○月±日
でぃーのさんは、かっこいいです。確かに少し不安な所がありますが、いつもはかっこいいですし、部下の前だと一騎当千な人です。
しかし、いくらでぃーのさんでも許せない事はあると思うんです。
つなを強くするために修業したのはいいんです。つなを強くすることには賛成でしたから。
しかし、そこでうっかりつなに大けがさせるのはどうかと思うんです。
話を聞くと、つながけがをしたのはつな自体のうっかりもあったみたいですが、しかし最初からえんつぃおが戦う相手というのもあれなんじゃないでしょうか。
なんて事を考えていたら、つなが入院している先の病院にお見舞いに行くことになりました。
というわけで、行ってきます。
P・S『勝手に読んじゃってごめんなさいね。面白かったわよ。ディーノにはよく言っておくから、あまり怒らないであげてね。あと、男の子に怪我はつきもの。怪我した分だけ成長するから、あまり心配はいらないわよ。 リータ』
第十四話 「お見舞い行ったら色々な人に会いました。」
「おお……いつの間に」
桃凪がいつも書いている日記帳。その名も『桃日記』。ピンク色のノートにマジックで書かれた名前が子供らしさを感じさせる一品だ。
そして一番最近に書いた日記のすぐ下に、流麗な字でコメントが書かれてあった。
最後に書いてある名前を見なくてもわかる。十中八九リータのものだろう。
しかし、いままでは自分以外に見る人などどこにもいなかったから色々書けていたが、見られているとなるとうかつな事はもう書けない。リータは「面白かった」と返してくれたみたいだが、それがどういう意味での「おもしろかった」なのか……云々。
「桃凪ー。お客さんよー」
考え込んで悩んでしまった桃凪の耳に、下の階から呼んだのであろう奈々の声が聞こえてきた。
「? うん」
この時間に誰だろう。恐らく時間帯からしてくるのは山本か獄寺か…そう考えていた桃凪だったが、玄関にいる影に思わず硬直した。
「どうも」
「……はい」
大きい体格に野太い声。とどめは真っ黒い学ランにリーゼント。そして
「お久しぶりです。くさかべさん」
「お久しぶりです。桃凪さん」
実を言うと、夏休みの時に雲雀からの手紙を届けてくれたのは彼だった。その時は暑さのあまり頭がよく回っていなかったが、冷静に考えるとこの図体は目立つ。時代遅れに見えるはずのリーゼントに学ランのコンビが普通にマッチして見えるほどに。
「それで、今回は」
「委員長より、言伝を承ってまいりました」
またか。
心の中でそう思った桃凪には気づかず、草壁はそのまま手に持っていた封筒をこちらに渡してくる。
今回は一体何だろう。確か書類は片づけてるから溜まってはいないはずだし……。
そう考えながら封筒を開けた桃凪だったが、
そこに書いてあったのは、『○○○号室、メロン』の文字だけだった。
「……?」
「実は……委員長は今風邪をこじらせて入院していまして」
「へー風邪………………え?」
草壁が言った一言、それに桃凪の思考がフリーズした。
風邪? あの雲雀が? しかも入院? 風邪で?
(……いやいや分かってるよ。風邪だってこじらせれば大変だし、きょーやはよく屋上とかで昼寝してるし、それで風に当たり過ぎたのかな、風邪だけに。でもきょーやが風邪で入院とか変な冗談にしか聞こえない……。しかも、しかも最悪な事にあの病院にはつなが……)
「桃凪さん、桃凪さん」
「ふぁ……はい?」
毎度おなじみの如く考えすぎでぐるぐるとしていた桃凪だったが、草壁の声で我に返った。
そこでふと思ったことを聞いてみた。
「くさかべさん、メロンってあの果物のメロンですよね」
「恐らくは」
「メロン買うのって私なんですか」
「……恐らくは」
うわーお。
つなの入院見舞に行くだけだったのが、唐突に新たなミッションを言い渡され。
(……どうしよう)
桃凪の心の声は、どこにも届かない。
「こんにちは、きょーや」
「遅いよ」
結局、雲雀には逆らえなかった。
がさごそとビニール袋を揺らしながら指定された部屋に行った桃凪の目に映ったのは、黒いパジャマに身を包む雲雀と、その足元に倒れ伏す者達。
……いつも通りの光景だ。
特にツッコミを入れることも無く、桃凪はそのまま持っているビニール袋を雲雀に渡して帰ることにした。何か関わらない方がいい気もしたし。
「きょーや、はい、メロン」
「…………ねえ」
「じゃー私はこれで」
「ちょっと」
「あう」
帰ろうとしたのだが、踵を返した瞬間に雲雀に襟首を掴まれ脱出不可能。どうしたのだろう、何か問題でもあったのだろうか。
「これ、何?」
「メロン」
「……、」
ぐん、と後ろの雲雀からの殺気が増した気がする。
終始無表情な雲雀だが、襟首に込められている力の強さが半端ではない。別に怒らせる気はなかったのだし、これで大丈夫だと普通に思っていたのだが、雲雀からしてみれば激怒に値するものだったようだ。
そんなに嫌いだったのだろうか。
「美味しいのに……濃厚メロンキャンディ」
「メロンじゃないでしょ、これ」
「メロンだよ。メロン果汁70%配合のまごう事無きメロンだよ」
ぎりぎりと見えない所での押し合いを続ける桃凪と雲雀。このままでは終わらないと判断した桃凪は少し考えた後、口を開いた。
「きょーや、中学生のお小遣いでメロン一玉は無理です」
「知らないよ」
「うわぁお」
理論的な事を言ったはずだったのだが、そのまま暴君論で返されてしまった。もうどうしろと。カットメロンにしておくべきだったか。そもそも病人がお見舞い品のリクエストというのもあれなのだが。
ちなみに余談だが、雲雀は桃凪にあまり武力行使をすることはない。たまにアイアンクロ―を決められたり襟首つかまれたりすることあるが、他と比べたら平和なものだ。
一度その理由を雲雀に聞いてみた事があったのだが、帰ってきた答えは「何か、荒く扱うとすぐ潰れそうだから」だった。彼にとって私は一体どういう存在なんだろうと切実に疑問に思った瞬間でもあった。そんな虫を触るときみたいな言い方されると正直言って切ない気分になってくる。
ふと、雲雀が掴んでいた手を離した。不思議に思い振り返ってみると、そこには呆れ果てたという表現が最も似合いそうな顔をした雲雀が。
「結局、いつまでたっても小動物は小動物だね」
「大丈夫、美味しいと思うから。食べたことないけど」
それじゃ、健闘を祈る。と親指をサムズアップして帰ろうとした桃凪の背中に、雲雀から声がかけられた。
「? わっ」
「あげるよ」
振り向くと同時に視界に飛び込んでくる飛来物。受け取る事が出来るような反射神経があるはずもなく、そのまま飛んできた物体は桃凪のおでこにぶつかって地面に落ちた。
「……?」
目の前で閉まった扉を視界の片隅で見ながら、桃凪は飛んできた物体を拾い上げる。
個包装がされていて、緑色の中に黄色いアクセントが可愛いそれは。
「メロンキャンディシークレット……パイナップル味」
てくてくと廊下を歩く。すれ違う人は病院だけあって様々。
車いすに乗った男の子もいれば、松葉杖をついたお爺さん。忙しそうに看護婦さんが歩きまわって、女の子たちが喋りながら歩いて行く。
普通の光景。特に何かが思い浮かぶこともない。しいて言うなら、この空間にいる人々は皆楽しそうだ。日中の陽気だからなのか、それとも自由な時間に喜んでいるのか、それは分からないが。
「……あれ……?」
ふらり、宙をさまよっていた桃凪の目線が一か所を向く。そこにいたのは見慣れた姿。毎朝会っている。
「たけしー」
「ん? 桃凪か」
振り返った人物はやっぱり桃凪の予想通り。ツナの友達で桃凪の友達でもある山本だった。
普段は学生服か野球のユニフォーム以外あまり見た事が無い桃凪だったが、今日はラフなジャケットにTシャツ、ズボンというとても山本らしい恰好だった。
「つなのお見舞い?」
「おう、親父が船盛り持ってけって言ってよー」
「持ってったんだ……」
病院にいる人間に生魚を持っていくというのもアレだが、それをここまで担いで持ってきたのであろう山本もすごい。
「そういえば、つなの病室ってどこー? さっき行ったんだけど別の所に移ってて分からなかったの」
そう。ついさっき桃凪はツナの病室にお見舞いに行ったのだが、肝心のツナがどこにも見当たらなかったのだ。同室の人に聞いても「知らない」の一点張り。心なしか顔が青かったのが印象に残っていた。
それを聞いた山本はちょっと困ったように頬をかいて。
「ツナのやつか? だったら病室移動したらしいぜ。どこに行くのかまでは聞いてねーけど…」
「なんと」
道理で分からないはずだ。
しかし、だとするとツナは一体どこに?
「ねー、たけ……」
――――――ドォオオオン
「……今の音って、何だろ?」
「? 花火みてーな音だったな」
音もそうなのだが、窓の外が一瞬光ったのも見過ごせない気がする。音といい、閃光といい、どこかで見たような気が。
しかし、考える暇もなく自体は動いて行く。
「はい、どいてどいてー!!」
「しっかりするんだ、君!」
「うう……じゅ、十代目…」
がらがらがら。と患者さんを運ぶストレッチャーと共に医師の方々が走っていく。そしてそこに乗っていたのはやっぱりどこかで見た事があるような。
「……あれさ。はやとだよね」
「あー……。そーいや、来る途中で何回か車にひかれたって言ってたからなー……」
恐らく、ツナが心配で心配で注意散漫になってたのだろう。それは仕方ないが、ボスを守るべき右腕がボスと一緒に入院というのもおかしな話だ。
「……後でお見舞いに行こう」
お見舞い品は、何がいいだろうか。
「……、」
ツナのお見舞いにいざ行かんとしていた桃凪だったが、今はさすがにここはちょっとなー……。と思っていた。
この、何に使われているかよく用途の分からない部屋。
すごく、入りたくない。別に幽霊が怖いとかそういうのではないのだが、何か入りたくない。よくわからないからこそ入りたくない。とにかく入りたくない。
「おじゃ……」
そこには。
ぷくぷくとガラス管に浮く骸骨。なにやらよくわからない医療器具に、どこからか聞こえてくる物音。正直言って、マッドサイエンティストの研究所という言葉がしっくり来る。
「あ! 桃……」
「……ましました」
ぱたん。と扉を閉じておいた。
「……帰ろう」
ついでに、獄寺の見舞いに行って。
「と、桃凪さん!!」
「やっほーはやと、元気……じゃないね」
「さ、サーセン……お見苦しい所を……!」
獄寺を探して三千里。さすがにそこまで長い距離を歩いたわけではなかったが、ちょっと病室が分からなくて迷った。まぁ、あの怪我では重症患者の部屋にいるだろうとは思っていたが。
「十代目は大丈夫っスか? なんかリボーンさんに別の部屋を手配されたらしいんですけど……」
ああ、あの部屋はそれでか。
妙に納得しながらうんうんと頷いている桃凪に獄寺が不安そうに声をかける。それに桃凪は安心するように返しておくと、獄寺にお見舞い品を差し出した。
「? それは?」
「お守り。怪我しないように」
実を言うとここに来る前の売店で買ったものなのだが。
しかし、そんな事情は知らない獄寺はプルプルと震えながらお守りを受け取ると、感涙した。
「オレの体をそこまで心配してくれるなんて……!!」
「うーん……」
そこまで喜ばれると、なんというか。適当に選んだのが申し訳なく思ってくる。
「ごめん、もっといいの選んでくるべきだったね」
「いいえ!! 桃凪さんが差し出したものでしたら例え水道水でもアルプスの天然水以上ですから!!」
「そ、そこまで?」
やっぱり獄寺のツナ好きは異常だ。いくらツナの妹だからって、普通の中学生の自分にもそこまでかしこまらないでいいのに。
「とりあえず、お大事に」
「はい! もうここから一ミリも動きません!!」
「それはやめておこうね」
それではー! とぶんぶん手を振りながら見送ってくれた獄寺と別れて、桃凪は病院を後にした。外に出て、一回伸びをする。すると、
「あ! 桃凪発見だもんね!!」
「Δ●※∟!!」
「?」
またまた聞き慣れた声に振り返ると、ランボとイーピンが駆けよってきた。
久しぶりに見た気がする二人の姿にふわりと桃凪の顔が綻ぶ。やっぱり、小さな子はかわいい。
「ジュース買ってー!!」
「うん。いいよ」
「○〃★∴~♪」
ぐいぐいと手を引かれて歩いて行く桃凪。ランボ達に合わせるように小走りで、しかし追い越さないようなスピードで歩いて行く。
引っ張られながら、ふわりと思い浮かんだ事は。
(……濃い一日だったな)
だった。
ストックが無くなりかけています。助けて。
頭の中のネタを朝起きたら小説に仕上げてくれる妖精さんとかいればいいのに。