RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
「・・・!?」
真っ赤に燃える炎の中で少女は目を見開く。
困惑気に周囲を見渡した彼女が見たのは、今も尚その脳裏に焼き付いた一つの光景。
あの時は今と違い幼い少女のボディであった事を元第0特殊部隊隊長にして現在は、イレギュラーハンターの特別理事ファントム=フィーネは思い出す。
彼女が肩を動かす度にそれに連動するかのように左右の髪が揺れる。
夢となって再び現れた光景に少女は目を見開いた。
何度も悪夢の中で見て来た光景だが、やはりと言うか胸に鋭い痛みが走る。
「・・・俺は」
己よりも大人びた顔の少年が呻く。
既に声も涙も枯れ果てた彼が胸に抱くは一人の少女の躯。
「俺は・・・俺はっっ!!」
わなわなと震える黒衣が僅かに膨らむ。
「俺は何の為に戦っていた!?奴の代わりに人間共の為に・・・ロボットの為にこの世界の為に戦った仕打ちがこれか?」
その声には絶望と言うよりかは愕然とした色合いが多く含まれていた。
「我が兄弟を殺し我が父を殺し・・・その上、俺からコイツまで奪うのか?何もかもお前達は俺から奪うのか・・・!!」
ドクンッッ!!
呪詛の言葉を口にする少年の身が再び膨れる様に鼓動する。
「お・・・お兄ちゃん!!」
今にも暴発しそうな兄を止めようと手を伸ばすがそれは届かない。
「人間もロボットも互いに己の事しか考えず身勝手だ。貴様らがそうなら俺にも考えがあるぞ」
終生のライバルであり、人類の英雄と呼ばれたロボットが戦えなくなってから世界を守ったのは兄であった。
英雄が過去からやって来た生みの親に拉致され、この時代から消えた後も兄はその代わりとばかりに世界を脅威から守り続けていた。
今となっては歴史として残せる筈も無いが『黒衣の英雄』と呼ばれた兄を待ち構えていたのは。
『絶望の未来』と言っても過言ではない悲劇的な結末であった。
「人間も機械も等しく無価値だ。そしてこの世界も・・・全てを消し去ってしまえば良い」
「止めてフォルテお兄ちゃん!!そんな事、お姉ちゃんは望んでなんか!!」
何もかもに絶望した兄の身から漆黒の闇が広がる。
それが何であるかフィーネは知っていた。
自分もまたそれと同じ物を有しているが故に。
宇宙より飛来した未知のエネルギー、即ち『悪のエネルギー』が兄の全身を包み込む。
あの時は兄を止めようと必死だったから気付かなかったが、フィーネは確かにそれを見ていた。
兄の背から伸びる影が見知った人物の形を彩っていた事に。
「全てを無に・・・我こそは虚無の者」
兄の影が響かせたその声が耳に響いた瞬間、フィーネの意識は現実に戻される。
「ハァ・・・ハァハァ!!」
荒い息と共に全身より流れ出る汗が不快感を生じさせる。
後に大破壊と呼ばれる未曾有の悲劇が起こった瞬間の夢を見た事もあるのだろう。
両頬を伝う涙にフィーネは慌ててシーツで顔を拭うが、それでも涙は止まらない。
不意に部屋に鳴り響くアラーム音に気付くのに数秒ほど時間が掛かった。
「・・・なんだ?」
真っ赤になった目を見られぬ様に端末から顔を背けながらフィーネは口を開く。
<大変ですフィーネ理事。空中都市スカイラグーンがイレギュラーの襲撃を受け地上に落下しました。死傷者が多数発生しており現在現場に居る各部隊や隊員が救助活動を行っていますが・・・>
端末に映るのは総監付きの参謀のシグナス。
彼は生真面目そうな顔を険しくさせながら淡々と報告を行う。
<現場の報告によればイレギュラー達はレプリフォースの装いをしていた様で・・・>
「ほう・・・それでレプリフォースからは何か連絡は?」
フィーネの問いにシグナスは静かに首を振る。
普通であれば弁明なり何かの連絡はある筈なのだが。
と考えた所でフィーネは即座に起き上がる。
その顔に先程までの弱々しい顔は無く、冷徹な元部隊長の顔だけがあった。
<総監はこの事で緊急会議を招集するとの事です。詳細は総監室で・・・>
「分かった・・・すぐにそちらに行く」
端末を指で押しシグナスとの通信を終えるフィーネ。
手際よく彼女が準備を整え総監の下へ行こうとした時だった。
『これより・・・を始める』
「・・・!?」
脳裏に響いた懐かしいその声にフィーネは目を見開く。
当然だが辺りには何も無いし誰も居ない。
『これより第四幕を始める・・・』
次に響いた声は先程よりもはっきりと聞こえた。
『史上最大の大戦・・・レプリフォース大戦を』
周囲に声を発する者など居る筈がないのだからこれは普通の声ではない。
自身の脳裏に直接響くその声にフィーネの全身に悪寒が走る。
恐らくこれは自身に連なる者へ向けたメッセージ。
言うなれば宣戦布告とも取れる物である。
「くっ・・・大戦など起こされてたまるか」
唇を噛み締めながらその言葉に抵抗するかのように声を発する彼女だが、彼女自身も半ば悟る他無い。
これより起こる事は巨悪の掌での出来事であり、己個人が出来る抵抗などささやかな物でしかない事に。
だがそのささやかでも抗う事は可能だと彼女は信じている。
ともあれ今は目の前の事とフィーネは総監の下へと向かうのであった。