【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら 作:ルピーの指輪
あと、作者の料理知識は皆無なので、変なところがあったらごめんなさい。
「あんたもAブロックかい? 幸平創愛……」
「あら、北条さんでしたっけ? お久しぶりです」
“秋の選抜”の予選――Aブロックの会場にたどり着いたわたくしは調理の支度をしています。
すると、選抜者の発表のあった日にわたくしと恵さんに四宮シェフとの食戟について尋ねてこられた北条さんが声をかけてきました。
「あんたや田所恵のような腑抜けがいるから、女だというだけで馬鹿にされるんだ。特に田所恵はダメだね。見るからに弱っちいからナメられる」
「――っ!? 恵さんは弱くなんてありませんよ……」
「何っ……?」
北条さんはわたくしの事ばかりか恵さんのこともダメだと決めつけるような発言をされます。
それだけは聞き捨てなりません。
『11時になったので調理開始!』
「あなたに彼女の調理がお見せできないのは残念ですが――わたくしがあなたを納得させるような品を作れれば、今の言葉取り消してくださいますか?」
わたくしは前髪を後ろに結び、北条さんに自分が彼女を納得させることが出来る品を作れば恵さんに対して言い放ったことを取り消すように話をします。
「こいつ……、さっきまでと雰囲気がまるで違う……! 良いだろう。あんたが私より高い点数が取れれば田所恵のことも含めて取り消してやるよ!」
「承知しました。では、お互いに頑張りましょう」
「今度は笑った? 意味が分からない……」
わたくしの申し出を受けてくださった北条さん。それならば、わたくしは全力で目の前の審査員の方々の為に最高の一品を作れば良いだけです。
「なんだ。ソアラさん、すげぇ気迫だな。私も負けてらんねぇ! ぜってぇ、一緒に本戦に行くんだ!」
にくみさんに背中を叩かれ、わたくしは調理を開始しました。
さて、楽しんでいきましょう。これだけの沢山の素晴らしい料理人の方々とお料理を出し合えるのですから――。
「そろそろ頃合いでしょうか……」
「ドライカレーか……、玉ねぎとニンニクを煮込んでから、さらに鶏もも肉とトマト、ショウガを加えて、煮込んでいる」
わたくしが鍋の蓋を開けようとしたとき、葉山さんが中身を見事に当てます。
そう、わたくしの品はドライカレーです……。それにしても――。
「香りだけで、そこまで分かるとは流石です」
「しかし、まだ工夫が隠されてそうだな」
「ふふっ……、それは出来上がってからのお楽しみですの」
わたくしは葉山さんの鋭敏な嗅覚に改めて感心しました。
美味しくできる工夫は出来る限り積み上げましたが、果たして皆さまに喜んでもらえるような一品になっていますでしょうか……。
「そこまで〜! これより審査に入ります!」
「審査員は5名。お1人20点の持ち点! つまり合計100点満点で料理を評価していただきその得点上位4名だけが本戦に進出できるというわけです!」
「それでは、まず一人目の審査をお願いします!」
全員の調理が終わり、審査が始まりました。5人の審査員の方々の点数の合計の多い方から4名のみ本戦に進出できるみたいです。
この中で4番までに入るのは至難ですわね……。
一人目、二人目と次々に審査員がカレー料理の審査を下します――。
「あぁ、あの~。ひょ、評価のポイントは?」
「聞こえなかった? ダメって言ったのよ」
「ううっ……! ごごご、合計得点は19点、です」
「千俵なつめはまた0点か」
「もう10人以上審査してまだ1点も出してない」
「どれも美味しそうな品でしたのに……」
審査員の点の付け方はかなり辛口で、特にカレー業界で強い権力を持つという千俵なつめさんという方はずっと0点の評価をつけていました。
こ、怖そうな方ですわ……。Aブロックの司会をされている佐々木由愛さんも萎縮されていますし……。
「でで、では! つ、次の方……、黒木場リョウ選手お願いしまーす!」
「おや、あの方はアリスさんとよく一緒にいらっしゃる」
「何かソアラと一緒で調理中だけ人が変わってたよね」
「さ、榊さん? わ、わたくしって、あんな感じですの?」
アリスさんの後ろによく立っていらっしゃる黒木場さんはバンダナを巻くと人が変わられたように明るい性格になり、楽しそうに調理していました。
確かにわたくしも髪を結ぶと気合いが入るので似ているといえば似ていますね……。
彼の料理は豪華な伊勢エビの魚介カレーですね。
「おぉ。エビの燃えるような赤と鮮やかな黄色のサフランライスとの対比が美しい」
「足やヒゲも傷付けることなく完璧に仕上げている」
「確かに豪快な調理からは予想もつかないなんとも繊細優美な盛りつけですね」
「ふん! 伊勢エビカレーを出す店なんていくらでもあるしただの魚介カレーじゃ話にならないわ」
見た目は高評価でしたが、なつめさんはそれでも不機嫌そうな顔をされてました。
しかし、一口食べると表情を変えてもう一口目を口に運びました。
「おお! なつめ様が初めて二口目を!」
「こちらAブロック。ただいま黒木場選手の審査中です」
「ふにゃあああ……」
そして、彼女は恍惚とした表情を浮かべます。
「べ、ベースになっているのはアメリケーヌ・ソース。甲殻類の殻をこして作るフランス料理のソースね。そしてこの深い木々の香り。――この香りの正体は…コニャックだわ!」
「フランス西部の町コニャック周辺で造られる高品質のブランデーですなぁ」
「ブランデーは熟成している間に樽の香りが移っていく。だからこそこのカレーにも杉・白檀といった木々の重厚な芳香が感じられたのか!」
黒木場さんが使ったのはコニャックですか……。
なんだか、オシャレでゴージャスなカレーですね。審査員の方々も美味しそうに召し上がってます。
「ま、まあ悪くない品だったわ。これなら点数を付けてもいいかもね。では採点を――」
「まだだ。試食を終えるのはまだ早いぜ!」
「それいちいちやらなきゃダメなわけ?」
審査員の方々が採点に移ろうとすると黒木場さんはバンダナを巻いて気合を入れ直し、スポイトを取り出しました。何をするのでしょう?
「スポイト?」
「どうやらこの中身もコニャックのようだが……」
「まだ味わってない部分があんだろ? 伊勢エビの頭ん中エビ味噌だよ! こいつを数滴殻の中にたらしてから味噌をすする。それがいちばん美味い食い方なんだ!」
「くっ! 啜れですって!? そんなはしたない真似――」
「このコニャックとエビ味噌を啜ってからもう一度ルーとサフランライスを頬張ってみろ。さっきまでとは比べ物にならねぇ美味さだからよ」
さらに、伊勢エビの味噌にコニャックを垂らしてすすってから、もう一度ルーとライスを食べるという食べ方を勧められ、皆さんはそれに従います。
すると、なつめさんは人が変わったように食べる勢いが止まらなくなってしまいました。
黒木場さんの一品がそれほど魅力的だったのでしょう。
『黒木場選手! 93点!』
「まぁ、高得点が出ましたわ。あのカレーとっても美味しそうです……」
「喜んでる場合かよ……」
ようやく高得点が出てわたくしが喜ぶと、伊武崎さんは呆れたような声を出しました。
美味しいモノを召し上がるとあのような良い表情をされることが分かったので、朗報だと思ったのですが……。
「では……、つ、次の方、お願いします~」
「ソアラさん、行ってくる!」
「ファイトです! にくみさん!」
お次はにくみさんの審査でした。彼女はガッツポーズをして見せて、審査員の方に品を運びます。
「さあ召し上がれ。私のカレー料理は――“トンポーロウカレー丼”だ!」
にくみさんは丼研らしい、丼物を作られていました。さすがミートマスターと言われている彼女の丼の上のバラ肉は絶妙なバランスで調理されいました。
さらに、米にも配慮を施すことで、丼としての完成度を上げており、ボリューム感にも関わらず、食が進む丼になっております。
わたくしと食戟をしたときよりも確実にパワーアップされていますわ。お見事です。
『水戸選手! 86点!』
にくみさんがこれで暫定2位になりました。彼女は90点代を狙っていたようで、若干不満そうでしたが、素晴らしいカレー料理だと思います。
「次の方〜」
「幸平創愛、さっきの威勢をこの品で吹き飛ばしてやるよ」
「北条さんの品も早く見たいですわ」
「――っ!? 何でそんなに楽しそうに出来るんだ?」
北条さんは
『北条選手! 88点!』
北条さんの品はにくみさんの点数を上回り、これで彼女が2位になりました。
恵さんへの言葉を取り消してもらうためにはこの点数を上回らなくてはなりません。
「次は私か。行ってくる」
「榊さん! 頑張ってください!」
「いや、もう頑張った後なんだけどね……」
そして、Aブロックで最初に審査を受ける極星寮のメンバーである榊さんの番が回ってきました。
『榊選手! 86点!』
榊さんは、発酵食品を得意としています。
彼女の品は炭火熟成納豆の納豆カレーで隠し味に醤油麹を加えておりました。
にくみさんと並んで現在3位ですね。
「僕には誰も期待してないだろうね。でも、僕は風を起こしてみせる」
「丸井さんは努力されてますから、大丈夫ですよ」
「幸平さんだけだよ。僕に気を使ってくれるのは……」
お次に極星寮の仲間で順番が回ってきたのは丸井さんです。
『丸井選手! 88点!』
丸井さん料理は、白のポタージュカレーうどん。
ポーチドエッグ、マッシュポテト、とろとろチーズが乗った、香り高いヴィシソワーズ風スープのうどんでした。彼の現在の順位は北条さんと並んで2位になりました。
「じゃ、お先に……」
「伊武崎さん! 流石です。全く緊張してないですね」
「いや、緊張はしてるよ。表情に出ないだけで……」
さらに続いて伊武崎さんの順番が回ってきました。
彼の品からはどの品よりも強い香りが放たれております。
『伊武崎選手! 88点!』
伊武崎さんは燻製料理を得意としています。
なので彼のカレー料理は、特製スモークカレーでした。燻製ベーコン、燻製ポテト、燻製卵をトッピングして、さらに藻塩の燻製を使うことにより、具の一体感を高めております。彼も丸井さんと北条さんと並んで現在2位となりました。
極星寮の皆さんは好調みたいですね……。
高得点が連発する中、ついに会場の皆さんが最も注目されているであろう方の順番が回ってきました。
「お前の分も作っておいてやったぞ。幸平……」
「きょ、恐縮です……。頂かせてもらいます。葉山さんもよろしければ、わたくしの品をどうぞ」
葉山さんは何とわたくしの分のカレーも用意してくれたと、仰ってくれました。
先日、彼のカレーが楽しみだと申し上げたことを覚えてくれていたのでしょうか? ちょうど、わたくしも彼の分を用意していたので、それを話しやすかったです。
「へぇ、食べ比べたいということか。思ったよりも好戦的で安心した」
「いえ、葉山さんはスパイスに詳しいのでアドバイスが貰えればなぁっと思いまして」
「やっぱり食えねぇ奴……。まぁいい。見せてやる。スパイスの真髄を……」
わたくしの品は葉山さんから食べさせてもらったカレーや汐見先生の講義を参考にして作ってますから、是非アドバイスを頂きたかったのですが――変なことを申しましたでしょうか?
「今回の選抜優勝候補といわれる葉山選手ついに登場です!」
「品目はフィッシュヘッドカレーだったね――あれ?」
「器に蓋としてかぶせられているのはナンですなぁ」
「スプーンでナンを器に割り入れながらお召し上がりください――熱いのでお気をつけて……」
葉山さんに言われるがままに、審査員の方々がカップを覆うナンを崩すと、香りが爆発的に辺りに広がりました。
「か、香りの爆弾ですか……! これが葉山さんのカレー……」
「蓋の中身は魚のカマの旨味がこれでもかと溶け込んだ極上カレー!」
「スパイスはフェンネルにレモングラス、そしてシナモン。いや……、それらを束ねるものが何かある。なんだこの強い香りの中心は!」
そう、葉山さんのカレーは支配者とも言うべき強い香りを秘めた何かが入っておりました。
「ホーリーバジル! しかも生の状態から使ってある!」
「南アジア周辺で神聖視されるスパイスか。嗅げば全身に甘美な感覚が走り抜ける」
「インドにおける伝統的な医学の体系・アーユルヴェーダでは“神秘の妙薬”と位置づけられているという」
「だけど日本では生の良質なホーリーバジルはほとんど流通していないはず」
ホーリーバジルですか……。聞いたことがないスパイスですが、どうやら国内で生の状態で流通していない珍しいモノみたいです。
「ああ。うちの汐見ゼミで一年中育ててるんで……。栽培法は企業秘密」
やはり汐見先生と葉山さんのコンビは強力で、ホーリーバジルは先生が内緒の栽培法で育てたものらしいです。
しかし、この品の凄いところはそれだけではありません。
この強力なスパイスをまろやかに包み込んでいるものがあります……。
「工夫はそれだけではありませんわ。これは――ヨーグルトですね」
「正解だ幸平」
「一歩間違えりゃ他のスパイスを台なしにするホーリーバジルの強い癖。ヨーグルトはそいつをマイルドにしてくれるんだ」
「なるほど。勉強になりますわ」
「言ってる場合なの?」
葉山さんはヨーグルトを使い、ホーリーバジルと他のスパイスを見事に調和させました。
わたくしが感心して頷くと、榊さんが冷静な口調でツッコミを入れます。
確かに葉山さんの品は高得点に間違いないでしょうが、感心しちゃった事は仕方ないではないですか……。
「そ、それでは審査員の皆さん採点をお願いします」
『葉山選手94点で1位に踊り出ました!』
「やはり、葉山さんが1位になりましたか……」
葉山さんの点数は黒木場さんを抜いて1位に躍り出ました。
これだけの品を作り出すなんてやはり、葉山さんはただ者ではありません。
そして、次はいよいよわたくしの番です。緊張して足がふるえてますわね……。
「俺の分も用意してくれたんだろ?」
「ええ、まぁ……、よろしければご賞味ください」
わたくしは葉山さんに皿を渡し、審査員の方々の所に自分の品を運びました。
「こ、これは……、オムレツ?」
「おあがり下さいまし……。わたくしの香りの爆弾を――」
見た目はオムレツ――これがわたくしのカレー料理です。
「おお~! 割ったオムレツの中にドライカレー!?」
「閉じ込められていた香りが爆発的に広がる!」
「俺と同じ発想を?」
「そうですわね。ですから、葉山さんの品を見たときはびっくりしました……」
わたくしもオムレツの中にカレーの香りを閉じ込めるという発想でこの品を生み出しました。
なので、葉山さんが同じことをされていて少しびっくりしたのです。
「お熱くなっておりますので、お気を付けください。“ゆきひら謹製ドライカレーオムライス”ですわ」
「なんだ、このルウは!? こんな風に肉がほぐされているカレー見たことがないぞ!?」
「骨までトッピングされている。これはどういうことだ!?」
「期待値は葉山君のカレーに劣らず。では――」
審査員の方々の口ぶりから、見た目と香りのインパクトは悪くないみたいです。
そして、皆さんはわたくしのドライカレーをスプーンで口に運びます。
「こ、これは……、なんて濃厚なんだ!? ガツンとくる鶏肉の旨味とスパイスの香り――一体どうすればこれほどの!?」
「一口の衝撃が強すぎて、無意識に次の一口を求めてしまう」
「水だけを使って煮込んでもこれほどにはならねぇ。どんな手品を使いやがった!?」
「中々、思ったとおりの強さが出ませんでしたので、水も使いませんでしたの。お野菜の水のみで煮込みました」
わたくしは葉山さんから教えて頂いたやり方を実践して、そこから更に水を使用せずに煮込むことで、よりスパイスの香りと旨味が濃縮される調理方法を発見しました。
「水すら使わずに――!? なるほど、それならこの濃厚さも納得ね」
「鶏肉の繊維もほぐれてトロトロで骨まで煮込んであるから更に肉の旨味が凝縮されている。こ、これは骨まで食べられそうだ!」
「それだけじゃない。――深くスパイスと結び付いたこのコクは、そうかマンゴー! マンゴチャツネ」
「マンゴチャツネですって!? それだけでこんな深い風味が生まれるの!?」
チャツネとはスパイスを果物や野菜と合わせてすり潰したり煮込んで作る調味料。アジア各地組み合わせによって甘いものや辛いものミントを使ったものなど多くの種類が存在します。
葉山さんが指摘したとおり、わたくしはマンゴチャツネを使用しました。
「自家製ブレンドのマンゴチャツネです。これをカレーを煮込むとき一緒に加えましたの。マンゴーが軸になってスパイス同士の持ち味を結び付け料理に一段と深いコクを与えてくれます。スパイスの技術を応用してみました」
「油脂や動物性の材料を安易に増やすことなく……」
「美味しさの次元を跳ね上げたのか!」
これは父との料理勝負からヒントを得たやり方です。
汐見先生の所を訪ねなかったり、父と料理勝負をしなかったら、この品を作り出すことは出来なかったでしょう。
それに合宿でのスフレオムレツを作った経験もこの一品には一役買っています。
「それでは審査員の皆さま、採点をお願いします!」
『幸平選手! 94点! 葉山選手と並び同率1位にランクインしました!』
「はひっ!? い、1位ですか?」
なんということでしょう。わたくしのドライカレーオムライスは葉山さんと同じ得点が付きました。
こ、こんなに評価してもらえて良いのでしょうか……。
「幸平創愛――思った以上に骨のある奴のようだ。本戦こそお前を叩き潰す……。覚えておけ……」
「は、葉山さん。何もそんな怖い顔をしなくても……」
葉山さんはグッと拳に力を込めて、本戦の意気込みをわたくしに伝えます。
と、とても怖い顔をされているので直視出来ないのですが……。
こうしてAブロックの予選は終了しました。
最後に品を出した美作さんという方が91点を出しましたので、わたくしと葉山さんと黒木場さん、そしてその美作さんの4人が本戦に進出となりました。
「ソアラさん! 1位突破だなんて、やっぱりすげぇよ! 私はダメだったけど……、このまま頂点を取ってくれ!」
「にくみさん……。ええ、にくみさんの分も頑張りますわ」
予選が終わってすぐににくみさんがわたくしの肩を抱いて、わたくしの本戦進出を喜んでくださいました。
彼女だって悔しいはずですのに、こんなに笑顔で祝福してくれるなんて――ありがたいことです。
「幸平創愛……、あんたの品の方が上だった。約束どおり……、さっきの言葉は取り消すよ」
「いえいえ、北条さんのお料理もとても美味しそうでした。今度、作り方を教えて下さいまし」
「――っ!? この笑顔……、私にはなかったもの……」
北条さんはわたくしと恵さんに言ったことを取り消すと仰いました。
さらに後で恵さんもまた本戦に進んだことを知って彼女に直接謝ったそうです。恵さんは何のことなのか分からないので、戸惑っていたみたいですが……。
「お前、ソアラさんに喧嘩売って負けたんだろ。無謀だったな。この方は学園の頂点に立つ御方だ。相手が悪すぎらぁ」
「学園の頂点?」
「に、にくみさん、何をいきなり……」
北条さんとそんな話をしていると、側で会話を聞いていたにくみさんがいきなり、わたくしが学園の頂点に立つとかそんなことを言い出しました。
いやいや、そんなことは言った覚えはないですわ……。
「そうさ。私はこの方に惚れて“ソアラ派閥”に入ったのさ!」
「そ、そんなものはありません!」
「ソアラ姐さん! 私も派閥に入ります! 姐さんと呼ばせてください!」
その上、にくみさんが存在しない派閥のことを口にすると北条さんが凄い勢いでお辞儀をされて、派閥に入りたいと言い放ちます。
「ふえっ!? いや、そのう……、どうしてこうなりますの?」
わたくしが何度派閥など無いと申し上げても北条さんは聞き入れてくれず、彼女の迫力も怖かったので変な呼び方も変えられませんでした。
とりあえず、お友達にはなってくれると言ってくれましたので、ゆっくりと誤解を解きましょう……。
次はいよいよ“秋の選抜”の本戦ですか……。本戦はさらに厳しいお題と向き合いそうです。
そういえば、叡山先輩も何か怖いことを言ってましたね。ああ、何やら嫌な予感がしますわ――。
ソアラ派閥が一人増えるっていうお話でした。
北条さんってキャラ立ってるけど、出番少なかったですよね~。この小説ではこの機会に出番を増やしたいです。