を見ると、人助けでもしたのだろうか。しかし、お礼を言われたとたんに険しい顔になる小さな子。……あれはあの子なりの感情表現?

 

「つな、つな」

「ん?」

「昨日の子」

 

 ぴし、と桃凪が小さな子を指さしたのと、小さな子がツナを見て驚愕したタイミングはほぼ同じだった。

 小さな子は取り出した写真とツナを見比べると駆け寄り、人差し指を上に向ける。

 どうもこれは『用があるから屋上に来い』とかそういう感じなのだろうか。

 

「は……?」

「あー……」

 

 しかし、その答えを聞く前に小さな子は走って行ってしまった。行き先はもしかしなくても屋上か。

 

「あの子もツナ君の知り合い?」

「前の牛の子といい、沢田はヘンなガキ専門だな」

「変な言い方すんなよ!?」

「しかし否定はできないよね」

 

 めんどうだし、どうしようかなー。と思っていた桃凪だったが、ぐい、といきなり腕を引っ張られた。

 引っ張った相手は

 

「つなー?」

「桃凪、今めんどくさいって思ってただろ…」

「……むにゅ」

 

 これは、つまりあれか。めんどくさいからって放りだすなと、解りやすくいえば変な事態になってるこの場で一人にしないでと。

 

(まぁ、しょうがないか)

 

 ツナがそう言っているのだから、自分の決断は『叶える』以外にない。

 

 

 

 

 

「屋上に……到着っ! って、あれ……?」

 

 よくわからないが、違う場所に一歩を踏み入れる時は達成感があるものだ。雪が降った日の庭とかがいい例だと思う。

 できれば、そういうときは一番乗りが好ましいのだが今回は呼びだされているためにそれは叶わないだろう。まぁ、呼びだされているのはツナだが。

 そして屋上に到着した桃凪が驚きの声を上げた理由は、その小さな子にあった。

 

(服着替えてる……)

 

 さっきまでの服とは違い、今度は動きやすそうな中華服。しかしなぜ手にホカホカの中華まんが握られているのだろうか。しかもちょっと食べてあるし。

 

「桃凪ー……って、なんか着替えてる!?」

 

 何となく走ってきた桃凪の後ろからツナが歩いてやってきた。こちらも小さい子を見て驚いている。

 

「▼※?∴〃●☆¨Δ~! ★〒○×Θ″!!」

 

 ツナを指さし叫ぶ小さな子。しかし、悲しい事にツナと桃凪はどこの言葉かわからない。ニュアンス的に、宣言とか、そんな感じだが。

 

「『昨日は暗殺すべきターゲットとは知らずに助けてしまったが今日はお前を殺す』」

 

 ふと、ツナの後ろから声がかけられた。

 

「って言ってるぞ」

「リボーン!!」

「せんせー、知り合い?」

 

 どうやらリボーンは中国語も解る様子。ちょうど良いし、そのまま通訳してもらおうか。

 

「そいつの名はイーピン、殺し屋だぞ」

「え! 嘘ー!?」

 

 ぺこり、とお辞儀するイーピンを見ながら驚愕するツナ。確かに、これだけを見るとただの行儀のいい子供にしか見えない。

 『イーピン』という人物の話は前にリボーンがしていた。かなり強い殺し屋で、ついたあだ名が

 

「じゃ、じゃあこいつが人間爆弾!?」

「そーだぞ」

「Θ▼※○×★Δ?∴イーピン」

 

 身振り手振りを交えて話すイーピンの言葉に耳を傾けてみると、何となく自分の名前はイーピンだと言っているらしきことがわかった。しかし、考えるまでもなくこの状況はまずい。相手は一流の殺し屋、しかも昨日見た限りではよくわからない謎の力を使うのだ。どうしろと。

 しかし、どうやらイーピンが狙っているのはツナだけの模様。現に桃凪の事は気にしていない。恐らく自分は安全だと思う。ツナの方は危険だが。

 でも、気になる事が一つ。先程イーピンが見ていた写真が、恐らくイーピンが殺しを命じられた人なのだろうが。それがどう見てもツナには見えなかったのだ。

 

「ねえ……ちょっと」

「??」

「その写真……ちょっと見せてもらってもいい?」

 

 イーピンは少しだけ迷った後、ぴらりと一枚の写真を取り出した。

 

(……どうしよう)

 

 写真に写っているのは、ツナじゃない。というか、似ても似つかない。この子の目は節穴か?

 

「……これ、つなじゃないよ」

「!!」

 

 ガーン、という効果音が一番あうような感じで硬直するイーピン。その後、間違えた気恥しさからなのか、滝のように汗が流れ出る。

 

「え、ちょ、なんだよそれー!?」

「~!!」

 

 カチリ、とスイッチが入れ替わったかのように汗が引く。ツナの驚き声を聞いた事で何かが限界を超えたのだろうか、その表れのように額に六つの何かが浮かんだ。

 

「何あれ……?」

「”筒子時限超爆(ぴんずじげんちょうばく)”のカウントダウンが始まっちまったな」

「「は?」」

 

 聞き慣れない言葉に眉をひそめる桃凪達に、淡々と人ごとのように語り始めるリボーン。

 

「イーピンは極度の恥ずかしがりやでな、恥ずかしさが頂点に達すると頭に九筒(キューピン)が現れるんだ」

 

 そして額の筒子(ピンズ)は時とともに減っていき、一筒(イーピン)になってしまうとドカン。そのため、ついたあだ名が「人間爆弾」らしい。

 

「……それは、逃げないと危ないのでは?」

「そだな」

「何で二人ともそんなに冷静なんだよ!?」

「目の前に慌てる人がいると逆に冷静になるものなんだよ、つな」

 

 だからひとまず落ち着いて、とツナを諭す桃凪。しかし、

 

「あ、いたいたー。これ忘れてったよ?」

「京子ちゃん!!」

 

 恐らく、ツナを見つけた時においていたまま忘れていたのであろうイーピンの荷物を持ってきた京子。恐らくこのままでは、京子が危ない。

 

(……そーっと)

 

 そう思った桃凪はこっそりイーピンに近寄るとそのまま京子の元からイーピンを取り上げようとした。が、

 

「……ふぁれ?」

 

 手を伸ばした桃凪の手は何もつかめず、空をつかむだけに終わった。

 イーピンが京子にピットリとすり寄っていたからだ。

 

「イーピンはカウントダウン中恥ずかしさの余り人にすり寄ってくるんだ」

 

 淡々としたリボーンの説明だが、内容はシャレにはならない。

 急いでイーピンを引き剥がした桃凪はそのままツナの方を振り向き、

 

「つな! 投げて!!」

 

 ツナの方に思いっきり投げた。

 

「ええっ!? ちょ!?」

 

 もちろんツナの方に投げたことには意味がある。力の余り無い桃凪が投げるよりも、一応男子であるツナが投げた方が遠くまで投げられそうだと思ったからだ。

 

「う、うわああっ!?」

 

 いきなり目の前に爆弾を持って来られたツナは生存本能に逆らうことなくそのままイーピンを思いっきり投げた。イーピンもイーピンで大人しくしていたのだが、

 

「10代目! 購買の新製品ソーメンパン一緒にどースか?」

「獄寺君!?」

 

 投げた先に丁度よすぎるタイミングで獄寺がやってきてしまい、イーピンはそのまま獄寺の手の中へ。しかし炭水化物と炭水化物の合わせ技のようなパンだ。それを言うなら焼きそばパンもそうだけれども。

 

「獄寺君危ない!!」

「早くその子投げて、はやと!!」

「? はい」

「いやオレにじゃなくてーっ!!」

 

 獄寺がそのまま笑顔でツナにキラーパス。悪気があったわけではないが。

 

「うわっ! あと三筒(サンピン)!?」

 

 そのままツナが投げたイーピンは、

 

「パース」

「もどすなーっ!!」

 

 そのままリボーンがトスしてツナの元に、

 

「あと二筒(リャンピン)!!」

 

 今度こそ、と投げた先にはまたもや人影が、

 

「よーツナ。またオレとお前補習だってよ」

「山本!!」

 

 ポスン、と山本の所にイーピンが、

 

「? 何だこりゃ?」

「いいから山本!! 思いっきり投げてー!!」

「ん」

 

 投げる、の言葉で目の色が変わる山本。そのまま、

 

「しょっ」

 

 空高くへイーピンを放り投げた。

 そして額の筒子(ピンズ)はついにイーピンになって。

 

 ――――――ッドォオオオオオン……!!

 

 まるで花火のように、大輪と称しても差し支えない光が校庭上空に咲いた。

 

 

 

 

 

 ――――その後のイーピンは、もう二度とあのような間違いを犯さぬよう、また、未熟な己を鍛錬すると言う意味も込めて、日本で修業を始めたのだった。

 といっても、またふとした拍子で爆発しそうになったりしているため、まだまだ半人前だろうが。

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