【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら 作:ルピーの指輪
「とりあえず試作品を作ってみますの。極星寮の冷蔵庫に置いていたわたくしの晩ごはん用の牛ステーキ用肉を使って」
「は、半額シール」
わたくしは冷蔵庫から取り出したステーキ肉を恵さんと小西先輩に見せました。ああ、わたくしとしたことが、半額シールを剥がすのを忘れてしまいましたわ。お恥ずかしい……。
「あのなぁ、幸平。肉魅の使う肉は――」
「やはり、A5ランクの牛肉でも使われるのでしょうか?」
「お前、知ってるのか? 肉魅のこと?」
「いいえ、恵さんから聞いた情報くらいでしか」
「いいか、あの女は日本中の肉を牛耳っている水戸グループの令嬢だ。食戟っつーのは、自前で食材を用意しなきゃならねぇ。断言するが、肉魅はA5ランクの中でも最高品質の牛肉を用意するはずだ」
なるほど、水戸さんはお肉のスペシャリストであるとともに、強力なコネクションまでお持ちということですか。
「ソアラさんはA5ランクの牛肉を食べたことはあるの?」
「はい。わたくしのお誕生日の時などはお父様が何処からか高級なお肉を手に入れて下さって、何度か食べさせていただきましたわ。アレよりも美味しい牛肉は食べたことはございません」
「分かってんじゃねーか。そうだ。実際に俺は肉魅のステーキを食ったことがあるが、あのレベルの肉は飲める。噛んだ瞬間に旨味の塊になって喉を通り過ぎるんだ」
A5ランクの牛肉は確かに恐ろしいほどに美味です。あの強力な味わいは肉の王様と言っても過言ではないでしょう。
「そ、それなら、こっちも良い肉を手に入れなきゃ」
「そうですわねー。とりあえず、試作に試作は重ねたいので、沢山の牛肉は必要です」
「ちょっと待て、何も牛肉で勝負しなくても良いんじゃねーか? 肉なら他にも」
「ええ。確かにあります。ですが、わたくしのイメージでは既に牛肉のステーキ丼を作るまでは決まってますので。小西先輩、予算はどれくらいありますの?」
わたくしの中ではステーキ丼で勝負をすることまでは決まっております。
しかし、試作品をどれほど作るかは見当がつかないので、それなりに予算は必要です。なので、わたくしは小西先輩に余裕はどれくらいあるのか尋ねました。
「よ、予算? あっ――」
「小銭だけですか……。ソアラさん、これじゃ」
なんと、丼研の予算はカツカツの状況でして、僅かな小銭しか余裕がありませんでした。
「仕方ありません。わたくしの生活費からもカンパしましょう。ええーっと、確かお父様から毎月適当に振り込むと言われて、今月の生活費が入った通帳を渡されたのでした。まだ、金額は見てないのですが……。ウチは小さな定食屋ですから、大した額ではないと思います」
これは、わたくしが自ら巻き込まれた案件です。ならば、多少の出費は致し方ないということで、わたくしは父から渡された貯金通帳を開きます。
「えっ、私も見ちゃって大丈夫?」
「んー、どれどれ」
「「――っ!?」」
「ええーっと、一、十、百、千、万、十万、百万……!? 100万円!? お、お、お父様!? 一体、何を考えておりますの!? と、いうよりこんなお金……、怖すぎます」
わたくしの名義の口座に見たこともないくらいの金額が振り込まれていました。
いや、お父様。これ、1ヶ月分の生活費ですよね? 学費とかが落とされるとかではないのですよね……。
「お、お父様! 通帳に入っている金額なんですけど!?」
『ソアラちゃん、悪ィ適当に入れちまったけど、少なかったか?』
「早く自首して下さいまし!」
『はぁ? なんで俺が自首?』
「あんな大金をどうしたというのですか?」
『いや、だって大事な娘が一人暮らししてんだぜ。そりゃ、金くらいそれなりに――』
「限度がありますの! 高校生に余分な金は毒物ですの! 当分、生活費は振り込まなくて結構です!」
『ちょっと、ソアラちゃーん。あっ――』
わたくしは父が何か悪いことをして手に入れたお金を振り込んだと思いました。
しかし、どうやら反応が違う。これくらいの金額は余裕みたいな感じすら見受けられます。
とにかく、お金というものは魔物。二度とこんな大金を振り込まないように注意して、わたくしは電話を切りました。
「すげーな。まぁ、喋り方とかで分かったけど、幸平もお嬢様だったのか。だったら、いい肉を……」
「いいえ、なるべく安いステーキ肉で勝負するつもりです。なんせ、丼物の素晴らしいところは“早い、安い、美味い”ですから。わたくしは水戸さんやえりなさんにも丼物の奥深さを知ってもらいたいのです」
「しかし、簡単に言うけどよ。高級な牛肉にこんな硬そうな半額セールの牛肉なんかが勝てるのか?」
「一応、イメージは出来上がってますので、まずは試作品をご賞味下さい。少々お待ちを……」
わたくしはあくまでも安い肉で丼物を出すことにこだわろうと思いました。
なので、ある1つの結論に到達し、今から試作をしようと思ったのです。
「本当にそのお肉で勝負するの?」
「ええ、このやり方を思い出せたのは、恵さんのおかげなんですよ」
「わ、私のおかげ?」
「ほら、シャペル先生の授業のときにトラブルが起きましたでしょう? そのときに何をしたのか覚えてます?」
「はちみつを使って牛肉を軟らかくした――。――あっ、じゃあこの牛肉も」
そう、今回はこの安いステーキ肉を軟らかくするところからスタートします。
恵さんとの実践を復習しておいて良かったです。
「正解ですわ。今回は2つの工夫をします。まずは、このステーキ肉に格子状の切り込みを入れて伸ばします。そして、みじん切りにした玉ねぎをお肉の上にまぶすのです」
「まさか、この玉ねぎにも……」
「ええ、タンパク質を分解する酵素が含まれてます。効果は後ほどの試食で体感してみて下さいまし。そして、玉ねぎを取り除いて塩コショウで味付けをして、バターを溶かして肉を焼きます。――さらに、この焼き汁と絡めて玉ねぎを炒めて、お肉の上に乗せたら完成です」
「おっ、これはシャリアピンステーキか。軟らかさを追求した結果生まれた日本独自の変わり種ステーキ」
そう、わたくしが作ったのはシャリアピンステーキと呼ばれる、お肉をとにかく軟らかくしようと工夫を凝らしたステーキです。
これなら安い肉でも高級な肉に負けない食感を生み出すことがでしょう。
「どうぞ、召し上がってくださいまし」
「「はむっ」」
「ふわふわ〜」
「な、何て軟らかさだ。箸で簡単に割れる。そして、噛む度に口の中で――」
「「ほぐされていく〜」」
シャリアピンステーキ丼の試作品を召し上がった二人の反応はまずまずでした。
やはり、軟らかさという点で安い肉の弱点を克服出来ているのは大きいです。
「確かに安い肉とは思えねぇ」
「こんなに軟らかくなるなんて、知らなかった。すごいよ、ソアラさん」
「だが、肉魅のA5ランクのステーキには……」
「敵いませんわね。確実に……」
しかし、わたくしも分かっております。シャリアピンステーキだけでは、A5ランクの牛肉には到底敵わぬことを。
「ならば、やはり高い肉で!」
「いいえ。シャリアピンステーキ自体はある種の正解ですの。しかし、丼物とはご飯と具の調和。つまり、改良する余地があるのは……」
「そっか、ご飯の方だ」
「さすが恵さんですわ。大正解です」
「え、えへへ。相変わらずスキンシップが激しい……」
そう、恵さんの仰るとおり丼物なのですから工夫すべきはご飯。シャリアピンステーキの実力を120パーセント引き出すくらいの工夫さえすれば、そこに活路はあるはずです。
わたくしは正解を口にした、恵さんを思いきり抱きしめながら、その工夫について思案していました。
「な、なんか、俺……、何かに目覚めちまいそう……」
そこから、ご飯についてどうすべきかに重点を置いてわたくしたちは試行錯誤しました。
「ソアラさんの言ったとおりに色んな具材の入ったおにぎりを作ってみたけど」
「無理を聞いてくれて、ありがとうございます。では、頂きますわ。はむっ、やはり恵さんの作るおにぎりは最高ですね。わたくしのお嫁さんになってほしいくらいです」
「――っ!? お、お嫁さん……、そ、そんな。でも、ソアラさんさえ良ければ……」
わたくしはシャリアピンステーキに合う、ご飯のヒントを得るために恵さんに様々な具材を入れたおにぎりを作ってもらいました。
農作業をしているとき、よく彼女がおにぎりを差し入れをしてくれるのですが、これがかなり美味しいのです。
ですから、わたくしは恵さんのおにぎりを所望しました。わたくしでは生まれないアイデアがあるかもしれないと睨んだからです。
「うーん。練り梅ですか。悪くはないですわね。さっぱりとしますし……、候補に入れておきましょう。お次は……。――っ!? こ、これは……!」
「あっ、これは結構自信作だよ。前に一色先輩にも褒めてもらったんだー」
「やはり恵さんにお手伝いしてもらって正解でしたわ。シャリアピンステーキ丼に使うご飯はこれにしましょう」
「えっ? こんなので良いの?」
恵さんの自信作というおにぎりの具材はまさに今回のシャリアピンステーキ丼にぴったりでした。
これを利用すれば、良い品が作れそうです。
さて、あと出来る事は――。
「で、残る時間ですが、1つ悪あがきをしたいのですが……」
「マジかよ。幸平、お前やっぱりどうかしてんな」
「確実に今からそれをやったとしても徹夜コースだね」
わたくしはある提案をお二人に話しました。効果はある程度期待できますが、とにかく3人がかりでもかなり時間がかかる作業をしたいと……。
「お、お願いできます?」
「「もちろん!」」
わたくしの無茶な提案を恵さんも小西先輩も飲み込んでくださいました。
ありがたい。自分の退学を賭けた戦いに、特に関係のない恵さんがこんなに力を貸してくれるなんて……。感謝の念に堪えません。
◇ ◇ ◇
「な、なんであんなに人が居るんですの? 聞いていませんわ」
「き、緊張する。ソアラさん大丈夫?」
「大丈夫でないです。もうダメかも分かりませんわ」
「お、お前ら止めろよ。俺まで緊張しちまうだろうが」
食戟の会場には既に沢山の方々が見学にいらっしゃっておりました。
なんか、可愛らしいアイドルっぽい方が司会まで努めているのですが……。食戟って、こんなにエンターテイメント性の高いモノでしたの?
『先に現れたのはミートマスター!水戸郁魅~!』
相変わらず露出度の高い衣服を着て、惜しげもなく美しい肌を晒しながら、水戸さんが会場に姿を現します。
『続いて登場するのはただ今絶賛炎上中のうわさの編入生幸平創愛さんです〜』
「あー、頭のおかしい編入生だ」
「お前ごときがえりな様と肩を並べるだとー!」
「でも、顔は可愛いんだよなー」
そして、わたくしも小西先輩と恵さんと共に会場へと入ります。
ううっ、やはり始業式でのことが尾を引いておりますわね……。
『審査員は3名。テーマは “丼”。そしてメインの食材は“肉”! 水戸さんが勝てば丼物研究会は廃部。かつ幸平さんの退学。幸平さんが勝てば丼研の部費増額調理設備の増強。更に~、水戸さんが丼研へ入部することになります!』
「おいあれ!」
「薙切えりなだ」
「えりな様……」
「おお~マジ!? なんで!?」
「丼研のような小規模の食戟に十傑の一員がわざわざ足を運ぶとは……」
司会の方がルール説明をされている最中、えりなさんがこの場に現れたと会場内はざわついておりました。
あら、本当に来てくれましたの。退学を賭けて、えりなさんの刺客と勝負することを知って呼び出されたときは結構怒ってらしたのに……。
「おい、あの編入生。えりな様に手を振ってるぞ!」
「振り返してる〜〜!? おかしいぞ。だって、水戸が薙切えりなの派閥だろ?」
「何者なんだ? あの編入生……」
わたくしがえりなさんに手を振りますと、彼女は顔を背けながらも小さく手を振り返してくれました。
彼女は一言、「私を追いかけるなら、分かってるわね?」と仰っていました。
「分かってるつもりですわ。まだ、わたくしはここに居たい……」
前髪を後ろに束ねてギュッと結び、わたくしは臨戦態勢に入ります。
お料理で勝負するのは父親以外でこれが初めての経験です。
『ではまいりましょう! 負けた者は全てを失う舌の上の大一番! 食戟! 開戦!』
「やはり、A5ランクの牛肉で挑んできましたか……」
水戸さんは思ったとおり、A5ランクの和牛で勝負をかけてきました。
さて、わたくしも気合を入れて調理を開始しましょう。
「あいつ、まさかスーパーのパック肉を……」
「バカだ。やっぱり編入生は頭のおかしい奴だったか」
「幸平……」
「ソアラさん……」
何やらとてつもない技法を使ってみせる水戸さんに感心しながら、わたくしも一心不乱にシャリアピンステーキ丼を作りました。
とりあえず、品物はこれで完成です。あとは審査員の方がわたくしのお料理を気に入ってくれるかどうか……。
『調理終了! これより審査です!』
「A5ランク和牛の“ロティ丼”だ」
「美味しすぎて、腰が抜ける〜〜!」
「焼き加減から何まで計算しつくされている」
「この牛脂とバターで炒めたガーリックライスも絶品」
贅沢にA5ランク牛肉を使用した水戸さんのメニュー、“ロティ丼”は審査員に概ね好評のようでした。
まずいですわね。審査員の方々はいい顔をしていらっしゃる。
思いきり不安になってきましたの……。
『対する幸平さんの品の審査をして頂きましょう。題して何丼でしょうか?』
「そ、そうですわね。名付けて、“ゆきひら流大人のシャリアピンステーキ丼”でしょうか?」
「ふっ、安物の肉を玉ねぎで軟らかくしただけか」
「大人のって、大人をなめるんじゃないよ」
「A5ランクの後に食べたくなかったなー」
「どうぞ、おあがり下さいまし!」
シャリアピンステーキ丼と聞いた審査員たちは、みすぼらしいと嘲るような表情をされていました。
やはり、印象は良くないみたいです。
「うっ、この香りは……!」
しかし、丼を開けた瞬間に彼らの表情が変わります。
まずは、嗅覚を刺激することまでは成功みたいですわね……。
「なんでや? 手が……、手が止まらへん! 肉の軟らかさもさることながら……」
「タレだ! このみじんたまねぎの特製のタレが実に食欲をそそる! なんだこれは!?」
「このコクはステーキを焼いたあとのフライパンに投入した赤ワイン! 残った肉汁を煮詰めその汁でたまねぎを炒めてある!」
「そのうえ水溶き片栗粉のとろみが肉とご飯にからんでからんでたまんねぇっす!」
「しかも味を調えてるのは焦がし醤油や!焦げをも調味料として深い味に!」
「そして、このピリッとパンチの効いた刺激が絶妙に牛肉と焦がし醤油に合う……、これはまさか――」
審査員の方々はわたくしのシャリアピンステーキ丼を素晴らしい勢いで掻き込んでくださいました。
狙いどおり食欲を刺激し続けることが出来ました。恵さんのおにぎりをヒントにしたおかげです。
「はい! 秘密は米に。その丼のご飯は採れたての
「やはり! この食欲を永遠に刺激してくる感じは山葵か!」
恵さんの山葵の茎を使ったおにぎりはピリッとした刺激が何とも言えない目の覚めるような感覚を引き立てて、牛肉との相性も抜群だったのです。
この大人の味わいこそ、最もシャリアピンステーキとマッチしていると思ったわたくしは、ようやくこの丼を完成させることが出来ました。
「しかし、この丼の飯は不思議だ。喉に通る感じがとても良い」
「それは私も思いました。舌触りから、明らかに普通の飯とは違う」
さらに審査員の方々はわたくしたちが徹夜して何とか終わらせることができた最後の悪あがきにも気が付いてくれました。
「それは、米粒をよく見て頂ければわかりますわ。実は米粒の大きさをすべて同じ大きさのモノに統一して炊いたのです」
「「はぁ!?」」
「ほ、本当だ。米の一粒、一粒が均一の大きさになっている」
「意味がわからへん。そんなのあり得へんほどの手間が……」
それは気が遠くなる作業でした。お米の大きさを一粒ずつ測って選別して、同じ大きさのお米だけを使ってご飯を炊く。
こうすることで、舌触りと喉越しが少しは良くなることを期待したのですが、何とか意味を成してくれて良かったです。
「はい。おかげで寝不足ですわ。お肌がカサカサで……」
「なぜ、そこまでして、君は……」
「もちろん。食べて頂く方に喜んで欲しいからですわ。うふふっ」
「「か、可愛い……」」
「肉から米まで、全てに手間をかけて最高の調和を生み出している――」
しかし、その手間も美味しそうに召し上がる彼らを見ていたら吹き飛びました。
わたくしも美味しそうに食べている表情を見ると自然に笑みがこぼれてしまいます。
「な、なぜだ。私のガーリックライスは完食されてない。幸平のは完食されてるのに」
「まことに恐縮ですが、水戸さんはお肉の知識は完璧でしたが、丼というものへの理解が足りていませんでした」
「なんだと?」
水戸さんは自分のガーリックライスが残されていることに疑問を呈していましたので、わたくしは彼女の犯した失敗についてお話をしました。
「小西先輩が仰るように、丼とはご飯と具の調和なのです。だから、奥深い。お願いします。わたくしの丼を召し上がって頂けませんか? おあがり下さいまし……」
水戸さんのお肉とガーリックライスはどちらも絶品。しかし、丼の中だと両方が主張しすぎて、チグハグになってしまってました。
そして、わたくしは丼物の奥深さを知ってもらうために彼女にわたくしの作ったシャリアピンステーキ丼を食べて欲しいと懇願します。
「――っ!? はむっ」
水戸さんはそれを素直に受け取って食してくれました。分かってもらえると良いのですが……。
「こ、これは……、止まらない。肉との調和はもちろんだけど、米一粒、一粒から伝わる……、食べてほしいって」
「わたくし、実は審査員さんよりも水戸さんにこちらの丼を食べて頂きたかったですの」
「わ、私に?」
「はい。水戸さんに丼という文化は素晴らしいのだと、是非ともお伝えしたくて。ラブレターみたいなものですわ。ふふっ……」
そう、本当は勝負なんかよりも水戸さんに丼物の良さを知って欲しいと思ってました。だから、わたくしは夜通し米を選別する作業に打ち込めたのです。
この丼物は本来は彼女のためにわたくしが作り出したメッセージ――。
「ら、ラブレター? わ、私に? て、敵の私に1番食べてほしいから、徹夜して米を一粒ずつ選別したってのか?」
「頑張った甲斐がありましたわ。水戸さんはわたくしの好きな
とても美味しそうに食べている水戸さんは、先ほどまでの刺々しい感じは無くなり、まるで幼い少女のような無垢な表情をされていました。
「す、好き? お、女の子同士だぞ。私たち……」
「へっ……?」
何故か、顔を真っ赤にさせて俯いた水戸さんですが、わたくしは何か変なことを申し上げたのでしょうか?
『勝者はなんと、幸平創愛!』
「お粗末様ですの!」
わたくしは何とか初めての食戟を勝利することが出来ました。
やはり勝負事にわたくし、向かないみたいです……。
勝ちが決まったその瞬間、わたくしは腰が抜けて、その場を動けなくなってしまいましたから――。
情けないことです……。
米粒の大きさを一粒ずつ測って選別したのは美味しんぼからとったヤバいエピソードの1つです。
城一郎はしこたまソアラを溺愛していて、A5ランクの牛肉を食べさせたり、高額の生活費を振り込んだりして娘に甘々な感じです。