RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
政府軍が到着するまでは待機と命じられたエックス達だったが、北アメリカを覆いつくさんとばかりに進撃を続けるレプリフォースに対し当然の様に出撃命令が下る事となる。
「来やがったな!!エックス~!!超特急であの世に送ってやる!!」
中央アメリカのとある都市でエックスは陸軍左官の一人、スラッシュ=ビストレオ率いる軍勢と衝突する事となる。
エックスからすれば何度か任務で顔を合わせた人物であり、シグマの反乱同様に顔見知りと戦う事を悲しく思う。
「ツインスラッシャー!!」
ビストレオのビームクローから放たれる衝撃波を回避しながら、エックスは光弾で反撃をするが当然の様にそれはあっさりと避けられる。
「ビストレオ少佐を援護しろ!!」
一対一の戦いであれば互角に戦えるのだが、ビストレオの周囲には当然の様に無数の陸軍兵士らが配備されており、エックスに対し苛烈な攻撃を加える。
周囲で展開する陸軍を他の隊員らが相手をしている為に、この場にはエックス一人しかいない。
「よし・・・時間通りだな」
薄笑みを浮かべるビストレオは軽く手を上げると周囲の兵士らを下がらせる。
ファンッッ!!
汽笛の音を鳴らしながらビストレオの後方にある線路を駆け抜けるのは輸送列車DG-42L。
膨大な数の物資と兵士らを乗せた列車は目の前をあっと言う間に通り過ぎてしまう。
「この先にある前線に物資の搬入は完了した。このまま戦ってもジリ貧だぜ」
「・・・くっ」
嘲笑うかのように声を上げるビストレオにエックスが呻く。
「前線に居る敵を蹴散らせばこのエリアは陥落・・・つまりは俺らの勝ちだぜ」
ビストレオに言われるまでも無くエックスらは彼らが運ぶ輸送列車の運行を妨害する為に出向いたのだが、予めそれを予測していたかのようにビストレオらが待ち構えており輸送列車は任務を達成してしまった。
<エックス・・・!!さっき列車が通っていくのが見えたけど>
「ああ・・・済まない。任務は失敗だ・・・すぐにこの場から撤退する!!」
副隊長のアイビスからの通信にエックスは苦渋の決断を下す。
そのまま反転し走り去るエックスを陸軍兵士達が追撃しようとするのだが。
「止めとけ・・・深追いするなっての」
「しかしここで奴を討てば敵は総崩れです」
兵士らに注意を促しながらビストレオは追撃を中止させるように各軍に連絡を入れるのだが、カーネル派の下士官の一人が不満を露わにする。
「あのな・・・奴は今まで普通にシグマとかを何度も倒してきてんだぞ。下手に追い詰めてもこっちに被害が出るだけだっての」
下士官の肩に手を置きながらビストレオは言う。
「まあ文句があるんなら俺を倒してから言えよ」
最後にはドスを利かせながらビストレオは背を向け、仮設の指令室に戻っていく。
(まあ俺らの勝利は分かり切ってるがとにかく気に入らねえな。最初から筒抜けの敵の行動を利用して待ち構えるなんぞ俺の流儀じゃねえ)
ハンター内部に入り込ませたと言う内通者の情報もあり、ビストレオらは余裕をもってエックス率いる第17精鋭部隊の迎撃に出る事が出来た。
確かに部下の言う通りここでエックスを倒せばレプリフォースの勝利は揺るぎないものとなる。
だがビストレオ個人のプライドがそれを許さなかった。
「こいつは貸しだぜ。てめえらは真っ向から潰さねえと意味がねえ」
誰ともなくそう呟きながら彼は椅子の上に腰を落ち着ける。
ビストレオは占領した都市を前線への中継地とすべく、指令室にて輸送網の構築に勤しむのであった。
「最初から分かっていたけど相手にするとやっぱり違うな~。ヴァヴァの野郎が俺らも導入した方が良いって言いまくってたのが分かったぜ」
ハンターベースに帰還したエックスを出迎えながらアルバルドが溜息交じりに口を開く。
彼も恐らくレプリフォースとの戦いに敗北し、現地から退いてきたのだろう。
敵として遭遇した飛行用ライドアーマー『イーグル』の脅威を彼は口にする。
エックスからすればイレギュラー同然の狂人のイメージしかないヴァヴァだが、ライドアーマー操縦の第一人者と言う事もありこの辺りには先見性があったらしい。
イーグルと同じように本格的な軍事用ライドアーマー『ライデン』も陸軍の主力として使われており、当然の事ながらエックス達を大いに苦しめる事となる。
「キメラをベースにしたライドアーマーでは太刀打ち出来ないか・・・」
「まあとりあえずの時間稼ぎは出来たって事なんだろうけどな」
呻くエックスを慰めつつアルバルドはハンターベースの窓から見える外を指差す。
「・・・あれは!?」
遠目からもはっきりと見える数隻の飛行戦艦の姿にエックスは目を見開く。
「欧州から政府軍の奴らが漸く来やがった。これで戦場とハンターベースを行ったり来たりする必要性は無くなった訳だが」
ハンターベースの守備の必要性もあり、前線に出向ける規模にも制限があったエックス達。
当然の様にそんな中途半端な状態でレプリフォースに勝てる訳も無く、連戦連敗を重ねる事となる。
そんな中で政府軍が駆け付けエックス達に漸く反撃の体制が整う。
「あいつが暴発しなけりゃいいがな・・・」
アルバルドが顎で示す様に言う先に見えた人物にエックスは苦笑いをする他無い。
彼も政府軍が来た事を知ったのだろう。
出撃の許可を総監に願い出るべく彼の執務室に向かっていくのが見える。
「・・・ゼロ」
今回の件で冷静さを失いつつある友人の名をエックスは口にする。
一旦戦場に出ればどの様な行動に出るか分からないゼロに総監はハンターベースの待機を命じている。
彼は何度も自身らの出撃を上層部に願い出たが、総監はハンターベース守護を名目にそれらを全て退けていた。
「とにかく総監の所に行こう」
「・・・だな」
エックスの言葉にアルバルドが頷いていた。
「おい!!政府軍が来たんなら今すぐに俺を前線に出せ!!」
「来たのは来たけど、あちらとの連携も含めての話し合いをする時間もあるのよね~」
総監室に入るなり一室に響くのはゼロの怒号とのらりくらりとする総監の声であった。
「あらエックスちゃん。お帰り~」
ゼロの矛先を躱す為なのか総監は一室に入って来たエックス達に声を掛ける。
慌てて敬礼をするエックスにゼロが射殺す様な目で睨み据えてくるが、エックスとしては苦笑いする他無い。
(そんな目で見ないでよ・・・)
と言うのがエックスの率直な感想である。
・・・ピッ。
「今日の天気は何だったかしら~?」
話題を逸らす様に総監が手にした端末を操作し大画面のパネルの映像を切り替えるのだが。
<今や我々全員がイレギュラーと決めつけられた・・・>
何時もの如く流されるジェネラルの決起演説の映像に総監は渋い顔となる。
「良いか我々にはこれしかないか・・・はっきり言って冗談ではないがな」
背後から響く声にゼロが即座に振り返る。
出迎えていた参謀のシグナスの隣に立つのは隻眼の軍人。
反射的にゼットセイバーを手にしかけた所でゼロは相手が誰なのか気づく。
「その反応は私的には慣れっこだがな。とにかく落ち着けゼロ」
政府軍の軍人である彼は一瞬だけ殺気を生じさせたゼロへ豪快に笑いながら総監の前に進み出る。
カーネルのモデルとなった人物でもある政府軍将官フレデリック=シュタイナーは、軍帽を取り総監に頭を下げる。
「まずに到着が遅れた事を詫びよう。欧州では投降して来た海軍や空軍の対応に一手間あってな。それに軍の再編もあって援軍に駆け付けるのが遅れてしまった。この点は謝る他無い」
嘆息気味にそう話すフレデリックの顔からも、連邦政府の対応の遅れに対する苛立ちが垣間見える。
「フェデラルセイバーズの中核であるメタルセーバー隊、ウェポンセーバー隊、トルネードセーバー隊の艦隊とそれに付随する政府軍一師団の到着を確認しております。これで我々にも余裕が出来たと言えますが」
シグナスの言葉に総監は頷きつつもフレデリックに目を向ける。
「それでこの先遣隊に続く増援はあるのかしら?」
当たり前と言うべきか総監も今回派遣された政府軍とハンターを合わせた戦力でレプリフォースに勝てるなど思ってはいない。
総勢百万とも言われるレプリフォースを相手にするには今の戦力ではあまりにも足りなすぎる。
「プレオンを始めとする戦闘用レプリロイドやメカニロイドの増産を関連企業に促しているが、すぐに間に合う事は無いだろう。レプリフォースは欧州やアフリカにも軍勢を進めているのだ。現状において北アメリカに大部隊を派遣する余裕はあまり無い」
「成程・・・つまりは今まで通り時間稼ぎをしろと言うのね」
カーネルもそうだがあまり適当な言葉ではぐらかす事をフレデリックはしない。
自身らよりもお膝元である欧州を守りたいと言う連邦政府の考えも、分からない事は無いだけに総監も不快感を露わには出来ない。
「シグナスちゃん。後で連邦政府に連絡を入れて頂戴。まずは今回の派兵のお礼と何時ぞやの時同様に、在野のレプリロイドを戦力に組み込む事への許可も求めて頂戴」
「は・・・シグマの反乱の時の様にまた傭兵達を雇うつもりですか。しかし金次第で動く様な輩を・・・」
「今は勝つ為に手段を選んでいる場合じゃないでしょ」
傭兵などを戦力に組み込む方針を打ち出す総監にシグナスは難色を示すが、総監に押し切られる形でそれに従う他無い。
「済まない・・・本当に申し訳ない」
「いいのよ。政府軍が来てくれたお陰でエックスちゃんやゼロちゃんも動かせるようになったし」
何度も頭を下げるフレデリックに総監は内心の不満を表に出さずに微笑む。
「それでだが・・・そちらの方で身柄を拘束されているアイリスの件で話がある」
話題を切り替えるフレデリックの言葉にゼロが驚愕する。
「アイリスが・・・拘束だって?」
「ん?聞けばお前達第0特殊部隊がハンターベース周辺で拘束したと聞いたが」
言葉を失うゼロにフレデリックが逆に驚いた風に首を傾げる。
「実はゼロちゃんには秘密にしてました~」
秘密にしていた事を悪びれる事も無く、明後日の方向を見ながら話す総監にゼロが今にも飛び掛かりそうな殺気を生じさせる。
総監に促されシグナスが端末で誰かと連絡を取り始める。
暫くして一室にクィンビーと共に入ってくるのは栗色の髪をした少女型レプリロイド。
「ゼロッッ・・・それにフレデリック伯父さん!!」
見知った顔が居た事もあり、表情を明るくしながらアイリスはフレデリックらの下に駆け寄る。
「心配したぞアイリス。レプリフォースの本部に残っていると聞いてお前の事が心配であったぞ。エステルの事なら安心しろ。あれは今、親父の家で身柄を確保されている」
「お母さんが・・・無事で良かった」
伯父の言葉にアイリスが安堵した様に息を吐く。
ついでゼロに顔を向けるアイリスだが、ほんの少しだけ気まずそうな顔となる。
「ゼロ・・・ごめんなさい。まさか兄がこんな事をするなんて」
「いや・・・お前のせいじゃない。カーネルの奴が・・・」
大きな瞳を閉じながら謝罪するアイリスをゼロは慰める様に口を開く。
素直に出頭に応じなかったカーネルを責めようとするが、それをすれば更にアイリスを追いつめる事となりゼロは咄嗟に口を閉ざす。
「それにしてもクィンビー。てめえ、俺に黙ってやがったのか!!」
「今の隊長に話せばどんな事になるやら。ともあれアイリスが持っていた機密情報が入ったディスクは我々に多大な利益をもたらしてくれたわ」
ゼロに睨み据えられるもクィンビーは気にした風も無くほくそ笑む。
「政府軍もジョーズィおよびペガシオンから機密情報は入手している。アイリスのを合わせると今回の反乱に参加したレプリフォースの全容も解明できよう」
フレデリックは欧州などの政府軍基地にレプリフォースの一部が武装解除し、投降してきている事を説明する。
彼の言葉にアイリスが安心したような顔となる。
兄の暴走とも取れる行為にペガシオンらが追従しなかった事で彼らが処罰される可能性が少なくなった事もあるのだろう。
「それでアイリスの身柄だが、彼女の身柄は我々政府軍が預かりたい」
先程の話に戻す形でフレデリックはアイリスの身柄を引き取ろうとする。
これはフレデリック個人の考えもあるだろうが、敵の首謀者の身内を取引の材料に取っておきたいと言う連邦政府の思惑もあるのだろう。
「身内を最前線に近いここハンターベースから遠ざけたい・・・と言う意図が透けて見えるわね」
「彼女の身柄を引き取りたいのは有益な情報を精査したいからだ。別に私は身内可愛さに動いているつもりはない」
勘ぐる様に言うクィンビーにフレデリックが隻眼を細ませながら言う。
アイリス自身はそこまで意識していないがイレギュラーハンター、政府軍双方にとってアイリスの身柄は極めて重要な価値がある。
「彼女をハンターベース近くで拘束する際にシャドーフォースの襲撃を受けたのも報告しましたが、私達の様な諜報活動に長けた組織が無い政府軍に彼女を守り通せるのかしら?」
「・・・シャドーフォース?」
聞き慣れない言葉にエックスが首を傾げる。
「レプリフォース内の特務機関の事ね。建前として存在してはいないって扱いになってるけど、公然の秘密として存在している私達の第0特殊部隊とは違ってシャドーフォースは最高司令官の完全な私兵。同じレプリフォース内でもその存在を知る者は殆ど居ないわ」
ハンター総監に就任する前はレプリフォースに所属していた総監が、エックスらに分かるように説明をする。
『言っておくけど私も居るらしい事は聞いてたけど詳しくは知らないわよ』とは総監の弁である。
今までその存在すら明らかにされてこなかった者達が動いている事実にアイリスの表情が改めて強張る。
「理由はどうあれアイリスが狙われているのは確かなんだ。ここは俺達がアイリスの身柄を預かるべきだ」
押し黙っていたゼロが口を開きフレデリックに言う。
自身に反発しつつも彼女の身柄を巡っては同調するゼロにクィンビーが小さく鼻を鳴らす。
「あ・・・あの私もフレデリック伯父さんの申し出は嬉しいのですが。私は兄さんを止める為にゼロを頼ったんです。このまま安全な所に隠れたら兄さんを止められる者が誰も居なくなってしまいます」
大きな瞳を見開きながら凛とした声を響かせるアイリス。
その面差しに実の妹の姿を重ねたフレデリックが唸り声を上げる。
「全く・・・生みの親に似て強情な。まあその辺は私達兄妹と同じと言えるのだが。分かった・・・ではアイリスの身柄はそちらに任せよう。私としてはエステルと一緒に居て欲しかったのだが」
「・・・ごめんなさい」
「いや・・・謝る事は無い。確かにシャドーフォースへの対応に関しては我々政府軍には少々荷が重い所もあるからな」
溜息を吐くフレデリックにアイリスが頭を下げる。
苦笑を浮かべつつ、軍帽を被り直したフレデリックは咳払いをしつつ総監を見上げる。
「私も一旦は欧州に戻らなければならないが・・・私は軍勢を率いここへ戻ってくるつもりだ。貴殿らの健闘を期待したい」
背筋を伸ばしながら敬礼をするフレデリックに総監もまた同じように敬礼を返すのであった。
「ようエックス~久しぶりだな」
フレデリックの帰還に前後する様に慌ただしく人員が動くハンターベース内の廊下でエックスは懐かしい顔に出会う。
政府軍の将校であるユピテイル=レーヴェだ。
漆黒の重厚な鎧を身に纏った彼はプレオン達に指示を出しつつ、エックスに気さくに話しかけてくる。
「とんでもねえ事になったが。まあよろしく頼むぜ」
「うん・・・こちらこそよろしく」
腕を向けてくるユピテイルにエックスも苦笑しつつ、それに己の拳を合わせる。
政府軍の増援と言う事で多少の緊張もあったが、何度か顔を合わせている彼が居る事で幾分それも和らぐ。
「俺っちやボーダァにラクサーシャもメタルセーバー隊として派遣されているぜ。力を合わせてこの難局を乗り切ろうや」
指で仲間達を示しながらユピテイルは豪快に笑う。
超高性能レプリロイドに値する彼らが派遣されてきた事もあり、追加の増援は当面見送られる事になるとは言えフレデリックらもイレギュラーハンターに可能な限り便宜を図ってくれたと言えよう。
「おぅ・・・姉ちゃんじぇねえか!!」
エックスの後ろから姿を現したアイリスにユピテイルが声を上げながら寄っていく。
隣に居るゼロを無視してあれやこれやと話し出すユピテイルにエックスは苦笑いを浮かべるしかない。
彼女らの関係は知っているが、カーネル以上に似合わない二人である。
「ユピテイル大尉~機動兵器の格納場所の確保出来ました」
その場に飛び出すと言った動作で駆け寄りながら元気よく敬礼をするのは、軍帽を被った黒髪の少女。
エックスは少女の姿に思わず二度見してしまう。
彼女と目が合ったアイリスもまた驚きのあまり言葉を失い、少女の方は少年の様な笑みを浮かべる。
「オ・・・オルエン?」
「どうもアイリス~イレギュラーハンターに保護されたって聞いて安心したよ~」
軍帽を被った少女ことオルエン=シュタイナーの姿に見知っているエックスらも目が点となる。
「知ってるだろうが政府軍には人間の軍人も結構居てな。こう見えて機動兵器の操縦技術は同期の奴らの中じゃピカイチだ」
既に顔見知りと言う事もあり、オルエンの紹介は簡潔に済ませるユピテイル。
士官学校を首席で卒業したと言う彼女は政府軍のフェデラルセイバーズ内のメタルセーバー隊に入隊すると、そのままハンターベースの増援としてハンターベースにやって来たのだと言う。
よくよく見ればプレオン達に交じって作業をする人間の兵士らの姿もチラホラと見える。
この点に関しても自身らやレプリフォースと違う政府軍の特異性だろう。
「無駄話は後だ。オルエン少尉は機動兵器の準備を急ぐ様に」
「イエッサー。でも大尉の方こそ無駄話は程々にね~」
命令を下すユピテイルに茶々を入れつつオルエンはやって来た時の様に駆けていく。
「全く・・・ピクニックじゃねえんだぞ」
軍人らしからぬ雰囲気の少女に溜息を吐きつつユピテイルはエックスやゼロと顔を合わせる。
「まあオルエンの方はまだ良い。機動兵器に乗せればそこらのレプリロイドよりも戦力になるからな。個人的に問題なのはもう一人の姫さんの方だ」
「姫・・・?」
「オルエン達には言うなよ。お姫さんって言うのは俺っち達の陰口さ」
首を傾げるエックスにユピテイルが声を小さくする。
苦笑いをしつつ彼が指差す方向に彼女は居た。
「エフレーモフ中佐。野営地の設営終わりました」
「飛行艦隊との合流地点の確認をお願いします」
「え・・・ええと」
プレオン達から次々と資料や端末を差し出され困惑気に首を回すのは一人の少女。
白髪に近い色合いのプラチナブロンドが特徴的な彼女にエックスも少しだけ見覚えがあったが、それが誰であるのかすぐに思い出せなかった。
「ハンターベース近郊に駐留する俺っちらの指揮官はあれな。まあ実質お飾りだけど・・・さ」
そう話すユピテイルの顔に隠しようのない不快感が滲み出る。
他者に対する陰口など言う様な性格ではないと言える彼が、ここまで嫌味っぽく言うのだから相当なのだろう。
「名前はグレーテル=エフレーモフ。今回の反乱で戦時昇格って事で急遽指揮官に任命されたお姫さんだよ。まあ軍人としては並かそれよりも下程度だが」
ユピテイルの評価を聞くまでも無くどこかぎこちなく動く彼女を見るに、軍人としての適性は低いように見える。
エックス自身が思うに自分が部隊長に就任した際もこう言う風に見えたのだろうか。
「俺っちらに何か要請をする事があったら俺っちかあれの隣に居るハルトマン少佐に言っておいてくれよな」
先も言った通り先遣部隊の指揮官であるグレーテルはお飾りに近い。
見れば彼女の隣に居る中年男性がプレオン達にテキパキと指示を出しているのが分かる。
「別に人間に従う事には慣れているが、こういうのを見てるとレプリフォースの主張にも一理ある様な気がしてくるぜ」
溜息を吐くユピテイルにエックス達も思わず苦笑いを浮かべるしか無いのであった。
「全くもってふざけていますな」
派遣された先遣部隊の内容を確認しシグナスが不快感を露わにする。
「メタルセーバー隊の超高性能レプリロイドを三人も派遣してはくれましたが、それを指揮するのが名門の出とは言え年端も行かぬ少女とは。先程会いましたがいざと言う時に頼りになるとは到底思えません」
「今度の事を考えて箔でも付けるつもりなんじゃないの?」
シグナス自身、無礼の無い様に対応したが自身の問いにしどろもどろになる少女に抱いた危機感は非常に大きい。
先遣部隊の指揮官である彼女に話に言ったつもりが、その副官であるハルトマンなる人物と協議をしたと言った方が正確だろう。
無骨な性格である彼からすれば殆どお飾りな彼女に対し不快感を顔に出さぬ様にするだけで精一杯であった。
「全くあれならまだエックスの方が遥かにマシだ」
「あらあら貴方がエックスちゃんの事を認めるなんて意外ね」
激務が続いていると言う事もあり、思わず吐き捨てる様にして言うシグナスに総監が笑う。
「今でこそ大分マシになりましたが・・・隊長就任当初は正直、よくあれで隊長が務まると思いましたよ」
思わず感情を露わにしてしまった事で恥ずかし気に目を逸らすシグナスに総監はますます笑みを深くした。
「でもとりあえずはハンターベース周辺の防衛が満足に出来るくらいの戦力は得られた。さ・・・反撃開始と行きましょうか」
「ええ・・・先程、政府軍と共同で今後の作戦を立案しておりましたが」
『勿論あのお飾りの姫は省いてですが』と付け加えつつ、シグナスは総監の端末に幾つかの資料を送信する。
「敵の狙いはこの北米大陸の確保なのでしょうな・・・」
「もしも自分がジェネラル兄さんならまずはそれを優先するわね。自分達の誇りとその象徴たる武器を奪わんとしたイレギュラーハンター。その中枢を叩く事は自らの正義を世間に示す絶好の機会よ」
呻くシグナスの言葉に総監は静かに頷く。
開戦に反対を表明した海軍や空軍の最高司令官が離脱した事もあり、その総数は本来の半分になっているがそれでもレプリフォースの数的な優位は揺るがない。
北米の西海岸から東海岸への侵攻を着々と進めている一方、南米や中東に連邦政府本部がある欧州へと多方面に軍勢を展開するだけの余裕が彼らにはある。
(尤も・・・それが何時まで続くかは正直微妙だけど)
勢いのある今の内に可能な限り支配地域を増やそうとするレプリフォースの思惑に総監はほくそ笑む。
「私達は囮よ・・・シグナスちゃん。可能な限りレプリフォースを消耗させる為のね」
ぼそりと呟いた総監の言葉にシグナスが目を見開き頭上を見上げる。
「元より政府に喧嘩を売られた形での開戦だもの。恐らく物資の確保も不十分な状態の筈よ。この戦い・・・守って勝つわよ」
「・・・ハッ」
自身に敬礼をするシグナスに満足げに頷いた総監は来訪者を告げるアラームを聞く。
第3警備部隊の隊員が一礼する中、総監室には見知った顔が入って来る。
「本来なら悠々自適の隠居生活をエンジョイして欲しかったんだけど・・・この状況じゃね」
小さく頭を下げながら来訪者に笑いかける総監。
「まあそうは言ってもこの危機を前に黙っている事など出来ませんからな」
アンモナイトを思わせる強固な装甲を身に纏った老ハンターが口に開く。
ハンター創設期より活躍した元第6艦隊艦長サブマリン=アンモナーは自身と同じく総監に召集を掛けられた面々と共に居並ぶ。
「ワシの方は・・・前から訓練学校で校長をしておったからのう。全くの悠々自適では無かったが・・・それは言いっこ無しじゃな」
カタカタを震える指先を総監に向けイージス=ポーキパインは言う。
「どちらにせよ引退したハンターは自警団に属するのが決まりだ。今回の招集が無くてもレプリフォースの連中と戦ったさ」
「以前と同じ様にイレギュラーハンターとして働かせてくれるのであれば、我らも動きやすいとも言える」
元第一機動部隊隊長のチェイサー=ヒッポタイダーと元第三警備部隊隊長ガードナー=ブルドッガが口を開く。
「現役の奴らに面倒は掛けられぬから我らは自警団や傭兵達の指揮を受け持つ・・・で宜しいな?」
元第7空挺部隊隊長ストリーム=オプテスクが総監に問いかける。
「貴方達以外にも退役したハンターで志願してくる者も居るでしょうから、彼らの指揮をお願いね」
かつて総監は一度目のシグマの反乱の際にも退役し自警団や傭兵となっていた元ハンターを招集している。
イレギュラーハンターとしての矜持もあり、この方針には当時も上層部の一部から反対の声が上がったが総監は戦火の拡大を防ぐ為に強引に押し切っている。
そして今回のレプリフォースの反乱と言う事態はかつてのシグマの反乱の比ではないと総監は判断したのだろう。
彼は退役したハンター達にコンタクトを取るとハンターベースや最寄りの支部基地に集まる様に命じている。
恐らく中東支部にも元第5支援部隊副隊長のムーヴ=ドンホアキンなどが到着している頃だろう。
「後でサイワイダー忍軍にも連絡を取らなきゃ・・・」
ぼそりと呟いた総監の言葉にシグナスが顔色を変える。
旧イレギュラー組織の流れを汲み今までもシグマ軍などに雇われた者達まで雇うなど、シグナスからすれば正気の沙汰ではない。
「如何なる手を使ってもこのハンターベースを死守せよ。そう連邦政府に命じられているわ。オホホホホ・・・手段なんて選んでられないわよ」
明後日の方向を見ながら話す総監に元部隊長らがどっと笑いだすが、シグナスからすれば『冗談じゃない』と内心で叫ぶが誰の耳にも届かない。
ともあれ反撃の目途は経った。
総監の号令の下、イレギュラーハンターは本格的に北米における反撃を開始するのであった。