【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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月饗祭編
遠月十傑と玉の世代


「ねぇねぇねぇあのさあ! 今日はこれで解散にしね? そんで来年は廃止にしようぜこの会! 心底マジめんどくせーし意味なくない? ――って思わない?」

 

 紅葉狩りが始まるや否や、遠月学園、十傑、第八席である久我照紀先輩がもうこの会を止めたいと言われました。

 一色先輩と同じく2年生の十傑ですが、随分と雰囲気が違いますね……。

 

「どうかなみんな? そこのおさげちゃん、どうどうどう?」

 

「へっ……!? え、えっと、あの、その……」

 

 恵さんが久我先輩に答えにくい質問をされて彼女は困惑した表情をされています。

 何ともまぁ、自由奔放な先輩です……。

 

「総帥から直々のお達しなのよ。参加しないわけには行かないわ……。廃止なんてもっての外だし」

 

 そんな久我先輩を同じく2年生の紀ノ国寧々先輩が諌めます。

 彼女は第六席とのことですが、一色先輩より席次が上ということは彼以上の実力者なのでしょうか……。

 

「あ、そう。そっちのおさげには聞いてないから。そういえば、さ。“2年生狩り”とかやってる奴来てるんでしょ? 十傑になりたいからって派手に暴れてるらしいじゃん。幸平って誰? そっちの野良犬みたいな顔した奴?」

 

「誰が幸平だと? 性別も知らねぇのか?」

 

 久我先輩はどうやらわたくしに興味があるみたいでしたが、黒木場さんの顔を覗き込んでいます。

 彼は心底不満そうな顔をされて先輩を睨んでいました。

 久我先輩はわたくしが女だということを知らないみたいですね……。

 

「あははっ、幸平って女の子だったんだ。ごめんごめん。下のことあんま知らなくってさ」

 

「あ、あの。幸平はわたくしですが。その、“2年生狩り”なんてことは――」

 

「嘘っ!? 全然イメージ違った。めっちゃ弱そうじゃん」

 

 わたくしが幸平だということを久我先輩に伝えると、彼はオーバーにリアクションをとって“弱そう”だと感想を述べます。

 どんなイメージをされていたのでしょう……。

 

「は、はぁ……。ごめんなさい……」

「なんで、謝るのよ……」

 

 彼のイメージと異なっていたことに謝罪すると、えりなさんが肘でわたくしの脇腹を突きました。

 嫌な顔をしないでください。穏便にことを済ませたいのです。

 

「なんだ。こんなに覇気のない小動物みたいな子に君たち揃いも揃って“秋の選抜”で負けたんだ。やっぱ、こんな会なんか意味ないじゃん。下の連中は取るに足らない雑魚ってことしか分からないし」

 

「わたくしはともかく、皆さんは弱くなんてありませんわ……!」

 

 しかし、それに続けて久我先輩は他の1年生も貶めるようなことを仰るので、わたくしはそこだけは反論させて頂きました。

 わたくしのせいで、皆さんまで悪く言われるのは耐えられません。

 

「……ふーん。そんな目も出来るんだ。まぁいいや。とにかく雑魚を何人倒したところで十傑は誰も食戟なんて受けないよ。何しろ俺ら2年もさぁ! 上のヤツら倒すのに超忙しいわけ」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「あれ? わかっちゃうんだ」

 

 久我先輩が何人食戟で倒しても誰も十傑は勝負の場に降りないと言われたので、わたくしがそれを承知すると彼は意外そうな顔をされました。

 やはり、彼もわたくしが十傑になるために食戟を繰り返していたと考えられたみたいですね……。

 

「ええ、まぁ……、だってお忙しいところに食戟なんてとても申し込んだり出来ませんし……、恐れ多いというか……」

 

「すんげー気弱じゃん。そういうとこ、あの先輩に似てるよ。実力はさておき」

 

「あの先輩?」

 

 わたくしのことを気弱だと仰る久我先輩は、誰かにわたくしが似ていると言われます。

 気弱な先輩が居られるということでしょうか?

 

「それじゃあ、とりあえずお茶を運ばせようか……」

 

 第一席の司瑛士先輩のひと声でお茶が皆さんのところに運ばれて、ようやく紅葉狩りが始まりました――。

 

 

 

「秋の選抜で――食戟なんてしないでほしかったよ……、こっちは選抜が(つつが)なく終わるよう苦心してたのにまさかの食戟2連発って……。諸々の手続きで奔走してタイムテーブルとにらめっこしてさ……。本気で肝を冷やしたよ……」

 

「そ、それは何とも……、申し訳ございませんですの……」

 

 お茶が運ばれてしばらくして、司先輩はわたくしたちが“秋の選抜”で食戟をしたことに触れました。

 どうやら、月の出入りの関係で決勝戦までのタイムスケジュールがかなりシビアなものになっており、それがズレてしまう事に対して先輩は肝を冷やしていたようです。

 

「君、準決勝の後で倒れたでしょ? おまけに死人まで出たとなると、こっちの責任問題にもなるし……、生きた心地しなかったなぁ」

 

「はぅぅ……、ごめんなさい……。そうですわね……、わたくしみたいな者が出しゃばって食戟なんてするから……、こんなことに……」

 

 その上、わたくしが準決勝の後で倒れたことに対しても彼は触れました。

 確かにあのまま、もしものことがあれば大会は台無しになっていたでしょう。

 

 ああ、結局わたくしは知らないところでも迷惑をかけていたということです。それなのに安穏と生活を送っていたなんて……。

 

「ちっ、面倒くせぇ女だな! なんでこんなのに負けたんだ!」

「うわっうわっ! 司さん、気弱モード入ってるわ! 面倒くせぇ! いいや、シカトするし」

 

 黒木場さんや久我先輩が何やら仰ってますが、気落ちしてよく聞こえません。

 

「はぁ……、参るよね……、俺が一席だなんて。色んな重圧や責任がのしかかるし。気が重いよ。正直……」

 

「どうしたら良いんでしょうか……、選抜の優勝者とか言われて……、こんなにプレッシャーもかけられて……、おまけに先輩方にも迷惑をかけて……」

 

「「ネガティブが止まらない……!」」

 

 そもそも、わたくしみたいな者が優勝してしまったことが間違っていたのかもしれません。

 わたくしが、こんな覇気もない臆病者だから、他の1年生の方々まで貶められてしまいます。

 

 ああ、穴があったら入りたい……。生きていることが恥ずかしいです……。

 

「先輩、もう少ししっかりしてください……」

「こら、ソアラ! えりな様を見習え! もう少しシャキッとしろ!」

 

「「ううっ……」」

 

 そんなことを思っていると緋沙子さんから怒られてしまいました。

 えりなさんみたいに凛と出来れば良いのですが、それはかなり難しい注文です……。

 

「こっちのネガティブ先輩は置いといて、そっちに戦意がないって分かって逆に拍子抜けしたわ! 俺らが1年のときより随分と小ぢんまりしてんじゃん! んじゃあさ、大サービスしてあげよっか? 何か1つでも料理で俺を上回ることが出来たら、食戟を受けてやるよ」

 

「…………」

 

 久我先輩は何やら十傑に挑戦する1年生みたいな展開をお望みであったみたいです。

 そこで、思いついたような顔をされて料理で彼を1つでも上回れたら食戟を受けると仰りました。

 彼は忙しいと言っていましたが、そんなことを仰って大丈夫なのでしょうか……。

 

「ちょっと、あなたに言ってるのよ。久我先輩は」

 

「ふぇっ? わたくしですか? 気持ちは嬉しいですが、先輩とは授業でも一緒になりませんし」

 

 わたくしが黙って久我先輩の話を聞いていると、えりなさんが彼はわたくしに向けてそれを言ったのだと伝えました。

 てっきり、ここにいる皆さんに向けたメッセージかと思いましたが……。

 そもそも料理で上回ろうにもその土俵もありませんし……。

 

「ねぇ、幸平さん。先輩と勝負したいなら月饗祭があるわよ」

 

「月饗祭ですか……? 学園祭のことですよね。それが何か……。というか、アリスさん。わたくしは別に勝負を――」

 

 わたくしが困っていると、アリスさんが悪戯っぽく微笑み“月饗祭”という、遠月学園の学園祭のことを口にされました。

 それ以前にわたくしは先輩と勝負をしようとは思っていないのですが……。

 

「月饗祭では十傑はみんな店を出すのよ。だから、あなたも店を出して久我先輩の売り上げを抜けば、上回ったっていう客観的な証拠になるじゃない」

 

 アリスさん曰く、月饗祭でわたくしが店を出して、久我先輩のお店以上の売り上げを出せば料理で上回ったことになるとのことです。

 学園祭で出店――お祭りの屋台みたいなモノしか想像出来ませんがきっと全然違うのでしょうね……。

 

 どちらにしろ、先輩に喧嘩を売るつもりはありませんので大人しくしましょう……。

 

「はっはっは! 面白いこと言うじゃん! はっきり言ってそれは絶対にリームーだよ〜! ていうか、君ら全員が束になったところで無理だし」

 

「「――っ!?」」

 

 アリスさんの話を聞いた久我先輩は大笑いされました。

 月饗祭ではここにいる1年生全員の力を持ってしても彼の店には及ばないと仰りながら……。

 

「んだと、てめぇ! さっきから聞いてりゃ!」

「ソアラさんが大人しいことを良いことに好き勝手言いますね。先輩……」

 

 それに対して黒木場さんと、それまで静かだったタクミさんが反発されます。

 お気持ちは分かりますが、抑えてください……。

 

「じゃあ、こうしましょう。えりなは十傑だから無理だけど、残りの私たちが1つの店を出しますから売り上げで先輩のお店を上回れば、幸平さんと食戟してくださいますか?」

 

 すると、アリスさんが立ち上がってえりなさん以外のここにいる1年生が全員でお店を出して久我先輩のお店と勝負することを提案されます。

 ええーっと、わたくしの食戟のために皆さんで店を出すなんて畏れ多いのですが……。

 

「いいよ。別にぃ〜。頭数ならこっちの方が多いし。負ける気ナッシングだからさ。受けて立ってあげるよ。あっ! 別に君たち以外に何人増やしても文句言わないからお好きにどうぞ〜」

 

「えっと、ええっ!?」

 

 久我先輩はニコニコと笑ってそれを了承されます。

 よくわかりませんが、変な方向に話が進んでいませんか? わたくしの意志とかは聞かないのですか……。

 

「極星寮で店を出す予定だったけど、ソアラちゃんと田所ちゃんは無理か。でも、素晴らしいね! みんなが手と手を取り合って頑張るって!」

 

「いや、その、一色先輩?」

 

 一色先輩は青春モードに入って、既に恵さんまでこの話に参加することになっていました。

 というより、他の方々も何も言っていませんがよろしいのでしょうか……。

 アリスさんの提案に誰も反論をされてないのですが……。

 

「えりな様、私は……」

 

「手伝うくらいはしてあげなさい。私の所は大丈夫です」

 

「緋沙子さん? わたくしはまだ……」

 

 えりなさんと緋沙子さんの中でもお店を出す話は決定事項になっており、えりなさんは緋沙子さんにお店を手伝うように指示を出していました。

 

「何の店にするか……。やはり、香りで人を魅了するカレーか」

「香りより見た目だろ! 美しいイタリア料理で――」

「偵察なら任せろ」

 

「葉山さん、タクミさん、それに美作さんまで……」

 

 葉山さんとタクミさんは既に何のジャンルの店にするのか討論をしており、美作さんは諜報活動までされると言い出します。

 ああ、皆さま思った以上にやる気なのですね……。

 

「じゃあ取り敢えず、片っ端から高級食材を仕入れましょうか」

「原価って言葉知ってます? 一気に赤字コースになるかもしれないっすよ。お嬢……」

 

「これは、その。出店しなきゃならない流れですか……」

 

 言い出しっぺのアリスさんはもちろんやる気満々ですし、黒木場さんがアリスさんのやることに反対されるはずがありません。

 つまり、もうお店を出すことは決まってしまったのです……。

 

「あと、ソアラ……。知ってると思うけど、月饗祭の出店で赤字を出したら退学処分だから。あなたなら、心配はしてないけど、一応ね」

 

「た、退学処分……」

 

「ソアラさん。顔が真っ青だね……」

 

「恵さん、助けてください……」

 

「う、うん。私も頑張るから……」

 

 最後に涼しい顔をされたえりなさんが、赤字なら退学処分だということを伝えられました。

 楽しい学園祭のはずが、またまた退学の危機になってしまいましたわ……。

 もう嫌すぎです。遠月学園のこういうところが……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 紅葉狩りが終わり、えりなさんを含めた十傑の方々が帰られた後――わたくしたち1年生はこの場所に残って軽く打ち合わせをすることになりました。

 

「上手く乗ってくれたわね。久我先輩」

 

「乗ってくれたわね、じゃありませんわ。どうしてあんなことを仰ったのですか?」

 

「だって、十傑になれるチャンスを安売りしてくれたんだもの。滅多にないわよ。あんなお手軽な条件」

 

 アリスさん曰く十傑という方々は与えられる権力が莫大であることも影響してか、簡単には勝負の場に降りてくれないみたいです。

 今回、久我先輩が提示してくれた条件はかなり破格のものだったとホクホク顔をされていました。

 

「でしたら、アリスさんが挑戦すれば良いじゃないですか」

 

「それはやっぱり順番じゃない。私が選抜で優勝してたら、そうするけど」

 

「意外っすね。お嬢がそんな殊勝なことを言うなんて」

 

 わたくしがアリスさんが挑戦すれば良いと口にすると、彼女は自分は選抜で優勝していないから先を譲ったと仰ります。

 黒木場さんはそんなアリスさんの発言に驚かれてました。

 

「あら、リョウくん。私だって弁えるときくらい分かってるわよ。幸平さんが久我先輩から八席を奪い取ったら、私が幸平さんに挑戦するのよ。選抜でのリベンジマッチとして」

 

「あー、なるほど」

 

「手を叩いて納得するな!」

 

 そして、アリスさんがニコニコしながら十傑になったわたくしにリベンジマッチを仕掛けるとその後の展望を語りました。

 確かに彼女に頼まれたら嫌とは言えませんし、アリスさんらしい答えにわたくしは納得しました。緋沙子さんは呆れてましたが……。

 

「まっ、十傑云々は置いといて、久我先輩にあそこまでナメられるのは俺も少しカチンときた」

 

「ソアラさん。こうなった以上は君がリーダーだ。シェフとして俺たちをまとめて久我先輩にひと泡吹かせよう」

 

「わ、わたくしがリーダー? アリスさんや、葉山さんの方が――」

 

 タクミさんが急にわたくしがリーダーだと言われて、わたくしは困惑してしまいました。

 こういうのはもっとしっかりした方のほうがよろしいのではないでしょうか……。

 

「俺は遠慮するよ。こいつらまとめるなんて面倒くさいし」

 

「私はやっても良いけど、今回は幸平さんに譲ってあげるわ。その方が面白そうだし」

 

「ええーっと、そんなこと言われても……」

 

 葉山さんもアリスさんも首を振ってリーダーにはならないと仰ります。

 それにしても、わたくしは人をまとめた経験なんてございませんし……。困ります……。

 

「俺は幸平がシェフじゃねぇとやらねぇぞ」

 

「俺だってそうだ。君だから今回は下についても良いと思ってる」

 

「いや、わたくしなんて、そんな上に立つような器ではないですよ」

 

 美作さんとタクミさんはわたくしが上でないと嫌だと仰っており、ますますプレッシャーに押し潰されそうになりました。

 どう考えても分不相応なのですが……。

 

「ねぇ、ソアラさん。みんなそう言ってるしやってみたら? 私もソアラさんなら久我先輩にも勝てるかもって思えるよ」

 

「スタジエールのとき、貴様の発想力には驚かされた。十傑が圧倒的に有利なこの戦いでも貴様なら、あるいは対抗出来るかもしれん」

 

「恵さん、緋沙子さん……、わかりました。とにかく出来る限り頑張りますし、やるからには期待に応えられるように全力を尽くします」

 

 恵さんと緋沙子さんに背中を押されて、わたくしはリーダーとなることを決心しました。

 考えてみれば、これだけのメンバーで同じ店を持つなんて楽しそうですし、そんな経験はそうそう出来ないかもしれません。

 

 皆さん、個性的ですが力を合わせれば凄いことになりそうです。

 

「まったく、貴様ときたらやっとやる気になったか。弱気な精神は叩き直す必要があるな」

 

「ううっ……、すみません」

 

 やる気になったわたくしの背中を緋沙子はバシッと叩いて弱気になるなと激励しました。

 何だか、出来の悪い妹みたいに扱われていますね…。

 

「まずは、何のジャンルの店を出すかだよね。葉山くんはカレー、タクミくんはイタリア料理と言ってたけど」

 

 そして、話し合いはお店のジャンルについての話になります。

 カレーもイタリア料理も人は呼べそうですし、良いですね。

 

「それじゃ、つまらない。もっと久我先輩を悔しがらせたいわ」

 

「あの野郎、俺たちをナメきってやがったからな」

 

 しかし、アリスさんと黒木場さんは不服そうな顔をされます。どうやら、久我先輩を屈服させなくては気が済まないみたいです。

 

「でも、さすがに久我先輩の得意な中華料理とかにはしないよね? 売り上げで上回れば良いだけだし」

 

「なるほど。中華料理か。スパイスは漢方にも使われている。俺も得意なジャンルだ」

 

「私だって、医食同源と言われている中華の知識はそれなりに持ち合わせているぞ」

 

「得意なジャンルで負けたとあっちゃ、屈辱だろうな」

 

「じゃあ、中華料理で決まりね!」

 

 恵さんが中華料理という言葉を出すと、皆さんは意外なことに好感触で、アリスさんに至っては決まりとまで仰りました。

 久我先輩の得意ジャンルというのは気になりますが――。

 

「わかりました。ジャンルは中華料理にしましょう」

 

「そ、ソアラさん。そんなにあっさりと決めちゃっていいの?」

 

「特に反対意見が出てませんので。揉めないなら早く決めちゃった方がよろしいかと」

 

「あ、そっか。確かに……、意見を簡単に曲げてくれそうな人――あまりいないかも……」

 

 これだけ個性的な方々が集まると意見が反発することが多いことが予測されます。

 なので、すんなり決められるところは決めておいた方が時間の節約になって良いのです。

 なんせ、時間は有限ですからスタート地点の手前で止まっているわけにはいきません。

 

「メニューを決めるのはすぐには無理そうですから、各自で考えて後日発表しましょう。わたくしはそれと同時に出店エリアも決めておきます」

 

 中華料理のメニューなどはすぐには思いつくはずもありませんので、各自の宿題にしました。

 わたくしは申請を出すと同時に出店エリアを決める仕事も任されます。

 こうやってお祭りの準備をするのは退学さえかかっていないのなら楽しいですね――。

 

 

 

「久我照紀を相手に中華料理の出店で勝負する? 流石は姐さん。やることが大きいですね。中華料理なら、私だって力になれます。任せてください!」

 

 極星寮に戻り、遊びに来ていた美代子さんに中華料理の店を学園祭で出すことを伝えると、協力すると仰ってくれました。

 ジャンルが中華料理に決まったとき、真っ先に彼女に協力をお願いしたいと思っていたのです。彼女の実家は大きな中華料理店ですから――。

 

「おい、北条! 抜け駆けしてんじゃねぇ! 私も手伝うぜ。ソアラさん!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「でも、水戸さんは丼物研究会の出店があるんじゃ……」

 

「掛け持ちでも何でもしてやらぁ! それに、丼物研究会は人手も足りてるから私一人が抜けても大丈夫だ」

 

 さらににくみさんも丼物研究会のお店と掛け持ちで手伝ってくれると仰りました。

 心強い仲間が二人も増えて、段々と気分が落ち着いてきました。

 皆さんの助けがあれば、きっと上手くいくはずです――。

 

「では、お二人ともよろしくお願いします。わたくしも中華料理はほとんど素人なので右も左も分からないのです」

 

「それじゃあ、ソアラ姐さん。さっそく、敵情視察といきませんか? 久我照紀の中華料理研究会を覗けば何か掴めるかもしれませんよ」

 

 中華料理の知識に乏しいことを伝えると、美代子さんは久我先輩の中華料理研究会に偵察に行こうと誘われました。

 なるほど、確かに最高峰のクオリティを知っておく必要はあるかもしれません。

 

 わたくしたちは中華料理研究会へと足を運ぶことにしました――。

 




ということで、選抜本戦出場者+北条さんとにくみの十人で店を出す展開にしていました。
ライバルたちが共闘するのが好きなんですけど、人数増やし過ぎたかもしれません。

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