【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

12 / 68
ライバル宣言

「あぁ~! 今日もきつかった~。あぁ、早く部屋で寝たい」

 

「でも残りはあと2日。ギリギリなんとかなるかもね」

 

「あら? 今夜の就寝時間が書いてない?」

「印刷ミスじゃない?」

 

『遠月学園全生徒の諸君。今から1時間後、22時に制服に着替えて大宴会場に集合しなさい』

 

 3日目の課題を乗り切ったわたくしたちは、ふと今日の就寝時間が“しおり”に記載されていないことに気が付きました。

 嫌な予感というのは当たるもので、案の定、堂島シェフからの放送でわたくしたちは大宴会場に呼び寄せられます。

 

 

「全員が集まっても、なんだか寂しくなりましたわ」

「う、うん……、そ、そうだね……」

 

 大宴会場に集まった人数は既にかなり少なくなっていました。

 残った方々も皆さん疲労困憊の様子です。

 

 それにしても――四宮シェフとの食戟以降、恵さんは時折わたくしの顔を見ては顔を赤くして俯いてしまいます。わたくし、何か嫌われるようなことをしたのでしょうか?

 

「ソアラさん! 卒業生と食戟なんてバカなことを! あなたに何かがあったら、私は……!」

「そうだ、君は何を考えてるんだ! もっと冷静な人だと思っていたが……!」

 

「んだよ? てめぇは」

「君こそなんだ?」

 

 集合場所でにくみさんとタクミさんにわたくしは詰め寄られました。どうやら四宮シェフとの食戟のことをご存知のようです。

 2人ともわたくしのことを心配してくれていたのですか……。お優しい方たちです。

 

「でも、ソアラさんがここにいるってことは……」

「まさか四宮シェフに!」

 

「「そうなのか!?」」

 

「まぁ、お二人共息がピッタリですわね。お恥ずかしながら、四宮シェフには完敗してしまいました」

 

 テンポと波長の合うお二人を見てわたくしは和んでいましたが、正直に惨敗したことをお伝えしました。

 四宮シェフはわたくしよりも遥か高い位置に居られる。ちょっとやそっとでは追いつけない――そう思い知らされました。

 

 

「聞いたわよ。無茶をしたって」

 

「あら、えりなさん。思ったよりも噂になっていますのね……」

 

 にくみさんとタクミさんに続いて、こちらに現れたえりなさんも食戟のことを存じ上げていたみたいです。

 ジト目でわたくしを見る視線は少し怒っているように見えました。

 

「あなたの料理、一応待ってあげているのだから……、無駄死にだけは許しません」

 

「肝に銘じておきますわ。次はもっと力をつけて……」

 

「あの編入生またえりな様と絡んでる」

「なんで、あんなに親しげなんだ?」

「卒業生に喧嘩を売る、クレイジーな奴だって聞いたぜ」

 

 えりなさんはここでわたくしが潰れることは許さないと言ってくれました。

 そうですわね。わたくしも約束が守れるように研磨を続けませんと――。

 

 

「全員ステージに注目! 集まってもらったのは他でもない。明日の課題について連絡するためよ――」

 

「課題内容はこの“遠月リゾート”のお客様に提供するに()()()()()()()の新メニュー作り。()()()()()()()()一品を提案してもらいたい。メインの食材は卵。和洋中といったジャンルは問わないけど、ビュッフェ形式での提供を基本とする」

 

「審査開始は明日の午前6時よ。その時刻に試食できるよう準備しなさい」

 

 ステージ上で堂島シェフが明日の課題について話をされます。

 卵を使った新鮮な驚きのある一品をビュッフェ形式で提供することが課題のようです。

 ふむ、卵料理ですか。しかも明日の早朝開始となると――。

 

「んん~? 私の聞き間違いかな? 午後6時だよね?」

「いいや完全に午前って言ったぜ」

 

「うう~! ってことは~!」

 

「寝てる場合じゃな~い!」

 

「朝までの時間の使い方は自由。では明朝また会おう。解散!」

 

「無理だ、もう全身ががたがたなのに」

「こんな状態でまともに頭働かねぇよ!」

 

 そう、既にわたくしたちは満身創痍。その状態で明日の早朝の課題に対応せねばならない。

 これはかなり体力と精神力を削られますわね。

 

 

「卵料理か……」

 

「やはり、タクミさんはイタリア料理ですの?」

 

 腕を組んで考え事をしているタクミさんにわたくしは話しかけました。

 彼はイタリア料理を得意としてますので、当然そちらからアプローチをされるでしょう。

 

「もちろん。イタリアの定番卵料理があるんだけど、これが卵にチーズとか野菜をからめて……。――っ!? 痛いな! イサミ!」

 

「とりあえず、ネタバレは明日にしなよ兄ちゃん。いくら幸平さんに格好つけたいからってそれはダメだよ」

 

「では、明日を楽しみにしておきますね。お互い頑張りましょう」

 

「や、やはり可憐だ……」

「じゃ、幸平さん。また明日……、兄ちゃんが馬鹿でごめんね」

 

 タクミさんがイタリアの卵料理についてレクチャーしようとすると、それをイサミさんが止めます。

 確かにこの場で手の内を明かすのは適切ではないかもしれませんわね。これはわたくしの配慮不足でした。

 

 

 タクミさんがイサミさんに連れて行かれたとき、ちょうど目の前をえりなさんが通りかかってわたくしと目が合いました。

 

「そういえば、わたくしの編入試験も卵がお題でしたね」

 

「まさか、あの料理を出すつもり?」

 

「いえ、せっかくの機会ですから新しいメニューでも作ってみようかと」

 

 卵料理の話題を振られてわたくしは魔法のお蕎麦を出すのかと問われたので首を横に振りました。

 今回はホテルのビュッフェですし、もう少しボリュームを抑えたメニューの方が良いでしょう。

 

「そうね。このホテルに見合うような品を考えなさい」

 

「ええ、えりなさんの品も楽しみにしています」

 

「そ、それと、明日の夜は……、また……」

 

「はい。手品の方も新作をご用意させていただきますわ」

 

「――っ!? ご、ごきげんよう」

「えりな様、顔が赤いですが風邪ですか!? わ、私フロントから薬を――」

 

 わたくしがえりなさんにまた手品を披露する約束を覚えていると口にすると、彼女は顔を真っ赤にして足早に去っていきました。

 うふふっ、相変わらず愛くるしい方です。

 

 

 

「さて、停滞とは退化と同じだと堂島シェフも仰ってましたから……、新しいモノにはチャレンジはしませんと」

 

「見た目の斬新さよりも、やはり食感で驚いてもらいましょう。ともすると、アレを作ってみますか」

 

 わたくしは新しい食感を楽しんでもらえるような新メニューを思いついて試作作業に励みました。

 これなら、お客様も喜んでくれそうですわ。

 

「ええーっと、ここをこうして……。――っ!? ふぇっ!? ど、どちら様で!?」

 

 そんなことを考えながら試作品を作ったのですが、目の前に肌が透き通るように白く、麗しい銀髪の女性が黙ってこちらを見ていることに気付きました。

 

 い、いつの間にいらしていたのでしょうか? というより、この方はどなた様です?

 

「なかなか美味しそうな品が出来そうね」

 

「き、恐縮です。し、しかし、これだと失格は確定なんですの……」

 

 試作をご覧になった彼女は美味しそうと口にしましたが、これをそのまま出すと恐らく落第点だと確信していました。

 

「あら、さすがに気が付いていたの? 噂の編入生さん。それなら、別の品にするんだ」

 

「いえ、これを何とかしてみようと思案していますわ」

 

 しかし、せっかく自信を持って作ることが出来たこの新メニュー。是非ともこれを明日の審査で食べて頂きたい。

 わたくしは何とか工夫してそれを残りの時間で実現させようと考えております。

 

「ふーん。じゃあ、私のライバルになり得るか明日お手並みを拝見させてもらうわ。――っ!? ちょっと、リョウくん! 突っ立ってないで退いてよ」

 

「だって、お嬢がこの位置で立ってろって」

 

「それは相手を威嚇するときだけとも言ったはずだわ」

 

「……………」

 

「な、何だったのでしょう? でも、可愛らしい方でしたわ」

 

 銀髪の女性は後ろで威圧感を放っていた男性にぶつかり、何やらよくわからない会話をして去っていきました。

 そういえば、名前を聞きそびれましたわ……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 翌日、わたくしはホテルのビュッフェ会場に足を運びます。

 そして、自分に与えられた持ち場をようやく見つけました。

 

「えっと、わたくしの場所はここですわね。――あら、えりなさん。お隣でしたか」

 

「そうみたいね。私とあなたの料理の差が大きく出てしまっても恨まないでね」

 

 なんとわたくしの隣のブースはえりなさんのブースでした。

 これは嬉しいです。なんせ、わたくしは彼女の調理風景を見たことがなかったのですから。

 

「ええ、もちろんですわ。えりなさんの料理を間近で見られるなんてラッキーですの」

 

「相変わらず、ネガティブなのかポジティブなのか、わからない子……」

 

「お互いに頑張りましょう」

 

「頑張るのは良いけど、あなた、もしかしてスフレの何かを作るつもり?」

 

 わたくしがえりなさんに笑いかけますと、彼女はわたくしの調理器具に視線をやり眉をひそめます。

 まさか、わたくしの作る品が早くもバレてしまいましたか……。

 

「はい。わたくしはスフレオムレツというものを作るつもりです。卵白をメレンゲ状に泡立ててから焼くことで普通のオムレツじゃ味わえない食感に仕上がります。予想外の食感に出会うことも料理の驚きの一つだと思いまして……」

 

 そう、わたくしの新メニューはスフレオムレツです。

 この独特の食感を是非とも味わってもらいたくて、準備をしました。

 

「はぁ……、あなたにはがっかりしたわ。今さら遅いけど、そんなの作ったら……」

 

「ええ、時間が経てば見た目が悪くなりますの」

 

「――っ!? あ、あなた知っていたの!? じゃあどうして?」

 

 やはり、えりなさんが眉をひそめられたのはスフレオムレツをそのまま出すと、時間が経てば直ぐに萎んでしまう点のせいでした。

 ですから、わたくしは少しだけ冒険をします。上手くいけば良いのですが――。

 

 ちょうどその時、会場の大きなモニターに堂島シェフが映り、今回の課題の合格条件についての説明が始まりました。

 

『これより、合格条件の説明に入る。まずは審査員の紹介をするわ。遠月リゾートが提携している食材の生産者の方々そしてそのご家族……。審査は非常に正確でおいてよ』

 

 会場の中に入られたのは生産者の方とその家族の方々でした。生産者の方々も何やらただ者ではなさそうな感じです。

 

『そして我が遠月リゾートから調理部門とサービス部門のスタッフたちも審査に加わる』

 

「サービス部門を率いる給仕長!」

「堂島シェフの右腕の料理人まで!」

 

 そして、さらに遠月リゾートのスタッフの皆さんも次々と会場内に入ってこられました。

 

『合格基準は2つ。生産者のプロと現場のプロ、彼らに認められる発想があるか否か! そしてもう1つは今から2時間以内に200食以上を食してもらうこと!』

 

 なるほど、生産者の方と現場の方の支持を受け尚かつ200食分の皿を出さなくてはならないということですか。

 こういう試験だということは想定はしておりましたが、2時間で200食とは――あまりイメージが出来ませんね……。

 

 こうして、宿泊研修4日目の早朝の課題がスタートしました。

 

 

「えりなさんは、エッグベネディクトですのね。卵料理の王道中の王道で驚きのある一品を目指すなんて流石ですわ。――なるほど、カラスミを使って――」

 

「あ、あなたね。私の品を見るのは良いけど、まだ1食も作ってないじゃない。これがビュッフェ形式だって分かってるの?」

 

 えりなさんの黄金のように輝く美しいエッグベネディクトに見惚れていますと、彼女はわたくしがまだ一食分も用意していないことを怪訝そうな表情をして指摘してくれました。

 

 そうなのです。わたくしの場合はメニューの特性上、まだ調理を開始するわけにはいかないのです。

 

「ええ、すみません。えりなさん。たまたま隣同士になったので、決してダシに使おうとは思ってなかったのですが――。えりなさんがお隣でラッキーな出来事がもう一つ増えましたわ」

 

「今ごろになって火をかけた……、一体何を……?」

 

 それにしても、えりなさんの隣が自分のブースなのは本当に幸運でした。

 すぐに沢山の方々が彼女の品の前に列を作ってくれましたから――。

 

 ここに来てわたくしは調理を初めて開始しました。

 

「うわぁ! いい匂い。何を作ってるの?」

 

「うふふっ……、お嬢様、今からわたくしの手品を見せて差し上げますわ」

 

「すごーい。お姉ちゃん料理上手だねー」

 

 わたくしは注目を惹くために敢えて派手に調理を見せます。フライパンから高々と卵を飛び上がらせてみたりして……。

 パフォーマンスのおかげでえりなさんの料理のために並んでいる方々もこちらをご覧になってくださいました。

 

 時間が経てば萎んでしまうメニューなら、()()()()出来たてで食べてもらえばよいのです。

 このやり方はデパートの実演販売で思いつきました。

 

「おあがり下さいまし。出来たてで美味しいですよ」

 

「ぷるぷるしてる。――わぁ~、美味しい! ふわふわの泡が溶けてくみたいに口の中からなくなっちゃった!」

 

 最初のお客様である可愛らしいお嬢様が大きな声で感想を口にしてくれたおかげで、えりなさんの列に並んでいる方々が数珠つなぎのように、こちらに興味を持ってくださいました。

 

 さて、テンポを上げますわ。もっと、速く――最速で最短でお客様のお口に運べるように――。

 

「ん? 何? 何?」

「普通のオムレツじゃないの?」

 

「何これ! 風味はオムレツなのに食感はお菓子のスフレみた~い!」

「出来たてで食べられるから、温かくていいな」

「その場で作ってるのに、すごい速さで出来るから全然待たない。もう一つ食べちゃおうっと」

 

「――というか、幾つ同時に作ってんだ? あの子……、ちょっと普通じゃないぞ」

「そんなことよりあそこの2人、アイドル並に可愛いんだけど、芸能人かな?」

 

「お待ちどうさまですわ!」

 

 わたくしは並んでいるお客様を待たせないためになるべく多くのスフレオムレツを一度に仕上げて出すようにしました。

 このやり方はスピードが命。待たせるようなことをしてしまいますと、お客様は別のメニューに行ってしまうでしょう。

 

「ま、まさか。私の隣がラッキーと言ったのは……」

 

「はい。えりなさんの品が人気がないわけがないですから、人が容易にこちらに集まって来られたのは本当に幸運でした。こうやって沢山のお客様を楽しませながら、美味しいお料理を召し上がって貰えますから」

 

「――っ!? 課題中だっていうのに、この子はなんでこんなに笑ってられるの? それにこの雰囲気は、()()()と同じ……」

 

 しかし、まぁこれは想定よりも出来過ぎでした。なんせ1番の難関だと思っていた人集めがえりなさんのおかげで簡単にクリア出来てしまったのですから――。

 やっぱり皆さんにお料理で喜んでもらえるのって――楽しいですわ……。

 

『薙切えりな、200食達成!』

『幸平創愛、200食達成!』

 

 そして、えりなさんが200食を達成するのとほぼ同時にわたくしも200食を達成することができました。

 この結果は、運としか言いようがありませんわね。

 

「す、すみません。えりなさんのおかげでかなり楽に――」

 

「勘違いしないことね。これくらいで私の隣に並んだなんて」

 

「そ、そんな。わたくしはそこまで思い上がったりしていませんわ。えりなさんの隣でなかったらこんなに早くは捌けないですもの」

 

「でも、この学園で初めて張り合いのある人に出会えた気がするわ。認めてあげましょう。幸平創愛をこれからライバルだと」

 

 わたくしがこの結果はえりなさんのおかげだと本心から思っていましたので、それを彼女に伝えると、えりなさんはわたくしをライバルだと認めると仰ってくれました。

 

「えりなさん……」

 

「待ってるから。あなたがここまで来るのを。私を悦ばせなさい!」

 

 彼女は女王様のような風格を漂わせて、「待ってる」とはっきりと言いました。

 これまでも同じようなことを言ってくれてましたが、今回の「待ってる」は彼女の強い意志が込められているように感じられて――わたくしの胸は張り裂けんばかりにドキドキしました。

 

「はい。お約束しますわ。うふふっ……」

「ちょ、ちょっと、まだ課題中よ! は、離れなさい」

 

 感極まったわたくしはえりなさんに抱きつくと、彼女は手をバタバタさせて驚いた声を出しました。

 あら、そういえばまだ課題中でしたね。忘れていましたわ。

 

「か、かわいい……」

「なんか、良いもん見た気がする」

 

 そして、200食を達成しても尚……、お客様は次々とやって来まして……。

 わたくしは出来たてのスフレオムレツ出し続けました。2時間の審査時間いっぱいまで――。

 

「ふひぃ〜、少々疲れましたわ」

 

「少し疲れたって……、あなた、どうかしてるわよ。後半ペースが衰えたとはいえ、私と5皿しか差がないなんて。あんなやり方で402皿も作ったら、疲労骨折してもおかしくないのに」

 

「だって、えりなさんのところにこんなに沢山の方々やって来るなんて思わなかったのですもの。そしたら、こちらにも次から次へとやって来まして――。作れと言われれば作るのが料理人ですから」

 

 そうですか、402食も出してましたか……。途中から数えるのをやめてましたが、道理で息が切れるわけです。

 えりなさんのところのお客様が途切れないせいで、わたくしのところのお客様も断続的にやって来ますので、休む暇がありませんでした。

 

「あなた! すっごいのね! あんな強引なやり方でこんなに皿を出すなんて! 約束通り、私のライバルにしてあげるわ!」

 

「あ、あなたは昨日の……、ええーっと、今さらなので非常に申し訳ないのですが――どちら様でしょうか?」

 

 えりなさんとそんな会話をしていますと、昨日の女性が身を乗り出してわたくしをライバルにすると仰ってくれました。

 よく見るとえりなさんに少し似てるような……。

 

「まだ名乗ってなかったわね。私は薙切アリス。あなたたちの頂点に立つ者よ。私とえりなはいとこ同士、5歳のときまで一緒のお屋敷で過ごしていたのよ」

 

「まぁ、えりなさんの親戚の方でしたか! 道理で可愛らしい方だと思いましたわ」

 

「か、可愛い? そ、そんな当たり前のこと……。――じゃなくてナンバーワンになるのは、あなたでも、えりなでもなく私なの。お分かり?」

 

 彼女は薙切アリスさんと言って、えりなさんのいとこなのだそうです。

 名前や見た目からしてハーフの方でしょうか? とても愛らしくて可愛い方です。

 

 どうやら、彼女はえりなさんにライバル心を燃やしているみたいです。

 

「最新技術ばかりありがたがる料理人に私たちが負けるなどあり得ません」

 

「たち? え、えりなさん、私もシレッと含めないでほしいのですが……。アリスさん、お互いに競い合う仲になれるなら嬉しく思いますわ。あ、あの、わたくしとお友達になってください」

 

 えりなさんがアリスさんの挑発をわたくしを巻き込みながら返すものですから、焦ってしまいました。

 とりあえず、ライバルだと仰ってくれた彼女ともお友達になりたいので、わたくしはアリスさんに手を差し出します。

 

「友達? あははっ、私は自分より弱い子と馴れ合う気はないの。私を直接、打ち負かすことができればなってあげてもいいわよ」

 

「承知しましたわ。そのときは頑張ります」

 

「食えない子ね。行くわよリョウくん」

「…………うす」

 

 アリスさんは食戟で自分を打ち負かすことが出来たら友達になってくれると言って去っていきました。

 うーん。友達になることを賭けて食戟って出来たのですね。知りませんでした。

 

 その後、わたくしたちは更に課題をこなして、ついに宿泊研修の最終日を迎えます。

 

 わたくしたち、極星寮のメンバーは全員が生き残ることが出来ました。

 

 

「最後のプログラムとは合宿終了を祝うささやかな宴の席よ! 今から君らには卒業生たちの料理で組んだフルコースを味わっていただくわ。ここまで生き残った628名の諸君に告ぐ! 宿泊研修の全課題クリアおめでとう! 存分に楽しみなさい!」

 

 なんと最終日はご褒美がありました。先輩方のフルコースを食べることが出来るという――。

 

 わたくしたちは課題の疲れを忘れて、最高の料理を食べて至福の時間を過ごすことが出来たのでした。

 

 これで、厳しかった宿泊研修は幕を閉じます。

 わたくしはこの研修で少しは成長出来たのでしょうか――。

 

 




とりあえず、宿泊研修編は終了。
えりなとアリスからライバル宣言をされたソアラの運命は……。
アリスとはそのうち仲良くなるイベントを用意します。
次回は父娘の対面です!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。