【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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“秋の選抜”――1回戦のテーマ

「秋の選抜予選終了記念のお祝い&お疲れパーティー開催するよー! かんぱーい」

 

 極星寮で寮生の皆さんに加えてタクミさんとイサミさん、それににくみさんと北条美代子さんを加えてパーティーをすることとなりました。

 

「姐さん、すみません。私までお呼ばれしてしまって」

 

「とんでもありません。歓迎いたしますわ。美代子さん」

 

 美代子さんはわたくしが誘いました。にくみさんと同じで気が強い方なので、彼女とは気が合うと思い、一緒に来てもらったのですが……。

 

「北条! 派閥の二番手は私だからな!」

「水戸郁魅、忘れちゃ困るよ。予選での点数は私の方が上だった」

「んだと!」

「やるのかい!?」

 

「二人とも! 落ち着いてくださいまし!」

 

 この二人はありもしない“派閥”の二番手をことあるごとに争い出しました。

 こんな議論のために食戟までしようと口にしていたので、わたくしは必死でそれだけは止めます。

 もし万が一、こんな食戟が開催された日にはわたくしはどんな顔をしていれば良いのか分からないからです。

 

「へぇ、何? ソアラって派閥なんて作ってんの? 私も入ろっかな」

 

「よ、吉野さん。そんなわけないじゃないですか。分かってるはずですのに、お人が悪いですよ」

 

 そんなやり取りを面白そうな顔をして吉野さんが冷やかしてきます。

 わたくしが困り顔をしているのを存じていらっしゃるのに……。

 

「やはり、ソアラさんには優勝してもらって派閥の勢力拡大に邁進してもらわなくては」

「ソアラ姐さんが優勝すれば、女を馬鹿にする連中もこの学園から消えるだろうね」

 

「ゆ、優勝ですか? もちろんそのつもりで頑張りますけど、そんなに期待されるとわたくしの胃が……」

 

 吉野さんに弁解していると、いつの間にかにくみさんと美代子さんがわたくしが優勝をする前提のお話をされていました。

 わたくしも、お二人の分まで頑張ろうと思ってますが、プレッシャーには弱いのであまり期待をかけられると困ってしまいます。

 

「ソアラちゃんも優勝を目指すんだね。極星の生徒はそうでなきゃ!」

 

「い、一色先輩!? いつの間に……」

 

 優勝の2文字に押し潰されそうになっていましたら、一色先輩に声をかけられました。

 先輩は高く志を持つことを喜んでくれているのでしょう。

 

「本戦トーナメントは2週間後。これは薙切えりなを除いた現時点での遠月1年生最強決定戦だ」

 

「最強ですかぁ。想像もできません……」

 

 既に十傑入りしているえりなさんを除いた最強の1年生を決める戦い――だからこそえりなさんはわたくしに勝ち上がることを求めているのでしょう。

 彼女を悦ばせるには最低これくらいの力量が必要だとえりなさんは仰りたいのかもしれません。

 

「ソアラちゃんと田所ちゃんには期待してるよ。極星寮の力をアピールしてくれ」

 

「は、はい。恵さんと一緒に頑張りますわ」

 

「なぜ、裸にエプロンなんだ?」

「姐さんも無反応だし、私が変なのか?」

 

 一色先輩から激励を受けたわたくしは、改めて選抜本戦を何とか勝ち上がる決意を固めました。

 固めたところで勝ち上がれるものではないですが……。

 

「ソアラさん! 勝ち抜いてくれてるって信じてたよ。本戦であたったらいい試合をしよう!」

 

「タクミさん……。もちろんですわ。楽しみにしてますね」

 

 タクミさんも本戦に出場を決めており、わたくしの本戦進出を喜んでくださいました。

 わたくしは彼の手を握って、彼と試合できることが楽しみだと彼に伝えます。

 

「やはり笑顔が素敵だ……」

 

「あのう……、どうかされましたか?」

 

 するとタクミさんは何だかボーッとされて、動かなくなりました。

 どうしたのでしょうか……。

 

「こうなるとしばらく動かないから、兄ちゃんの事は放ってていいよ。本戦、頑張ってね。幸平さん」

 

「ありがとうございます。イサミさん」

 

 タクミさんの弟のイサミさんは惜しくも本戦進出はならなかったみたいですが、彼もわたくしを応援してくださいました。

 こうして応援してくださる方々に応えるためにも力を入れなくてはなりませんね。

 

 しばらく皆さんとお話していて、ふと部屋の外に目をやると恵さんの姿が見えました。

 星空をご覧になっているみたいです。

 

「恵さん、外に居られたのですか?」

 

「う、うん。なんか信じられなくて……、実感がないんだ。私が選抜の本戦なんて……」

 

「ふえっ? そうなのですか? あの品を出して恵さんが残らないはずがないと思っていたのですが」

 

 本戦に残ったことが信じられないと仰る恵さんの言葉にわたくしは驚きました。

 彼女の出そうとする品を聞いた日からわたくしは彼女が本戦に残るだろうと思っていたからです。

 

「ううん。そんなことない。みんな凄い品ばかり出してたから、残れたのはきっと運が良かったからだよ。ソアラさんこそ凄いな。カレーのスペシャリストの葉山くんと同点だなんて。このまま、優勝出来るんじゃないかな?」

 

「だとよろしいのですが……。本戦では、恵さんやタクミさんとも争うことになるかもしれませんので、道は険しいです」

 

 葉山さんと同じ点数を頂けるなんてわたくしは思ってもいませんでした。

 しかし、予選と本戦では課題も違えば準備期間も違います。それにBブロックから勝ち上がって来た方々とも相見えるわけです。

 当然ですが、厳しい道のりになることになるでしょう。ここにいる恵さんと試合する可能性もありますし……。

 

「タクミくんはともかく、私とソアラさんが戦ったら、勝てる気しないよ」

 

「恵さん……」

 

「でも、だからこそ……、強くなりたい。今までもそう思っていたけど――ソアラさんみたいにもっと食べる人を感動させられる料理を作りたい。だから――」

 

「おらぁっ! 第二ラウンド開始だよ〜〜!」

 

 恵さんが決意を声に出したとき、皆さんがこちらに駆け寄ってきました。

 彼女からはただならぬ気配を感じたのですが、何を言いかけていたのでしょう?

 

「ふふっ、夜はこれからさ!」

 

「出た〜〜! 一色先輩のサードフォーム!」

「競泳水着だぁ〜〜!!」

 

「「…………」」

 

 一色先輩の衣替えが終わり、更に今夜の宴会が盛り上がることが示唆されました。

 ゲストもいらっしゃいますし、楽しい夜になるでしょう。

 

「行きましょうか? 恵さん」

 

 わたくしは恵さんに手を差し出して声をかけます。

 彼女はハッとした表情を浮かべてわたくしの手を眺めていました。

 

「う、うん。私がもし、ソアラさんに追いついたら……、その時、この気持ちを伝えるよ……」

 

「……? 何か言われましたか?」

 

「ううん。なんでもない……」

 

 恵さんは何かをつぶやいておりましたが、首を横に振ってわたくしの手をギュッと握りしめます。

 彼女の温もりを感じながら、わたくしはこの先の本戦のことと彼女が何を言いかけたのか想いを馳せていました――。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 今日は本戦の1回戦のお題が発表される日。わたくしが呼ばれた部屋に入ると一色先輩が笑顔でわたくしに声をかけてくれました。

 

「やぁ、ソアラちゃん。こうやって、寮以外で会うのは新鮮だね」

 

「一色先輩、えりなさん、それにその……叡山先輩……。今日は明日の本戦のお題が発表されると聞きましたが……」

 

 本戦は予選と違って前日にお題が発表されます。準備期間があまりにも短いので、対応力や経験値などが試されるのでしょう。

 

 テーマ次第ではかなり不利になりそうです。

 

「そうだよ。抽選の結果だけど君は第一試合から出場だ。対決テーマは“弁当”になった」

 

「“弁当”ですか? 意外なテーマですわね。思ったよりも庶民的と言いますか」

 

 まさか弁当と言われるなんて思ってもいませんでしたので、わたくしは少し驚きました。

 しかし、これはカレー料理と比べてかなり解釈の仕方が鍵になりそうなお題のような気がします。

 

「ソアラ、弁当は日本で発達した独自の文化よ。四季折々の高級食材による弁当は食通達に愛され続けているわ。海外の重鎮シェフにも注目され“bento”としてフランスの辞書にも載る程なの。正しく美食の祭典に相応しいテーマだということを知っておきなさい」

 

「まぁ、えりなさんは博識ですね。無知なわたくしのためにありがとうございます」

 

 えりなさんが、弁当のお題が出される意味について説明をしてくれましたので、わたくしは彼女にお礼を述べます。

 フランスの辞書に載るということが、どれ程なのかイメージが湧きませんでしたが、日本の独自文化ということは何となく想像が出来ます。

 つまり、弁当が文化として発達した理由みたいなモノを自分なりの弁当で体現することが出来れば良いのかもしれません。

 

「ど、どうってことないわよ。このくらい。とにかくね。あなたにここで負けられたら困るの」

 

「ええ。約束は覚えていますとも」

 

「それも大事だけど、あなたの1回戦の相手は――」

 

 えりなさんがわたくしに負けるなと仰るので、わたくしは約束のことだと思ったのですが、どうも違うみたいです。

 1回戦の相手はどなたなのでしょう?

 

「ちょっと別件の客だ。退室する……。――幸平創愛。せいぜい気合を入れて勝ち上がってくれよ」

 

「ひぃっ! は、はい、ありがとうございます……」

 

 えりなさんが1回戦の相手の名を告げようとすると、叡山先輩が急に立ち上がり出て行こうとされました。

 わたくしの横を通るときの彼の声が怖くて、返事がどうしても震え声になってしまいます。

 

「どうしたの? 叡山先輩のこと、随分怯えた目で見てたけど」

 

「いえ、ちょっと色々とありまして……。そんなことより、わたくしの1回戦の相手はどなたですの?」

 

「ああ、もうすぐ来ると思うよ。ソアラちゃんの1回戦の相手は――」

 

 わたくしは叡山先輩との経緯は要らぬ心配をさせてしまうと思い、話を1回戦の相手についての話に戻しますと、一色先輩がドアの方に視線を送りました。

 

 すると、ガチャりとドアが開き銀髪で白い肌の彼女が入ってきました。

 

「ふふっ、あなたが1回戦の相手なのね。ごきげんよう。幸平創愛さん」

 

「まぁ、アリスさんが1回戦の相手でしたか!」

 

「むぅ〜、随分と嬉しそうね。もっとびっくりすると思っていたのに」

 

 わたくしがアリスさんが1回戦の相手だということを喜ぶと彼女は頬を膨らませて不満そうな顔をされます。

 何かわたくし、気に触るような態度を取りましたでしょうか?

 

「はい。凄い料理人だと聞いてますから。どのような品を作られるのか一緒に料理をしてみたいと思ってましたので」

 

「私は残念だわ。折角の大舞台であなたの料理を1回しか見られないなんて」

 

「…………」

 

 自分はアリスさんの調理を間近で見たかったので、それが楽しみだと申し上げると、アリスさんは残念だと返事をしました。

 あれ? なぜ、わたくしが1回しか料理が出来ないのでしょうか……。

 

「どうしたのよ? ボーッとした顔をして」

 

「え、えっと、1回しか見られなくて残念という意味が少し分からなくて」

 

「バカね。アリスはあなたに必ず勝つって言ってるのよ。1回戦で負けたら料理できるのは1回だけでしょ」

 

「ふぇ〜。さすがアリスさん。凄い自信ですね」

 

 わたくしの疑問にえりなさんがすかさず答えてくださいます。

 あー、なるほど。必ず勝てる自信があってそれを言葉に出来るなんて凄いですわ。考えたこともなかったです……。

 

「ふふーん。もちろんよ。私の目標はあなたじゃなくて、その後ろのえりなだもの。頂点に立つためにはあなたなんかに負けてあげられないの」

 

「分かりました。1回しか作れないかもしれないのでしたら、アリスさんにも美味しいって言ってもらえるような良い品を作りますね」

 

「ちょっと、何を弱気なこと言ってるの! アリスなんかに負けたら承知しないから」

 

 アリスさんもまた、わたくしと同じくえりなさんを目指している方。きっと素晴らしい品を出さられるに決まってます。

 ならば、わたくしも背水の陣で挑もうと申し上げたつもりでしたが、えりなさんはアリスさんに負けることは許さないと仰ります。

 

 もちろん負けようと挑むつもりはないですが、圧がいつもよりも強くて怖いです……。

 

「ええーっ! えりなはこの子が私に勝てると思ってるわけ? 職人芸が得意なだけの子よ」

 

「そう思ってるなら倒してみなさい。Aブロックの予選を見ていないようね。ソアラはあなたが簡単に倒せるような子じゃないわよ」

 

 アリスさんは手をジタバタさせて、不満を述べますが、えりなさんは彼女を挑発するようなことを言います。

 えっと、えりなさんの発言って、もしかしたら全部わたくしに降りかかるのでは?

 

「あれ? えりなさん。Aブロックの会場にいましたっけ?」

 

 わたくしはえりなさんはBブロックの方に行っていたのだと思っていましたので、彼女がわたくしのカレーを見ていたことに驚きました。

 

「僕と薙切くんはBブロックが終わってから、特別席に行って見ていたからね。薙切くんは、ソアラちゃんの品を食い入るように見ていたよ」

 

「まぁ!」

 

「――うっ……、そこそこ良い品だったわよ」

 

「ありがとうございます! えりなさん!」

 

 えりなさんがわたくしのカレーを褒めて下さったので、わたくしは嬉しくなって彼女に抱きついてお礼を述べました。

 やっぱり、彼女の抱き心地は誰よりも心地よいです……。

 

「ちょ、ちょっと! 離れなさい! 一色先輩やアリスが見てるでしょ! するなら、誰もいないところで……」

 

「「…………」」

 

 えりなさんは顔を真っ赤にされてわたくしを引き剥がします。人前だとそんなに恥ずかしいものですかね…。

 アリスさんも一色先輩も黙ってこちらを見ていますが……。

 

「な、何よ? なんでそんな顔してるの?」

 

「えりなって、そんな顔出来たんだ。その子の前だと……」

 

「アリス?」

 

 アリスさんは特に大きく口をあけて、驚いた表情をされていました。それはもう、信じられないモノを見たという顔で、えりなさんも不思議そうな表情をされています。

 

「幸平創愛……、確かに他の連中とは違うのかもね。でも、勝つのは私よ」

 

「はい。わたくしもアリスさんに負けないように全力で頑張りますわ」

 

 そして、アリスさんは真剣な目つきでわたくしをまっすぐに見つめて、改めて必ず勝つと言い放ちました。

 何が彼女を驚かせたのか分かりませんが、わたくしもえりなさんとの約束の件もありますので、そう簡単に負けるわけにはいきません。

 

 寮に帰って早速明日の準備に入りました。

 

「しかし、弁当ですか。“とみたや”さんのように売り出してはいないですけど、幾度となく作ったことはあります」

 

「良かったじゃない。ソアラ向きのテーマで。相手がアレだけどさ」

 

 厨房に入るとき、ちょうど鉢合わせになった榊さんに今回のお題について話すと試食などのお手伝いをしてくれると言ってくれましたので、彼女の言葉に甘えることにしました。

 

 ちなみに恵さんも同じ厨房で自分の課題と向き合って試行錯誤されてます。彼女のお題はラーメンだと聞きました。

 

「榊さん……。確かにフランス料理とかイタリア料理とかよりはわたくしに向いていますわね。あとアリスさんの弁当がどのようなモノなのか、楽しみです」

 

「相変わらず、余裕があるんだかないんだか分からない子ね」

 

 定食屋の知識からかけ離れたお題だとそれだけでピンチでしたから、弁当というテーマは運が良かった方だと言えます。

 だからといってありきたりな品だと話にならないのはえりなさんの口ぶりからも明らかです。

 弁当ならではという意味を見出だせる品を作り出すことが今回のテーマの鍵でしょう。

 

「榊さんは弁当の具材とかお好きなモノはありますか?」

 

「そうねぇ。煮物や揚げ物も好きよ。やっぱり冷めても美味しいモノが良いかしら」

 

「ですよね。持ち歩いて後で食べることが前提ですから、保存性が高くて温度に左右されない味付けのモノが好まれますよね」

 

 榊さんに好きな弁当の具材について尋ねると、彼女は冷めても美味しいモノと率直な意見をくださいました。

 

 そうなのです。弁当というのは基本的に外出して調理から時間が経って食べるものです。つまり、出来たてを食べないことが前提となる品なのです。

 ですから、普通はその点を考慮して具材を選びます。それならば、逆にアレを使ってみるのも面白いかもしれませんね。

 

「見た目も大事よね。弁当箱を開けるときのワクワク感っていうの?」

 

「見た目ですか〜。確かに、コンセプトは必要ですわね。からあげ弁当、しゃけ弁当、幕の内弁当……、あとはのり弁当ですか……。のり弁――良いですね。これで行きましょう」

 

 わたくしは最後に声に出したのり弁の響きにインスピレーションを刺激され、これを作ることに決めました。

 とにかく時間がないので、サクサク決められることは決めたいです。

 

「随分とあっさりじゃない。何か理由あるの?」

 

「ええ、まぁ。のり弁は原価がお安くて、美味しいですから、わたくし好きなんです」

 

「あはは、原価ねぇ。まるで薙切と真逆の価値観だわ……。ソアラらしいっちゃ、らしいけど」

 

 わたくしは単純にのり弁が好きということと、原価が安いことを口にすると榊さんが呆れたような表情されました。

 確かにお嬢様であるえりなさんやアリスさんとは価値観がズレているかもしれません。

 

「えへへ、高級食材は使うと胃が痛くなっちゃいますので、原価が安いに越したことないんですよ。試作品も気軽に作れますし」

 

「あなた、黒木場くんのカレーとか絶対に作れないわね……」

 

 黒木場さんの使っていたコニャックが1本10万円以上すると丸井さんから聞きましたから、榊さんの仰ることは全面的に肯定できます。

 

 気軽に作れて美味しい品という定食屋のコンセプトで何年もやって来てますので、これを急に変えるというのは無理なのです。

 

 ですから、安くて美味しいお弁当をこれから作ろうと思います。

 

 

「ということで、一通り作ってみたのですが……」

 

「どれどれ……、まずは磯辺揚げから……。はむっ……、んっ、んんっ……、お、美味しい……! 磯の香りに包まれるみたいな。優しいのに力強い味!」

 

 わたくしが作った試作品の具材のうちの一つである磯辺揚げを食べた榊さんの反応はとても可愛らしい反応でした。

 

「まぁ、ありがとうございます」

 

「こらこら、そういうのは恵にやってあげなって。ていうか、なんでそんないい匂いするのよ? こりゃ恵が夢中になるわけだわ……」

 

 わたくしが榊さんに抱きついてお礼を言うと彼女はそれは恵さんにしろと言いました。

 たまには良いかなと思ったのですが……。

 

 それから、彼女はわたくしが作った他の品も食べてくれました。

 

「白身フライも磯辺揚げも美味しかったけど、この二種類のレンコンの肉詰めには驚いたわ。これなら、審査員も褒めてくれるんじゃないかしら」

 

 榊さんはどの品も良かったと褒めてくれました。特にわたくしの自信作であるレンコンの肉詰めは高評価です。

 食べたときに1つ驚きみたいなモノがあると楽しいかと思い、わたくしはこのレンコンの肉詰めにある魔法を仕掛けてみました。

 

「榊さんにそう言ってもらえると心強いです。でも……、これだけじゃ……」

 

「あのさ。ずっと気になってたんだけど。そこにあるお菓子ってソアラの? あなた、駄菓子なんて食べるんだ」

 

 わたくしがイマイチこのままだとインパクトに欠けると懸念していましたら、榊さんはテーブルに置かれている駄菓子の山について尋ねてきました。

 

「いえ駄菓子は小さい時はよく食べていて、最近はあまり食べていないのですが、これはこの前……、一色先輩の頼みで恵さんと子供料理教室を手伝ったときに――。――っ!? こ、これは使えるかもしれませんわ」

 

 先日、わたくしは一色先輩の依頼で恵さんと子供料理教室を手伝いました。一緒に餃子を作って子供たちと仲良くなれたのですが、帰りがけにその子たちがこぞって駄菓子をプレゼントしてくれたのです。

 

 駄菓子は小さな頃はよく食べていて、これを見ると懐かしい気持ちになります。特にわたくしはこの人工イクラが作れる駄菓子が大好きでよく父に自分が作ったイクラを――。

 

 そこまで記憶が戻ったときに、わたくしの頭に電流のようなものが走りました。これは面白い弁当が作れるかもしれません……。

 




料理知識がない作者は弁当のアイデアが浮かびません。
なので、大筋は原作と同じで違うところはレンコンの肉詰めだけという地味な感じに……。
勝負が終わってデレたアリスとの絡みだけは面白くできたら良いなぁとは思ってます。

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