【本編完結】もしも、幸平創真が可愛い女の子だったら   作:ルピーの指輪

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兵装料理(ディッシュ・アームド)とクリスマスケーキ

「皆さん、すごい気迫です――」

 

「ようするに必殺料理(スペシャリテ)を作れば良いんだろ?」

 

「美味しく食べてもらえるようにはまず視覚から――」

 

「イノシン酸にグルタミン酸――目に見えなくとも、私なら誰よりもその美味さを引き出してあげることが出来るわ。うふっ……」

 

 遠月から出場している司先輩、恵さん、アリスさんはそれぞれが牛肉の調理に取り掛かりました。 

 

 司先輩は愛用の剣のようなグレーターを用いて肉を下すことで、食材とより深く対話し、最高の品を作り上げようとしております。

 連隊食戟のときや、前のわたくしとの食戟のときよりもさらに迫力が増していますね……。

 

 恵さんはオーブンで肉に均一に火入れを行った後、じっくり熱を入れるのかと思いきや、肉をカットし、牡丹のように盛ることで、さらに肉の魅力を跳ね上げる技を見せたのでした。何とも見事な盛り付けです。

 

 彼女は世界各国を回る中で諸外国の人にも和食を食べてもらえるように工夫した結果、調理の魅せ方が以前よりずっと上手くなっておりました。

 

 アリスさんは通常では目に見えないような旨味成分などの動きを、微妙な素材の変化から鋭敏に感じ取れるようになり、それを自在に操る調理を完成させています。

 

 以前は最先端技術を駆使して、高価な調理器具を使うことでその豊かな知識を活かした調理をされていましたが、最近の彼女は皆さんが一般に使われているような調理器具を好んで使うようになりました。

 

「どんな調理器具だって、私が使えばそれが最先端になりうるのよ――」

 

 火入れの温度、時間を刹那の誤差もなく正確に測り、肉の旨味を最大に活かした“牛ほほ肉の赤ワイン煮込み”は肉汁一滴からでも伝わる極上の美味――。まさに必殺料理(スペシャリテ)と呼ぶにぴったりな逸品でした。

 

「さて、わたくしも――」

 

 皆さんがドンドン合格していく状況を見て、わたくしも刺激されます。

 牛肉でしたら、素材の旨味に加えて見た目も美しいあの品を作ってみましょう。

 

 わたくしは自分なりの牛肉料理を作って審査員の方々のところに持っていきました。

 

「これは……、“牛肉のタタキ”?」

「この輝きはまるでルビーのようですな――このような優美な肉が――」

「宝石と見紛うほどの美しさ……、しかし肝要なのは味……、どれ――」

 

「「――っ!?」」

 

 審査員の執行官の方々はわたくしの“牛肉のタタキ”を召し上がります。

 美味しく出来ていると思うのですが……。

 

「んんっ……、んんんんっ……、むむっ……」

「ぬっ……、ううっ……、んんんっ……」

「はぅっ……、んっ……」

 

「ど、どうしたんだ?」

「審査員が口を閉じて一言も発さない?」

「どういうことだ、これは……!」

 

 皆さんはひと口食べて、しばらくの間何も喋らなくなってしまいました。

 何かを言いたそうにはされているのですが――。

 

「幸平さんの品が余りにも美味しすぎて口が開けなくなっているのよ。言葉を発して美味しさが抜け出さないように――」

「この前ソアラさんの料理を食べたとき、私もしばらく喋れなかったなぁ。びっくりしちゃった」

「まぁ、こんな芸当が出来るのは幸平さんと――」

 

「何を適当なこと喋ってんのよ! そんなこと起こるはずないでしょ! あたしたちはWGOの執行官(ブックマン)! 世界中の美食を堪能して評価することが仕事なのよ! ソアラ! 私にも食べさせてみなさい!」

 

 アリスさんと恵さんの会話を聞いていた、ランタービさんはわたくしの品を食べさせるように大きな声を出します。 

 何やら怒っているみたいです。

 

「えっと、はい。ランタービさんも召し上がってみてください」

 

「食べて、声が出なくなるなんてそんなこと――。はむっ……、んんんっ……、んんっ……、んあんっ……!」

 

「あーあ、だから言ったのに」

 

「声を出すことも憚れるほどの美食かぁ。認めたくないけど、幸平さんの品がここにいる誰よりも上を行っているってことか」

 

 美味しくて声が出ないとは、それだけ評価してもらえたと思ってもよろしいのでしょうか?

 なんだか、申し訳ないことをしてしまったみたいですが……。

 

「バカな! 認められるか! あんな平和ボケしてそうな小娘が! いくら朝陽さまに認められているとはいえ! 貸せ!」

 

「あっ――」

 

 それを聞いたサージェさんはわたくしを鋭い視線で睨みつけて、“牛肉のタタキ”を頬張りました。

 すると――。

 

「――っ!? くっ……、あんっ……、んんあっ……、んんんんっ……! ――んんっ……、はうん……、ぬあっ……」

 

 彼女は激しく痙攣しながら、恍惚とした表情を浮かべて内股になり、その場にしゃがみこんでしまいます。大丈夫でしょうか……。

 

「――はぁ、はぁ……。し、信じられん……、この私が……、意識を……。調理風景は平凡そのものだったのに……、どんな異能を――」

 

「あ、あのう……」

 

「この屈辱! 必ずや返してやる! 覚えていろ! 幸平創愛!」

 

 サージェさんは屈辱に打ち震えたような顔をされて、わたくしの肩を掴み怖いことを言われます。 

 叡山先輩よりも怖い方ですわ……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「一回戦! サージェVS幸平創愛ぁ! 間もなく試合開始です!」

 

 特務執行官(ブックマスター)の計らいで、急遽トーナメントをすることになったらしく、わたくしはサージェさんと試合をすることになりました。

 わたくしはいきなりの方向転換に戸惑いを感じています。

 

「朝陽さまは貴様との試合を熱望しておられるみたいだが、私が倒して取るに足らぬ存在だったと報告してやる」

 

「まぁ、サージェさんは朝陽さんとお知り合いなんですか? よろしくお願いします」

 

「敵と馴れ合うバカがいるか」

 

「あら、残念ですの」

 

 わたくしはサージェさんに握手を求めましたが、彼女はわたくしの手を払い除けてしましました。

 仲良くしたいのですが、残念です……。

 

「最高に美味しいクリスマスケーキを出していただく!」

 

「け、ケーキ!?」

「料理コンクールなのに? というか、今は8月だぞ!」 

「何を考えているんだWGOは!?」

 

 お題はクリスマスケーキです。

 どうもそのお題の意図は“特務執行官(ブックマスター)のご意向”らしいのですが、真意は見えません。

 それ以前にわたくしは、料理コンクールなのに、トーナメントがいきなり始まっていることに驚きを隠せないのですが……。

 

 制限時間は3時間で審査をされる執行官の皆さんは早くもクリスマスモードでケーキを待ちわびておられます。

 

 スイーツですか――もも先輩を思い出しますね。

 彼女が卒業する前に、卒業生の方々を送り出すためのパーティーをする際のケーキを作るために、スイーツの作り方を教わったりしました。

 ちなみに彼女から“もも先輩”って可愛く呼んでほしいと言われましたので、今は彼女のことをそう呼んでます。

 可愛い道を極めた彼女の徹底して可愛さにこだわり、魅せる調理は誰もが楽しめるエンターテイメントでした。

 

 今の季節は夏。季節外れのクリスマスメニューですが、やっぱり冬も感じてもらいたい。

 そして、夏だからこその美味も――。

 

 ならば、こんな趣向はどうでしょう? 作ってみますか。わたくしの可愛い道を――!

 

「幸平創愛! 第三の門での私の力を本気だと思うてくれるな! ここからが真の兵装料理(ディッシュ・アームド)だ!」

 

 サージェさんはカービングナイフを構えて調理を開始されました。

 卵白とグラニュー糖入りのボウルにナイフを突っ込んで泡立てると、きめ細かい見事なメレンゲが出来上がります。

 装着されたナイフの複雑な形状がもたらすのは美しいメレンゲ生地でした。

 

「け、ケーキ作りにまでカービングナイフを応用して――」

 

 次にサージェさんが取り出したのはストレッジハンマーです。

 重量感が凄そうな金属のハンマーを振り下ろしてチョコレートの塊を粉砕します。

 

「「おおーっ!」」

 

「す、すごいな」

「しかし、危なかっしいな、大丈夫なのか……!?」

 

「ふん、黙って見ていろ」

 

「さ、サージェさん……、それってまさか……」

 

 わたくしの目には起爆装置のようなものが見えていました。薄いパイ生地が中に入った特殊改造オーブンに導線は繋がっているようです。

 

「鼓膜を破りたくなければ耳を塞げ!」

 

 耳あてをされたサージェさんは容赦なく起爆装置を起動させました。

 ドカンという凄まじい轟音でオーブンの中が爆発し、会場全体に爆風が吹き上がります。

 

「完成だ! さぁ味わえ!」

 

 サージェさんの派手な調理からは想像出来ないほど美しいケーキが完成されていました。

 爆発とか起きていましたのに、何て繊細な調理をされていたのでしょう……。

 

「これは、パーティを盛り上げてくれそうな華やかさを感じますな。ふむ、フォークに入れるだけでわかる。このパリパリッしつつもふわぁっとした感触は、最高の食感を与えてくれるでしょう」

 

「んんっ……、この優しい口当たりはまるで雪のようね……」

 

 特殊オーブンの高温で焼かれたパイ生地をミルフィール状にしてあります。噛むとホロホロに崩れ、それが優美なメレンゲの甘みと溶け合っていきます。

 

「食べ進めるほど口の中が快感で満たされる……!」

 

「――っ!? な、なに、これ! このコクのある甘みが口の中で炸裂したような……」

 

「それは名付けて“クラスターチョコチップ”。アーモンドパウダー、ミントの葉を混ぜて堅めの食感に冷やし固め――チョコレートをハンマーで一気に砕き、それをパイ生地にねじ込み絶妙な火加減で爆破。こうしてパイ生地に守られた焼きチョコの様な食感と旨さがクラスター爆弾の如く連鎖的に炸裂するのだ」

 

 サージェさんの“クラスターボムケーキ”は食感と美味さが爆発的に連鎖する構造となっているみたいです。

 

「こ、これはまるで……」

「とっても素敵で美味しい」

「戦場のクリスマス――!」

 

 どうやら、WGOの執行官の方々のから見てもサージェさんのクリスマスケーキは満足のいく品だったみたいです。

 

 

「これは、サージェに決まったんじゃないか?」

「対戦相手の女の子、可哀想にな。あんな派手なクリスマスを見せつけられたら――って、何じゃありゃあぁぁぁ!」

 

「し、城だぁぁぁ! ケーキの城が!」

「い、いつの間にあんなの!?」

「ま、まるで雪の女王でも住んでそうな、氷の城と雪原――なんて幻想的なケーキなんだ!」

 

 ちょうどわたくしの調理も終えていましたので、こちらのサーブということで、審査員の方々にケーキを出します。

 わたくしなりに、もも先輩から習った技術で可愛いケーキを作ってみました。“雪の女王と氷の城”をモチーフにしたホールケーキです。

 

「お待たせいたしました! おあがりくださいまし! これがわたくしの“季節外れのクリスマスケーキ”です!」

 

 そして、このケーキには季節外れなサプライズを含んでいます。

 皆さんが気に入ってくれれば良いのですが。

 

「季節外れ? 雪景色と氷の城がファンタスティックなホールケーキに見えますが……。ふーむ、どこから食べたら良いのか迷いますな」

「確かにサージェのケーキに劣らず見栄えが良い……」

「問題は味よ。さっきの“牛肉のたたき”は見事だったけど」

 

「「――っ!?」」

 

 執行官の皆さんはスプーンいっぱいにケーキを掬うと違和感を感じたみたいです。

 

「こ、これは……、まさか……」

 

「ひゃうんっ……、つ、冷たいっ! こ、この……、ケーキ、う、嘘でしょ――な、中身が……、か、かき氷になってる〜〜!!」

 

 そう、わたくしが今回作ったケーキは“かき氷ケーキ”です。

 きめ細やかで舌触りの良い氷と生クリームでケーキのお城を作ってみました。

 

「ふわっとしたヨーグルト風味のソースと氷のきめ細やかな食感がたまらない。生クリームとかき氷の相性がこんなにも良かったのかと認識を改めさせられました。それにしてもこのふんわりとした氷の柔らかさ――とてもかき氷には見えない……。このソースと氷の融合はまさにドルチェ氷と呼べる従来のかき氷の常識を覆す新しいさがあります」

 

「それだけじゃない……、この更に奥のシュワッとしたかき氷はどこかで――」

 

「何言ってるの!? これはラムネよ! ラムネ! こんな暑い日は一気に飲み干したくなるアレよ! この炭酸が躍動するようなラムネ氷の舌触りが、なめらかな生クリームの食感が何倍にもなるように強調してるの! ヨーグルトの酸味ともマッチしていて、ひと口食べるごとにキーンと響き渡るのは氷の呪文――まさに雪の女王が放つ魔法のようね!」

 

 ヨーグルト風味の氷と炭酸ジュースのように弾ける美味しさのラムネ氷の二重の構造でケーキを構成することで、生クリームのなめらかさを引き立てて、クリーム自体の美味しさを従来よりも跳ね上げられるようにしてみました。

 

 かき氷と生クリームの双方の美味しさを損なわずに調和させるためには“神の舌”の模倣を使わせて頂いてます。

 

「サージェの舌の上で連鎖的に爆裂するクラスター爆弾に対して、幸平創愛は脳髄まで衝撃が破裂して響き渡る氷雪系魔法! 鮮烈さとインパクトでいえば氷の城の方がやや上ですかな……!」

 

「今日なんてこんなに暑いから、私は断然かき氷ケーキの方が美味しく感じるわ」

 

 そもそも、季節は夏ですから、わたくしは冷たいものが美味しいだろうというシンプルな理由でこの品を作りました。

 夏の醍醐味といえば、かき氷やラムネだと思いましたので、恥ずかしながらかなり安直な発想から構成されているのです。

 

「バカな! 私の品よりも美味いだと!? こんな安っぽいかき氷など一発芸に過ぎぬではないか! そんな甘っちょろい氷に私のクラスターボムが劣るだとぉ!」

 

「それでは、審査を――」

 

「お待ちください。このケーキの秘密はさらに食べ進めたところにあります」

 

 執行官の方々が早くも審査をしようとされてましたので、わたくしはこのケーキの最後の仕掛けについて補足しました。

 

「――えっ!? これ何?」

「ケーキの中心部にエメラルドのような美しい球体が……」

 

「日本の夏といえばスイカ割り。季節外れのクリスマスプレゼントということで、そのスイカを割ってプレゼントを受け取ってください」

 

 実はこの緑色の氷の中にわたくしはあるプレゼントを施したのです。

 これが、このクリスマスケーキに含まれたプレゼントです。

 

「これを割る?」

「ふむ、そんなに固くはありませんね」

「どれ……?」

 

「「――っ!?」」

 

 皆さんが氷を割ると中から狙いどおり、良い香りが立ち上ってくれました。

 仕掛けは上手く行ったみたいです。

 

「これはバラの香り? そして、中身はジュレ――バラと白桃のジュレね。透明感のあるピンク色のジュレにバラの花びらとふくよかな白桃が浮かんでいるわ。まるで宝石みたいなエレガント感が溢れている! 同じバラ科である桃とローズを組み合わせが何とも華やかな香りを演出してるわ! これが豪華なクリスマスプレゼントってわけね」

 

「ジュレには、桃とバラのリキュールやバラのコンフィチュールが加えていますので、色は淡いですがしっかりと桃の風味が感じられるはずです」

 

 わたくしがスイカ割りの仕掛けの中に入れたプレゼントはバラと白桃のジュレです。

 緑色の氷はキウイの果汁を使って塗装しており、ジュレに酸味を加えて美味しさに深みをもたせます。

 そして、何よりも閉じ込めておいた香りを爆発させることで新しい驚きを食べていただく方に提供することができると思ってこの仕掛けを考えました。

 

「うーん。余韻には馨しいローズのアロマが広がりますな」

 

「氷を食べたあとだから、このジュレが温かみを与えてくれて、あと味を格段に良くしている」

 

「この豪華な演出はまるでミュージカルみたい。そう! 私はこの氷の城の主にして、雪の女王なの!」

 

「まさに、歌いながら踊り出したい気分です」

 

「氷の世界が生み出したマジック! それに夏という季節も満喫出来るなんて最高ね!」

 

 審査員の執行官の方々もこのケーキに込められたエンターテイメントを楽しんでくれました。

 もも先輩から教えてもらった可愛い道を活かせた結果だと思います。

 

「う、嘘だ……、こんなはず……、私は朝陽さまに認められ……。こ、こんな氷なんかに負けるはずが……」

 

「あ、あのう。召し上がってみますか?」

 

「ちっ! こんなモノ! ――っ!? んんんっ……、ま、まただ! 頭じゃダメだとわかっているのに――!? か、体が勝手に――!? ありの〜ままの〜♪ 味を認めてしまうの〜♪ ありの〜ままの〜♪ 自分になるの〜♪ はっ――!? なぜ、私は歌を!? で、でも、この雪の女王さまには――抗えないっ!!」

 

 サージェさんケーキを食べて、きれいな声で歌われた後に、とても恥ずかしそうに顔を真っ赤にされていました。お歌がお上手ですのね……。

 

「勝者! 幸平創愛!」

 

「お粗末様ですの!」

 

 そして、サージェさんとのクリスマスケーキ対決はわたくしが何とか勝利することが出来ました。

 異能と呼ばれる調理技術は凄かったです。このような世界があるとは知りませんでした――。

 

「くっ、朝陽さまが対戦を熱望しているわけだ。だが、いくら貴様が強くてもあの方には――」

 

「そうですね。前の勝負で勝てたとはいえ、今度はどうなるのか分かりませんから……」

 

「…………」

 

 サージェさんの言葉にわたくしが反応すると、彼女は目を丸くされてわたくしの顔をジィーっとご覧になられます。

 どうされたのでしょうか……?

 

「サージェさん?」

 

「はぁ!? き、貴様は朝陽さまに勝ったことがあるのか!? 聞いてないぞ! そんなこと! というか、なぜ最初に言わなかった!?」

 

 サージェさんはわたくしが朝陽さんと勝負をしたことをご存知ないみたいでした。

 

 彼がわたくしとの戦いを望んでいる理由はそもそも、そのことが始まりなので彼のことをよく知ってそうな彼女なら知っていると思ったのですが……。

 

 よく考えれば負けた話は人にしにくいかもしれませんね……。

 

「えっ? ええーっと、べ、別にひけらかすことではないですよね? か、顔が近いですよ、サージェさん……」

 

 サージェさんに肩をガクガクと揺らされて、詰め寄られたわたくしは彼女の迫力に圧倒されました。

 

「あ、ああ、すまない……、しかし、その包丁であの方に勝ったというのか……、貴様の異能とは一体何なのだ……?」

 

「異能ですか? 嫌ですよ、サージェさん。わたくしは普通の定食屋です。そんなものありませんよ」

 

「絶対に嘘だ……。――まぁいい。貴様と朝陽さまの対決で見極めてやる……」

 

 サージェさんはわたくしが異能というものに心当たりがないと答えると、それは嘘だと決めつけられました。

 どう考えても異能というものがわたくしにもあるとは思えないのですが……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 その後、見た試合では衝撃の出来事が起こりました。

 何と司先輩が朝陽さんに敗れてしまったのです。

 そして、彼は愛用のグレーターを朝陽さんに取られてしまいました。

 どうやら朝陽さんは他人の持ち物を奪うとその技術が使える異能の持ち主みたいです。

 

 その証拠に、彼はサージェさんのカービングナイフやクロード・ビルさんの注射器を使って、兵装料理(デッシュ・アームド)血液料理(デッシュ・ブラッド)を同時に使いこなしていました。

 

 朝陽さんはやはりあの時は本気ではなかったみたいですね……。

 

「まさか司先輩が朝陽さんに――。えっ?」

 

「そ、ソアラ? ――やっと会えた!」

 

 彼らの試合を見たあと、着替えをするためにロッカーに行くとえりなさんと出会いました。

 彼女はわたくしに飛びつくようにして抱きついて、目に涙をためながらこちらをご覧になられます。

 

「えりなさん! だ、大丈夫ですか? 具合が悪くなったとか……」

 

「ええ、大丈夫よ。あなたが来てくれるって信じてたから。ごめんなさい。心配をかけて……」

 

 彼女は身体的には大丈夫みたいですが、精神的にかなり疲れているように見えました。

 何があったのでしょうか……。

 

「あ、あのう……、えりなさん……、わたくし……、えりなさんに伝えることが……」

 

「ご、ごめん。ソアラ……、まだ私はやることがあるの。1つだけお願いしてもいいかしら?」

 

 わたくしは次に彼女に会ったときに気持ちを伝えると決めていましたので、それを伝えようとすると、彼女は今は忙しいと答えられ、さらにお願いがあると仰られました。

 

「は、はい。えりなさんのお願いなら何なりと」

 

「必ず勝ち上がって決勝まで来てほしいの……。そして、私と本気の勝負をして――」

 

「決勝に……、ですか?」

 

「そう、決勝に。あなたなら来てくれるって信じてるから……」

 

 えりなさんは信じてると言い残して走って去ってしまいました。

 少ししか話せませんでしたが、彼女の無事な姿を見られてホッとします。

 しかしながら、必ず決勝に勝ち上がってこいと仰られたのにはどんな意図があったのでしょうか――。




ストックが尽きて、そろそろ毎日更新出来なくなるかも。
頑張ろうとは思ってるけど……。
サージェに歌わせたかっただけの回です。
VSもも先輩戦のときも思ったけどスイーツが一番描写が難いかも。わかりにくくてすみません。
というか、朝陽が部下にソアラに負けたこと黙ってるってよく考えたら小物感がさらに増したような……。
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