【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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ラーメンマスター

「おい……、見ろ! 遠月学園の制服だ!」

 

 女木島先輩がいるという旅館の前に辿り着いたわたくしたちは、どうやら遠月の制服を着ているということで、そこに集まっておられた男性たちに怖い顔で睨まれたりされておりました。

 

「……な、なんだか危ない雰囲気ですね」

 

「何者だお前ら! まさか“敵”の回し者じゃねぇだろうな!?」

 

「ひぃああああ!? あの、あの……、ごめんなさいいいい!」

 

 男性たちの内の一人が恵さんに凄み、彼女は涙目で彼に謝ります。

 このピリピリした空気は何でしょう……? それに“敵”と仰っておりますが……。

 

「す、すみません。あ、あの、待って下さい。敵というのはどなたのことを仰っているのですか……?」

 

「薊政権・セントラルだよ!」

 

 わたくしが彼らの敵について質問をすると、男性は新聞を突き出されました。

 

「こ、これは……!?」

 

 そこには『遠月学園』が『北海道飲食店とパートナーシップ締結へ』という見出しがあります。“英断?”“脅迫?”という煽り文句と共に。

 

「真の美食?だか、何だかを掲げるセントラルは手始めに北海道の飲食店から粛正を開始したんだ。“ビジネスパートナーシップ契約”だとか聞こえはいいが、要はセントラルが指示する通りの品を作れっていう命令だよ。それに従わなきゃ食材の仕入れ先に圧力をかけて営業がままならないよう仕組みやがる! 実際問題、すでに閉店寸前まで追い込まれてる店は十や二十どころじゃない……!」

 

 彼の言葉でわたくしは“日本中の料理店を潰す”と司先輩が仰っていたことを思い出しました。

 セントラルは既に次のステップに踏み出そうとしているということですね……。かなり深刻な状況のようです。

 

「………これがセントラルのやり方ですか」

「そんな……、そんな大変な事が起こってたなんて……!」

 

「でも俺らラーメン職人はそんな圧力には屈しねぇ!」

「あぁ! 今まで積み上げてきた味を変えられてたまるかよ! 俺らには若がついてるからな!」

 

「わか……、ですか?」

 

 旅館の中では女木島先輩がラーメン職人の男性たちの相談を受けていました。

 どうやら、“若”とは女木島先輩のことのようです。

 

「おし……、話は分かった。まず俺の持ってる人脈を総動員して流通ルートを確保する。皆のラーメンは俺が守る。どうか踏ん張ってくれ……!」

 

「若! ありがとうございます!」

 

「若がいれば百人力……、いや千人力だ!」

 

 彼らから聞いた話によれば、女木島先輩はラーメン道を追求すべく、日本全国で屋台を引き修行の日々を重ねていました。

 そしてその先々で――経営ピンチに陥った店を助けたりラーメン店同士のいざこざを解決したりする内に彼の名は全国に広がることとなったのです。

 そうしてあれよあれよという間に日本中のラーメン店主から絶大な信頼を受け“若旦那”や“組長”などと呼ばれる――ラーメン界の若き王となったのだとか……。

 

「とても頼りになりそうな方ですね……」

 

「あの時の恩は忘れられねぇっす……! 先代店主であるおれの親父が病に倒れた時、偶々通りかかった女木島兄貴が店を支えてくれたんだ。おかげで店を維持できて……、親父も復帰できて!」

 

 若い男性は涙ぐんでおりました。女木島先輩に大きな恩があると……。

 

「おまえが店を見捨てなかったからさ。これからも……、親父さんを支えてやれよ。俺も出来る限りのことをする」

 

 女木島先輩よりも、男性たちの方が歳上に見えますが、彼らは女木島先輩を尋常じゃないくらいに慕っているみたいです。

 

「若旦那ぁぁ!」

「女木島組長ぅぅ!!」

 

「すごい人望だね……」

 

「ええ、素晴らしい先輩です。素直に尊敬が出来ますね」

 

「………ん?」

 

 しばらくして女木島先輩はわたくしたちに気が付きこちらをご覧になりした。

 とにかく、彼に連隊食戟の戦列に加わるようにお願いしなければ――。

 

「………え、ええと、どうも。そ、ソアラさん、どうしよう……」

「……女木島先輩、今日は折り入って頼みがあって参りました」

 

「電話でも伝えたはずだ。断る……! その連隊食戟(しょうぶ)、俺の出る幕じゃねぇよ」

 

 わたくしたちがお願いがあると申し上げても、女木島先輩はぶっきらぼうにそれを断られます。

 やはり一筋縄ではいかないみたいです。

 

「で、でも先輩だって十傑第三席を外されちゃったんですよね……? 敵の十傑サイドに勝ったら席次を取り返せるのに……」

 

「はぁ~~~~」

 

「……?」

 

 恵さんは彼に失われた十傑の座は惜しくないのかと尋ねられると、大きくため息をつかれました。

 

「俺は勝負ごとは性に合わねぇのに遠月に入ってから勝負勝負、何でも勝ち負けだ、同級生からも毎日食戟を挑まれたよ」

 

「わたくしも、経験がありますから気持ちは分かります。しかし、女木島先輩も入学前はそういう学校だとはご存知無かったということですか?」

 

「そりゃ日本一の料理学校だって聞いたから……、で、あんまりしつこいんで売られた勝負を片っ端から受けてたら。第三席まで上り詰めてた……」

 

「何とも豪快なお話です……」

 

「だが俺はもうウンザリだ。料理に勝ち負けがあるとすれば……、いかに客を喜ばせられるかという競争だけでいい。俺のラーメンを戦闘の道具にしたくは無ぇんだよ」

 

 噂通り、女木島先輩は本来は料理で戦う食戟が好きではないみたいです。

 わたくしも勝負事は好きではありませんから、彼に同意は出来ますが今はそうは言えません。

 わたくしが言葉を探していますと、まずは恵さんが口を開きました。

 

「…………先輩のお気持ちはわかりました。でも、もう一度お願いさせて下さいっ! 私たちの友達の……、退学がかかってるんです。私はどうしても皆を守りたくて……、それでっ……!」

 

「俺も守りたいだけだ……、今のラーメン文化をな。悪いが力になる気はねぇよ。自分たちのことだけで手一杯だ」

 

「…………」

 

「気の毒だが諦めな……、若は一度言ったことは違えないお人だ」

 

「………ご、ごめん。ソアラさん……」 

 

 恵さんは正直に事情を説明して、彼に助力をお願いしました。しかし、彼もまた守りたいものがあるとしてそれを断られます。

 彼も何かを守るために頑張っているならば、なおさらこのままにはしておけませんね……。

 

「女木島先輩の仰ること、よく分かります。わたくしも手が届く範囲を守りたくて、戦いに参加しますし、出来れば料理で勝負などしたくないのですから」

 

「ほう、なら諦められるだろ。帰ってくれ」

 

「帰りません。女木島先輩、分かっているはずです。今は良いかもしれませんが、セントラルがあらゆる大衆食堂を潰して回った暁には、ラーメン業界とてお一人の力では守ることは厳しいと……。ここは力を合わせて頭を叩いておくべきです。先輩がこちらに加わってくれましたら、より確実に勝利を掴むことが出来ます。わたくしも、ここにいる恵さんも含めて、勝てるメンバーが揃っていますから」

 

 女木島先輩の力でラーメン業界を守ると仰ってましたが、セントラルが本格的に始動すれば彼一人の力では対抗しきれなくなる日がいつか来るでしょう。

 それならば、守るべきものがある者同士手を組んだ方が事態を避けられる可能性が上がります。

 

「……俺は勝負ごとは嫌いだがな。口だけの奴はもっと嫌いなんだ。お前は十傑に勝てるほどの実力があってこの交渉に来ているんだろうな?」

 

「単純な料理の実力なら負けていないと思います。多分、女木島先輩にも……」

 

「ソアラさん……!」

「おい、この女! 若になんて口を利くんだ! 慎みやがれ!」

 

 わたくしは精一杯の見栄を張りました。今はこちらが手を組むに足りるか彼にアピールせねばならないのですから、自分が十傑に劣ると口にするわけにはいきません。

 

「さっきも言ったが、口だけの奴が俺は嫌いだ。実力がどの程度か見せてもらおうか」

 

「納得して頂ければ、一緒に来て頂けますか?」

 

「考えてやる……。ラーメンは作れるか? 美味いラーメンを食わせてみろ。俺が美味いと言ったら負けを認めてやろう。調理場へ来い」

 

「はい。よろしくお願いしますわ」

 

 わたくしは髪を結んで調理場に向かいます。ラーメンでラーメンマスターと呼ばれる彼を美味しいと言わせる――これは大変難しいことです。

 しかし、ここで負けるわけにはいきません。

 

「そ、ソアラさん大丈夫……? ラーメンって作ったこと……」

「あまり経験はありませんが頑張ってみます……、はぁ……、えりなさんの真似をして強がってみましたが、心臓にきますわね……」

「で、でも、やっぱりソアラさん。格好良かった……、だから私は……」

 

 本格的なラーメンを作った経験はあまりないですし、変に見栄を張ったせいで心臓が痛いですが、わたくしは懸命にラーメンを作りました。

 

 そして――。

 

「……ダメだな。コシもねぇ。出汁も全然利いてねぇぞ。諦めな。ラーメンで俺を唸らすにはまったく実力が足りてねぇ」

 

「では、もう一度作りますね」

 

 1回目の調理では女木島先輩に合格を頂けませんでした。

 それでは次にいきますか……。

 

「おいおい、どういうこった。諦めねぇのか?」

 

「先輩が土俵に降りてくれたのです。1回だけとは仰ってませんでしたので……」

 

「ちっ、大人しそうな面して、厚かましい……。だが、確かに回数は決めてなかったな。気の済むまで作ればいい」

 

 女木島先輩は若干呆れながらも、再度調理に移ることを許してくれました。

 これでチャンスは何回か頂けました。何とかしませんと――。

 

「ところで、もっと美味しくするにはどうすれば良かったのですか?」

 

「はぁ?」

 

「せっかくラーメンマスターと呼ばれている女木島先輩が食べてくれていますので、アドバイスを頂こうと思いまして。先輩のアドバイスを貰ってはならないとも言われませんでしたし」

 

「本当に厚かましいな。まぁいい。言われて、どうこう出来るってもんじゃねぇ。まず、スープだが――」

 

 そして、さらに女木島先輩にこのラーメンを美味しくする方法を質問しました。

 彼は今度は思いっきり呆れながらもスープや麺のアドバイスをされます。

 

 

「どうぞ、おあがりくださいまし――」

 

「――ズルっ……、――っ!?」

 

「ソアラさんのラーメン。さっきより信じられないくらい美味しくなってる……。女木島先輩がちょっとアドバイスしただけで……」

 

「まだまだダメだな」

 

 彼のアドバイスは的確でラーメンは最初の味を遥かに凌駕しました。

 しかし、彼からすればまだまだみたいです。

 

「スープなんですけど、これ以上濃厚にしようとすると――」

 

「醤油スープを扱うときはだな――」

 

 わたくしは食べてみて気になった点を女木島先輩に質問すると、彼はまたコツを教えてくれました。

 

 

「おあがりくださいまし!」

 

「ダメだ!」

 

「試食、お願いしますわ!」

 

「なんなんだ、あのガキは! 作るたびに兄貴のアドバイスを吸収してやがる!」

「素人丸出しのラーメンが今や名店にも及ぶ領域に――!」

「つーか、あの女、何時間もこんなこと繰り返して1つも疲れを見せねぇ……、何て集中力と体力だ……!」

 

「だが、あの女木島兄貴にラーメンで美味いって言わせるなんて無茶だ――!」

 

 何度となく試行錯誤してラーメンを作り続けましたが、彼からの合格は一向に出ませんでした。

 でも、ラーメンは美味しくなり続けています。

 次の一杯こそ、彼に必ず美味しいと――。

 

「ズルっ……、はぁ〜〜、何でそこまでして意地を張りやがる……? 仲間のためか?」

 

「ええーっと、もちろん友人たちのためですわ。あとは、やっぱり料理ってこうやってドンドン美味しくしていくところに楽しさがあるって思うのですよ」

 

「…………」

 

「自由気ままに、色んな方々の意見を聞いたり、時には競い合ってみたり、食べ合ったりして、新しい美味しさを発見出来るようなそんな環境を――セントラルは全部壊そうとしています。わたくしはそれが耐えられません」

 

 わたくしがこの戦いで退けない一番の理由は、もちろん仲間の退学を取り消すことですが、自由で楽しい料理が潰れてしまうことが許せないということもあります。

 

「ふぅ……、こんな時でも随分と楽しそうに作るんだな。お前は」

 

「女木島先輩と意見を交換し合ってラーメンを作るととっても美味しくなりますから」

 

 そして、この瞬間もわたくしは楽しくて仕方ありません。

 自分の品がどんどん美味しくなるからこそ、料理人は止められないのです。

 

「――スープも麺もまだまだだ。俺の理想には程遠い」

 

「それでは、もう一度……!」

 

「いや、もう十分だ。お前の実力は分かったよ……」

 

「女木島先輩! そ、そんな! ソアラさんは凄い料理人です! 口だけの人じゃないんです! ですから、もう少し時間を――!」

 

 女木島先輩は理想のラーメンには遠く及ばないとして、試食を止められようとされました。

 さすがに夜までかかればタイムオーバーですか……。わたくしの力不足――。

 

 しかし、女木島先輩は次の瞬間大きな声を出されます。

 

「美味かった! このレモンで醤油ラーメンのスープの味を整える発想は俺じゃ出なかったな。たった一日足らずで、大したもんだよ」

 

「「――っ!?」」

 

「お前みたいな奴がいるなら賭けてみようって気になった」

 

「女木島先輩……」

 

 女木島先輩ははっきりとわたくしのラーメンを美味しいと認めてくれました。

 それでは、彼は仲間になってくれるということでしょうか……。

 

「俺もまだ届いていねぇ理想のラーメンに近づけるなら、お前のような奴と競ってみるのも悪くねぇ。“約束”しよう。その連隊食戟において、勝利のために全力を尽くすと!」

 

「ありがとうございます! では、麺の食感と喉越しなんですけど――」

 

「おいおい、俺の話を聞いてたか? お前らに協力するって言ったんだぞ」

 

「あ、はい。ですから、今度は()()()()()アドバイスを頂こうと……」

 

「はぁ〜〜、セントラルの連中はとんでもねぇ化物を敵に回したみてぇだな」

 

 女木島先輩が戦列に加わると仰って下さいましたので、仲間としてのアドバイスを貰おうとしましたら、彼は大きなため息をつきます。

 何か間違ったことを言いましたでしょうか?

 

「嫌ですよ、女木島先輩。女の子に化物だなんて」

 

「わ、悪かったな。仕方ねぇ、1回だけ俺のラーメンを作るところを見せてやる。お前にゃ、それで十分だろう」

 

 そして、わたくしは夜遅くまで女木島先輩にラーメンの極意を教わったのです。

 これで反逆者側は大きな戦力を手に入れることが出来ました――。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 深夜になりましたので、女木島先輩の勧めもあり、こちらの旅館に一泊することになりました。

 今はえりなさんにそのことを電話で報告しております。

 

「随分と遅くなりましたので、今日はこちらの旅館に泊まることになりました」

 

『あの女木島さんを仲間に引き込めたのだもの。1日がかりでも十分過ぎる戦果だわ。良くやってくれました』

 

「ありがとうございます。明日のお昼頃には着くと思います」

 

『わかったわ。じゃあ、田所さんにもよろしく伝えておいてちょうだい――』

 

 えりなさんも女木島先輩が仲間になったのは大きな戦果だと喜んでくれました。

 これでこちらの陣営も元十傑が4人という布陣になりました。

 

「旅館に泊まるのは、恵さんのご実家に宿泊したとき以来です」

 

「ま、まさか、同じ部屋にまた泊まるなんて……。ど、どうするべ……、前よりずっとドキドキする」

 

「恵さん? どうされたのですか? 体の調子でも悪いのですか?」

 

 恵さんとは同室で宿泊となったのですが、何やら彼女はそわそわされていて、室内を忙しなくグルグルと回られます。

 彼女の感じがとても気になりましたので、わたくしは恵さんに体調について質問をしました。

 

「う、ううん。違うの、あのさ……、ちょっとだけお話しても良いかな?」

 

「ええ、もちろん大丈夫ですよ」

 

「そ、ソアラさんって……、その、最近、えりなさんと特に仲が良いよね?」

 

 恵さんが頰を赤くしながら伏し目がちになり、わたくしがえりなさんと仲良くなったと口にされます。

 えりなさんと最近特に仲良く――それは確かにそうですね……。

 

「えりなさんと仲が……、ですか? そうですね。極星寮に来て頂いて、特に仲良くなれたと思っています」

 

「新戸さんやアリスさんとも、かなり親しくなってるでしょ?」

 

「ええ。前よりは随分と……。ありがたいことです」

 

 さらに恵さんは緋沙子さんやアリスさんとも仲良くなられたとも言われました。

 そのことについても全くそのとおりです。

 

 しかし、恵さんはどうしてそのようなことを質問されるのでしょうか……。

 

「――私、本当にダメなの……。嫌な人間なんだ……」

 

「恵さん、本当に大丈夫ですか? 恵さんみたいに優しくて気立ての良い方が嫌な人なわけないではないですか」

 

「嫉妬してるの――!」

 

「――っ!?」

 

 恵さんはご自分が嫌な人間だと悲しそうな顔をされながら語り、わたくしに嫉妬をされていると声を出されました。

 どういうことなのか、全然わかりません。

 

「えりなさんたちは大事な友達だと本心でそう言えるけど……、ソアラさんが取られると思ったら胸が痛くなって……、気付いたら嫉妬してた……。ずっとソアラさんのことが好きだったから――」

 

「…………」

 

「ごめん……。困るよね……。そんなこと言われても……、でも私は――」

 

「そこまで想ってくれて嬉しいですよ。困るはずないじゃないですか。わたくしも恵さんのことが大好きです。一緒に居て、癒やされますし、安心します」

 

 涙をポロポロと零す彼女をわたくしはいつの間にか抱きしめていました。

 恵さんがわたくしに好意を向けていてくれて、それで他の方に嫉妬をされていると告白されたことには驚きましたが、それだけ想って貰えたこと自体は嬉しかったです。

 

「……前よりずっとずっと、今の方がソアラさんのことが好き……! 本当は、もっと料理とか上手くなってから言おうと思ってたんだけど――我慢出来なくなっちゃって……ぐすっ……」

 

「恵さんったら、泣かないでくださいな。寂しがっていることに気付かなくて申し訳ありません」

 

 恵さんは泣きながら自分の気持ちを伝えられます。

 わたくしはそんな彼女の頭を撫でることくらいしか出来ませんでした。こんなに彼女に寂しい思いをさせてしまっていたなんて……。

 

「ううん。ソアラさんは悪くないの。私が勝手に嫉妬してただけだから。で、でも、こうしてソアラさんの温もりを感じていると――やっぱり……」

 

「やっぱり……? んっ……、んんんっ……」

 

 恵さんはわたくしの頰に手を触れると、そっと唇を重ねて、優しくキスをされました。

 柔らかな唇の弾力を感じるのと共に、宿泊研修で四宮先生と食戟の後もこうして彼女と口づけをしたことを思い出します。

 

「んんっ……、ちゅっ……、んんっ……」

 

 恵さんとわたくしは時間が経つのも忘れて、長い間こうして唇を重ねていました。

 こうしていると心がとても落ち着くのです。

 

「――んっ……、め、恵さん……、こうして唇を重ねると、とても心地よいです……。今度はわたくしから、シテもいいですか?」

 

「う、うん……、きて……! お願い、欲しいの……! ちゅっ……、んんんっ……、んっ……」

 

 そして、次はわたくしから彼女に何度も口づけをします。

 恵さんとわたくしはいつの間にか抱き合って布団の上に横になりながら奪い合うようにキスをしていました――。

 

「――恵さん、お礼を言わせてください。大きな勝負があるとき、いつもあなたが付いていてくれたから、わたくしは頑張れました。恵さんが居るから勇気が出るのです」

 

「わ、私もソアラさんがいつも凄い人に立ち向かう姿に勇気を貰えた。今度の戦いもあなたが居るから――んんっ……、んっ……」

 

「も、もう。酷いよ、ソアラさん。最後まで言わせて……」

 

 恵さんの言葉を待てずに再び唇を塞ぐと彼女は少しだけ頰を膨らませます。

 

「ふふっ……、言われなくても分かってますから……。あら、もうこんな時間ですか……。そろそろ、お風呂に入って寝ませんと……」

 

「あ、あの、寝るときなんだけど……、そのう……、一緒に――」

「はい。お互いに温もり合いながら寝るのも楽しいですよね」

 

「う、うん……、大好きだよ。ソアラさん……」

「私も大好きです。恵さん……、ちゅっ――」

 

 その後、わたくしたちは同じ布団で抱き合って眠りに落ちました。

 そして、翌朝も部屋を出るまで恵さんに求められるがままに何度も唇を重ね――彼女と必ず寮の皆さんを助けると改めて誓い合いました――。

 




久しぶりに田所ちゃんのヒロイン回でした。
かなり溜まっていたのか、めちゃめちゃ積極的にしてしまいましたねー。
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