ーーう。
霞がかった意識が段々と覚醒してくる。
ーーうん?
もぞ、と何かを動かす感覚があった。
何だろう、と考えてから、自分の腕である事に気付く。
視界も回復してきた。
ぼやけてはいるが見える。やはり自分の腕だった。自分が動かした方向に動く人形のように真っ白で細い……
ーーあれ?
違和感を感じた。何に?
ぱっ、と今までもやに包まれていたような意識が急激にはっきりしていく。
もう一度腕を見る。
真っ白だ。さっき言った人形のような、というような表現がしっくりくる細い腕。
胴体を見下ろす。
ゴスロリと言うのだろうか。黒の生地に赤いフリルがたくさんついているドレスのような服を私は着ていた。ついでに、その時私の髪が落ちてきた。銀色の綺麗な髪だった。
ーー何で?
そんな事を考えると、急激な浮遊感が私を包んだ。
視界に、真っ青な大空が入ってきた。
ーーは?
私が思考停止していると、そんなのは知った事じゃないと言わんばかりに働き始めた万有引力。
「きゃああああああああああああ!?」
あまりの急展開に声が出せない私にそんな悲鳴が飛び込んできた。
声の方向を見ると二人の少女と一人の少年が自分と同じように落下していた。
人間、自分と同じ境遇の人を見ると安心するものである。特に悲鳴を上げている良いとこのお嬢様っぽい少女が面白いくらいに動揺していて少しほっこりしてしまった。もうひとりの猫を抱えた少女も目を白黒させている。
そうだよね。そうなりますよね。私が思考停止してもおかしくないよね。だってこの状況は異常だもんね。
だからそこの少年。何であなたは大爆笑しているのん?笑うポイントが見当たらないんですけど?
そうして妙に冷静に少年少女を観察していると、まあ落下していればそのうち地面が来るわけで。
あ、ゲームオーバーですね、分かりm
ザバァァァァン!!!
「し、信じられないわ!まさか問答無用で 引きずり出された挙句、空に放り出すだな んて!」
「右に同じだ、クソッタレ。一歩間違えればゲームオー バーだぜ。コレなら石の中に呼び出された ほうがまだいい方だ」
「……いえ、石の中に呼び出されては動けない でしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
一緒に落下してきたのであろう少年少女達の掛け合いを聞き流しながら、私は水面に映る『私』の姿を見て混乱を極めていた。
映っている『私』の姿。それは初めて見る姿であり、見慣れた姿でもあった。
頭にあるのは前世のような知識。『私』はオタクと呼ばれる人種だったのだろうか。思い出や名前などは全く分からないが漫画やゲームのことや常識的なことだけは覚えていた。
そのなかで今の私の容姿に合うのは、とあるカードゲーム。《デュエル・マスターズ》と呼ばれるそのゲームの中での人気カード。
『特攻人形ジェニー』または『解体人形ジェニー』というカードのイラストとそっくりだった。
特攻人形ジェニー
種類 クリーチャー 文明 闇 種族 デスパペット パワー 1000 コスト 2
特殊能力 ■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、 このクリーチャーを破壊してもよい。そうした場 合、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。
解体人形ジェニー
種類 クリーチャー 文明 闇 種族 デスパペット パワー 1000 コスト 4
特殊能力 ■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の手札を見てその中から1枚選び、捨てさせ る。