○月△日
この前、きょーこちゃんが家に遊びに来ました。なんでも、せんせーが財布を忘れて困っている所で出会ったとか。
そんで、まぁ、色々あって。きょーこちゃんには本当に申し訳ない事をしました。……ごめん。
それでその時、きょーこちゃんと一緒にテスト勉強をする事になったんです。せんせーに頼んでもよかったのですが、せんせーはつなにかかりきりな感じがしたので、頼むのやめときました。
それに、私の部屋を爆破されたくはないし。
というわけで、今日はきょーこちゃんとはなちゃんの3人で勉強に行ってきます。
第四話 「小さい子は無条件で大事にするものです。」
「きょーこちゃん、これの答えわかるー?」
「これ? んー……こうじゃないかな」
「ありがとー」
「あ、桃凪ちゃんこれわかる?」
「これは多分……こうかな」
「ありがとっ」
「あんた達ほんと仲良いわねー……」
ただいまここは京子の部屋。桃凪は京子とその友人である
ツナは京子と一緒に勉強できると聞いてとてもうらやましがっていたが、リボーンに捕まってしまったためあえなく不参加となった。出かける時にツナの悲鳴と爆発音が聞こえたが、あえて気にしなかった。
「やっぱ精神年齢が似てるのよあんたら」
「そーかなー?」
「否定できないかも」
そんな感じで楽しく談笑していると。
『極限!! 帰ったぞぉおおおおおお!!!』
ドバァン!! ととんでもない轟音と共に家を揺るがす大絶叫。
「な、何事!?」
「と、桃凪ちゃん落ち着いて」
「あー……」
何やら訳知り顔の黒川と混乱する桃凪をなだめる京子。そしてそれにかまわずズンズンと近づいてくる謎の人物。
「京子ー! 帰ったぞ!!」
そして今度は京子の部屋の扉がズバン! と開け放たれる。
あんだけ大きい声ならわざわざここまで来なくても聞こえるだろうに。というかこの人は一体誰だ?
唖然としながら謎の人物を見上げる桃凪だが、京子も黒川もこの人物が誰かわかってるらしい。
「もう! 友達が来てるんだからいきなり入ってこないでよ!」
「む! 京子の友人か、挨拶をしなくてはな!!」
人の話を聞いているようで聞いていない謎の人物はくるりとこちらに向き直り。
「オレはボクシング部の
「え、あ、はぁ……。沢田桃凪姫です。以後よろしく……」
「何……!」
桃凪の名前を聞いた瞬間、クワッ! と了平の目が見開かれた。
「沢田とはあの沢田か!!」
「あ、『あの』……? えーと……双子の兄は沢田綱吉です……?」
「!! やはり……!」
そのままの勢いでガシィ! と桃凪の肩を掴む了平。
「よし! 沢田共々ボクシング部に入れ!! 桃凪!!」
「はぃ!?」
正直言って、ついていけない。
なぜいきなりボクシング部? どうやら話を聞く限りボクシング部に所属しているらしき了平。ツナをボクシング部に入れたいのは分かった。しかしなぜ自分も、そこがまったくわからない。
「な、何故私も……」
「うむ! 良い質問だ」
桃凪の肩を掴んだまま、解答を始める了平。というかいい加減痛くなってきたのだが。
「知っての通り、沢田は100年に一人の逸材だ」
(いや、多分違うと思う)
「だからこそオレは近々沢田にボクシング部への勧誘をしようと思っている」
(その話は初耳だ)
「そして! 何よりも!!」
グォオ! と声のボリュームを一段階上げる了平。至近距離で聞いている桃凪の鼓膜は壊れんばかりだ。
「いいボクサーを育成するには優秀なトレーナーが必要不可欠!! そして沢田のコンディションを完璧にできるのは桃凪、お前だけだぁああああ!!」
「あ、あの! ゆ、ゆゆゆ揺らさないでぇええええ!」
ノリに乗ったらしき了平のテンションと共に首がもげるのではないかというほどガックンガックン揺さぶられる桃凪。死ぬ、これは本当に死ぬ。
「お兄ちゃんったら!! いい加減にしてよ!」
「む……」
そろそろお花畑が見えてきた桃凪に突如聞こえた救いの声。その声を聞いて了平の桃凪を揺さぶる手がぴたりと止まる。助かった。京子、本当にありがとう。
「ちょっと、大丈夫?」
「あー……うん……。ちょっと、おじいちゃんがあっちに…」
「本当に大丈夫!?」
先程から黒川に意識確認をされているが、正直目の前がぼやけて何も見えない。うーむ、おじいちゃんは意外と若いというかツナそっくりだなおじいちゃん。いやツナがおじいちゃんそっくりなのだろうかこれ。
「あれほど桃凪ちゃんをボクシングに誘うのはやめてって言ったのに!」
「いやしかし例え京子の頼みでもこのオレの熱いボクシングへの情熱を止めることはできん!」
どうやら了平はそのまま京子のお説教コースまっしぐらのようで。なんというか、力関係がわかりやすい兄妹だなと思う。うちの家は良くも悪くも半々くらいだし。
「京子ー。電話が来たわよー」
階下からの声。あれは確か京子ちゃんのお母さんの声か。
「大体お兄ちゃんはね……え? 誰だろ?」
それを聞いた京子はトントンと下に降りていく。そして残された桃凪達。
「ではな! 入部の話、考えておいてくれ!!」
そして了平は自分の部屋に戻ったらしい。去り際に置き台詞を忘れずに。
「はぁ~。京子の家にくるとこれが毎回あるのよね~」
「そうなんだ……」
だから黒川は京子の家で勉強すると聞いた時に渋ってたのか、と桃凪はいまだよく回らない頭でぼんやりと思う。いや、物理的な意味ではよく回っていたが。
「桃凪ちゃん、ツナ君から電話だよー」
「え?」
ツナが自分に? 一体何があったのか。もしかしたらリボーンの指導が厳しすぎて息抜きに電話してきたのだろうか、そんなことリボーンが許すとも思えないが。
そんな疑問を抱きながら受話器を取る。
「もしもし?」
『ああ、桃凪。ちょっと悪いんだけどさ――すぐ帰ってこれない?』
「なんでー?」
『いやー、いろいろあってさ『ぐっぴゃああああ!』あーコラまた!!』
ブツン!
…………、
……、えーと?
「桃凪ちゃん? ツナ君なんて言ってたの?」
「んー、なんか呼ばれたから帰る事になった?」
「そうなんだ……、ねえ、今度はどこかに遊びに行かない?」
「……いいの?」
「いいよ!」
「……ありがとう」
「……ふむ」
今の桃凪の精神状態を一言で表わそう。
困惑。これ以外にない。
「どーもー、過去の桃凪さん」
「……誰ですか?」
目の前にいるのはなんか、伊達男って感じの男性。年齢的に、桃凪と同じか少し上というくらいだろう。
「オレの名前はランボです。この時代だとまだまだ子供ですが」
「この時代?」
「それ」
そういってランボが指さしたのは普通のバズーカ。いや、バズーカなんてものが普通に転がっている時点で普通ではないか。
「それは『10年バズーカ』と言いまして、それを自分に撃つと10年後の自分と5分間だけ入れ替わる事が出来るんですよ」
「へー……」
なんでそんなものがあるのか、なんて事はつっこまない、つっこまないよ。
「……そろそろ時間のようですね。では桃凪さん、また」
「あーうん、またね」
別れの挨拶をした途端、ポムンという音と共につい先ほどまでそこに佇んでいたランボの姿が消える。
いや違う、消えたのではない。
「ほぇ……?」
声は足元。視線を向けると牛っぽい着ぐるみを着た5歳くらいの男の子が。これが今のランボなのだろうか。
ランボはしばらくキョロキョロとあたりを見回して、桃凪に気づいた。
「! おまえ誰?」
「桃凪だよ、君は?」
もうすでに10年後のランボから聞いていたが、自己紹介と言うのは小さな子にはかなり重要なプロセスだ。これを無視することはできない。
「オレっちランボさんだよ! 好物はブドウと飴玉なランボさんだよ!」
「そうなんだ~」
やはり、小さい子とは可愛い。普段は周りを見上げる立場の桃凪にとって、自分が見下ろす事になる存在と言うのはとても新鮮だ。
「あ、桃凪!!」
「ん?」
玄関にずっといたために気づかなかったが、どうやらツナがランボの
「つな、ただいま」
「お帰り……じゃなくて!」
「つな……」
心底落胆した、という視線をツナに向ける桃凪。ツナはツナで何故そのような視線を向けられるのかがわからない。
「小さい子は大事にしなきゃだめだよ?」
「…………その小さい子がマフィアでウザくなかったら大事にするさ……」
がくり、とツナが脱力する。
「小さい子は世界の宝だから」
沢田桃凪姫。子供好きである。
ストックあるうちはサクサク行きますよー。無くなったらたぶん月一更新とかになりますよー。