【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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時間があったので、今日2回目の更新です。
今回は遠月でソアラが頑張る理由が明かされます。
原作のソーマとの違いに注目してください。



食戟と丼物研究会

「完成ですわ! “ゆきひら裏メニューその20改”! 鰆おにぎり茶漬けですの!」

 

 わたくしが作ったメニューは鰆のおにぎりのお茶漬け。

 調理の最中に吉野さんと榊さんと伊武崎さんが目を覚まされてしまいました。起こしてしまって申し訳ございません。

 

「本当は鮭で作る品なのですが、本日は鰆バージョンにアレンジしてみました。皆さまの分も作りましたから、一緒におあがり下さいまし」

 

 せめてもの償いにと、皆さまの分もご用意させて頂いて、食べてもらうことにしました。

 美味しく出来ていればよろしいのですが……。

 

「注いであるのはなぁに?」

 

「塩昆布茶です。優しい塩気とコクが食事の締めにぴったりですのよ」

 

 榊さんの質問にわたくしはそう答えました。

 もう、宴会も終わりでしょうし、このような優しい食事が適しているはずです。

 

「――見た目は普通のお茶漬け、さて味は……」

 

 一色先輩はお茶漬けを観察して、それを口に運びました。果たして、この方のお口に合うでしょうか?

 

「――っ!?  んっ、んんっ……、美味い♡」

 

 彼は一口食べて、恍惚とした表情を浮べながら美味しいと仰ってくれました。

 ああ、ようやく……、わたくしは安心が出来ます。食べてもらうこの瞬間は何度体験してもドキドキしますわ……。

 

「鰆の身がすごくジューシーで何より皮のこのザクザク感! かむ度に旨味が湧き出てくる!」

 

「ただ炙っただけじゃこの歯応えは出ないわ。一体どうやって……」

 

「ポワレだ。この鰆、ポワレで焼き上げられている」

 

 吉野さんと榊さんの言葉に続いて、一色先輩が聞き慣れないワードを口にしました。

 これは、フランス語ですか?

 

「ぽ、ポワレですの?」

 

「いやいや、あんたが作ったもんなのに、なんでキョトンとしてるのよ!」

 

「いえ、ポワレという言葉が初耳でして」

 

 わたくしが“ポワレ”というワードに対して首を傾げていると、吉野さんがツッコミを入れてくださいました。

 はて、ポワレとは一体……?

 

「ポワレっていうのはフランス料理における素材の焼き方、ソテーの一種だよ。素材の上からオリーブオイルなどを掛けて均一に焼き色を付ける技法だね。――なぜ君がフランス料理の技法を知っているんだい?」

 

 一色先輩はわたくしが鰆を焼いた技法がポワレなのだと説明をしてくれました。

 ふむふむ。何やら知らない内にフランス料理のやり方を真似ていたようです。

 

「お父様に習ったのです。魚をバリッと仕上げるには適していると……。ご飯と一緒にザクザクと召し上がるのもいいですし、昆布茶に浸して少ししんなりさせるとまた違う食感が楽しめますわ」

 

 わたくしはこのやり方を父から習いました。そうですか、これはフランス料理の技法でしたか。

 なぜ、父がフランス料理を? ただの定食屋の店主なのに不思議です。

 そういえば、前に電話をしたときも海外に居たような……。

 

「まさかおにぎりの具をフレンチの技で作るなんて……。国境やジャンルにとらわれないなんて自由な料理だろう……」

 

 一色先輩も、皆さまも一心不乱にお茶漬けを召し上がってくださいました。

 美味しそうに食べていただけて嬉しい……。

 

「「ずずっ……、ずっ……」」

 

「んっ……、んんっ……、んんっ……!」

「んっ……、あぁ……」

「め、芽生えだ……、これは、春を表現しているんだね……。そう、生命の芽生えを……!」

 

 そして、皆さまは全員残さずに完食していただきました。ああ、美味しそうに食べていらっしゃる。

 

 ――そのお顔が見られただけでわたくしは幸せですわ。

 

「御粗末様ですの!」

 

 わたくしは髪を解いて、気を抜きます。ああ、足元がおぼつかないですわ。料理学校の寮とはハードですわね……。

 

「美しい……、美しい雪解けだったよ。ソアラちゃん」

 

「先輩こそ……、清々しい春風をわたくしは確かに感じましたわ」

 

 一色先輩が差し出した手をわたくしはふらつきながらも、何とか彼の手を握りました。

 それにしても、一色先輩の品は美味しかったです……。

 

「いい勝負をありがとう」

 

「ふぇっ? わたくしと一色先輩は勝負をしていましたの?」

 

「「えっ?」」

 

 彼がいい勝負と仰ったので、わたくしは首を傾げてしまいました。勝負をするなんてお話なんて、しましたっけ? 先輩はわたくしの品が見たいと仰っていましたけど……。

 

「じゃあ、あんたはなんでこの品を作ったのよ」

「私もてっきり編入生が料理勝負をしてると思ってた」

 

「こちらの品を作ったのは、一色先輩が何かを作れと仰ったからです。――ああ、そうでしたわ。こちらを食べて頂いた一色先輩に是非ともお尋ねしたいことがございましたの」

 

 どうやら吉野さんも榊さんも、わたくしが一色先輩と料理勝負をしていたと勘違いされていたみたいです。

 というより、勝負だと思っていなかったのはわたくしだけなのかもしれません。

 

「僕に質問? うーん。驚いたな。勝ち負けにこだわらなくてこれ程の品を出したんだね。君は……」

 

「んっ……、ソアラさん? それに……、一色先輩……」

 

 一色先輩がわたくしの言葉に返事をしたとき、ちょうど恵さんが目を覚ましました。

 

「ともかく、この歓迎会で晴れて君も極星の一員だ。分からないことがあれば遠慮せずに聞いてくれ」

 

「では……、わたくしと十傑までの距離を教えて下さいまし」

 

 わたくしが知りたかったのはえりなさんとわたくしの距離。

 同じ十傑である一色先輩なら、それが分かると思いましたの。

 

「ふふっ、そうだった。君は薙切えりなくんと肩を並べるのを目標にしているんだったね。何か理由でもあるのかな?」

 

 一色先輩はわたくしにえりなさんを目指す理由があるのかと、尋ねました。

 理由ですか。少しだけお恥ずかしい話なのですが――。

 

「大層な理由ではないのですが、薙切えりなさんに美味しいモノを食べさせて差し上げたいと思いまして」

 

 わたくしはあの時、えりなさんの美味しそうに食べている表情に惹かれてしまいました。愛らしくもあり、気高くもある、そんな彼女に――。

 

 簡単に申し上げますと一目惚れです。

 

 もしも、彼女を満足させる一皿を作ることが出来れば――えりなさんはどのような表情(かお)を見せてくれるのでしょう? それが分かるのなら、どのような努力も惜しまない。

 わたくしは決心をしたのです。そう、彼女のための一皿を完成させると――。

 

「そ、それだけ? ソアラさん、十傑について話を聞いたんだよね?」

 

 恵さんはわたくしが十傑を目指す理由に驚いているみたいです。

 わたくしは、そんなに突飛なことを申し上げたのでしょうか?

 

「もちろんですわ。一色先輩が所属しておられる十傑というものは、この学園の頂点という存在だということも存じ上げております。しかし、そのくらいの実力にならなくては、えりなさんを満足させられないでしょうから――」

 

「君は十傑を目指すと……。ふっ、ふふっ……、――素晴らしい〜〜っ!!」

 

「ふえぇぇっ!?」

 

 わたくしの言葉が言い終わらない内に、一色先輩はガシッとわたくしの両肩を掴んでグラグラと揺らしながら叫び声を上げました。

 

「すばらしい向上心だソアラちゃん! 僕は今猛烈に感動している! 極星に住まう学生はそうでなくてはいけないよ~〜っ!」

 

「い、一色先輩……、い、今、力が入らないんです〜〜。あまり揺らさないで下さいまし〜」

 

「一色先輩、ソアラさんがなんか顔が青くなってます〜」

 

 わたくしが目を回していると、恵さんが慌てて立ち上がり、一色先輩を止めてくださいました。

 

「すまない。つい、興奮してしまった。それでは君は踏み入れなきゃいけないね。“食戟”の世界に」

 

「“しょくげき”?」

 

 初めて聞く、“食戟”という言葉。これが、この遠月学園において最も重要なキーワードだということを、一色先輩の説明を聞いて理解しました。

 なんて、恐ろしい行為がまかり通っているのでしょう……。

 

 

 “食戟”とは遠月学園伝統の料理対決による決闘なのだそうです。

 学園の生徒間で生じた争いの決着を付けるために行われるらしいのですが、重要なのは、食戟に挑む者は自身の立場に見合った“対価”を差し出さねばならず、勝負に負けた者はその“対価”を取られて学園内の地位や権限を失うということです。

 

 ちなみに十傑の座を賭けた“食戟”もあるみたいなのですが、それに見合った“対価”は例えばわたくしの“退学”くらいでは到底釣り合わず、そのステージに上がることすら難しいみたいです。

 

 “食戟”を実施するには、“正式な勝負であることを証明する認定員”と“奇数名の判定者”と当たり前ですが“対戦者両名の勝負条件に関する合意”が必要とされます。

 また、“素材の調達も料理人としての技量のうち”という理由から、使用する食材や調理器具などは全て対戦者本人が用意しなければならないみたいです。

 

 とにかく、遠月学園ではこの“食戟”さえ強ければすべてが手に入るらしいので、学園の至るところで“食戟”が実施されているみたいです。

 

「君はきっといい戦績を収めるだろうね。勝負でないと思っていても、僕と引き分けるくらいの品を出すのだから」

 

「先輩、あまり謙遜されるのはよろしくありませんわ。一色先輩の本当の力はまだ見せてもらっておりません」

 

 一色先輩の力はまだまだ隠されているはずです。手を握ったときに分かったのは、とんでもなく料理に対して研磨を積んでいること、そして感じるのはただならぬオーラ……。

 

「――っ!? ふふっ、なんのことかな? 僕は全力で料理に取り組んだよ」

 

「そ、そうでしたか。た、大変、失礼いたしました。は、恥ずかしい……。申し訳ありませんですの〜」

 

 と思っていましたが、先輩は全力で取り組んでいたみたいなのです。

 それをわたくしはしたり顔でなんてことを申し上げたのでしょうか? 恥ずかしい……。穴があったら入りたいですわ〜。

 

「引き下がるの早っ! 秒速で頭を下げてるし」

「本当に料理作ってるときと雰囲気違うわね〜」

 

 吉野さんと榊さんは呆れたような表情でわたくしを見ていました。

 そ、そんなぁ。真面目にやっているつもりですのに……、ぐすん……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 それから、極星寮での生活が始まったのですが、ここでの生活はとにかく朝が早いです。

 寮の皆さまは独自で畜産や農業などを営んだりしていますが、中でも一色先輩が寮の裏に作られた農場は大きくて、とても一人では作業が追いつけないので、わたくしもお手伝いすることになりました。

 

 朝早くに農作業……、健康的で体にも良さそうです。 

 

 ある日、農作業が終わって登校しようと準備していると、恵さんたちから“研究会”というものの存在について教えて頂きました。

 どうやら、部活動みたいなものらしいのですが、様々な料理の研究会が遠月学園にはあるそうです。

 

 恵さんは“郷土料理研究会”という所に所属しているのだとか。

 ということで、わたくしは恵さんに付き合ってもらい、研究会とやらの見学に行くこととなりました。

 

「まぁ! 丼物研究会というものが御座いますの? わたくし、丼物大好きですわ」

 

「そ、ソアラさんって、見た目とか話し方の割に大衆料理が好きだよね」

 

「はい。わたくしは安くて、早くて、美味しいものが好きなのです」

 

 色々な研究会の宣伝用のポスターを拝見して、わたくしは丼物研究会というものに心が惹かれました。

 丼物といえばカツ丼や親子丼など、定食屋の定番メニューです。これは定食屋の娘として是非とも見ておかねば……。

 

「じゃあ、行ってみる? 一緒に丼物研究会……」

 

「ありがとうございます。恵さん、大好きですわ」

「え、えと、ソアラさん。人がいっぱい見てるよ……。でも、まぁいいか……」

 

 わたくしはいつも優しい恵さんに飛びついて抱きしめます。ああ、この温もり。クセになってしまいましたわ〜。

 

 ということで、丼物研究会に辿り着いたわたくしたちでしたが、中には生気を失った男性が1人、椅子に座って項垂れているだけでした。

 

「悪ィけど帰りな。もうじき丼研は潰される運命だからよ」

 

「あらあら、大変なときに来てしまったみたいですわね」

「ソアラさんって気が弱いけど、時々リアクションを間違うよね。一色先輩のアレを見ても平然としてたし……」

 

 どうやら、丼物研究会は壊滅のピンチらしいときにわたくしたちはお邪魔したようです。

 

「俺は小西。ここの主将張ってる者だ」

 

「差し出がましいようですが、大丈夫でしょうか……? 顔色が小梅太夫さんみたいになっておられますが……」

 

 わたくしは真っ白な顔色になっている小西先輩の元に駆け寄り声をかけます。

 

「これって……、レシピ集?」

 

「王道メニューから変わり種まで……、どれもワンポイント、メリハリのある工夫がされていますわ。とても面白いレシピですの。――なぜ、ここが潰されなくてはならないのでしょうか?」

 

「分かってくれるか幸平~!」

「ふえぇっ〜〜!!」

 

 恵さんが見つけたレシピ集を拝見したわたくしが、それを褒めますと、小西先輩は突然大声を出して迫ってきました。

 わたくしはびっくりして、尻もちをついてしまいます。はぁ、心臓に悪いです……。

 

「丼とは“早い、旨い、安い”の様式美! ひと碗で完結する男らしさ! 闘う男のための男飯! 俺は一匹の男として丼を究めるまでは死ねないんだ~~!!」

 

「まぁ! 素敵な信念ですわね。確かに男性の方のお客様はやはりボリューミーで手早く食べられて美味しい丼物を好まれていますわ」

 

 確かに丼物は男性の方がよく好まれるお料理です。わたくしも好きですが……。

 

「おのれ、俺の丼研……、薙切えりなさえいなければ!」

 

「えりなさんがこの件に何か関わっていますの?」

 

「ヤツのやり口はこうだ。 まずは気に入らない団体の予算カットや部室の縮小を会議に提出。強引に可決させる。ジリ貧になった相手に残された手は一つしかない。一発逆転の食戟だ! 丼研の部員たちは今回の相手が薙切の手先だと知った途端全員逃げ出しやがった……」

 

「それはそれは……。それで、あのう、対戦相手の方はえりなさんなのですか?」

 

 どうやら、小西先輩の丼物研究会はえりなさんの手によって潰されつつあるみたいです。

 彼女はきっと大衆の味である丼物の魅力をご存知ないのでしょう。

 それでは、小西先輩の食戟の相手はえりなさんということ?

 

「それは――」

 

 小西先輩が口を開いたとき、ドアが開いて中から作業服を着た方たちが入ってきて、何やら部屋の寸法などを測り始めました。

 

「なんのつもりだよ水戸!」

 

「何って早めの下見に来たんだよ。結果はもう見えてるからさ」

 

 歩くだけで胸が揺れていることがわかるくらい露出度の高い服装の女の子が小西先輩に近づいてきました。

 

「えりな様もおっしゃってたよ。丼なんていくらこだわっても所詮B級グルメでしかない低俗な品。この遠月には必要ありませんってね。まあ私に勝つ自信があるなら話は別だけどなぁ。分かったかい主将さん。お呼びじゃないのさ、こんな部は」

 

「恵さん、あの方をご存知ですか?」

「水戸郁魅さん。ミートマスターの異名を持つ料理人。中等部からいつも上位の成績で特に肉料理の授業ではA評価しか取ったことがないっていうすご腕。肉への造詣の深さは学園トップクラスとか」

 

 なにやら、丼物をおディスりになられている褐色の肌の女の子について恵さんに尋ねますと、彼女は肉のスペシャリストだということを教えてもらえました。

 

「凄い方なんですね。()()()さんとはまた、ご両親様も思いきった名前を……」

 

「あんたがどんな品を作ろうと私の超高級肉には勝てねぇんだよ」

 

「あら、確かに高級なお肉は美味しいですが、だからといって安いお肉がそれに劣るとは限りませんわ。特にこの丼物という食べ物に関しては」

 

 水戸さんの会話の中で聞き捨て出来ないセリフがありましたので、わたくしはつい会話に割り込んでしまいます。

 しまった。わたくし、なんてタイミングで口を挟みましたの……。

 

「てめぇは編入生!? えりな様に並ぶとか恐れ多いことを宣った」

 

「初めまして、幸平創愛と申します。よろしくお願いしますわ。水戸さん」

 

「お、おう。じゃなくて、てめぇは部外者だろ!」

 

 わたくしは水戸さんにご挨拶しますと、彼女は返事をして、その後ブンブンと頭を振りわたくしのことを部外者だと非難しました。

 そういえば、部外者でした。わたくしも恵さんも……。

 

「た、確かにそうですわね。あ、あのう、小西先輩」

 

「ん?」

 

「恐縮ですが、水戸さんとの食戟の勝算は?」

 

「いや、悔しいが全くねぇ。薙切が刺客として送ってくる連中に勝ち目なんざ……」

 

 わたくしが小西先輩に食戟についての勝算を尋ねますと、彼は悔しそうに首を横に振りました。

 勝ち目がないとまでおっしゃいますか……。

 

「左様ですか。でしたら、この勝負わたくしが水戸さんのお相手を務めさせて頂いてもよろしいでしょうか? こんな素晴らしい丼物研究会が無くなるのは寂しいですから」

 

「俺は構わねぇ。何か勝算があるなら、藁にも縋りてぇ」

 

 それならばと、わたくしは小西先輩に勝負の代理人になれないかと尋ね、彼から了承を得ました。

 

 水戸さんはえりなさんが認める程の方――きっと凄い方なのでしょうが、ここで丼物研究会が勝利すれば、きっとえりなさんも丼物の素晴らしさに気づいてくれるはずです。

 

「水戸さんも、わたくしが相手でも問題ございませんか? 勝負内容は肉料理で構いませんので」

 

「んじゃ、てめぇ私に負けたら遠月から出ていくか?」

 

「ふぇっ? そ、そんなぁ」

 

 何ということでしょう。水戸さんはいきなりわたくしに退学を賭けろと要求してきました。

 そ、そんなに簡単に退学なんて賭けられるものですの? 食戟って怖すぎます〜。

 

「やっぱりヘタレか。その度胸もねぇならでかい口たたくんじゃねぇよ!」

 

「ソアラさん、謝って帰った方がいいよ。こんなのリスクが高すぎる」

 

「そ、そうですわね。遅かれ、早かれ、えりなさんに追いつくには――このくらいのリスク……」

 

 しかし、一色先輩の話ではわたくしの退学を賭ける程度では十傑の席を手に入れるには全く足りないとのこと。

 それならば、そのステージに立つまでに幾度もこのくらいのリスクを背負わねばならない……。

 なら、わたくしは――。

 

「はっ、てめぇがえりな様に追いつくわきゃねーだろ。眠てーこと抜かしてんじゃ……」

 

「承知致しました。わたくしも退学を背負いましょう。その代わり、わたくしが勝利した場合、水戸さんには丼物研究会に入っていただきますわ」

 

「なっ――!? 目つきが変わった!? ――じゃ、じゃあお題の方はそっちに譲歩してやるよ。メイン食材は肉。作る品目は丼――開戦は3日後だ」

 

 わたくしは退学を賭けて水戸さんと3日後に食戟をすることとなりました。

 肉を使った丼物……。バリエーションは豊かですわね……。

 

「はい。わかりました。では、お互い良いお料理を作りましょう」

 

「はぁ? やっぱ変なやつだな、てめぇ」

 

 わたくしが手を差し出すと、水戸さんはそれを握ることなく去っていきました。

 さすがにこれから勝負をする者同士……、お友達にはなれませんか。

 

 

「ふぅ、3日後ですか……」

 

「ソアラさん、退学まで賭けてるけど、何か勝算はあるの?」

 

「ええ、もちろんそれは――これから考えますわ」

 

 恵さんはわたくしの勝算について尋ねてきますが、そんなものはございません。

 なので、わたくしの中で半分くらい後悔の念が押し寄せています。

 なぜ、このような似合わない無茶を……。とにかく負けてはすべてが終わります。何とかしないと……。

 

「や、やっぱり。でも、ソアラさんなら何かやってくれそうな、そんな気が……」

 

「お肉、お肉……、どんなお料理を作りましょう……」

 

 恵さんはわたくしが何とかする自信があるとお考えのようですが、本当にノープランです。

 困りましたわ。今からごめんなさいしても遅いでしょうし……。

 やはり、遠月学園とは恐ろしいところですわ――。

 

 いいえ、待ってください。お肉と恵さん? もしかしてアレが使えるかもしれませんわね……。

 

 




にくみはやっぱり負けたあとはソアラにデレデレになる展開がいいなーとか、考えたりしてます。
どんな感じになるのかお楽しみに!
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