【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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スタジエール――新たなる一歩

「新作コンペ! それは見逃せないですね! 今日来れてほんとにラッキーです」

 

「いやだからもう帰れって話してんだよ!」

 

「そんな話聞かされて帰れるわけないじゃないですか~」

 

 乾シェフが新作コンペの話を聞いて満面の笑みでそれを見物しようと声に出すと、四宮シェフは露骨に嫌な顔をされていました。

 そこまで邪険に扱わなくてもよろしくないですか……。

 

「幸平さんも品を出すのか。それはちょっと興味あるな」

 

「でしょ!? これは言うなれば四宮先輩と幸平さんの初の直接対決! “秋の選抜”の準決勝の幸平さん凄かったですから、合宿での食戟よりも面白くなりそうですよ」

 

「い、乾シェフ! それは――」

 

 先輩方がコンペに興味を持たれていることを話すと、乾シェフはそれに付け加えて合宿での食戟のことを持ち出します。

 あの〜、シャペル先生もいるのですが……。

 

「ん? 今合宿での食戟と聞こえたが」

「何の事か私にはわかりません」

「乾は多分酔っているのでしょうな……」

 

「ワインの飲みすぎでしょうね、ハハハ……」

「そうか……」

 

 乾シェフは水原シェフに頭を叩かれて、先輩方はこぞって知らん顔をします。

 シャペル先生も不思議そうな顔はされていましたが、流してくれました。良かったです。遅れて退学処分とか勘弁してもらいたいですから……。

 

 

 そして、わたくしはアベルさんたちと共にコンペの準備に取り掛かりました。

 

「あら? 唯さんもコンペ出されるのですか?」

 

「SHINO'S本店の肉料理担当は半年前まで唯だったからな」

 

 わたくしがサービス担当の唯さんがコンペの準備をされていることに疑問を呈すと、リュシさんが彼女は半年前まで肉料理を担当されていたと答えます。

 

「それでは、なぜサービス担当になられたのですか?」

 

「本店でもこのコンペは月に何度か行われてたのよ。でも私の品が採用されたのは2年間でたったの一度だけ。このままじゃ駄目だと思ったの。私がサービス担当に移ったのはお客様と直に接することで見えてくると思ったから。でも料理人としての功夫を怠った日は一度もないわ」

 

「私も唯のおこぼれで肉料理担当になれたわけじゃないってちゃんと示さなきゃな」

 

 唯さんとリュシさんの雰囲気がピリッとしたものに変わりました。いつもの優しい感じとは大違いです。

 きっと、プライドを懸けてこれから厨房に立つのでしょう。

 

「みんなそれくらい本気で臨んでるんだ。この新作コンペにな。お前にそれほどの覚悟があるのか?」

 

「こちらに来て色々と学ばせて頂きました。そして、わたくしなりに見つけられた答えがありますの。今、一皿にそれを全て乗せてみたい。――その衝動を抑えることが出来ない!」

 

 このお店に来て、毎日のように自分が成長していると実感を得ることが出来ました。

 目の前の皿にわたくしの全てを込めたい――血が沸騰するほど熱くなっています。

 

「こ、こいつ……、何て目をしてる!? まるで、飢えた獣の目だ……!」

 

「アベル、女の子になんてこと言ってんのさ」

 

「アベルさん、どうかしましたの? わたくし、何か変なことを……?」

 

「ん? いや、何でもない……。何だったんだ? 今のは――」

 

 アベルさんが目を見開いてわたくしの顔をご覧になっていましたが、どうされたのでしょうか? とにかく精神を集中させて今のわたくしに出せる最高の品を完成させましょう……。

 

「さぁ時間だ! 始めろ!」

 

「「ウィ! シェフ!」」

 

 四宮シェフの言葉を受けたわたくしたちは一斉に調理を開始しました。

 

 新たに身に着けた技術もこれまで歩んできた人生もすべてをこの瞬間に捧げます――。

 

「ソアラ、また上手くなってる?」

「四宮シェフの技術をこの短期間にどれだけ?」

「いや、それだけじゃない。あいつは知ってたんだ。もっと前からフランス料理の技法を!」

 

 四宮シェフから学んだ動きから、父が幼い頃より見せていた動きの意味を知り、それも自分のモノにします。

 今日はいつもよりも体が軽いです。引き出しが増えたおかげで思考にも余裕が生まれました。

 きっと良い品が出来る。わたくしは、そう確信してコンペの品を完成させました――。

 

 

「これで3人の品の実食が終了……」

 

「お待たせしました」

 

 アベルさんたちの品の実食が終わり、最後にわたくしの番が回ってきました。

 四宮シェフに自分の料理を食べてもらうのは初めてですが、気に入ってもらえると嬉しいです。

 

「うずらが丸々!? あなたの料理はいつも見た目が面白いですね」

 

「こちらはチキンカレーライスですわ」

 

「「…………」」

 

「はぅぅっ……、だ、大丈夫です。ちゃんとフランス料理になっておりますから」

 

 出来た品をつい、チキンカレーライスだと紹介すると皆さんが絶句されたので、わたくしは慌ててキチンとしたフランス料理だと弁解します。

 フランス料理っぽい名前って思いつかないんですもの……。

 

「では、味わわせてもらおう」

 

「果たして四宮小次郎をうならせることができるのか……、あの皿に全てがかかっている。若きスタジエの健闘を祈ろう――」

 

「――こ、これは……!? 幸平、お前……!?」

 

 ひと口食べるなり、四宮シェフは驚いた顔をされてわたくしの顔を見ました。

 反応は良かったのでしょうか? それとも――。

 

「私も食べます!」

 

 乾シェフもわたくしの品を召し上がってくれました。お口に合えば良いのですが……。

 

「これは……、中を開けた瞬間さらに香りが広がって、より食欲がそそられますね! カレーソースを使っているのに中身までカレーリゾットですか? しかも五穀米を使っています……」

 

「白米に加えて黒米、赤米、蕎麦の実、アワ、キビを使っておりますわ。健康にも良いので、お客様にも喜んでもらえると思いまして」

 

 カレーに使ったスパイスの知識は葉山さんから、五穀米に関する知識は緋沙子さんから教えてもらいました。

 学園に入って色んな方と友人になり、わたくしの調理の幅は随分と広がっています。

 

「美味しい! 水で炊いた白米とは違い、バターやブイヨンの旨みとコクをたっぷりと吸い込んで深みのある味になっています。素材の香りも際立って、言うならば先輩の得意なレギュムのイメージに近いですね」

 

「うずら肉は油で焼いてからオーブンでじっくり加熱してるんで表面はかりっと、肉はもっちりジューシーです」

 

「カレーソースはニンニクとエシャロット、カレー粉をバターで炒めたところに、白ワインビネガーと白ポルト酒を加えて煮詰め、さらにうずらの出汁を使っておりますから、うずら肉とも相性は抜群です。付け合せのほうれん草には特にクセはありませんが、旨味が濃くて良いアクセントになっております」

 

 フランス料理に真剣に取り組んで初めて自分なりのメニューを作りましたが、乾シェフは美味しいと仰ってくれたので、ひと安心です。

 このチキンカレーは定食屋のわたくしにはまず出来ない発想でした。

 

「しかしうずらの詰め物としてリゾットのようなものを使うとどうしても液体が染みだしてしまうはずだ……」

 

「あっ!? さっきの歯ごたえ!」

 

「キャベツですわ。さっと塩ゆでしたキャベツで包んでからうずらの中に詰めたのです」

 

「それって合宿の食戟の時の――っ!? 痛っ!」

 

 乾シェフ――また口を滑らせて水原シェフに怒られてますわね……。

 キャベツで包むやり方は四宮先輩が作られたシュー・ファルシを参考にさせて頂きました。

 四宮シェフを参考にしたのは、それだけではありませんが――。

 

「茹で加減も絶妙。シャキっとした歯ごたえを保ちつつ甘味を出しそれがうずら肉の香ばしさと中身の具の風味とスパイスの香りを優しく結びつけている……」

 

 四宮シェフの力をこれだけの期間、目の当たりに出来たことは幸運でした。彼の技術を参考にして、わたくしは記憶の中の父の使っていたフランス料理の技術も含めて自分の料理へと再構築することが出来たのです。

 四宮シェフの血の滲むような努力――確かに感じさせて頂きました。

 

「やりやがったな幸平……!」

 

「四宮シェフはフランス料理でもっと上を目指すため帰って来たって仰っていましたよね。でしたら、今のわたくしがやるべきことはきっとその逆なのです。生まれ育った環境の中だけでやってきた料理を今まで出会ってきた全ての方々の力を借りて昇華させる――これはわたくしが初めて作った新しいゆきひらの料理ですわ!」

 

 定食屋しか知らなかったわたくしは、この学園に来てたくさんの人たちと出会いました。それは全部、わたくしの力になっていたのです。

 殻を破り、自分の世界を広げて新しい必殺料理(スペシャリテ)を生み出すことこそ、今のわたくしに必要なことでした。

 

「さぁ、判定はどうなんだ?」

 

「俺の店で出すには少しばかりクオリティが低い。改善すれば、悪くはないだろう」

 

「――ええーっと、それはどういう意味ですの?」

 

 四宮シェフはクオリティが低いと仰ってましたが、悪くないとも仰ってくれました。

 合格なのか、不合格なのかわかりません。

 

「見て覚えるだけじゃ、限界がある。俺ならこうするってところを叩き込んでやろう。今日は眠れると思うなよ」

 

「うわぁ! 今夜は寝かせないって四宮先輩やらしいんですねー」

「お前は黙れ!」

 

「では、よろしくお願いいたします」

 

「言っとくが、優しく教えてもらえるなんて思うなよ」

 

 四宮シェフは夜通しわたくしに指導してくれると仰ってくれました。

 

 彼の言われたことは本当で、メニューの改善が終わっても、フランス料理の知識や技術について徹底的に叩き込み、わたくしの質問にも丁寧に答えてくれます。

 夜明けには自分の世界がまたガラリと変わったような――そんな気がしていました。

 

 

「朝までご指導してくださって、ありがとうございます」

 

「ちっ、物覚えが良すぎるのも考えものだな。結局、たったの1時間でメニューの改善を終わらせて、あとはひたすら質問攻め――少しは遠慮しやがれ」

 

 四宮先生の指導のもと、チキンカレーライス改め“うずらの詰め物五穀米カレーリゾット・生意気子猫風”が完成しました。

 生意気子猫ってわたくしのことですか……、とは怖くて聞けませんでした。

 

 しかし、このお店のメニューになったことは大変光栄なことです。わたくし、生意気ですかね?

 

「四宮先生の教え方とっても上手でしたし、朝まで良いと最初に仰っていましたので」

 

「先生と呼ばせるなんて思い上がりもいいとこ」

「うるせぇ! こいつが勝手に呼んでんだ!」

 

「素直じゃないですね~」

「ほんとは嬉しいくせに」

 

 水原シェフたちに冷やかされている四宮先生はムッとした表情をされていましたが、実際あそこまで指導してくれた彼のことを先生と呼ばずして何とお呼びすれば良いのかわかりません。

 

「幸平! 遠月十傑、第一席くらいで満足するな。早くこっちまで上がってこいよ」

 

「まるで、わたくしが第一席になれると決まっているように仰るのは止めてくださいまし……」

 

「成れなきゃ、お前はただのドロボーだ。この俺の技術をくれてやったんだ。それくらい達成出来なくてどうする?」

 

「ぜ、善処いたしますわ……」

 

 四宮先生に必ず第一席になれと釘を刺されたわたくしは、次のスタジエール先へと向かうのでした。

 

 

 それから月日はあっという間に過ぎて、スタジエールは終了。

 極星寮に戻ったわたくしを待っていたのは、上級生から届いた大量の食戟を求める果たし状でした。

 こ、これは、全てお相手するのはかなり時間がかかりそうですね。

 

 そこからしばらく、食戟に明け暮れる生活になってしまいました――。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ふぇっ? に、2代目“修羅”ってなんですかぁ?」

 

「あんたのことだよ! まったく、自覚がないのかい?」

 

 遠月の新聞を片手にふみ緒さんが聞き慣れない言葉をわたくしのことだと仰っています。

 いや、“修羅”って確かわたくしの父の異名ですよね? 父のことはごく一部の方しか知らないはずですが……。

 

「ソアラさんのこと、最近そう呼ぶ人が増えてるんだよ。スタジエールが終わってから食戟ばかりしてたでしょう?」

 

「“2年生狩り”とも呼ばれてるぜ。いち早く十傑に上がるために上級生片っ端から締めてるってな」

 

 恵さんとにくみさんの話によりますと、わたくしが2年生の先輩方とよく食戟をしていることが変な異名の発端らしいです。

 なんか、わたくしが喧嘩を売りまくっているような風評なのですが――。

 

「いや、わたくしから喧嘩を売るなんて一度もしたことありませんよ。食戟に誘われて断ったこともありませんが……。退学を賭けるわけでもなかったので……」

 

「姐さんこの前、1日に10連戦とかしたでしょ? あれがきっかけみたいです」

 

「連休前に急用が入ったので、食戟の予定を1日にまとめるようにお願いしたのですが……。まずかったですかね」

 

 連休前にアリスさんが遊びに誘って下さり、食戟の予定があるからとお断りすると、涙目になって駄々をこねられ、黒木場さんにも「諦めてお嬢に付き合え」と凄まれたので、急遽先輩方に連休中の食戟も全部1日にまとめるようにお願いして快諾してもらったのです。

 

 その結果、10人の上級生たちと放課後に食戟を夜通しすることになりまして、司会をしてくださった川島麗さんからは「こんなことは二度としないで」とかなり強めにお叱りを受けました。

 昼過ぎに始まって、終わったのは翌朝の早朝ですから付き合ってくれた彼女には感謝しかありません。

 

「2年生組屈辱の10連敗。その力、まさに悪鬼羅刹。遠月に伝わる“修羅”の再来か……。これ、新聞部の記事ね。こりゃ、完全に遠月の2年生全員を敵に回してるわ」

 

 榊さんが新聞記事を声に出して読み、わたくしが随分な言われようだということがわかりました。

 

「ふぇ〜、可愛くないですね」

「実際、可愛くないんだけどね。やってることエグいから」

 

 どうせなら、可愛い異名の方が良かったのですが――“カワウソ”とか“モモンガ”とか……。

 伊武崎さんにも可愛くないって言われてしまいましたが……。

 

「城一郎のこともよく知らないくせに、面白がって記事にしたんだろうねぇ。まさか、娘のあんたがその異名を継ぐとは因果なものだよ」

 

「すごく不本意なのですが。わたくし、あの人みたいに傍若無人に振る舞ってませんわ」

 

 何が嫌なのかって、わたくしの父と同じっていうところです。食戟だって勝っても料理のコツを聞くくらいで特に何も奪ってませんし、10連戦の時以外は出来るだけ相手の都合に合わせて試合をしています。

 

「えっ、じゃあ負けた連中がこぞって丼研に入ってるのって強制じゃないんですね」

 

「知りませんよ。そんなこと。そうなんですか? にくみさん」

 

 美代子さんから知らない情報を聞かされて、わたくしはにくみさんに確認しました。

 丼物研究会に入れなんて一度も言ったことはありません。

 

「ん? まぁな。ソアラさん目当てで入ってきてる奴多いぜ。2年だけじゃなくて、1年にも。小西先輩もうご満悦」

 

「棚からぼた餅とはまさにこの事だねぇ」

 

 にくみさんによれば、スタジエール後から丼物研究会に入る方が急増しているみたいです。

 それが、わたくしが入っていると勘違いされてる方も多いからなんだそうです。どうしてでしょうか……。

 

 

「そういえば、もうすぐ紅葉狩りだね」

 

「1年生の上位と十傑の交流。この中からは恵とソアラが出るけど」

 

 遠月恒例行事の“紅葉狩り”。“秋の選抜”本戦進出者にえりなさんを加えた1年生と十傑の交流イベントなのだそうです。

 十傑の方はえりなさんと一色先輩と叡山先輩の3名しか話したことはありませんので、どのような方なのか楽しみです。

 

「よっしゃあっ! ソアラさん、十傑に喧嘩を売るチャンスだぜ!」

 

「売りませんよ。わたくし」

 

「だよね〜。ソアラさんのキャラじゃないもん」

 

「でも、向こうは分かんないですよ。特に2年生の十傑はソアラ姐さんをよく思ってないかもしれませんし」

 

「脅かさないでくださいまし。美代子さん……」

 

 にくみさんが物騒なことを言い、美代子さんが怖いことを口にされる。

 喧嘩を売るつもりはもちろんありませんが、会ったことのない方から嫌な印象を持たれているかもしれないと想像すると胃が痛くなってきました。

 

 でも、2年生の十傑には一色先輩も居ますから、彼ならわたくしのことを知ってくれてますし、きっといざという時は助けてくれますでしょう。

 

 そして、紅葉狩りの日がやってきました――。

 

「派手に動いてるみたいね。十傑を目指してるのは知ってたけど見境がないんじゃない?」

 

「えりなさん、緋沙子さん、お久しぶりですね」

 

 えりなさんと緋沙子さんがわたくしの隣に座り、声をかけてくださいました。

 緋沙子さんも彼女の元に戻られて良い顔をされています。

 

「ソアラ、貴様が今日にでも十傑に喧嘩を売るという噂を聞いたが本当か?」

 

「いえ、そんなつもりは毛頭ございませんが」

 

 緋沙子さんによると学園でこの紅葉狩りの日にわたくしが十傑に挑戦状を叩きつけるという噂が立っているというのです。

 一体、誰がそんな噂を立てているのでしょう……。

 

「でも、2年生10人を一度に叩き潰すなんてやり過ぎじゃない? 先輩たちピリピリしてるかもしれないわよ」

 

「あ、あれはですね。アリスさんが連休を利用して新しく買ったクルーザーで旅行に行こうと誘われたので。それに合わせるために仕方なく」

 

「あらぁ、私のせいにするの?」

 

「あんっ……、アリスさん」

 

 わたくしが10連戦をした事情を説明しようとすると、アリスさんが後ろから抱きしめて、耳元に唇を当てて囁いてきました。

 そこは、敏感なところなので遠慮してもらいたいです。

 

「「むっ……!?」」

 

「新しい魚群探知機を手に入れたから、試運転しようと思って。私とリョウくんだけじゃつまらないから、幸平さんも誘ったのよ」

 

「ちょっと待て。ソアラは夜通し食戟をしてその足で旅行に行ったのか?」

 

「あ、はい。早朝に寮の前で待ち合わせでしたので、シャワーしか浴びられず――」

 

「相変わらずデタラメな体力ね……」

 

 徹夜して食戟をしたあとに、アリスさんのクルーザーで海に行ったときはさすがにその日の夜には疲れてしまいました。

 それでも、父のモノマネをした次の日よりマシでしたが……。

 

「なんだ……、十傑に喧嘩売らねぇのか。それを見に来たのにつまんねー。じゃ、俺が売ってくるか」

 

「だから言ったろ。そんな好戦的なやつじゃないって。――だが、十傑とは頂点を目指すならいつかは戦わなきゃいけないしな。幸平が2年生を叩いてくれてるから、焚き付けやすくなっているだろう」

 

 黒木場さんと葉山さんは冗談を言うような口調で自分たちが十傑に喧嘩を売ろうかなんて言われています。

 それは自由にされれば良いのですが、この場でされるのはちょっと――。

 

「あ、あのう。とにかく、わたくしは大人しくしますので、お二人ともトラブルはくれぐれも――」

 

「遠月十傑の! おなぁ〜〜りぃ〜〜!!」

 

 わたくしがお二人を諌めようと声を出すと、仰々しい声と共に、9人の上級生の方々がこちらに歩いて来られました。

  

 あの先輩方が遠月十傑――この学園の頂点に立つ料理人たちです――。

 




徹夜で食戟の司会をさせられた麗が一番の被害者だったりします。
次回から学園祭の話に入れるはず……。人間関係も主人公の性格も原作とは違うので話もかなり変わります。
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