RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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wars11 揺るがぬ雲海の敵

世界中で巻き起こる戦乱の中でここ連邦政府本部では、何時も以上に殺気だった空気に包まれていた。

議会において議題となるのはレプリフォースによる反乱と言う未曾有の事態に対する責任追及である。

「レプリフォースに対する過剰な圧力が今回の武装蜂起に繋がったと我々は見る!!今回の一件は貴方がたにも責任があるぞ。そして強制捜査を行おうとしたイレギュラーハンターにも不適切な対応があった」

前政権のアウグスト派の議員の一人が現政権の閣僚らを痛烈に批判する。

その言葉に対し反論をせんと大統領ギュスターヴ=ギランが席より立とうとするが、それよりも僅かに早くイレギュラーハンター化学顧問のジャーク=ケインが手を挙げていた。

「不適切な対応と言いますが我々イレギュラーハンターはスカイラグーン墜落の際にレプリフォースの兵士が暴れていたと言う情報から事情聴取を行おうとしたまでの事。まして陸軍元帥のカーネルが姿を現したのであれば尚の事、聞き取りを行わなければなりません。それのどこか不適切だったのですかな?現場のハンターからはカーネル自身も面識のあったゼロやエックスらが居た事もあり比較的素直に対応していたと聞いていますが」

前任者で父であるケイン博士と違い息子のジャークは議会において政治的な発言をする事が多い。

立場上は中立ではあるがイレギュラーハンターの非難を受ければそれに対して言うべきことは言うのが彼のスタンスだ。

バイザー越しに垣間見える鋭い眼光に見据えられ議員が呻くのを見て、ジャークはゆっくりとその大柄な体を席へと座らせる。

「シグマの反乱の際にイレギュラーハンターに全部の責任を押し付けたのによく言うね」

傍らにいるラーズグリーズ=ノルンにだけ聞こえる声で呟くジャーク。

シグマの反乱の際に当時の与党であったアウグスト派は、反乱に多くのイレギュラーハンターが参加した事もありハンター組織に対し管理不行き届きの責任を押し付け半ば単独で反乱鎮圧をさせられた経緯がある。

大首領による第一次イレギュラー大戦の反動もあり、人類とレプリロイドの融和を掲げて与党となったアウグスト派だったが、そんな彼らも本質の部分では大差無かったと言えよう。

もしもシグマの反乱当初からレプリフォースや政府軍の出動を命じていれば、あそこまで戦火が広がる事は無かったのではと言うのがジャーク個人の見解である。

当時の事を今でも恨みに思っているイレギュラーハンターは数多いし、戦場となった都市部などに住む市民はアウグスト派に属する議員を許す事は決してないだろう。

その後も政治的な失態が相次ぎ政権与党の座から転がり落ちたアウグスト派は、今や有象無象の野党の一会派に過ぎない状況となっている。

「原因や責任の追及は此度の戦争が終わってからにせぬか?政治による足の引っ張り合いなど市民にとっては正直どうでも良い事だ」

ジャークの言葉に続く様に政界の重鎮マクシーム=エフレーモフが口を開く。

彼の言葉通り今は言い争っている場合ではないのだが、政権を追われたアウグスト派は今回の一件を政権奪取の絶好の機会と捉えている。

「それこそが議会軽視ではないかエフレーモフ元議長。今の発言は問題発言と見る!!」

再び野次などを飛ばす野党議員らに軽蔑の眼差しを向けつつ、エフレーモフは息を吐いた。

悲しいかな今、戦場になっているであろう場の事など考えずに居る議員は大半を占める政府議会において虚しい議論ばかりが過ぎる事となる。

「史上最強の軍隊による反乱・・・大首領以来の悪夢となるやも知れんな」

誰にともなくエフレーモフはそう呟くのであった。

 

 

「レプリフォースの電撃作戦によってシティアーベルが陥落・・・現在政府軍二個師団が奪還に動いていますが」

議会が紛糾する一方、政府本部の別区画に当たる会議室において政府軍高官が言葉を濁す。

シティアーベルはシグマの反乱の際にもブーメル=クワンガーによって占拠されているが、その反省から軍隊を都市郊外に駐留させていたにも拘らず再び敵に奪われてしまっている。

まあこの場合はその駐留していた軍が反乱を起こしたレプリフォースだったと言う想定外の出来事があったと言う事は付け加えておく。

アメリカ東海岸を飛び越え欧州本土にレプリフォースの本隊が迫らんとする中で、政府軍は外ばかりか内にも戦力を割かねばならず苦境に陥っていた。

中東では石油などの化石燃料を生産するプラントなどを始め、幾つかの施設が奪われたとの報告が届いており元々政情が不安定であったアフリカでは反政府組織などの動きも活発化している。

それに加え各地に潜伏するイレギュラー組織の影も見え隠れするとあっては、連邦政府としては頭を抱える他無いだろう。

そもそもそんな時に頼りになって来たのがレプリフォースだったのだ。

クーデター反対派の存在で戦力が半減したと言っても、その戦力はかつてのシグマ軍の比ではない。

「現在関連企業に依頼をして戦闘用レプリロイド、メカニロイドの増産を急がせている所です。当面は今ある戦力で持ちこたえる他無いでしょう」

政府軍幕僚のフェリペ=サンタナが端末に情報を表示させながら言う。

神経質そうな顔が特徴的な彼だが、政府軍元帥の信任も厚い実力者である。

そんな彼の隣には特務部隊フェデラルセイバーズの司令官であるルイーズ=メイフィールドが佇む。

「我が部隊を中心とした一個師団をハンターベースに派遣したが、まずはシティアーベルの奪還が先決か」

「イレギュラーハンターの第8機甲部隊の出動準備は整っている。如何様にも使ってくれ」

ルイーズの言葉にイレギュラーハンターの理事として会議に出席しているファントム=フィーネが口を開く。

レプリフォースのクーデターに先立って政府議会出席の為に政府本部を訪れていた彼女とジャークは、その後も総監の命令でハンターベースに戻らずに政府本部に滞在している。

「今は猫の手も借りたいのが現状だ。その申し出は有難く受け取っておこう」

ニコリと微笑むルイーズにフィーネは表情を変えずに頷く。

「投降してきたレプリフォース海軍と空軍の対応ですが・・・」

フェリペの言葉に何人かの高官の顔が渋くなる。

海軍提督のブレイバル=ジョーズィに空軍長官スパイラル=ペガシオンはそれぞれの手勢を率い連邦政府へと投降している。

彼らは武装を解除し、士官と兵士らをそれぞれ別の場所に隔離するなどの措置を取っているが、彼らへの対応をどうすべきか政府軍のみならず連邦政府内でも意見が割れているのが現状だ。

中には容赦無く処断すべしと過激な声もあるが、政府への反乱参加を好しとせずに投降してきたジョーズィ達を安易に処断すれば怒り狂うレプリフォースに対し油を注ぐ様な物である。

「いくら戦局が厳しいと言えど彼らを政府軍に組み入れ同胞に対しぶつけるのは可能な限り避けたい。同じ軍人としてそれを強いるのはあまりに酷だと私は考える」

将官の一人、ジーク=ラカンが渋い顔で言う。

その考えにはルイーズも同意と頷く。

「この戦いが終わった後に新たなレプリフォースを作る上で彼らは必要不可欠な存在だ。そんな訳で我々とハンター両組織が奮起しなければいけないのだが・・・」

チラリとルイーズは大統領補佐官の少女に視線を向ける。

「まあ我々に戦局を変える奥の手は幾つかあります。当面は戦力の増強と敵支配地域の奪還を軸に動くとしましょう」

十代半ばの外見でありながら不相応に思える地位に就くアッシュに何人かの軍人や閣僚が白い目で見るが、彼女の方は気にした様子も無く平然としたものだ。

人を食ったような言動や態度が鼻につくが、彼女自身は大統領補佐官と言う仕事を問題なく遂行している事もあり、誰も文句を言う事は出来ないと言うのもあるし、そもそもこの場はそれを追求する場ではない。

「戦局を変える奥の手か・・・核兵器とかではないのだな?」

フィーネの言葉に閣僚らの顔が青ざめる。

前世紀に於いて世界中に散らばった負の遺産ともいえる大量破壊兵器。

大破壊によってもたらされた混乱は多くの兵器を流出させる原因となり、実際に使用され甚大な被害をもたらしたケースも何件か確認されている。

「流石にそれは無いです。あったとしても最後の最後でしょうね~。まあそれを使えばあっちはファイナルウェポンを容赦なく使ってくるでしょうけど」

フィーネの言葉にアッシュは平然と言い放ち、更に出席者の顔を青くさせる。

仮想敵が存在しない事もあり、月を始めとする宇宙空間にはレプリフォース宇宙軍しか軍事組織は存在していない。

事実上、制宙権を彼らに握られている事実を自覚すればするほど恐怖は増大するばかりだ。

せめてもの幸いは宇宙軍が他の軍に比べ積極的に動いていない事だろうか。

攻撃衛星による砲撃も限定的な物に留まっており、連邦政府としてはこれらに対しただ耐え忍ぶ他無かった。

「失礼します!!」

そして場にもたらされる更なる急報。

駆けこんで来た青年士官の様子から良からぬ事であるのは場に居る全員が覚悟したのだが。

「な・・・どういう事だ?」

それは冷静なフェリペも思わず聞き返す想定外の出来事。

「シティアーベルからの通信が全て途絶えました。都市内部に潜む我が軍の諜報員からもです・・・偵察用のメカニロイドを使ってすぐに確認をしたのですが」

自らを落ち着かせるように息を吐きながら話す士官は会議室のモニターにシティアーベルの映像を映し出す。

都市を奪還せんと接近していた政府軍からの映像であるらしい。

誰の目から見てもそれは異様な光景と言えたであろう。

シティアーベル全域をすっぽりと覆うのはまるで霧を思わせる白い蒸気であり、クワンガーに占拠された都市のシンボルたる塔さえも隠すほどであった。

「何が・・・起こっている?」

高官の一人が呻くが誰も答えなど出せる筈が無い。

「現在シティアーベルは通信を始めとする内外からの通信手段が一切遮断された状態にあります。この霧の様な物は占領したレプリフォースの新兵器なのかはたまたそれ以外なのか」

士官の言葉を受けすぐさに先遣部隊による調査を命じるとフェリペは大きく息を吐く。

レプリフォースの反乱だけでも手一杯だと言うのに自身らのお膝元で起こった怪異に場に集まった面々は頭を抱える他無かったのである。

 

 

 

一方、その頃である。

<そもそも攻撃がばれてちゃ奇襲のしようがねえな>

デスメーザーのブリッジでモニターに映される荒鷲の姿にハリケーン=アルバルドは苦笑を浮かべる他無い。

政府軍より援軍として派遣されたトルネードセーバー隊を率いるガストネード=ワイルロックスは戦艦ジンムの艦長席で踏ん反り返る。

カナダを経由して欧州に攻撃を仕掛ける空軍の艦隊を側面より強襲する。

と言うのが第7空挺部隊を中心に編成された部隊の任務であったのだが、雲を抜けた先で彼らが見たのは自身を待ち構える様にして布陣が完了したフクロウル率いる飛行艦隊の姿であった。

「どう見てもあちらさんは万全の態勢で待ち構えてるな」

<こっち情報が洩れてるじゃねえか。クエエェェェ・・・やってられねえな>

アルバルドの言葉にワイルロックスが苛立った様に顔を歪める。

元より戦力比で言えばあちらの方が有利なのである。

空軍は長官であるペガシオンが不参加を決め、自身を支持する手勢と共に空軍本部を退いた事もありクーデターへの参加戦力は各軍でも尤も少ない。

少ないと言っても元が大所帯のレプリフォース。

第7空挺部隊と政府軍を合わせた戦力を超える物なのは言うまでもない。

ましてそれを指揮するのが『大空の参謀長』ストーム=フクロウルであるのだから、攻撃が予見されていた事に驚愕を覚える他無い。

(俺らの中に敵のスパイがいやがるか・・・まあフクロウルの爺さんならこっちの動きを読んでいた可能性もあるが)

敵の動きにアルバルドは思考を巡らせる。

(仲間を疑い出したらキリがねえ。それに俺も人の事は言えねえしな)

かつてもう一つの人格がイレギュラー組織に通じていた事を思い出しアルバルドは苦笑する。

それを不思議そうにライジング=クローディアが見てきたものだから更に笑いそうになる。

「あの・・・笑っている場合ではありませんよ」

正式な副隊長にシューター=ククルウーが決まっても尚、隊長補佐なる微妙な地位に留まっている黒髪の少女は横目で注意をしてくる。

因みにだがククルウーの方はデスログマー級参番艦デスクローに搭乗している。

「内通者の存在を一瞬だが考えちまった」

クローディアにしか聞こえない声でそう話すアルバルド。

かつてその内通者としてハンターに送り込まれた彼女は一瞬、驚きの表情となるがすぐに何時もの生真面目な顔となる。

「ふざけないでください・・・私と隊長がその存在を疑う資格があると思いますか?」

「だろ・・・だから可笑しくなっちまったのさ」

ジト目で己を見据えるクローディアにアルバルドが笑い声を上げる。

「それでどうするんですか?」

「まあ適当に切り上げて撤退だな。まともにやりあって勝てる相手じゃない」

雲の下で睨み合う様にして対峙していた両軍だが、レプリフォースの艦艇から飛行用メカニロイドなどが放たれるのがレーダーで確認される。

それに続く様にして飛行用ライドアーマー、イーグルに搭乗したスカイベレー達が次々と飛行艦エアホークから飛び出してくる。

「おいでなすったな・・・艦隊戦だ。済まねえがクローディア、ここでの指揮は頼む」

そう言って席より立ちあがるアルバルドにクローディアが血相を変える。

「デスメーザーでも敵に取りつかれたら終わりだ。ライドアーマーは戦闘機とかと違って小回りが利くからな」

「それだったら遠距離戦が得意な私の方が・・・」

ライジングアローを始めとする飛び道具を持つクローディアの方が上手く立ち回れると言えよう。

普段の作戦であれば彼女に任せられただろうが、相手はレプリフォースである。

そこらのイレギュラーとは全く違う、甲板の上で敵を迎撃してもクローディア個人では持ちこたえられない可能性が高い。

それ故に彼は自身の身を危険に晒す事を選んだ。

「今回の作戦を考えたのは俺だ。まあとにかく見てろよ」

ニヤリと笑いながら出ていくアルバルドに思わず『隊長は本当に馬鹿です』と呟くが、それが聞こえたのか分からぬが彼は扉が閉まる前に軽く手を振っていた。

<こちらデスクローのククルウー・・・ってクローディア?もしかしなくても>

敵が迫って来た事もあり通信を入れてくるククルウーだが、デスメーザーのブリッジにクローディアしか居ない事に気づきその顔を険しくする。

<成程ね・・・隊長ならやりかねないわ>

呆れたように溜息を吐くククルウーだが、彼女も彼女で愛用のビームライフルを手にしていた事でクローディアは苦笑する他無いのであった。

「お前ら!!迎え撃つぞ!!敵はイレギュラーだ。昔の仲間とかそう言う考えは捨てるんだぞ!!」

デスメーザーの甲板の上でライドアーマー『ホーク』に搭乗する隊員達に檄を飛ばすのはタンペット=イクティーエ。

「よう、お前ら~力み過ぎんなよ」

意気揚々と敵を迎え撃とうとしたイクティーエだが、隊長のアルバルドが甲板に顔を出した事でその勢いが削がれる事となる。

「た・・・隊長!?」

驚く隊員らを前にアルバルドは何時もと変わらぬ表情で前を見据える。

「敵は数も質も俺らよりも上だ。油断するなよ」

自身らの倍以上の数で迫りくるレプリフォースの飛行艦隊だが、その後ろでは目視は出来ないが更にそれを上回る数のエネルギー反応を感じ取れる。

「フクロウルの爺さんの主力は後方で待機か・・・回り込まれねえようにしねえとな」

別動隊の存在も鑑みながらアルバルドは拳を構えた。

 

 

「イーグル部隊、前面に展開中。メタルホークとエアホークそれぞれ援護射撃を開始します」

「うむ・・・攻撃を続けろ」

旗艦ジェネレイドに座すストーム=フクロウルは部下からの報告を聞き、満足げに微笑んでいた。

万全の態勢で待ち構えていた自身らを前に混乱を生じさせた彼らであったが、すぐさに態勢を立て直すや出撃した自軍を相手に奮戦を始めた。

モニター越しとは言えイーグルを強引に殴り飛ばすアルバルドの姿を見て、老将は僅かに口の端を緩めていた。

「内通者とやらの情報は確かに本当であったな」

フクロウルの言葉に空軍士官エアレイド=プテライドは無言で頷く。

彼もまたフクロウル同様に開戦には反対の立場を取っていた者の一人。

カーネル派の勢力が強い空軍内においてフクロウル一人では軍の掌握は出来ないであろうと踏んで、自らイレギュラーの汚名を着るのを覚悟で彼はクーデターに参加している。

「あまり被害が増えるようであれば私が出ましょう」

「・・・そうしてくれ」

プテライドの言葉にフクロウルは静かに頭を下げる。

前線に出て槍働きをし兵士らを鼓舞する。

長年、参謀として裏方に回って来たフクロウルには決して真似出来ない事だ。

レプリロイドとして老朽化した今となっては前線に出た所で、年寄りの冷や水にしかならないだろう。

その点ではフクロウルはプテライドに対し頭が上がらない。

「政府軍の動きにも注視しろ。奴らには確か新型のレプリロイドが配備されていたと聞く」

フクロウルがオペレーターを通じ前線にその事を伝えようとした矢先であった。

 

ズドォォォォンッッ!!

 

一瞬の内に三隻のメタルホークが爆発炎上し反応がロストする。

戦場に現れる新たな反応にフクロウルは己の中で何かが沸き立つのを感じていた。

「この肌触りに空気・・・戦場だな」

何が起こるか分からぬ混沌の場で老将は震える。

持て囃される己の知略などまるで意味が無いとばかりに覆されるのを彼は何度も経験してきた。

前線でなくとも命を奪われる危険は何度も感じている。

そんな経験をしながらもフクロウルは小賢しいと言える知恵を絞りここまで生き延びてきた。

「楽しくなってきたな・・・ここに居る時だけは私も小僧になれる」

あれだけクーデターに反対しておきながら武者震いが止まらぬ己にフクロウルは苦笑を禁じ得なかった。

頭では駄目だと思いながらも自分も内心では戦いを望んでいたのだ。

つくづく軍人としての性を感じながらフクロウルはふと思う。

今まで反乱を起こしてきた者達も同じ様な気持ちだったのではないかと。

フクロウルはますますその笑みを深くしていた。

 

 

 

一瞬の内に後方のメタルホークが三隻も大破した事で前線のレプリフォースにも動揺が走る。

そんな彼らを覆うようにして頭上に陣取るのは無数の荒鷲の化身達。

「おいアルバルド~俺様達も混ぜろや」

戦艦ジンムより飛び出したワイルロックスは自らの指揮下にあるロックスガード達を率いアルバルド達に合流をする。

彼もまた艦隊の士気を影であるガルバダリオに任せ、前線に飛び出してきたのだ。

高出力のビームアックスを無造作に振るうワイルロックス。

振るわれた刃の軌道に沿う様にして放たれたのは不可視の衝撃波であった。

恐らく先程の一撃もそうだったのだろう。

直撃を受けたエアホークが爆発し炎上するのが見える。

「・・・チッ。対策をしてきやがったか」

ワイルロックスは自身が思った以上に敵に被害が出ていない事に舌打ちをする。

恐らく最初の一撃を受けた時点で後方の艦隊もビームバリアーを展開したのだろう。

衝撃波による損害を受け後方に下がるメタルホークの姿が確認できる。

「もう一回やってくんね?」

「馬鹿野郎、何度も出来ると思ってんのか?あんまり効果がねえ攻撃をして消耗しちゃ意味がねえ」

アルバルドの言葉にワイルロックスはその顔を顰める。

「クオーツの量産が始まれば奴らなんぞ簡単に倒せたんだがな」

ジンムの周りで展開するレプリロイドを指差しながらワイルロックスは呻く。

彼の視線の先には巨大なブースターをバックパックに取り付けたレプリロイドの姿が見える。

陸上戦力のプレオン同様に政府軍に採用され試験的に配備が始まったクオーツ達だ。

彼らはノットベレーを上回るとされるスペックを十分に発揮し、イーグルに搭乗したレプリフォースの軍勢を相手に互角以上の戦いを繰り広げる。

だが敵も敵であり、数で勝る事を利用し連携した動きでクオーツ達に反撃を仕掛けていく。

「適当にやりあったら退くぞ・・・」

「・・・ああ」

ワイルロックスの言葉にアルバルドも頷く。

「お前ら!!敵を引っ掻き回せ!!」

「・・・御意」

ワイルロックスの言葉に自らを簡略化した姿のガード達が散らばる様にして敵に向かう。

 

ズドドドドッッ!!バシュウッッ!!

 

如何に速度に優れようともレプリフォースの艦隊が展開する弾幕を突破する事は容易な事ではない。

メタルホークの放ったミサイルがロックスガードの一体を捉えるのだが。

「・・・何っ!?」

メタルホークのブリッジで下士官が声を上げる。

彼らが見たのはミサイルの直撃を受けて尚、無傷の状態で甲板に取りつくロックスガードの姿であった。

ロックスガードは手にしたビームアックスを甲板に叩きつける。

凄まじい衝撃音が響く中、彼を止めようと兵士らが殺到するが、隊列が乱れた隙を狙い他のロックスガードが襲い掛かる。

「クエエェェェ!!神の楯を突破するのは並の兵器じゃ無理なんだよ!!」

同じくビーム砲の直撃を受けながら何ら手傷を負わずに突破したワイルロックスがほくそ笑む。

「俺様こそがブリザー軍団が最強の存在・・・お前ら下等な奴らなんぞ敵じゃねえ」

古代において天空を支配した神の一人が驚愕する兵士らに嘲笑を響かせる。

「死ね・・・ここはお前らの様な数頼みの連中が居ていい場所じゃねえんだよ!!」

 

ズドォォォンッッ!!

 

ワイルロックスが振り下ろした斧はエアホークの甲板を破壊しブリッジへの風穴を開ける。

ブリッジへの潜入を易々と果たした彼は驚く搭乗員の首を一瞬の内に刎ねるとそのままの勢いで周辺の機器を破壊する。

内部より破壊されたエアホークは制御を失い爆発炎上し残骸が墜落していく。

分類上中型艦とされるエアホークを単騎で破壊するワイルロックスの姿にレプリフォースの兵士らは戦々恐々となる。

彼の視線の先で小型艦メタルホークがロックスガードによって破壊されるのが見えた。

「・・・ッッ!!」

圧倒的な実力を見せた彼だったが、反射的に背後に向かって手にした楯を構える。

一瞬だが感じ取れた殺気、果たして彼の予感は的中した。

 

バシュウウッッッ!!

 

突如として放たれたビームは先程落としたエアホークのそれにも匹敵したであろう。

不意を突く形で放たれたビームを楯で防ぐワイルロックスだが、背の翼を広げるやその場より慌てて離脱する。

 

バシュバシュバシュバシュッッ!!

 

続けざまに自身が先程までいた場所に放たれる無数のビーム。

ワイルロックスにはそれがどこから放たれたのか分からなかった。

だがもしもあのままあそこに留まれば自身は手傷を負っていたのは事実であろう。

神の楯と呼ばれる彼らが纏う障壁も万能ではなく、強引に外からの力で突破する事も可能なのだ。

「・・・チッ。調子に乗るなって事か」

彼はそうと呟くや殺到する敵兵を薙ぎ飛ばしながら味方に撤退の合図を送る。

既に退く準備を始めていた味方は己らを囮にするようにして次々と戦場からの離脱を図る。

「俺様達はもう少し引っ掻き回すぞ。しかしあのビーム・・・どこから来やがった」

ロックスガード達に命令を下しながらワイルロックスは戦場の空で先程の攻撃を仕掛けてきた存在を血走った目で探すのであった。

 

 

<政府軍の艦隊撤退を開始しました!!>

「・・・そうかい!!速度の遅いジンムを先に下がらせろ。俺らは殿を務める」

クローディアの報告にアルバルドはイーグルに搭乗した兵士を殴り飛ばしながら答える。

「流石にプロだねえ」

甲板の上で転がる仲間を気にせずに上空から次々と光弾が降り注ぐ。

背にある翼を広げ飛翔する事で光弾を回避しながらアルバルドは上空に陣取ったイーグル部隊に接近する。

「エルニーニョタイフーン!!」

突き出した両腕から放たれる熱風にイーグル部隊は一瞬の内に破壊されるのだが。

 

バシュバシュバシュッッ!!

 

その隙を縫うかの様にアルバルドの背に光弾が放たれる。

「ちっ・・・数が多いな」

振り返りざまに光弾を腕で弾きながらアルバルドは呻く。

彼のボディには様々な傷が付けられ、敵の攻撃の激しさが窺い知れる。

特A級ハンターであり長年空挺部隊の隊長として君臨してきたアルバルドの実力は、レプリフォースを前にしても見劣りする所は無い。

だが個人の力など戦場と言う場ではささやかな物でしかない。

レプリフォースとて自身らよりも実力のある相手と戦ってきた事は何度でもあり、彼らは質の差を物量でもってカバーし確実にアルバルドを追いつめていく。

「ペガシオンがクーデターに参加しなくて良かったな。じゃなきゃ今頃は真っ向から潰されてたぜ」

と言うのがアルバルドの偽りなき本音だろう。

現在空軍を指揮するのはフクロウルであり、彼は前線に出てくる様な人物でない。

様々な策謀を張り巡らせる智将が相手ではあるが、レプリフォース本来の強みである個の強さを発揮しづらい状態なのだ。

それ故に彼らは数の利と卓越した指揮による連携でもって攻め立ててくる。

「・・・てめえ!!離しやがれ!!」

背後から響く悲鳴にアルバルドが慌てて振り返る。

視線の先でイクティーエがフライトユニットを装備したノットベレー達に押さえつけられているのが見える。

「アルバルドよ降伏しろ!!さもなければこいつを・・・」

イーグルに搭乗したスカイベレーがイクティーエを人質にアルバルドに投降を呼びかけるが。

 

ズドッッ!!

 

不意に勝ち誇った笑みを浮かべたスカイベレーの額に風穴があく。

ノットベレーらが驚く間もなく背後から迫る駝鳥の化身が彼らを纏めて蹴り飛ばす。

「ジンムが戦域から離脱したッス!!うちらも後に続くべきッス!!」

イクティーエを救出したソニック=シュトラースの言葉にアルバルドも額を拭う。

「全速で後退だ。何としてもハンターベースまで辿り着くぞ!!」

アルバルドの命令にデスメーザーを含めた空挺部隊の飛行艦が一斉に撤退を始める。

「チッ・・・済まねえ。油断した」

デスメーザーの甲板の上に下ろされイクティーエがシュトラースとアルバルドに頭を下げる。

以前よりも丸くなった彼女だが、自信家でもある彼女としては屈辱的な事だったのだろう。

俯いたままの彼女の手は僅かに震えていた。

「相手が悪すぎるか・・・お前のせいじゃねえよ」

「全く以ってよ。予想はしていたけど敵に回すと末恐ろしいわね」

ククルウーがデスメーザーの甲板に降りながらイクティーエを慰める。

スカイベレーを撃ち抜いたのは彼女だったのだろう。

彼女が背負うビームライフルは僅かに煙が生じていた。

「でも私達の動きが感づかれていたのは由々しき事態ね」

「・・・だな」

ククルウーの言葉にアルバルドが頷いた時だった。

恐らく前線ではワイルロックスらがまだ暴れているのだろう。

自身らを追撃してくる様子が無いレプリフォースを遠目にこれで一息つけると思ったその時であった。

「部隊を編成して追撃してこないと思ったらこう来るか爺さん」

ここには居ないフクロウルに向かってアルバルドが言う。

彼らの退く先を遮る様に複数の飛行戦艦で構成されたレプリフォースの別動隊が姿を現したのである。

政府軍のジンムを中心とした艦隊は既にその場を離脱しており、殿を務めた形の空挺部隊しか包囲できなかったのか或いは自身らをターゲットに変更したのかは分からない。

「嘘だろ・・・」

好戦的なイクティーエも思わず戦意を失いそうになる。

「あの爺さん、退役するとか言っていたがバリバリに現役じゃねえか」

歳を重ねても今尚衰えぬフクロウルの策にアルバルドが思わず溜息を吐く。

理由はどうあれ自身らを生きて返さぬとばかりの二重三重の策にイレギュラーハンターの戦意は半ば失われつつあった。

「ビームバリアーの展開急げ!!」

アルバルドの指示が終わらぬ内に敵艦から無数のビームと爆雷が放たれる。

前を進み過ぎていた僚艦の一隻があっと言う間に爆発し炎上するのをアルバルドは黙って見ている他無い。

疲労の蓄積した身で飛び出そうとするアルバルドをククルウーが押し止める。

「ここは私が敵の注意を引きます。その間に隊長達は」

「無理だな。お前のビームじゃ敵艦の障壁は崩せねえ。まして臨戦態勢の相手なら尚更だ」

囮になる事を進言するククルウーの言葉をアルバルドはすぐさに退ける。

彼女とて言われるまでも無く分かっていたのだろう。

悔し気に唇を噛む彼女の頭に手を置きながら、アルバルドは微笑む。

「こうなったらもう少しだけ無理をするしかねえな」

迫りくる敵艦隊を前にアルバルドが拳を構えた時だった。

 

ズドオオオォォォォォォォッッッッ!!

 

突如として左右の雲から放たれる爆雷とビームが敵艦隊を襲う。

完全に虚を衝かれた攻撃に精鋭であるレプリフォースも一瞬だが、その動きに乱れが出る。

<アルバルドォォォ!!今だ!!敵の隙間を突っ切れ!!>

<ここは我々に任せろ>

聞き覚えのある声が左右から飛び出した飛行戦艦より響いた。

真っ先に目に飛び込んだのは自身らが使うデスログマー級の旧型に属するデスツォーカ級の姿。

そしてもう一つはレプリフォースで使われるエアホーク級であった。

当然だがそのエアホークにレプリフォースのマークは無い。

デスツォーカにもイレギュラーハンターのマークが無く、その船体には自警団を示すマークが刻まれていた。

彼らは最大船速で敵艦隊の真っただ中を突っ切る。

ただそれだけなのだが、当然の事ながら陣形を整えていた彼らの列が大いに乱れたのは言うまでも無い。

「今だ!!突っ切るぞ!!」

アルバルドの言葉にデスメーザーを中心にした空挺部隊はビームバリアーを展開しながら、敵艦隊の脇を突破する。

当然だがレプリフォース側もそれを見逃す事は無くすぐさに攻撃を仕掛けようとするのだが。

そんな彼らの動きがぴたりと止まる。

自身らを阻む様に一人のレプリロイドが姿を現したからだ。

先程左右から現れた艦の内、エアホーク級から飛び出した彼に多くの兵士らが呻く。

「悪い事は言わん。大人しく退け・・・理由を話せばフクロウルとて無用な処分はしない筈だ」

「くっ・・・前空軍長官」

レプリフォース前空軍長官カムシーム=フレーヴェルスにイーグルに搭乗した兵士が呻く。

彼が空軍長官の職を辞してからまだ日は浅く、その実力を見知っている者は数多い。

「お前達が犠牲を顧みず私に挑むのであれば恐らく勝つのはお前達だろう。だがそれによって生ずる損害はレプリロイド一人を相手にするには割に合わぬと思うぞ」

ビームセーバーの柄を握りながら言うフレーヴェルス。

それと対峙する者達は彼が放つ圧倒的な闘気に呑まれ動く事が出来ない。

実際には数分にも満たない時間であったが、対峙している側には数時間にも感じられる時間が流れた後、イーグルに搭乗したスカイベレーが観念した様に溜息を吐く。

「仕方ない・・・撤退するぞ」

「大尉殿!!」

大尉と呼ばれたスカイベレーの言葉に周囲の兵士が思わず叫ぶ。

「閣下の実力は誰だって知っているだろう。それに如何に敵となったとは言え大恩ある閣下に刃は向けられん」

そう言って軍帽を取り敬礼をする大尉にフレーヴェルスも同じ様にして返す。

「出来得ることなら閣下には戻って来て欲しかった。ペガシオン閣下が反対の立場を取られた以上、我が軍には武の象徴となりうる方が居ない。ですがあくまでも今回だけですぞ・・・次に我らの邪魔をすれば容赦は致しません」

「それでこそ軍人だ。私も同じく容赦はしないよ」

大尉の言葉に苦笑しながらフレーヴェルスは静かに構えを解く。

程無くフクロウルより撤退命令が届くや周囲の兵士らも渋々従い艦隊は背を向けその場を立ち去り始める。

<フレーヴェルス。無事だったか?正直、肝を冷やしたぞ>

「私もだ。単身で敵と対峙など現役時代であれば懲罰物の行為だからな。それに恫喝紛いのやり方もな・・・この年で野に下るのも悪くは無いな」

自身の後方に待機していたデスツォーカからの通信にフレーヴェルスは豪快に笑い、通信相手のストリーム=オプテスクを呆れさせる。

<前空軍長官の貴方が味方で良かった。この度のご協力には感謝する>

「気にするなオプテスク。かつては共に空を舞った者同士、この危機を前に隠居などしておられんさ」

通信を切りながらフレーヴェルスはフクロウルの指揮する艦隊に向かって敬礼をする。

自らの身代わりと言ってもいい形でレプリフォースを指揮する友に対するフレーヴェルスの胸中は複雑であった。

今も尚、脳裏を過る後悔の文字は呪縛の様にこの老人を縛り付ける。

「いかんな・・・私が迷ってはいかんのだ」

次に出会えば今度こそ殺し合いになるであろう。

かつての仲間を手に掛ける事を覚悟しながらフレーヴェルスも静かにその場を後にするのであった。

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